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Ver0.18 海外調査報告書 AAAS 2015 Annual Meeting 現地調査及び関係者インタビュー 12-16 February 2015, San Jose 独立行政法人 科学技術振興機構 科学コミュニケーションセンター

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海外調査報告書

AAAS 2015 Annual Meeting

現地調査及び関係者インタビュー

12-16 February 2015, San Jose

独立行政法人 科学技術振興機構

科学コミュニケーションセンター

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要旨

米国を中心とした科学技術コミュニティと行政・政治、事業者(企業)、メディア、市民

の多層的なネットワーク形成・交流の場の特徴、場の設計・運用の実態を明らかにすると

ともに、最新の国際的な潮流を把握し、科学技術振興機構(JST)の活動に役立てることを

目的として AAAS 2015 年次総会(2015 年 2 月 11 日(水)~16 日(月)@米国サンノゼ)

の調査を行った。

また、JST の活動を紹介する展示ブースを出展し、日本の社会における科学と社会の問

題について話し合うワークショップを主催するとともに、南アフリカ政府、国際科学会議、

EuroScience 等と協力してレセプションを共催するなどの活動を通じて、世界の科学技術コ

ミュニティのリーダーとのネットワークを強化した。

サセックス大学や IBM と協力してシンポジウムを主催し、日本発の新しい情報科学技術

研究の提案「知のコンピューティング」の紹介と議論を行い、そのプレゼンスの向上とネ

ットワーキングを図った。

AAAS2015 年次総会のプログラムの構成は、AAAS が独自に編成するプログラムと、公

募とピアレビューによって編成されるプログラム(Symposia)に大別される。後者は人文

社会科学から自然科学まで幅広く、件数が 159 件と圧倒的に多い。これは分野横断的な学

術会議であり、フェスティバルではない。

次の世代を担う若者や新興国の活動の育成に対する特別な配慮、情報発信への配慮は格

別になされていた。また、デイタイムの各種講演、シンポジウム、ワークショップ、セミ

ナーのほかに、大臣クラスの晩餐会や、政策立案者やメディア関係者を含む多様なステー

クホルダーの交流を促す各種レセプション(スポンサーも様々)等が多数企画されており、

ネットワーキングを主目的に参加する人々が多くいると推察された。

今回の調査は、日本の科学技術振興全体および JST の活動について、以下の取り組みの

必要性を示唆している。今後、JST 全体で検討したい。

(1) AAAS 年次総会, ESOF, サイエンスアゴラの活用

“定期的に”会合に参加し、今後取り組む新しい課題を、各国の文脈・社会的な文脈に

視野を広げて議論する場が必要である。リソースは有限なので、どの会合が最適かは熟慮

が必要。AAAS 年次総会、ESOF、サイエンスアゴラは候補になる。

(2) 若者と新興国へのアクセス強化

これからの日本の社会と科学技術にとって、最重要ステークホルダーは、若者と新興国

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である。リソースは有限なので、既存の活動の間に協力を生み出していくことが第一。

(3) 科学者コミュニティに止まらず、社会全体に目を配る

JST は、科学者のソサエティではない。科学者が研究を主導するモチベーションと社会

が求めるイノベーションとは必ずしも一致しない。社会の期待とイノベーションエコシス

テムの現状について、洞察を共有する場を作りたい。サイエンスアゴラはその候補になる。

(4) メディアや政策立案者との関係性構築

一箇所に良質の議題を集める努力により、メディアも政策立案者の関心も高まる。個別

の組織や部署(JST に止まらない)で構築されているメディアや政策立案者との関係性を

集約する努力が、より効果的な情報共有・対話・共同のプラットフォームの構築につなが

る。これは一朝一夕にはできない。地道な努力の積み重ねが必要である。

(5) ネットワーキングの機会の充実

社会を動かす切実な動機がある人は、分野やセクターの壁を超えて、人と出会いたいと

思ってやってくる。人は人に惹かれてやってくる。社会を動かせる力をもった人(権力者

とは限らない)を集めようと思うのであれば、同じ問題意識を持った人を集めたい。日本

はアジアにある。アジアの有力者を集めることで、ひいては欧米やアフリカの有力者との

ネットワーキングも広がる。そのような場を作る努力が必要。サイエンスアゴラは候補に

なる。

AAAS 年次総会に類する科学者コミュニティの草の根活動が日本に存在しないことは周

知の事実である。JST が 2006 年から運営するサイエンスアゴラは、開始当初から AAAS

年次総会を参考にしてきたといわれる。今後サイエンスアゴラをどのような立ち位置で育

くんでいくかを再考する機会として、サイエンスアゴラが 10 周年を迎える 2015 年は好機

である。

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目次

要旨 ......................................................................................................................................... 2

1. 調査目的 .......................................................................................................................... 6

2. AAAS 年次総会の概要 .................................................................................................... 8

3. AAAS2015 年次総会のテーマと構成 ........................................................................... 13

4. 現地調査報告 ................................................................................................................. 19

4.1 President’s Address .............................................................................................. 19

4.2 Plenary Lectures .................................................................................................. 22

4.3 Poster Sessions ..................................................................................................... 25

4.4 Topical Lectures .................................................................................................... 27

4.5 Seminars ............................................................................................................... 31

4.6 Special Events ...................................................................................................... 39

4.7 Special Sessions .................................................................................................... 49

4.8 Symposia ............................................................................................................... 52

4.9 Exhibitor-Sponsored Workshops ......................................................................... 83

4.10 Clinics .................................................................................................................... 84

4.11 Career Development Workshops ......................................................................... 85

4.12 Newsroom .............................................................................................................. 98

4.13 Family Science Days .......................................................................................... 106

4.14 International Lunch Roundtable ........................................................................ 111

4.15 President Dinner ................................................................................................. 113

5. JST 主催企画の報告 ........................................................................................................ 115

5.1 JST ブース ............................................................................................................ 115

5.2 Exhibitor Sponsored Workshop “Science and Society in Japan”. ...................... 121

5.3 Special Event “Forum of Global Fora" ................................................................ 127

5.4 Symposia (Information and Data Technology) “Wise Computing: Collaboration

Between People and Machines” .................................................................................... 130

5.5 General Poster Session “Practices to Offer Science Communication

Opportunities through Funding Program Management”........................................... 134

6. インタビュー ................................................................................................................. 135

6.1 AAAS Office of Public Programs ......................................................................... 135

7. AAAS2015 年次総会の運営に見られる工夫 .................................................................. 139

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7.1 会場およびフロアプラン等 .................................................................................... 139

7.2 対外情報発信(広報等) ....................................................................................... 143

7.3 スポンサーシップ .................................................................................................. 145

7.4 受付および参加者パスの区分について .................................................................. 146

7.5 一般参加者向けのサービスなど............................................................................. 148

7.6 AAAS 年次総会開催までの主な公式スケジュール ............................................... 150

7.7 出展関係の分担体制・TIPS .................................................................................... 151

8. 結論 ................................................................................................................................ 152

付録1 これまでの年次総会 ............................................................................................. 154

付録 2 AAAS2015 Annual Meeting Overview ............................................................... 156

付録 2 Plenary and Topical Lectures Speakers ............................................................ 157

付録 3 日米欧プラットフォーム比較表 ........................................................................... 160

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1. 調査目的

米国を中心とした科学技術コミュニティと行政・政治、事業者(企業)、メディア、市民

の多層的なネットワーク形成・交流の場の特徴、場の設計・運用の実態を明らかにすると

ともに、最新の国際的な潮流を把握し、科学技術振興機構(JST)の活動に役立てることを

目的として AAAS 2015 年次総会の調査を行う。

また、科学と社会を橋渡しの一端を担う JST の活動の成果を報告し、新しい提案と議論

を行い、対話を通じてその位置づけと今後取り組むべき課題をグローバルな観点で検討す

るとともに、世界の科学技術コミュニティのリーダーとのネットワーク構築も行う。

この成果は、科学技術振興機構(JST)の社会との重層的かつ緊密な関係性の構築に活用

する。

科学技術をテーマに、科学者だけでなく、政治家、行政官、企業関係者、メディア関係

者、学生や子供、その他幅広い市民が集い対話し、様々な相互作用を生む場のデザインは、

JST が取り組むべき課題のひとつである。

JST の社会との重層的かつ緊密な関係性構築をさらに発展させるため、私たちは、米国

と欧州の取り組みから学ぶ努力を開始した。科学技術コミュニティが社会とともに発展す

ることを目指して開催される大規模なイベントは、米国では AAAS 年次総会、欧州では

ESOF が有名である。

2014 年 2 月は米国の The American Association for the Advancement of Science

(AAAS)の年次総会の調査を行った。AAAS は、1848 年に創立された歴史ある非営利組

織で、その年次総会も毎年恒例のイベントとして米国の科学コミュニティの中に定着して

いる。毎年明確なテーマを設定して進められており、かなり先を見越したイベントの管理

運営体制が確立されていた。日本では、こうした対話の場に科学技術関係コミュニティが

主体的に参加する文化が形成されていない点の克服が課題として認識された。

2014 年 6 月は欧州の EuroScience Open Forum(ESOF)の調査を行った。ESOF は、

欧州の科学技術関係コミュニティを代表する国際組織 EuroScience が主催する科学一般に

関する欧州最大のイベントである。2004 年から 2 年に 1 度開催されているもので、AAAS

年次総会と比べて歴史は浅い。多様な文化が共存する欧州の中で、“広い意味での科学コミ

ュニティ”が科学と社会の課題を取り上げて対話をする場を作ることを主眼においた重層

的な企画であり、社会の様々なステークホルダーとともに歩む工夫をしなければ、科学技

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術の有効な発展はないという欧州の科学コミュニティの強い決意が感じられた。1

2014 年 11 月に開催されたサイエンスアゴラ 2014 では、上記調査結果をふまえ、主催者

企画で国内外から科学技術コミュニティのリーダー層を招聘し、サイエンスアゴラが今後

目指す方向性を明示した。すなわち、科学技術コミュニティの参画による企画の充実、メ

ディア・出版業界、産業界、政治・行政、一般市民、次世代人材など科学技術に関わるス

テークホルダーの参画による多様な立場・視点の確保といったことに挑戦していくことを

明示し、サイエンスアゴラの更なる発展に取り組み始めた。

2014 年 11 月にローマで開催された国際会議「科学・イノベーション・社会~責任ある

研究とイノベーションの達成~」に参加し、欧州で主要な潮流になりつつある“責任ある

研究とイノベーション(Responsible Research and Innovation:RRI)”の動向を、市民と

の協働、男女共同参画、科学教育の充実、倫理と誠実さを持った研究、オープンサイエン

ス、責任ある研究とイノベーションの統治といった観点から調査し、JST の活動の紹介を

行い、関係者とのネットワーキングに取り組み始めた。

常に世界の主要なコミュニティとネットワークを形成し、対話を続けることは、協働を

生み出すための努力に他ならないということは、これまでの調査の成果の一つである。

今回の出張も、調査のみが目的ではない。様々な部署がその部署の活動をグローバル化

するというミッションを持ち、JST ブースで活動の紹介をしている。また、研究開発戦略

センターや科学コミュニケーションセンターはそれぞれセッションを企画し、独自のメッ

セージを世界に発信する。世界の科学技術コミュニティのリーダーとのネットワーク構築

も重要なミッションとして組み込まれている。

欧米は日本と歴史や文化を異にしているため、直接模倣することはできない。日本の歴

史や文化をふまえた新しい科学技術と社会の関係性構築が求められている。世界との関係

性構築においても、それぞれの地域の歴史や文化との関係をふまえ、JST の活動を世界の

大きな潮流につなげていきたい。

1 独立行政法人科学技術振興機構科学コミュニケーションセンター, 海外調査報告書

EuroScience Open Forum 2014 (平成 26 年 7 月)

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2. AAAS年次総会の概要

AAAS(American Association for the Advancement of Science)年次総会は、ワシント

ンDC(アメリカ合衆国)に本拠地を置く国際非営利組織米国科学振興協会2が毎年 1 回主

催する科学分野の分野横断的で包括的な会議である。5 日間にわたってシンポジウム、講演、

セミナー、ワークショップ、ポスターセッション等が科学、技術、教育の分野で幅広く企

画され、数千人の先導的科学者、エンジニア、教員、政策立案者、ジャーナリストが集ま

り、最近の科学技術の発展について議論をする。

専門学会とは異なり、分野横断的な議論や科学技術分野の先駆者から大局観を得る機会

の提供や、何千人もの先導的科学者、工学者、教育関係者、政策立案者が、お互いにある

いは、メディア関係者やサイエンスコミュニケーターと交流する機会が提供され、海外か

らの参加者も増加している。

AAAS 年次総会は、1848 年 9 月、フィラデルフィアの自然科学アカデミーの図書館で、

米国地学・博物学者協会のメンバーが、ソサエティを新しい組織にすることを決議するた

めに集まった会合を起源とする。アメリカの科学コミュニティ草創期のもっとも名高い 87

名のメンバーが、最初の AAAS 会合への参加者である。

今回 San Jose で開催された AAAS2015 年次総会は第 181 回である。また、将来の開催

都市・時期も、2020 年まですでに決まっている。

(最近と将来の開催都市)

第 186 回 Seattle, Washington, 13–17 February 2020

第 185 回 Washington, DC, 14–18 February 2019

第 184 回 Austin, Texas, 15–19 February 2018

第 183 回 Boston, Massachusetts, 16–20 February 2017

第 182 回 Washington, DC, 11–15 February 2016

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第 181 回 San Jose, California, February 2015 【今回】

第 180 回 Chicago, Illinois, February 2014

第 179 回 Boston, Massachusetts, February 2013

第 178 回 Vancouver, Canada, February 2012

第 177 回 Washington, DC, February 2011

第 176 回 San Diego, California, February 2010

2 AAAS, American Association for the Advancement of Science, http://www.aaas.org/

将来

過去

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AAAS の資料(Exhibitor & Sponsor Invitation 2015)によると、参加者は全米および最

大 55 カ国から 5,000 人以上(昨年は 7,017 人)が参加する。内訳は、30%が生物化学、20%

が物理科学、20%が社会科学、15%が工学・数学・統計学・計算機科学分野の科学者で、60%

以上が博士号保持者、40%が 45 才以下、半数は大学関係者、20%が管理者層、15%が政府

関係者である。AAAS 事務局担当者によると、半数は地元(カリフォルニア)からの参加

者であり、上記登録参加者以外にジャーナリストや大学・研究機関の広報担当者(参加費

無料)が約 1,000 人参加しているようだ。

米国科学振興協会(AAAS)は、すべての人々の利益に供するように科学を進歩させるこ

とに取り組む、国際的な非営利組織である。科学雑誌 Science の発行、オンラインニュース

サービス EurekAlert!の運営、AAAS Annual Meeting の主催等が主な活動。会員は世界中

に 120,000 人以上(科学雑誌 Science の定期購読者を含む)。

「すべての人々の利益に供するように科学、工学、そしてイノベーションを世界中で進

歩させる」を希求することをミッションに掲げ、下記目標を掲げる。

① 学者、エンジニア、人々の間のコミュニケーション促進

② 科学とその利用の高潔さの振興と守護

③ 科学技術活動への支援強化

④ 社会課題に対する科学の声の提供

⑤ 公共政策における科学の責任ある活用の促進

⑥ 科学技術分野の労働力の強化と多様化

⑦ すべての人々のための科学技術教育の充実

⑧ 科学技術への市民参加の促進

⑨ 科学分野での国際協力の発展

AAAS は、米国の全国的な科学コミュニティとして 1848 年に設立。科学は米国の建国当

初から国の一部でありながら、従事者数はほとんどおらず、地理的にも分野的にもばらば

らであった。AAAS は全米で科学と工学の発展を促進し、すべての学術分野の利益を代表

するための初の常設組織として設立された。全米で企画される AAAS 主催の会議への参加

者は、科学の有力者である。会議の様子は、広く新聞や逐語的な会報で報道された。

AAAS の永続性は前もって定められたものではなかった。設立当初 50 年間になされた

様々な貢献にも関わらず、何度も消滅しかかった。最終的に、民間企業として失敗しつつ

あった Science 誌(エジソンによる 10,000 ドルの出資により 1880 年に創設)との提携に

より、Science 誌と AAAS の双方が復活した歴史を持つ。

AAAS の組織図を図 1.1 に示す。AAAS 年次総会の企画・運営は、AAAS の公共プログ

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ラム事務局(Office of Public Programs)で行われている。

年次総会のプログラムは、AAAS の 24 のセクションと協力の上で、アドバイザリー委員

会(advisory committee)によって企画・選定される。もっともコマ数が多いシンポジウ

ムのプログラム選定は、科学プログラム委員会(The AAAS Annual Meeting Scientific

Program Committee)が選定する(表 1.1)。委員会メンバーは、AAAS の運営委員会(Board

of Directors)から 3 年の任期で委任される、科学、技術、教育の分野で幅広く活動してい

る分野横断的専門家である。

AAAS は、学術分野全体をカバーすべく、24 のセクションを設置して活動している(表

1.2)。セクションごとに運営グループ(Section Steering Group)が形成され、年次総会の

シンポジウムの企画、フェローの推薦や選考、事務官の選考、協会全体で取り組むプロジ

ェクトへの専門知識の提供などを行っている。

また、セクションごとのコミュニケーションを改善し、各セクションの活動、手続、方

針の評価や改善の提案をする役割をもつセクション合同委員会(Committee on Sections)

が設置されている。セクション合同委員会の委員長(Committee Chair)と次期委員長

(Committee Chair-Elect)は、AAAS 年次総会の科学プログラム委員会メンバーに名を連

ねている。

図 1.1 AAAS 組織図(AAAS Annual report 2013 に基づき JST で作成)

http://www.aaas.org/page/aaas-annual-report-2013

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(参考 URL)

About the AAAS Annual Meeting

http://meetings.aaas.org/program/about-the-meeting/

AAAS Archive and Record Center, Meetings

http://archives.aaas.org/meetings/

About AAAS

http://www.aaas.org/about-aaas

About AAAS Member Centeral

http://membercentral.aaas.org/about

About Science and AAAS

http://www.sciencemag.org/site/help/about/about.xhtml

150 Years of Advancing Science: A History of AAAS, Origins: 1848-1899

http://archives.aaas.org/exhibit/origins.php

Exhibitor and Sponsor Information

http://meetings.aaas.org/wp-content/uploads/AM15_Exhibitor-Prospectus_FINAL.pdf

2015 Annual Meeting Scientific Program Committee

http://meetings.aaas.org/program/program-committee/

Sections

http://www.aaas.org/sections

AAAS Constitution & Bylaws

http://www.aaas.org/aaas-constitution-bylaws

Meeting Theme

http://meetings.aaas.org/program/meeting-theme/

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表 1.1 2015 年の科学プログラム委員会委員一覧(15 人)

1. Gerald R. Fink, AAAS President and Program Chair, Margaret and Herman Sokol Professor, Department of Biology, Whitehead Institute, Massachusetts Institute of Technology

2. Geraldine Richmond, AAAS President-Elect, Presidential Chair and Professor of Chemistry, University of Oregon

3. Richard T. Carson, Professor of Economics, University of California, San Diego 4. Charles Casey, Homer B. Adkins Emeritus Professor, Department of Chemistry,

University of Wisconsin, Madison 5. Lisa M. Curran, Roger and Cynthia Lang Professor in Environmental Anthropology,

Stanford University 6. Henry Dick, Senior Scientist, Woods Hole Oceanographic Institution 7. Bruce Dunn, Nippon Sheet Glass Chair, Department of Materials Science and

Engineering, University of California, Los Angeles 8. Debra M. Elmegreen, Maria Mitchell Professor of Astronomy and Chair, Vassar College 9. Jennifer Frazier, Project Director, Exploratorium 10. Morton Ann Gernsbacher, Vilas Research Professor and Sir Frederic Bartlett Professor

of Psychology, University of Wisconsin, Madison 11. Juan Gilbert, Andrew Banks Family Preeminence Endowed Chair of Computer and

Information Science and Engineering, University of Florida 12. Sallie Keller, Professor of Statistics, Virginia Tech University 13. Brian A. Larkins, Associate Vice Chancellor for Life Sciences, University of Nebraska,

Lincoln 14. Sandra Mitchell, Professor and Chair, Department of History and Philosophy of Science,

University of Pittsburgh 15. Bob Tinker, Founder, The Concord Consortium <AAAS Staff Officers> Ginger Pinholster, Director, Office of Public Programs Tiffany Lohwater, Director of Meetings and Public Engagement

表 1.2 2015 年現在の AAAS セクション一覧(24 セクション) 1. Agriculture, Food, and Renewable Resources (Section O) 2. Anthropology (Section H) 3. Astronomy (Section D) 4. Atmospheric and Hydrospheric Sciences (Section W) 5. Biological Sciences (Section G) 6. Chemistry (Section C) 7. Dentistry and Oral Health Sciences (Section R) 8. Education (Section Q) 9. Engineering (Section M) 10. General Interest in Science and Engineering (Section Y) 11. Geology and Geography (Section E) 12. History and Philosophy of Science (Section L) 13. Industrial Science and Technology (Section P) 14. Information, Computing, and Communication (Section T) 15. Linguistics and Language Science (Section Z) 16. Mathematics (Section A) 17. Medical Sciences (Section N) 18. Neuroscience (Section V) 19. Pharmaceutical Sciences (Section S) 20. Physics (Section B) 21. Psychology (Section J) 22. Social, Economic, and Political Sciences (Section K) 23. Societal Impacts of Science and Engineering (Section X) 24. Statistics (Section U)

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3. AAAS2015 年次総会のテーマと構成

3.1 テーマ

AAAS2015 年次総会のテーマは、「Innovations, Information, and Imaging」である。

AAAS 年次総会のテーマは毎年設定されるもので、2015 年のテーマは、様々な IT ベンチ

ャーを育んだシリコンバレーの中心 San Jose 開催をふまえて設定された。情報を集めて使

う新しい方法によって科学技術がどのように転換していくかに焦点が当てられている。

(テーマの趣旨:AAAS ウェブサイトより)

すべての分野における進歩が、データの収集、可視化、分析の能力によってますます駆

動されている。情報・イメージング技術分野における進歩が、生化学、計算機科学、素粒

子物理、ゲノミクス、海洋学のような分野において斬新な応用を生み出し、分野を横断し

たデータの解釈方法を創造しつつある。

この転換は、地球規模で、科学情報をよりオープンに、入手可能に、接続可能にしてい

く。増大がエスカレートするデータ量とデータ分析の進歩は、私たちが科学的・社会的問

題に対する解決策を見つける方法を変えつつある。情報が、社会的利益、潜在的なリスク

の評価、科学コミュニティを越えた話し合いにどのように使われるかに対する深い思慮は、

この大きな転換の持つ潜在力を最大限に引きだせる。

表 3.1 過去の AAAS 年次総会のテーマ

年 開催地 テーマ

2014 年 Chicago Meeting Global Challenges: Discovery and Innovation

—focused on finding sustainable solutions through inclusive, international, and interdisciplinary efforts that are most useful to society and enhance economic growth.

2013 年 Boston The Beauty and Benefits of Science

—highlighted the "unreasonable effectiveness" of the scientific enterprise in creating economic growth, solving societal problems, and satisfying the essential human drive to understand the world in which we live.

2012 年 Vancouver Flattening the World: Building a Global Knowledge Society

—focused the program on the complex, interconnected challenges of the 21st century and on pathways to global solutions through international, multidisciplinary efforts.

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3.2 プログラムの構成

AAAS2015 年次総会は、2 月 11 日(水)から週末をはさんで 2 月 16 日(月)までの 6

日間(実質 5 日間)にわたり、シンポジウム、講演、セミナー、ワークショップ、ポスタ

ーセッション等が企画されている。

プログラムの構成は図 3.1 のとおりである。AAAS が独自に編成するプログラムと、公募

とピアレビューによって編成されるプログラム(Symposia)に大別される。後者は人文社

会科学から自然科学まで幅広く、件数が圧倒的に多い。

AAAS が独自に編成するプログラムには、President’s Address 等の主要な企画のほかに、

AAAS 傘下の委員会や 24 のセクションの定例会合を含む Business Meetings、プレゼン資

料作成の指導が受けられる Clinics、科学コミュニケーション、未来のコンピューティング、

感染症、地球イメージングなどのトピックを設定して開催される Seminars、学生や一般科

学者のポスターセッション、地元のワイナリー、博物館、水族館のツアーで構成される Local

Science Tours などがある。

AAAS 以外の機関が企画するセッションとしては、コミュニケーションスキル、キャリ

ア 管 理 な どに 関 する Career Development Workshops 、 Exhibitor が 企 画す る

Exhibitor-Sponsored Workshops、地元機関が独自に企画する特別セッションがある。

このほかに、大学、研究機関、行政機関、出版社等のブース出展や、地元の子供連れの家

族へのサービスとして提供される Family Science Day といった Exhibitions、大臣クラス

の晩餐会や、政策立案者やメディア関係者を含む多様なステークホルダーの交流を促す各

種 Receptions(スポンサーも様々)等が多数企画された。また、Newsroom では、ジャー

ナリストに対してニュースを提供するプレスレクチャーがある。参加者の交流やメディア

に対するサービスが充実している点は特筆すべきであろう。

図 3.1 AAAS2015 年次総会のプログラム構成

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以下に、それぞれのプログラムを概説する。

President’s Address(1 件)

AAAS の President の講演を含む、年次総会でもっとも格調が高いセレモニー。2/12(木)

の夕刻(18:00-19:30)に行われる。

Plenary Lectures(4 件)

年次総会で最も注目を浴びる基調講演。2/13(金)~2/16(月)に毎日 1 件ずつ企画され

る。金曜、土曜、日曜は 17:00-18:00 に企画され、月曜は 8:30-9:30 に企画されている。会

場はメインホール(Room 220A)。AAAS の Board of Directors が企画する。

Topical Lectures(8 件)

著名な科学者による単独講演。科学技術分野全体から関心をもたれそうな話題が取り上

げられている。実施セッション数 7(1 件キャンセルになった。)

2/14(金)、2/15(土)、2/16(日)のランチタイム(12:00-13:00)に企画される講演会。

毎日 2~3 件の講演会がパラレルで走る。

Board of Directors, Sections, Office of Public Programs, AAAS 幹部 , Scientific

Program Committee、Science 誌の Editor などが提案し、Office of Public Programs で編

成する。

Poster Sessions

学生(Student)と一般社会人(General)の双方に AAAS 年次総会に参加する幅広い科

学者コミュニティに対する研究成果発表の機会を提供するもの。Exhibit Hall の一角で開催

されるポスターを張り出しての研究発表会である。発表総数は 282。Science 誌でとりあげ

られる Attendees Choice や、各種授賞プログラムがある。学生のポスターコンペティショ

ン参加者の発表に対しては審査委員が審査を行い、後日、受賞発表が決定される。

2/14(金)、2/15(土)、2/16(日)それぞれ 3~4 時間のポスターセッションが企画され

ている。発表者は学生、研究者、実務者等。金曜は American Junior Academy of Sciences、

土曜と日曜は学生が発表するポスターコンペと研究者・実務者発表のポスターセッション。

土曜は Brain and Behavior; Cellular and Molecular Biology; Developmental Biology,

Physiology, and Immunology; Education; Medicine and Public Health.の分野、日曜は

Environment and Ecology; Physical Sciences; Science in Society; Social Sciences;

Technology, Engineering, and Math.の分野が対象。

http://www.aaas.org/2015abstracts-toc から予稿検索が可能である。

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Seminars(11 件)

AAAS が企画・主催するセミナー形式のセッション。AAAS2015 年次総会のテーマであ

る「Innovations, Information, and Imaging」との関連性を持たせた内容となっており、

今回のカテゴリは以下の4つである。Office of Public Programs がプログラムを編成する。

<Seminars のカテゴリ>

・科学者のための科学コミュニケーション(Communicating Science, 木曜・2 件)

・感染症(Infectious Disease: Monitoring and Response, 土曜・3 件)

・地球のイメージング(Innovations in Imaging Earth, 日曜・3 件)

・未来のコンピューティング(The Future of Computing, 金曜・3 件)

それぞれのカテゴリで 90 分のセミナーを 2~3 コマ設定。各セミナーのスピーカーは 3

人~6 人。

Business Meeting(39 件)

AAAS 傘下の委員会や 24 のセクション(表 1.2)の定例会合が企画され、委員長の選任

などが企画されている。

全ての登録参加者が参加可能と(open to all registrants)となっているが、実際は section

や council などのメンバー(非常にタイトなコミュニティでパワーにあふれている)だけの

クローズドな雰囲気のミーティング。

Local Science Tours(3 件)

参加者の興味をひきつけ、参加者を最終日まで引き止めることを企図し、最終日に開催。

地元のワイナリーツアー、博物館のツアー、水族館のツアーが企画されている。

AAAS がツアー企画会社を特別に雇って実施する。

Career Development Workshop(21 件)

研究者がキャリアアップしてゆくために必要なスキルを紹介する1時間の内容。コミュ

ニケーションスキル(データの可視化やプレゼン方法など)、キャリア開発の考え方、キャ

リア管理(キャリア開発の考え方、仕事の探し方、協力の仕方など)の3カテゴリでワー

クショップが企画される。ワークショップとなっているが、ほとんどは1時間のシンポジ

ウム形式。

Exhibitor の中から開催したい組織を募って実施。公募はしない。AAAS の Science Staff

部門がコミットする場合もあるという。

Clinics

AAAS 年次総会の講演者に対して、プロのコミュニケーションコンサルタントが 1 名 50

分・マンツーマンでプレゼンテーションの個別指導を行う。2/12(木)~15(日)の毎日

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8:30-16:30(※初日のみ 17:30 まで)開催。原則として事前登録制であるが、空きがあれば

会期中の登録も可能。登録は、参加登録時に行うが、Exhibitor 登録・一般登録者は対象外。

Exhibitor の中から開催したい組織を募って開催。公募はしない。AAAS の Science Staff

部門がコミットする場合あり。

Exhibitor-Sponsored Workshops(4 件)

AAAS に出展している組織(Exhibitor)が企画できるワークショップ(一律一時間枠で

950 ドル追加料金がかかる)。科学者コミュニティに対して、自分の製品、サービス、プロ

グラムを宣伝することを目的に企画し、出展内容とリンクした形で出展者が集客。

Symposiaのようなピアレビューを経ずに企画可能。企画の公募締め切りが4月のところ、

このワークショップの企画は 11 月まで可能。研究のプレゼンテーションや科学政策の議論

をすることを意図するものではない。

Special Sessions(5 件)

開催都市によって大きく変わる企画。開催都市からの提案などをもとに、各種団体(AAAS

他部門や任意団体等)が主催するセッション群で、AAAS は場所を提供するのみ。各セッ

ションは完全に自律的に運営されている。

ほぼまる一日をかけて取り組まれる長時間のセッションをはじめ、年会会期前後に実施

されるサテライトミーティングの位置づけの企画が多い。特に新設団体による企画の場合、

Special Events と同様、AAAS の公認イベントになることで AAAS の客層に多く参加して

もらうメリットは大きい。2015 年会ではすべて、事前登録が必要。

Special Events(37 件)

さまざまな組織(AJAS、AAAS Fellows)のレセプションや各種表彰を中心とした交流

イベント。AAAS 主催のものも多いが、ほかのスポンサー・主催者として、英国リサーチ

カウンシルやカナダの大学などの研究組織に加え、任意団体などがレセプションを開催し

ており、それぞれ通年の活動のネットワークを広げ、深める機会として企画されている。

JST は Forum of Global Fora を共催。参加資格は、招待者限り(By Invitation Only)と、

参加登録者全員(Open to All Registrants)の 2 種類に大別される。Special Events とし

て AAAS に公認されるとプログラムに掲載されるため、集客に大きく寄与する。

なお、土曜と日曜に終日(11:00-17:00)開催される Family Science Day は、この Special

Events の中に含まれている。

Symposia(159 件)

金曜~月曜に企画される 90 分から 180 分のシンポジウムで、年次総会のプログラムカテ

ゴリの中の主軸。件数も 159 件と圧倒的に多い。

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公募とピアレビューによって編成され、人文社会科学から自然科学まで幅広い。テーマ

は、公募だけでなく、24 あるセクション(表 1.2)がそれぞれ 1-2 件提案する(承認される

とは限らない)。Scientific Program Committee もいくつか提案する。ピアレビューで選ば

れたものが、次の 13 のトラックに分類されている。予めトラックを設定して公募するわけ

ではない。テーマの選考では地元が優遇されることはない。

Anthropology, Culture, and Language(8 件)

Behavioral and Social Sciences(9 件)

Biology and Neuroscience(16 件)

Climate Change, Environment, and Ecology(12 件)

Communication and Public Programs(13 件)

Education and Human Resources(13 件)

Engineering, Industry, and Technology(10 件)

Global Perspectives and Issues(15 件)

Information and Data Technology(11 件)

Medical Sciences and Public Health(14 件)

Physics and Astronomy(16 件)

Public Policy(14 件)

Sustainability and Resource Management(8 件)

Newsroom

プレス・メディアに対するサービスである。これからジャーナリストを目指す学生や、

新興国のジャーナリスト、機関所属の広報担当者もサービス対象に含まれる。具体的には、

朝食の提供とともに行われるプレスブリーフィング、ウェブサービス EurekAlart!を通じた

映像や原稿による年次総会の情報提供、プレス登録者限定の朝食会やレセプションがある。

AAAS 年次総会では、プレス・メディアを通じて一般の人々とつながるというアプロー

チを重視しており、年次総会期間中のニュースリリースやセッションのレポートは 200 以

上に上る。プレス・メディアに対するサービスは、年次総会の発信とともに、研究者や広

報担当官とジャーナリストとのネットワーキング、果ては健全な科学ジャーナリズムを育

成することまでも意図したものである。

Family Science Day

一般市民に向け展示場全体が無料開放される企画で、毎年多くの家族連れが訪れる。例

年、展示 2 日目・3 日目の土曜日・日曜日が、該当日に当たる。

地元の機関を中心に展示が構成されており、科学者が自ら実験の実演を行うなど、訪問

者が直に科学に触れる事ができる体験型のメニューが多く用意されているのが、大きな特

徴である。40 機関が出展しており、アトラクションも 18 コマ企画されていた。

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4. 現地調査報告

4.1 President’s Address

Thursday, 12 February 2015 6:00 PM-7:30 PM @Room 220A (Convention Center)

AAAS の President の講演を含む、年次総会でもっとも格調が高いセレモニー。Phillip A.

Sharp 氏 (AAAS Board Chair (2015))による司会進行。American Junior Academy of

Science (AJAS) の競技会を勝ち抜いた高校生(高校生の研究者)たちが AAA2015 に来場

していることを冒頭に紹介。また、オープンアクセスオンラインジャーナル「Science

Advances」を刊行したこと3、参加者が 50 カ国以上から来ていることも紹介。Local Co-chair

として、Janet Napolitano 氏(President University of California)と、Bill Joy 氏(Founding

chief scientist of Sun Microsystems(欠席))を紹介。

この年次総会の最後に、過去 13 年間 CEO を務めた Alan I. Leshner 氏が役割を終え、

元連邦議会議員の Rush D. Holt 氏が CEO に着任することをステージ上で紹介。Leshner

氏が CEO として推進した科学コミュニケーション、パブリックエンゲージメント、科学技

術外交に関する功績をたたえた。また、新しく CEO に着任する Holt 氏が米国下院議員と

して 8 期目の任期(通算 16 年)を終えたところで、1999 年から研究開発、科学教育、イ

ノベーションへの連邦政府の投資を推進し、科学的思考に基づく政策判断を主張してきた

こと、実験物理学者、政策立案者、ラボ運営者、教師としての経験を持つことを紹介した。

図 4.1 司会の Sharp 氏が Leshner 氏と Holt 氏を紹介する様子

3 Science Advances, http://advances.sciencemag.org/

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続いて、Local Co-chair として、カリフォルニア大学学長の Janet Napolitano 氏の講演

があった。Napolitano 氏は、米国国土安全保障省長官、アリゾナ州知事、アリゾナ州司法

長官、連邦裁判所アリゾナ州管轄区首席検事を務めた。アリゾナ州知事時代は、幼稚園入

園前から高等教育までの教育政策に注力し、全米知事協会の会長を務め、タイムズ紙の州

知事トップ5に選ばれた方。同氏は、高等教育への継続的な投資がシリコンバレーの現在

のイノベーションエコシステムを形成したと述べた。

図 4.2 Janet Napolitano 氏の講演の様子

このプログラムのメイン企画は、この次の AAAS President(2015)の Gerald Fink 氏の講

演である。Fink 氏は、遺伝子生物化学・分子生物学分野で遺伝子調節、変異、組み換えの

メカニズム解明に従事し、酵母菌に遺伝子を組み込んで DNA からの遺伝子発現を制御する

研究で主な貢献をしてきた方。この技術は遺伝子工学の基礎的な技術として、酵母菌活用

によるバイオファクトリー、創ワクチン、創薬等に応用されている。同氏は National

Research Council Committee の座長を務め、2003 年に発行した「テロリズム時代の生物

工学研究:デュアルユースのジレンマに立ち向かう」では、生物工学研究の破壊的な応用

の可能性を阻止し、正統な研究の実践を可能にすることを提案している。また同氏は

Whitehead institute の設立メンバーで元所長である。

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同氏の講演は、生物学がコンピュータおよびイメージング技術と結びついて革新的な発

達を遂げてきた歴史が丁寧に紹介するもの。全 DNA の 2%のみがセントラルドグマに従い、

残りの 98%はコードされていないジャンク DNA とされていたが、ジャンク DNA から発現

する RNA が、遺伝情報の発現調節に様々な影響を与えている事が少しずつ紐解かれてきた

現在進行中の物語を、冗談を交えながら生き生きと紹介し、「誰も知らない場所を知ること

は、誰も見たことのないものを見ることだ。この予想もしない旅のルールこそ、私たちを

科学に惹きつけてやまない。この年次総会は、イメージングと情報の分野から出現してき

た新しいフロンティアについて聴く機会となるだろう。」と締めくくった。

図 4.3 Gerald Fink 氏の講演の様子

<所感>

・ 多数の来賓を登壇させる日本のイベントとは異なり、シンプルな演出。来賓の講演は迫

力満点。President の挨拶も、2015 年のテーマ「Innovations, Information, and

Imaging」と結びつけながら 40 分間全く飽きさせない語り口。奇をてらった演出は無

いが、具体的でありながらも専門的になりすぎないトークは、その学術分野の本質を知

り尽くした人ならではの迫力。

・ AAAS は科学者のコミュニティなので、こうした話題が最適。サイエンスアゴラが科学

者以外のステークホルダーを平等に参画させるプログラムにするとしたら、テーマは科

学技術の話にとどまらず、政策、報道、企業経営の話などを取り扱ってもよいだろう。

その場合も、“本質を知り尽くした人の迫力”は、共通するだろう。

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4.2 Plenary Lectures

1. 概要

年次総会で最も注目を浴びる基調講演。2/13(金)~2/16(月)に毎日 1 件ずつ企画され

る。金曜、土曜、日曜は 17:00-18:00 に企画され、月曜は 8:30-9:30 に企画されている。会

場はメインホール(Room 220A)。AAAS の Board of Directors が企画する。

(企画された Plenary Lecuture 一覧)

・ Friday, 13 February 2015: 5:00 PM-6:00 PM

Daphne Koller, Stanford University

The Online Revolution: Learning Without Limits

・ Saturday, 14 February 2015: 5:00 PM-6:00 PM

David Baker, University of Washington

Post-Evolutionary Biology: Design of Novel Protein Structures, Functions, and

Assemblies

・ Sunday, 15 February 2015: 5:00 PM-6:00 PM

Karl Deisseroth, Stanford University

Optical Deconstruction of Fully-Assembled Biological Systems

・ Monday, 16 February 2015: 8:30 AM-9:30 AM

Neil Shubin, University of Chicago

Finding Your Inner Fish

2. 参加した Plenary Lectures

・ Daphne Koller, Stanford University

The Online Revolution: Learning Without Limits

Friday, 13 February 2015: 5:00 PM-6:00 PM

・ Karl Deisseroth, Stanford University

Optical Deconstruction of Fully-Assembled Biological Systems

Sunday, 15 February 2015: 5:00 PM-6:00 PM

3. 参加した Plenary Lectures の概要

■The Online Revolution: Learning Without Limits

Daphne Koller, Professor, Department of Computer Science, Stanford University and

President, Cousera.

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<概要>

世界中の大学と協力し、大学の講座を無償でオンライン上に提供しているソーシャルベ

ンチャー企業 Cousera の代表である Koller 氏による講演。Cousera が実施するオンライン

講座について、What(オンライン講座とは何か)、Who (誰が受講しているか)、Why(な

ぜ世界の大学が協力してくれるのか )の視点から説明。Why の答えとして、大学の認知度

の向上、従来の教育からの変革(教育方法の改善)、受講者の生活の質向上に貢献している

社会的意義の大きさ、3点を挙げていた。講演の最後、イギリスの作家 H.G.Wells の言葉、

「Civilization is a race between education and catastrophe」を引用して教育の重要性を

伝えていた。

<所見>

500 名以上収容可能な会場で立ち見がでる程の盛況であり、Koller 氏の注目度の高さを

感じた。講演内容の構成が、what, who, why と明確で、また、数字や実例を数多く紹介す

る等、聴講者として内容を理解しやすい講演であった。

図 4.4 Daphne Koller 氏講演の様子

Page 24: 海外調査報告書 AAAS 2015 Annual Meeting 現地調査及び関係者 … · の多層的なネットワーク形成・交流の場の特徴、場の設計・運用の実態を明らかにすると

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■Optical Deconstruction of Fully-Assembled Biological Systems

Karl Deisseroth, D.H. Chen Professor of Bioengineering and of Psychiatry and

Behavioral Sciences, Stanford University

<概要>

神経科学の研究に大きなインパクトを与えた2つの手法、光遺伝学(オプトジェネティ

クス)、CLARITY と、この2つを組み合わせた行動研究成果についての紹介があった。自

信の成果にフォーカスするのではなく、すでに、多くの研究者がこの手法を用いた研究を

始めていることにも触れるなど、基盤技術・基礎科学の重要性をアピールしていた。また、

最後には自身の研究の出発点(光遺伝学で用いるチャネルは藻類、バクテリア由来)を例

に挙げ、大きな研究の進歩は基礎的で地道な研究があってこそのものであるというメッセ

ージを伝えていた。("If you have a chance to influence a policymaker, this is a good

anecdote for underscoring the value of basic science research, with these ancient and

small organisms having an unanticipated but important impact on our world.")

<所見>

成果に力点を置くというよりも、基礎研究・基盤研究の重要性という強いメッセージを

打ち出しているように感じられ、AAAS の Plenary Lecture の対象を意識しているのだろ

うと考えられた。また、質疑応答の時間は公式には設けられておらず、質問がある場合は

終了後に個別に聞きにいくという方式は新鮮であった。

図 4.5 Karl Disseroth 氏講演の様子

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4.3 Poster Sessions

1.概要:

学生(Student)と一般社会人(General)の双方に AAAS 年次総会に参加する幅広い科

学者コミュニティに対する研究成果発表の機会を提供するもの。Exhibit Hall の一角で開催

されるポスターを張り出しての研究発表会である。発表総数は 282。Science 誌でとりあげ

られる Attendees Choice や、各種授賞プログラムがある。学生のポスターコンペティショ

ン参加者の発表に対しては審査委員が審査を行い、後日、受賞発表が決定される。

2/14(金)、2/15(土)、2/16(日)それぞれ 3~4 時間のポスターセッションが企画され

ている。発表者は学生、研究者、実務者等。金曜は American Junior Academy of Sciences、

土曜と日曜は学生が発表するポスターコンペと研究者・実務者発表のポスターセッション。

土曜は Brain and Behavior; Cellular and Molecular Biology; Developmental Biology,

Physiology, and Immunology; Education; Medicine and Public Health.の分野、日曜は

Environment and Ecology; Physical Sciences; Science in Society; Social Sciences;

Technology, Engineering, and Math.の分野が対象。

http://www.aaas.org/2015abstracts-toc から予稿検索が可能である。

2.参加したセッション:

American Junior Academy of Sciences (AJAS) Poster Session

Friday, 13 February 2015: 1:30 PM-4:30 PM @Exhibit Hall (Convention Center)

AAAS Student Poster Competition and General Poster Session

Saturday, 14 February 2015 1:00 PM-5:00 PM @Exhibit Hall (Convention Center)

対象カテゴリ…Brain and Behavior (24); Cellular and Molecular Biology (39);

Developmental Biology , Physiology, and Immunology (13); Education (26);

Medicine and Public Health (27)

Sunday, 15 February 2015 1:00 PM-5:00 PM @Exhibit Hall (Convention Center)

対象カテゴリ…Environment and Ecology (31); Physical Sciences (26); Science

in Society (54); Social Sciences (21); Technology, Engineering, and Math (21)

3.ポスターセッションの様子

従来は、大学生・大学院生が発表する「Student」が土曜、ポスドク・社会人等が発表す

る「General」が日曜、という分け方であったが、今回はカテゴリ別として Student/General

同日開催となった。これは似た関心を持つ発表者・来場者双方にとってメリットがある方

式と思われる。

演者の調整など早くからの準備を要するシンポジウム企画(予稿締切 4 月頃、可否通知 7

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月頃)に比べると、ポスター発表は比較的気軽に応募でき、予稿提出締切も約 4 か月前(今

回は 10 月 23 日)とスケジュール的にもだいぶ余裕がある。General では個人による発表

も多い。予稿の審査期間は 1~2 週間(今回は 11 月 4 日に可否通知)。

(AAAS Kim Klyberg 女史へのインタビューより)

・ 従来あったポスターアブストラクト小冊子は廃止し、オンラインのみとした。

・ Student 対象のポスター賞審査は、審査シートを AAAS ヘッドオフィスへ送付し集計

する。点数では決めず、ディスカッションを経て決定する。

・ 審査基準は scientific merit と、その delivery。

図 4.6 ポスターセッションの様子

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4.4 Topical Lectures

1. 概要

著名な科学者による単独講演。科学技術分野全体から関心をもたれそうな話題が取り上

げられている。実施セッション数 7(1 件キャンセルになった。)

2/14(金)、2/15(土)、2/16(日)のランチタイム(12:00-13:00)に企画される講演会。

毎日 2~3 件の講演会がパラレルで走る。

Board of Directors, Sections, Office of Public Programs, AAAS 幹部 , Scientific

Program Committee、Science 誌の Editor などが提案し、Office of Public Programs で編

成する。

2. 参加したセッション

JOHN P. McGOVERN AWARD LECTURE IN THE BEHAVIORAL SCIENCES: Susan

Fiske: Humans are Intent Detectors: Implications for Society

Friday, 13 February 2015 12:00 PM-1:00 PM @Room 210AB (Convention Center)

Ann McKee: Emerging Concepts in Chronic Traumatic Encephalopathy

Saturday, 14 February 2015 12:00 PM-1:00 PM @Room 210AB (Convention Center)

Geoffrey Nunberg: The Science of Grammar and Vice Versa

Saturday, 14 February 2015 12:00 PM-1:00 PM @Room 210CD (Convention

Center)

Naledi Pandor: Why Science In, With, and For Africa Matters

Sunday, 15 February 2015 12:00 PM-1:00 PM @Room 220B (Convention Center)

3.各セッションの様子:

■Humans are Intent Detectors: Implications for Society

Speaker: Susan T. Fiske, Eugene Higgins Professor of Psychology and Public Affairs,

Princeton University

Fiske 氏は、心理学者。偏見や差別などが社会での人間関係に及ぼす影響などについて広

い知見を有する。講演では、過去の関連研究などの幅広い引用により、この分野の発展に

ついて言及。一例として、米国の各業種のイメージについて、能力と温情によりプロット

を行い、4 つのグループに分かれることがわかったこと、そうした分析を元に、研究者は能

力は高いが温かみに欠けると認識されており、一方で人々には信頼関係が必要であるため

に、科学コミュニケーターは温かい意思を共有する役割が期待されることなどを述べた。

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図 4.7 Susan T. Fiske 氏

■Emerging Concepts in Chronic Traumatic Encephalopathy

Speaker: Ann McKee, Professor of Neurology and Pathology, Boston University School

of Medicine

Ann McKee 氏は、神経学者。アスリートが脳障害により精神疾患を患い自殺等死に至る

原因を調べた研究結果が紹介された。

特にアメリカンフットボールでの事例を多く研究し、ボクシングやサッカー、ラクビー

での症例や、軍での訓練などの症例が多いとのことである。激しい衝撃の繰り返しにより、

脳に穴が開き、症状としてうつ病やアルコール依存症になり、自殺に至る事例が多い。こ

うした症例には脳内でのタウたんぱく質が脳の特定部位に蓄積することにより起こり、激

しい衝撃への暴露年数などにより StageⅠ~Ⅳまで分類できることがわかっている。25 歳

で無くなった選手は 16 年のフットボール歴があり、現役を引退した後 3 年を経て、記憶障

害が発生、性格が変わり、うつ症状などが出た。現在も NFL 内で症状が出ている選手がい

る。当面は外傷の予防に関する教育を強化していくが、それと同時にこの症状(CTE)の

評価基準等を議論し、イメージングなどで CTE を捉える研究を進めていくとのこと。

米国では、フットボールは 4 大スポーツの中でも随一の人気を誇り、選手層も厚く、本

研究の影響範囲が極めて広いため本レクチャーに選ばれたものと考えられる。

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■The Science of Grammar and Vice Versa

Speaker: Geoffrey Nunberg, Professor, School of Information, University of California,

Berkeley

Nunberg 氏は、元ゼロックスパロアルト研究所の Principal Scientist で、言語学者。20

年前、パロアルト研究所で働いていたとき、言葉の科学のためのケース作りに取り組んで

いた Nurberg 氏は、data(datum の複数形)が米国ではほとんどの場合単数形で使われ、そ

れが学術分野や他の言語で異なる(イタリア語では複数形で使われる)といった奇妙な現

象に出会った。この講演では、いかに言語というものの枠組みが曖昧かを、様々な事例と

ともに紹介した。

翻訳や自動校正など、現在のワードプロセッシングに言語学の知見は不可欠だが、その

研究がどのようなものかを知る人は少ない。言語が社会を規定するのか、社会が言語を規

定するのかといった本質的な問いを交えつつ、われわれが日常意識しないで使っている言

葉と科学の間をユーモアたっぷりにつないだ。

図 4.8 Geoffrey Nunberg 氏

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30

■Why Science In, With, and For Africa Matters

Speaker: Naledi Pandor, Minister of Science and Technology, South Africa

Pandor 氏は、南アフリカ共和国の科学技術大臣。冒頭、ネルソンマンデラ氏が釈放され

て 25 年になることにふれ、彼が唱えた自由は南アフリカのみならずアフリカ全体を指して

おり、我が国の科学技術イノベーションの資源をアフリカ各国と共有したいと述べられた。

南アフリカの科学技術について、生命科学、感染症、気候変動、エネルギー、宇宙、海洋

分野等の研究開発動向をそれぞれ説明があった。特に、南アフリカ主導の電波望遠鏡建設

に関する国際プロジェクト Square Kilometer Array (SKA)の意義を強調。最後に、アフリ

カの持続的な発展のためには、アフリカ内で科学技術イノベーションを創出できる人材育

成が重要であるとしめくくった。

科学技術大臣の講演ということもあり、多数の聴講者がいた。南アフリカがアフリカの

科学技術をリードしていくという強い意思が感じられた。南アフリカが国際社会との協力

で特に求めているのは、ICT 技術に関する人材育成と、研究施設への投資のようだ。講演

中、アメリカや EU とのこれまでの協力に感謝する場面がみられ、アフリカにおける日本

のプレゼンスの低さを感じた。

図 4.9 Naledi Pandor 南アフリカ科学技術大臣

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31

4.5 Seminars

1.概要:

AAAS が企画・主催するセミナー形式のセッション。AAAS2015 年次総会のテーマであ

る「Innovations, Information, and Imaging」との関連性を持たせた内容となっており、

今回のカテゴリは以下の4つである。Office of Public Programs がプログラムを編成する。

<Seminars のカテゴリ>

・科学者のための科学コミュニケーション(Communicating Science, 木曜・2 件)

・感染症(Infectious Disease: Monitoring and Response, 土曜・3 件)

・地球のイメージング(Innovations in Imaging Earth, 日曜・3 件)

・未来のコンピューティング(The Future of Computing, 金曜・3 件)

それぞれのカテゴリで 90 分のセミナーを 2~3 コマ設定。各セミナーのスピーカーは 3

人~6 人。

2.参加セッション:

<Communicating Science>

Scientists Communicating Challenging Issues

Thursday, 12 February 2015 10:30 AM-12:00 PM @Room 210ABEF

(Convention Center)

Public Engagement for Scientists: Realities, Risks, and Rewards

Thursday, 12 February 2015 1:00 PM-2:30 PM @Room 210ABEF

(Convention Center)

<The Future of Computing>

The Future of the Internet: Meaning and Names or Numbers?

Friday, 13 February 2015 10:00 AM-11:30 AM @Room 210CD

(Convention Center)

Engineering Information: Adapting Risk and Resilience Frameworks to Cybersecurity

Friday, 13 February 2015 1:30 PM-4:30 PM @Room 230A

(Convention Center)

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3.参加セッションの様子:

■Scientists Communicating Challenging Issues

Moderator:

Susanne C. Moser, Susanne Moser Research and Consulting & Stanford University,

Center for Ocean Solutions

Speakers:

Noah S. Diffenbaugh, Stanford University :気候変動の研究者

Kathleen Hall Jamieson, University of Pennsylvania :コミュニケーションの実践者

Lisa Krieger, San Jose Mercury News :ジャーナリスト

<概要>

参加者は 200 名程度。話題提供 15 分、質疑 40 分。

気候変動研究の専門家の Diffenbaugh 氏が研究者の立場から、科学コミュニケーション

をどのようにとらえているかについてフランクに説明。事実は限られた人しかしらないこ

とが多いので、事実に基づいて話すことに固執するよりも、経験に基づく考え方を提供す

るというスタンス。

なにが科学的な事象を社会の論争へと向かわせるのか、研究がどうやって社会の関心事

になるのかについてが話題となった。社会の論争を生むような挑戦的話題について科学者

はどうやって市民とコミュニケーションして行くかについて、気候変動をケーススタディ

として議論された。

コミュニケーションの実践者より、南極の氷の状態を説明する上でのコミュニケーショ

ンについて失敗事例が ”inconvenient evidence”の事例として披露された。その上で、バ

イアスを低減しわかりやすいコミュニケーションの方法としての「LIVA」が紹介された。

ジャーナリストの Krieger 氏は、「今何が起きており、それをどうして一般の人が気にし

なければならないのか」という文脈の提供とそれを支える証拠の提供が自分たちの仕事だ

と説明。科学者とジャーナリストが良い意味で協力していくことが重要だとした。

ジャーナリストの視点からは、気候変動のほかに、台風やワクチンの接種に関する事例

などを挙げつつ、社会的な関心は、子供や孫の将来への不安等に根付くものであることが

挙げられた。

<質問>

・ 不確実性や複雑性を有し、議論が分かれる課題についてどのように取り組めば良いか

・ 基礎研究の価値をどのようにコミュニケートすればよいか

・ 全ての研究者(ヒエラルキーの下のほうにいる人も)コミュニケーションに巻き込む

べきか

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・ 説明を求める人は Google で検索するのではないか

・ AAAS は Wikipedia の記載内容を常に確認すれば良いのではないか

・ 科学コミュニケーションを進めて、同僚から不満の声はでないのか

・ 全ての科学者がやらなければならないのか

・ 極端な意見を持った人・宗教的な考えの人にどう対応するか

<所感>

「私達は Story-teller ですよね。データだけでなく、切実な声を集めないと、ストーリー

はできません。」と Kriger 氏の言葉から、研究者やジャーナリストがストーリー構成をす

るという営みが奥深いことに気づかされる。

一般の人たちがわからないことを調べるプロセスに言及し、AAAS は wikipedia をしっ

かりアップデートしていけばいいのではないかという会場からのコメントには説得力があ

った。

図 4.10 400 名程度の会場の半分が埋まっている。(質疑の様子)

図 4.11 Twitter 画面 (オンラインで補足説明や進め方についての意見が飛び交う。)

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■Public Engagement for Scientists: Realities, Risks, and Rewards

Moderator:

Bruce V. Lewenstein, Cornell University

Speakers:

Elizabeth Babcock, California Academy of Sciences (科学館)

Nalini M. Nadkarni, University of Utah (研究者)

Heidi Ballard, , University of California (研究者)

Anthony Dudo, The University of Texas at Austin (教育の視点)

<概要>

参加者は 200-300 名。AAAS と Citizen Science Association の共催、話題提供 40 分、50

分質疑。

public engagement の中での科学者の役割、メリット、アイデンティティがテーマ。冒頭、

モデレーターの Lewenstein 氏より「public engagement」4定義の紹介

(1) Educational engagement(科学者が教え、興奮させ、学ばせる)

(2) Participatory democracy (社会の中に埋め込まれた科学をどう使うかを考え、意

思決定に活用する)

(3) Public engaged in doing science(科学研究の営みそのものに一般市民を取り込

む:市民教育の一環ととらえる人もいれば、誰もが科学に関わるという点で科学

の民主化ととらえる人もいる)

(4) Public engaged to their activities(科学博物館や研究機関などが自らの活動のた

めに組織的に行う市民の取り込み)

市民参画の活動(市民対話、市民科学やソーシャルメディア等)に科学者が関わること

でアカデミアと市民の関係性が体験できる。それに関する事実、リスクそして科学者が得

るメリットについて、実践的及び研究結果が議論された。

(紹介された事例)

・ビデオ教育のカーンアカデミーhttps://www.khanacademy.org/との連携事例

・アジアでの教育について、宗教的かつスピリチュアルな内容の多様性

・市民参画のプラットフォーム「COMPASS」http://www.compassonline.org/

・研究活動への市民参画方法(3種類: 協力 (サンプル収集)、 協働、 共創)

・科学コミュニケーションに関する研究者の調査結果

トレーニングの機会が増加中

研究者の市民科学に対する認識(非常に前向き、趣味、義務…)

より多様な研究者のデータが必要(長期間、国際比較など)

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<質問・コメント>

・ 科学コミュニケーションの目的、科学者のインセンティブは?(資金獲得、社会正義、

社会的な露出の向上など回答は様々)

・ 科学者のコミュニケーション活動が組織のブランドに与える影響は大きい。

・ コミュニケーションのインフラが多様化していることにどう対処すればよいか、議論

の余地のあるテーマを SNS で議論することの TIPS など。

・ 科学者個人より、組織的な対応が重要ではないか。

・ 論争を生むような話題の場合にはどうすれば良いのか。

・ もっと市民を科学者として扱うべき。

・ 科学的知見は万国共通だが、科学者個々人や市民は多様な文化的属性を持っている。

科学コミュニケーションをする上で配慮すべき事項はなにか。

・ 調査結果について:(科学コミュニケーションが義務化されている)NSF のファンドの

取得の有無で回答は異なるのではないか。

<所感>

50 分間質問が全く途切れないのは圧巻。日本で議論されていることとそれほど大きな違

いは無い感がある。ディスカッションの時間に興味深かったのは、科学者が社会とコミュ

ニケーションをとりはじめたのは最近のことだということ。1997 に NSF が Broader

Impacts を掲げたことが確実に影響しているようだ。

図 4.12 セミナーの様子、200 名程度が参加(マイクに向う参加者)

図 4.13 登壇者の発表の様子(科学コミュニケーションの研究者による発表)

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■The Future of the Internet: Meaning and Names or Numbers?

Organizer:

Glenn T. Edens, PARC Xerox

Co-Organizer:

J.J. Garcia-Luna-Aceves, University of California, Santa Cruz

Speakers:

Vinton Cerf, Google Inc.

David Oran, Cisco Systems

Glenn T. Edens, PARC Xerox

<概要>

2015/2/13(金) 10:00 AM-11:30 AM @Room 210CD (Convention Center)

参加者:30 人程度

これまでは、サーバやストレージの中にある“ファイル”(あるいはリソース)に対して

アクセスを行ってきた。たとえば、検索の結果示されるのは、関連するであろうコンテン

ツの入ったファイル名である。しかし、これを中身に応じたアクセスに変えていこうと考

えが、Contents Centric Network とか Information Centric Network として提案されてい

る。利用者の立場からは、よりダイレクトなアクセスが実現されることになり、利便性は

上がると思われる。実験的にはすでに可能であり、数年で市場への展開が図られるかもし

れない。コンテンツに対するオーナーシップやセキュリティ、著作権保護などの考えが、

最初からネットワークに実装されているので、現在のインターネットよりも権利保護等は

効率的に行える。

<所感>

本格的に普及するのには 10~20 年かかると予想される。従来のネットワークからは仮想

化技術を使って徐々にマイグレーションが可能である。このようなアクセスが一般的にな

った場合、Google の検索エンジンのビジネスはなくなるのではないだろうか。そのための

研究を Google が行っている。これはよい姿勢だと思われる。

現在のインターネットシステムの問題点として、記録媒体の密度が向上し Exabite の時

代になりつつあるが、OS からソフトウェア、ハードウェアなどいろいろな要素が多くなり

すぎ、メンテナンスが将来的に難しくなるであろうとのこと。ipv6 による ip アドレスが膨

大になり、また著作権保護などのセキュリティ面で欠点がある。こうした問題に対して、

サンノゼに集積する Google、Cisco、Xerox などの IT 企業が自主的に将来の新たな形を模

索していることに非常に価値があるセッションであった。今後のシナリオとしては、話者

によって異なるが 22 世紀を見すえた設計と、一部の技術については近い将来に実現するも

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のとがあるとのことで、どちらにせよ、2~3 年で検討が本格化し、必要な対話を行うことで

コンセンサスを得ていくとのことであった。セッションでは、会場からも、具体的なデー

タの流れなどの説明がありつつ、例えばどのように著作権者であることを証明するかなど

実装するに当たっての課題が質問されていた。

図 4.14 The Future of the Internet についてのプレスブリーフィングの様子

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■ Engineering information: Adapting Risk and Ewsillience Frameworks to

Cybersecurity

Organizer:

Sankar Basu, National Science Foundation

Co-Organizer:

Igor Linkov, U.S. Army Engineer Research and Development Center

Discussant:

Celia Merzbacher, Semiconductor Research Corporation

Speakers:

Shankar Sastry, University of California, Berkeley

John E. Savage, Brown University

Ahmad-Reza Sadeghi, Technical University of Darmstadt

Stephanie Forrest, University of New Mexico

Ken Heffner, Honeywell International Inc.

<概要>

2015/2/13(金) 1:30 PM-4:30 PM @Room 230A

参加者:20 人程度

情報セキュリティというよりは、レジリエンスに話題が集中した。何らかの不都合、す

なわちリスクを想定し、そのための準備、実際に発生した場合の初動、回復、適用という

フェーズでの対処が、中世の黒死病などを例にとって説明された。これからは、特に IoT

によって小さいものから大きいものまでが相互に接続され、状況はさらに複雑になる。そ

の場合の理論的な取扱い、産業としての対処などが報告された。

<所感>

セキュリティというとアドホックな対応が中心となり、基礎研究として成立しにくい領

域であるととらえがちであるが、サンタフェ研究所から、複雑性の科学、ネットワークサ

イエンスなどの立場からとらえることによって、基礎的な研究がセキュリティあるいはレ

ジリエンスに対して十分に貢献できるというヒントが示された。

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4.6 Special Events

1.概要:

さまざまな組織(AJAS、AAAS Fellows)のレセプションや各種表彰を中心とした交流

イベント。AAAS 主催のものも多いが、ほかのスポンサー・主催者として、英国リサーチ

カウンシルやカナダの大学などの研究組織に加え、任意団体などがレセプションを開催し

ており、それぞれ通年の活動のネットワークを広げ、深める機会として企画されている。

JST は Forum of Global Fora を共催。参加資格は、招待者限り(By Invitation Only)と、

参加登録者全員(Open to All Registrants)の 2 種類に大別される。Special Events とし

て AAAS に公認されるとプログラムに掲載されるため、集客に大きく寄与する。

なお、土曜と日曜に終日(11:00-17:00)開催される Family Science Day は、この Special

Events の中に含まれている。

<所感>

AAAS 年次総会が様々なレベルのネットワーキングの機会として活用されていることは

注目に値する。参加者に対してレセプションを通じて様々な情報共有が行われている。ま

た、プログラム掲載イベント以外にも、南アフリカの科学技術担当大臣が主催するディナ

ーなど、多様なステークホルダーが参加する機会を活用した交流イベントが企画されてい

た。(International Lunch Roundtable や President’s Dinner は後述)

2.参加したイベント:

Online Collaboration Across Communities and Geographies – Strategies for Success

Open to all registrants

Thursday, 12 February 2015 3:00 PM-4:00 PM @Room 210AB (Convention Center)

Event organizer: AAAS

AAAS President's Reception

Thursday, 12 February 2015 7:00 PM-8:30 PM @The Hub (Convention Center)

Event organizer: AAAS

University of Waterloo Innovation Showcase

Thursday, 12 February 2015 8:30 PM-10:30 PM @ZERO1 Garage

Event organizer: University of Waterloo

AAAS Awards Ceremony and Reception (Open to public)

Friday, 13 February 2015 6:15 PM-7:30 PM @Room 220C (Convention Center)

Event organizer: AAAS

Forum of Global FORA(By invitation only)

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Friday, 13 February 2015 7:00 PM-8:30 PM @Club Regent (Fairmont San Jose)

Event organizer: scicom

AAAS International Reception Presented by the Research Councils UK(Open to all

registrants)

Saturday, 14 February 2015 6:30 PM-8:00 PM @The Tech Museum of Innovation

Event organizer: AAAS

Annals of Improbable Research(Open to all registrants)

Saturday, 14 February 2015 8:00 PM-10:00 PM @Almaden Ballroom (Hilton San

Jose)

Event organizer: Annals of Improbable Research

Librarians Session: Association of College and Research Libraries (Open to all

registrants)

Sunday, 15 February 2015 9:00 AM-11:00 AM @Winchester (Hilton San Jose)

Event organizer: Association of College and Research Libraries

3.各イベントの様子:

■Online Collaboration Across Communities and Geographies – Strategies for Success

AAAS が主催するイベントで、AAAS が開発中のサイエンスコミュニケーションプラッ

トフォーム(ソーシャルウェア)「Trillis」の紹介が主目的。オンラインツールを使ってコ

ラボレーションを行っているパネリストを招いて議論がなされた。

登壇者によれば、AAAS は長期戦略として、メンバーに対するデジタルプラットフォー

ムの整備を行っていくことを宣言し、Trillis を開発している。Trillis の活用が想定される

ストーリーとしては、「関心が持てる原稿を見つけて、人脈をつなぐ」「議論や質疑を通じ

てアイデアを共有する」「公的・私的グループをスタートさせ、文書の共同制作や、コメン

トを交換して協働する」といったものであった。具体的な取り組みとしては、下記が挙げ

られていた:

・オンラインワークショップの開催

・分野や組織ごとに別々に行われているパブリックエンゲージメントをつなぐ

・サイエンスコミュニケーターをつなぐ

・研究者をつなぐ

質疑において、会場からは「他にも google や facebook などのツールがあるのに、なぜこ

れを新たに開発するのか?」という質問があり、AAAS 側は「さまざまな機能をワンスト

ップで提供することに意義がある。」と回答していた。他にも、「わからないことは wikipedia

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を見て知る機会が多い。AAAS は wikipedia をアップデートすればよい。」といったコメン

トもあった。

(参考)Trillis について:https://www.trelliscience.com/

図 4.15 Online Collaboration Across Communities and Geographies の様子

■AAAS President's Reception

President’s Address に続いて開催された、参加者の交流を図ることを目的としたレセプ

ション。Convention Center(Hub)の吹き抜けスペースに軽食と飲み物(ソフトドリンク

は無料、アルコールは有料販売)が用意され、アドレスに参加した千名弱のうち、大部分

が参加するものとなった。ただし、アルコール等が提供されていないことより、出会うき

っかけの場、この日に全米・世界各地から集まった人員が顔を合わせる場所としての設定

が考えられ、より深い交流が行われるプレス向け等のレセプションは、別途開催された。

ジャズバンドによる生演奏等は行われていたが、挨拶等が行われるステージ等は無かった。

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図 4.16 AAAS President's Reception の様子

■University of Waterloo Innovation Showcase

カナダにある University of Waterloo が主催する Innovation Showcase(一般向け)は、

レセプションを兼ねつつ、同大学の技術などを展示し、AAAS 参加者に紹介・PR するもの

であった。同大学は、初期地球の環境を実験したユーリ・ミラーの実験に始まり、ブラッ

クベリー(OS)などの開発、最近は IT 分野・ロボット技術での技術開発などで先駆的な成

果を出しており、参加者には若手研究者等も多く、そうした人材の呼び込みを図っていた。

会場は、会議センター徒歩数分の倉庫を改装したイベントスペースを利用しており、ラ

イトアップやブースなど、そのまま科学館の展示に使えそうな程度に作りこまれた展示と

なっていた。

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図 4.17 Innovation Showcase の様子。

■AAAS Awards Ceremony and Reception

AAAS が、科学(自体の)の発展や応用に貢献した研究者、技術者、ジャーナリスト、

著者やイラストレータなどを表彰する「AAAS Awards」の表彰式。President Fink および

CEO Leshner から記念の盾が渡され、その後簡単なレセプションが行われる。

内容としては、キャリア開発、科学技術外交、科学の自由確保、パブリックエンゲージメ

ント、科学書籍、ジャーナリズムなど、「科学」という文化の発展への貢献が表彰の対象と

なる。

基本的には、表彰者が壇上で盾を授与されてのちにコメントをスピーチした。中でも、

科学の自由確保にて表彰された Omid Kokabee 氏はイランにおいて軍事技術の研究に従事

することを拒否し、現在投獄されている状況ということであり、当日会場に本人が登壇で

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きなかったことも印象的であった。同氏は、刑務所内で物理の教育を受刑者に施すなど多

様な活動が評価されている。このように、米国内の研究者に限らず、表彰している点も印

象的であった。

図 4.18 AAAS Philip Hauge Abelson PRIZE を受賞した Bruce Alberts 氏(ハーバード大)

■Forum of Global Fora

5 章(5.3)に詳述。

■AAAS International Reception Presented by the Research Councils UK

UK、リサーチカウンシル主催のレセプション。すべての参加者が参加可能で、年次総会

中、最大規模のものと考えられ、多くの参加者でにぎわった。参加者は、閉館後の The Tech

Museum of Innovation の展示を(飲食しながら)自由に見ることができ、参加者間の交流

を図る人、展示を体験する人などどのような参加者でも楽しめるレセプションとなった。

AAAS の文書によれば、このようなレセプションのスポンサー料としては 20000USD と

されており、カウンシルが AAAS とのパートナーシップに対して考えている重みが感じら

れた。

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図 4.19 AAAS International Reception の様子

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■Annals of Improbable Research

Speaker:

Marc Abrahams, organizer of the prizes and editor of the Annals of Improbable

Research

Ivan Schwab, UC Davis Health System

Yoram Bauman, Stand Up Economist

「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」を毎年表彰している「イグノーベル賞」

に関するセッション。創始者の Abrahams 氏による最新の受賞研究の発表とともに、2 名

の過去の受賞者による講演があった。会場は、時間帯が遅かったこともあって、AAAS 参

加者のうち若手~中年の方が多かったが、立ち見の出る盛況ぶりで、常時大きな笑いに包

まれていた。

講演は、参加者から選ばれたタイムキーパーが時間を計り、2分経過ごとに手で合図す

ることで、参加者がHiと叫ぶことになっており、厳格なタイムキーピングがなされている。

10 分経過で講演は強制的に終了されるため、講演者は非常に早口のなかに多数のジョーク

を交えて講演を行う。Schwab 氏の講演では「なぜキツツキは頭痛にならないのか」につい

て、Bauman 氏は「幸せの経済学」について講演があった。

ESOF でも地元の高校生対象ではあった者の同様のフォーマットで実施され、日本での

受賞者が多いことから、サイエンスアゴラにおいても同様のセッションを開催すべきと考

えられる。

今年度の発表(第 25 回)は 9 月 17 日に表彰式が行われる。また、Abrahams 氏は 6 月

に始めて来日される予定。

図 4.20 イグノーベル賞創始者の Abrahams 氏による説明

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(Schwab 氏の講演)

(超満員の会場)

図 4.21 Annals of Improbable Research の様子

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■Librarians Session: Association of College and Research Libraries

Logistical Contact:

Thomas Landreth, AAAS/Science

データ支援、コレクションのデジタル化、研究者とのコラボレーションや教育を変える

リソースの提供などをテーマとした、大学や研究機関の図書館員のセッション。50 名ほど

が参加。

ホストは AAAS オープンアクセス誌「Science Advances」。York University や Mote

Marine Laboratory and Aquarium’s Library and Archives、Saint Mary's College などい

くつかの図書館からテーマに関する事例紹介や課題の共有があった。

テーマが幅広だったせいか話題は科学リテラシー週間の取り組みや教員評価など多様で

あり、データの利用や取り扱い等に関して研究者の支援に取り組む図書館はまだ多くない

印象を受けた。Brandeis University では研究者にデータのストレージやバックアップセキ

ュリティのサポートを行っており、New England Collaborative Data Management

Curriculum という外部の無料オンラインコースでトレーニングを積み、 Data

Management Librarian としてもっと経験を積みたいとした。

図 4.22 Librarians Session: Association of College and Research Libraries の様子

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4.7 Special Sessions

1.概要:

開催都市によって大きく変わる企画。開催都市からの提案などをもとに、各種団体(AAAS

他部門や任意団体等)が主催するセッション群で、AAAS は場所を提供するのみ。各セッ

ションは完全に自律的に運営されている。

ほぼまる一日をかけて取り組まれる長時間のセッションをはじめ、年会会期前後に実施

されるサテライトミーティングの位置づけの企画が多い。特に新設団体による企画の場合、

Special Events と同様、AAAS の公認イベントになることで AAAS の客層に多く参加して

もらうメリットは大きい。2015 年会ではすべて、事前登録が必要。

AAAS2015 年次総会での Special Sessions 主催団体:

・Citizen Science Association

・AAAS Education & Human Resources Programs and City College of San Francisco

・AAAS Program on Scientific Responsibility, Human Rights and Law

・the Engaging Scientists and Engineers in Policy Coalition in conjunction with the

AAAS Office of Government Relations

2.参加したセッション:

Citizen Science 2015, Day Two(Pre-registration required)

Thursday, 12 February 2015: 8:30 AM-5:00 PM @Room 220B (Convention Center)

3.セッションの様子:

■Citizen Science 2015, Day Two

このセッションは、Citizen Science Association(※科学研究への一般参加に関する実践

コミュニティ)が主催・運営をおこなう、2 日間のシンポジウム・ワークショップ。ESOF2014

(一般市民向けのプログラム Science in the City 内)でも Citizen Science の展示があった

が、出展は10件に満たなかった。今回の AAAS での取り組みは世界的にも最大規模のも

のと考えられる。AAAS 年次総会のタイムテーブル上では、2日間通しのプログラムとし

て表記されており、実際のタイムテーブルは同団体の Web サイトに掲載されている。また、

発表の公募も同サイトでなされていた。

ここでの Citizen Science の立ち位置は、「科学技術を市民とつなぎ、参加させる」と説

明されており、日本より参加した宮崎氏(県立生命の星・地球博物館)によれば、大学や

科学館等で実施される研究活動に対して、市民が何らかのデータ採集を補助することが主

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なスタンスとしてあり、一部、市民側が直接研究するものも含まれるとのことであった。

2 日間のセッションでは計 400 弱の参加があった模様(※スピーカーリストより集計 397

名)。基調講演から始まり、主にシチズンサイエンスに関する発表(通常 12 分)やポスタ

ー発表、オープンワークショップ、レセプションなどが実施された。聴衆は市民が多いと

見られ、ラフな服装の方が多数を占めた(Symposia や Newsroom などはジャケットの方

が多いのと対照的)。運営などを含めて、手作り感覚で進められているようである。

参加したセッションは、Speed Talks と呼ばれるスタイルのセッションで、登壇者は 5 分

以内で研究概要と課題などを説明する。聴講した際の話者によれば、植物生態系のデータ

を市民が集め、衛星データと比較しながら研究開発を進めているとのことで、セッション

に参加した動機はほかのデータセットとの連携を希望しており、連携先を探したいとのこ

とであった。また、ほかの話者によれば、研究を進めたいということとともに教育機関と

の連携を進めていく話題も聞かれた。

【2 日間のプログラム(抜粋)】

Wednesday, February 11, 2015

7:30-8:30am Registration/Coffee

8:30-8:45am Welcome and Introduction:

8:45-9:45am Keynote Address:

9:55-1:10pm Concurrent Sessions

1:15-2:30pm Networking Lunch

2:40-5:00pm Concurrent Sessions

5:30-7:30pm Poster Session and Reception

5:30-8:30pm HackFest

Thursday, February 12, 2015

8:10-11:00am Concurrent Sessions

11:00am-12:50pm Open-Format Session (下記の写真参照)

11:20am-2:30pm BioBlitz: Downtown San Jose

11:20am-12:50pm Concurrent Sessions

12:00-1:00pm Lunch Break

1:00-2:30pm Concurrent Sessions 8A-8F

1:00-2:30pm AAAS Public Engagement for Scientists: Realities, Risks, and Rewards

2:40-4:00pm Concurrent Sessions 9A-9F, 8B, 8D

4:10-5:10pm Keynote:

5:10-5:30pm CS2015 Closing Session

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図 4.23 Citizen Science 2015, Day Two の様子

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4.8 Symposia

1.概要

金曜~月曜に企画される 90 分から 180 分のシンポジウムで、年次総会のプログラムカテ

ゴリの中の主軸。件数も 159 件と圧倒的に多い。

公募とピアレビューによって編成され、人文社会科学から自然科学まで幅広い。テーマ

は、公募だけでなく、24 あるセクション(表 1.2)がそれぞれ 1-2 件提案する(承認される

とは限らない)。Scientific Program Committee もいくつか提案する。ピアレビューで選ば

れたものが、次の 13 のトラックに分類されている。予めトラックを設定して公募するわけ

ではない。テーマの選考では地元が優遇されることはない。

1. Anthropology, Culture, and Language(8 件)

2. Behavioral and Social Sciences(9 件)

3. Biology and Neuroscience(16 件)

4. Climate Change, Environment, and Ecology(12 件)

5. Communication and Public Programs(13 件)

6. Education and Human Resources(13 件)

7. Engineering, Industry, and Technology(10 件)

8. Global Perspectives and Issues(15 件)

9. Information and Data Technology(11 件)

10. Medical Sciences and Public Health(14 件)

11. Physics and Astronomy(16 件)

12. Public Policy(14 件)

13. Sustainability and Resource Management(8 件)

<所感>

各シンポジウムで議論されるテーマはその分野でホットなトピックのものが多いが、専

門的な議論だけでなく、法規制や様々な社会での実践事例の紹介など、議論の内容は幅広

く、専門外の人にとっても理解しやすい。専門学会と比べて登壇者や来場者の幅が広いの

も特徴。研究者だけでなく、政府関係者、メディアなどからも登壇者や参加者が来る。

シンポジウム企画の公募は、年次総会終了とほぼ同時に次年度提案の受け付けを開始し、

締切は例年 4 月下旬頃。ピアレビューを経て可否の通知が 7 月頃。企画内容のほか、年次

総会テーマへの適合性や演者の多様性、集客見込みも考慮され、採択率は 5 割前後とのこ

と。

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2.参加したシンポジウム

<Behavioral and Social Sciences>

Visualizing the Experience and Use of Space in the Built Environment

Friday, 13 February 2015 8:00 AM-9:30 AM @Room LL21E (Convention Center)

Watching the Brain Think: Naturalistic Approaches To Studying Human Brain

Function

Saturday, 14 February 2015 8:00 AM-9:30 AM @Room 210CD (Convention Center)

Social, Emotional, and Cognitive Bases of Communication: New Analytic Approaches

Saturday, 14 February 2015 1:30 PM-4:30 PM @Room LL21B (Convention Center)

Social Influences on Health Service Use Following Disasters

Sunday, 14 February 2015 3:00PM-4:30PM @Room 210EF (Convention Center)

<Communication and Public Programs>

Citizen Science from the Zooniverse: Cutting-Edge Research with 1 Million Scientists

Friday, 13 February 2015: 1:30 PM-4:30 PM @Room LL21C (Convention Center)

Strategies for Effective Broader Impacts Work

Friday, 13 February 2015 3:00 PM-4:30 PM @Room LL20C (Convention Center)

Engagement with Intent? Scientists’ Views of Communication and Why It Matters

Saturday, 14 February 2015 8:00 AM-9:30 AM @Room LL20D (Convention Center)

From Art to Mathematics: A Visual Mode of Communication

Saturday, 14 February 2015 10:00 AM-11:30 AM @Room 210G (Convention Center)

Citizen Science: Advancing Innovations for Science, Information, and Engagement

Sunday, 15 February 2015 10:00 AM-11:30 AM @Room LL21D (Convention Center)

<Education and Human Resources>

Gender in STEM Policy, Practice, and Research: Advances in North America and

Europe

Friday, 13 February 2015 3:00 PM-4:30 PM @Room LL21F (Convention Center)

<Engineering, Industry, and Technology>

I See, Therefore I can

Friday, 13 February 2015 10:00 AM-11:30 AM @Room 230C (Convention Center)

The Road to Autonomous Cars

Saturday, 14 February 2015 10:00 AM-11:30 AM @Room 230B (Convention Center)

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<Global Perspectives and Issues>

Ukraine’s Scientific Future, International Cooperation and Science Diplomacy

Saturday, 12 February, 2015 8:00 AM-9:30 AM @Room LL20B (Convention Center)

Access to Scientific Expertise in Fast Growing African Countries

Saturday, 14 February, 2015 10:00 AM-11:30 AM @Room LL21A (Convention

Center)

Nobel Government Partnerships, Integrating Developing Countries in Global Research

Saturday, 14 February 2015 1:00 PM-2:30 PM @Room LL21A (Convention Center)

Solutions for Achieving Gender Equity: International Perspectives

Saturday, 14 February 2015 3:00 PM-4:30 PM @Room 210EF (Convention Center)

<Information and Data Technology>

Differential Privacy: Analyzing Sensitive Data and Implications

Saturday, 14 February 2015: 10:00 AM-11:30 AM @Room LL21C (Convention

Center)

Visualization Insights from Big Data: Envisioning Science, Engineering, and

Innovation

Friday, 13 February 2015 8:00 AM-9:30 AM @Room LL20D (Convention Center)

Beyond Silicon: New Materials for 21st Century Electronics

Saturday, 14 February 2015 8:00 AM-9:30 AM @Room 230C (Convention Center)

From the Grid to the Cloud: Computing for Big (and Small) Science

Saturday, 14 February 2015 8:00 AM-9:30 AM @Room LL20C (Convention Center)

Differential Privacy: Analyzing Sensitive Data and Implications

Saturday, 14 February 2015 10:00 AM-11:30 AM @Room LL21C (Convention

Center)

Holistic Computing Risk Assessment: Privacy, Security, and Trust

Saturday, 14 February 2015: 1:30 PM-4:30 PM @Room LL20C (Convention Center)

Privacy in an Era of Big Data: Directions, Advances, and Reflections

Sunday, 15 February 2015 10:00 AM-11:30 AM @Room 210AB (Convention Center)

<Physics and Astronomy>

Innovations in Accelerator Science

Saturday, 14 February 2015 1:30 PM-4:30 PM @Room LL20A (Convention Center)

<Public Policy>

Big Data: Challenges and Social Impacts

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Friday, 13 February 2015 8:30 AM-11:30 AM @Room LL21D (Convention Center)

Science During Crisis: Amidst Oil Spills, Hurricanes, and Other Disasters

Saturday, 14 February 2015 10:00 AM-11:30 AM @Room 210EF (Convention Center)

3.参加したシンポジウムの概要

■Visualizing the Experience and Use of Space in the Built Environment

Organizer:

Katja Meinke, European Research Council

Co-Organizer:

Annekathrin Jaeger, European Research Council

Speakers:

Ann Heylighen, University of Leuven

Yehuda Kalay, Israel Institute of Technology

Steven Vertovec, Max Planck Institute for the Study of Religious and Ethnic Diversity

<概要>

様々なシミュレーション手法・ツールなどの IT 技術の発達により、人と環境との相互作

用の分析が、人工物の評価に導入されはじめている。3 人の研究者よりこうした先駆的な取

り組みが報告された。Yehuda Kalay 氏からは、実際に病院を建設する前に、病院内の人の

行動のシミュレーションを実施することで、オペレーションコストを抑制することが可能

となった事例が紹介された。このシミュレーションの基となったデータは、イスラエルや

アメリカの病院をフィールドとし、患者と先生の行動を携帯などで取得しモデル化したも

のだとのことである。Ann Heylighen 氏からは、FP7 のファンディングで最新の技術を使

った観察手法により、身体障害者の空間感覚を把握し建物を設計した例が紹介された。

Steven Vertovec 氏からは、ヨハネスブルク、ニューヨーク、シンガポールといった多種多

様な人々が移住する地における人々の社会的・空間的行動を、技術を用いて可視化した研

究が紹介された。

<所感>

それぞれの研究に共通していたのは、分野横断的であること、人の観察が物事の起点で

あること、そして人と人工物の相互作用を技術を用いて可視化していたことであった。こ

のセッションでは、人間の行動を観察するという人類学的アプローチが、技術の発展によ

り多くの人々に簡単に分かりやすく説明できるようになったことを垣間見ることができた。

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■Watching the Brain Think: Naturalistic Approaches To Studying Human Brain

Function

Organizer:

Jessica F. Cantlon, University of Rochester

Co-Organizer:

Susan Hagen, University of Rochester

Speakers:

Uri Hasson, Princeton University

Jessica F. Cantlon, University of Rochester

Jack Gallant, University of California

<概要>

このセッションでは 3 件の発表が行われ、人の脳機能に関する最先端の研究の内容が報

告された。Uri Hasson 氏からは、人と人とのインタラクション時の脳の反応についての研

究が紹介された。Jessica F. Cantlon 氏からは、子どもがどのように数学を学んでいくのか

という過程を fMRI で脳の神経マップをスキャンするこで可視化する研究が紹介された。

Jack Gallant 氏からは、fMRI のデータを使った脳機能の変化のアルゴリズムが紹介された。

人の脳は、乗り物を見る時と人を見る時では、活発になる部分が異なっているが、このア

ルゴリズムを使うことで、2 時間の映像を見ている間の人の脳の変化を3D で表示すること

が可能となったという。

<所感>

今までの脳研究では、脳の一部分の時間的推移を計測することか、脳の全体を、時間を

区切って計測することしかできなかったが、fMRI の発達により、脳全体の変化を3D で時

間的推移とともに可視化することができるようになった。脳研究もビッグデータを扱える

時代に突入したということであり、今後の発展を期待させた。

■Social, Emotional, and Cognitive Bases of Communication: New Analytic Approaches

Organizer:

Laurie Beth Feldman, University at Albany

Co-organizers:

Judith F. Kroll, Pennsylvania State University

Cecilia Aragon, University of Washington

Moderator:

Laurie Beth Feldman, University at Albany

Discussant:

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Judith F. Kroll, Pennsylvania State University

Speakers:

Cecilia Aragon, University of Washington

Munmun De Choudhury, Georgia Institute of Technology

Fermın Moscoso del Prado Martin, University of California

Victor Kuperman, McMaster University

Yousri Marzouki, Aix-Marseille University & CNRS

Patrick Wong, Chinese University of Hong Kong

<概要>

このセッションでは、6 名の研究者より報告がなされた。近年のソーシャルメディアの発

達は、新たな定量調査対象を生み出している。そして、その対象を分析する学問は、心理

学・言語学・コンピューターサイエンスなど様々な領域にまたがっているといえる。こう

した状況をうけ、各分野の研究者が、インターネット上に展開されるビッグデータを用い

た研究を紹介した。

例えば、Cecilia Aragon 氏はコンピューターサイエンスが専攻だが、チャットのテキス

トデータを利用して、言語学で提唱されている仮説ー例えば、「人は第二言語を使うとより

感情的な表現を使うようになる」-を機械学習により検証している。また、Yousri Marzouki

氏は、Facebook が「アラブの春」革命にどのように寄与したかを、時間推移を含めて分析

した研究を紹介した。Victor Kuperman 氏は、物理的距離と心理的表現方法との相関を

twitter のテキストデータを用いて分析した。

<所感>

このように、ネット上のビッグデータは、学問の分野を超えた様々な研究者の研究対象

となっており、その研究手法も、技術の発達により変化していることがうかがえた。

■Social Influences on Health Service Use Following Disasters

Organizer:

Eric C. Jones, University of Texas Health Science Center, El Paso Regional Campus

Moderator:

Albert J. Faas, San Jose State University, CA

Speaker:

Eric C. Jones, University of Texas Health Science Center, El Paso Regional Campus

Lausa Stough, Texas A&M University, College Station

Sarah R. Lowe, Columbia University, New York City

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<概要>

近年、アメリカではハリケーン等の自然災害が多発している。救助された被災者に精神

的なダメージを受けている人々が多く存在していることはメディアの報道等により良く知

られることとなった。物理的な復旧だけではなく、被災者が受けた精神的なダメージから

立ち直ってこそ、本当の復興と言えるだろう。しかし、実際の被災後の現場では、この領

域へのサポートが十分に行われていないことが多い。

これは、復旧過程での経済的問題やインフラの問題だけでなく、精神的なダメージの要

因が複数の要素によって引き起こされていることの問題が大きいと発表者たちは口を揃え

た。例えば、Stough 氏は、テキサス州やルイジアナ州で実際に被災された方 30 人に対面

インタビューを実施し、その調査結果を報告した。その中で、被災前と被災後を比較する

と、被災後の方が家族・友人などとの接触頻度や関係性(social relationship)が低下して

いたことが判明。この状況がメンタルヘルスの低下を引き起こしている原因の一つだと紹

介した。そのため、これまでのカウンセリングなどのメンタルサポートだけでは、そのよ

うな状況下の被災者を回復されることは出来ないとコメントした。

セッション全体としては、モデレータによる簡単なセッションの概要を説明した後、3 人

の発表者がそれぞれ 20 分程度の発表を行った。3 人目の発表が終わった後、25 分程度の質

疑応答が行われセッションは終了した。

図 4.24 Social Influences on Health Service Use Following Disasters の様子

■Citizen Science from Zooniverse: Cutting-Edge Research with 1 Million Scientists

Organizer:

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Ramin A. Skibba, University of California

Speakers:

Laura Whyte, Adler Planetarium

Brooke Simmons, University of Oxford

Alexandra Swanson, University of Minnesota

Kevin Wood, University of Washington

Paul Pharoah, University of Cambridge

Philip Marshall, Stanford University

<概要>

参加者は 20 人程度。Citizen Science が科学研究やその他の社会的便益をもたらす事例を

紹介。

Ecological research(Snapshot Serengeti)

市民によるリモートカメラの画像の分類により、動物コミュニティの時空間的なダイナ

ミクスを捉える可能性が見えてきた。

Old weather(Ship Logbooks)

過去の船乗りが記述した日誌を市民の力により電子的な気象情報へ変換し、19 世紀半ば

の北極圏の気象と氷の情報を抽出する取り組みを紹介した。

Cancer research(Cell Slider)

98,293 人の Citizen Scientists が研究アーカイブの細胞画像について乳がん細胞か否か

のスコアリングを行っている。機械では blood cell、body cell などの区別がつかず人手によ

る分類が有用である。初心者のスコアリングの品質改善が必要だが Guidance は 5 分以下に

しないと commit する前に止めてしまう。Inline training などの方法について会場より提案

があった。

重力レンズの探索(Space Warps)

天文画像からの重力レンズの探索の事例。

<所感>

聴講者としては Citizen Science の実装に関心を持つ研究者が多かったようである。天文

学などのいわゆる純粋科学だけでなく、がん研究などの社会的課題に密接に結びついた領

域に Citizen Science の応用が拡大しつつある印象を受けた。

■Strategies for Effective Broader Impacts Work

Organizer:

Justin Lawrence, AAAS Science and Technology Policy Fellow, NSF

Co-Organizer:

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Elise Lipkowitz, AAAS Science and Technology Policy Fellow, NSF

Discussant:

Kemi Jona, Northwestern University

Speakers:

Elise Lipkowitz, National Science Board

Justin Lawrence, AAAS Science and Technology Policy Fellow, NSF

Kevin J. Niemi, University of Wisconsin

<概要>

冒頭にスピーカーからの話題提供があり、その後 Broader Impact にどのような取り組み

が必要かについてのグループディスカッションと共有を行った。NSF の Research

Coordination Network(RCN)から資金を得て、National Alliance for Broader Impact

(NABI)を立ち上げて活動するメンバーによるセッション。

NABI は、2 年前にボストンで開催された AAAS 年次総会での話し合いを受けて同年に

サミットを開催し、NSF に提案書を書いて採択された。プロジェクト採択後、6 ヶ月が経

過したところで、長期戦略について話し合うセッションを AAAS 年次総会でもったという。

Broader Impact は、研究の波及効果についてNSF が研究提案書に記載を求めるもので、

NSF が基準を定めている4。K-12 へのインパクトや、一般的なアウトリーチも含む広い概

念であり、いわゆる学術への貢献(Intellectual Merit)以外の社会的な貢献である。

Broader Impact (BI)について研究するコミュニティが存在し(日本の科学コミュニケー

ション研究者のような位置づけか)、そのコミュニティをネットワーキングしようとする試

みが NABI である。Principal Investigator (PI)は、一般に BI について訓練されていないた

め、信頼できる BI のためのモデル作り、事例収集、評価方法について研究しているという。

<所感>

NSF は、昨年の秋に Broader Impact に関する所見公表:

http://www.nsf.gov/od/iia/publications/Broader_Impacts.pdf

http://www.nsf.gov/od/iia/special/broaderimpacts/

NSF は自身でパブリックエンゲージメントを行わないが、Research Experiences for

Teachers (RET), National Center for Public and Civic Engagement などに資金を提供し、

パブリックエンゲージメントを支援している。自ら行おうとしている JST とはスタンスが

異なる。研究者が取り組むと、科学コミュニケーションも「モデル作り」「事例収集」「評

価方法の研究」になる。その後の展開に期待。

4 http://www.nsf.gov/pubs/2007/nsf07046/nsf07046.jsp

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配分機関の意思を研究機関・学協会等が受け取り、協働して改善する現在進行形の事例

と受け止めた。JST 外関係者との交流は事業改善に必要不可欠であり、こうしたセッショ

ンは事業そのもののオープンイノベーションプロセスを想起させる。

図 4.25 Symposia, Communication and Public Programs, Strategies for Effective

Broader Impacts Work の様子。

■Engagement with Intent? Scientists’ Views of Communication and Why It Matters

Organizer:

John C. Besley, Michigan State University

Speakers:

Anthony Dudo, University of Texas (研究者)

Brooke Smith, COMPASS (プラットフォーム運営者)

Jeanne Braha, AAAS Center for Public Engagement with Science and Technology

(AAAS 担当者)

<概要>

このシンポジウムでは、科学コミュニケーションについて科学者がどのように考えてい

るか、目指しているものは何かついて議論があった。

科学コミュニケーション活動に関する調査を行った Dudo 氏は、2012~2014 年の研究者

への科学コミュニケーションに関する調査結果について講演。科学者をコミュニケーショ

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ンに駆り立てる要素と実際にどのように活動をしているか、データを市民参画にどのよう

に生かすかについてアンケート調査結果について説明した。

科学コミュニケーションのプラットフォーム「COMPASS」の運営者 Smith 氏は、1999

より米国の科学者をコミュニケーターとして育成する活動を実践中。COMPASS はルプチ

ェンコ氏によって設立された組織で、科学者の科学コミュニケーションに関して、その目

的の設定からコーチングを行い、その活動の枠組みを設定する活動を進めている。

AAAS の Braha 氏は、コミュニケーションの鍵となる要素は「ゴール」「聴衆」「メッセ

ージ」であるとし、ワークショップ、メッセージの練り上げ、公衆へのアウトリーチ、マ

ルチメディア、メディアインタビューなどで構成される AAAS Engagement Training

Experience について説明。

<所感>

科学コミュニケーションの評価が、活動量から、与えたインパクトの内容にシフトして

いるようだ。また、従来からの目的である情報共有、興味関心の喚起に加えて、市民から

の信頼に耐える、市民の視点を持つ、市民からの声を聞く科学者が求められているとの認

識が共有されていた。

一方で、会場からは、「co-design の要素が入っていないのではないか?」という指摘あ

り。研究者側から一方向でメッセージを発するというリニアモデルに重きが置かれている

感あり。

図 4.26 壇上スピーカー4名、3人目(COMPASS 担当者)発表中

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図 4.27 COMPASS「科学者向け科学コミュニケーションプラットフォーム」

■From Art to Mathematics: A Visual Mode of Communication

Organizer:

George W. Hart, Stony Brook University

Speakers:

Henry Segerman, Oklahoma State University

Andrea Hawksley, SAP Labs

George W. Hart, Stony Brook University

<概要>

Oklahoma 州立大のHenry Segerman氏が4次元の物体を3次元に写像して3次元と2

次元の間の影のような取扱いで、超多面体・超多角形の表現の数学的手法を解説。

図 4.28 Henry Segerman 氏

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図 4.29 Andrea Hawksley の作品

<所感>

数学の持つ力を Art という形で示すことで、コミュニティ活動の活性化など、応用とし

ての基礎科学の面白さを伝える方法だと考えられる。他の2氏も同様な活動を紹介。聴衆

も100人近くであり、科学を身近にする活動が盛んであると感じた。

■Citizen Science: Advancing Innovations for Science, Information, and Engagement

Organizer:

Jennifer Shirk, Cornell University

Co-Organizer:

Meg Domroese, Citizen Science Association/Schoodic Institute

Moderator:

Jennifer Shirk, Cornell University

Discussant:

Meg Domroese, Citizen Science Association/Schoodic Institute

Speakers:

Abraham J. Miller-Rushing, Acadia National Park and Schoodic Education and

Research Center

Richard Bonney, Cornell University

Darlene Cavalier, SciStarter

<概要>

鳥の分布等の自然観察に関する事例が多い。鳥の分布の事例 eBird では、①得られた各

地のデータからチェックリストを使って約 10%に絞る、②専門家による評価を行う、③デ

ータが信頼できることを確認する、というプロセスを経ている。データの信頼性担保が重

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要とのこと。

市民科学者(citizen scientist)へのアンケート調査からは、約半数が複数のプロジェク

トに参画している、しかしプロジェクト間・参加者間の交流は希薄である、といった実態

が紹介された。

また、Citizen science から Citizen policy にしていく流れが提唱されていた。コミュニテ

ィや地域に根差した活動もあれば、大規模データを取得することが主目的の活動もあるな

ど、市民科学と呼ばれる活動にもそれぞれ多様性があり、質が異なる。

質疑では、市民科学で取得されたデータの質(生物学の分野では、市民科学に由来する

データでも論文の質が水準に達していれば受理する)、オープンアクセスのあり方(市民科

学者が文献情報を得るという文脈で)、大学等での研究活動との相乗効果、市民科学参加者

への教育的側面、市民科学の評価体系、成功例の効果的な共有方法、などが話題になった。

データの質の議論では、かつて Broader Impacts の項目で評価されるにすぎなかった市民

科学が、いまやサイエンス自体に貢献するまでになった、とのコメントがあった。またコ

ミュニティベースの研究という意味で、サービスサイエンスとも関係があるとの言及もあ

った。

なお主催者の市民科学協会(Citizen Science Association)は、科学者に対する市民科学

推進のためのモジュール提供を計画しているとのこと。

<所感>

小さな部屋に 100 人超の聴衆が入り、Citizen Science がホットな話題であると感じさせ

る活況。一方で、NSF の Broader Impacts と同じく、過去の似たような活動と繋がってな

いという指摘があった。Citizen Science と Science Communication との関係(包含関係)

は一度整理してもよい。

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図 4.30 シンポジウム「Citizen Science: Advancing Innovations for Science, Information,

and Engagement」の様子

■Gender in STEM Policy, Practice, and Research: Advances in North America and

Europe

Organizer:

Wanda Ward, National Science Foundation

Moderator:

Wanda Ward, National Science Foundation

Speakers:

Elizabeth Pollitzer, Portia Ltd.

Nancy Cantor, Rutgers University

Joan S. Burrelli, National Science Foundation

<概要>

Gender Summit における議論を中心にしており、「研究の内容に性差を取り込むこと」

と、「研究への参加に性差がないこと」の2つのカテゴリでの議論がされた。また、複雑に

なる社会の重要課題を解決するには、すべての人の知恵を集結する必要があり、そのため

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Gender Equality がますます重要になっているという説明があった。

NSF と NIH では Career-life balance に注力し、Family friendly policies を進めている

とのこと。

<所感>

Gender Equality / Equity 以下の3つのセッションあり。

1) Gender in STM Policy, Practice, and Research 2/13 15:00-16:30 @LL21F

2) Solutions for Achieving Gender Equity 2/14 15:00-16:30 @210EF

3) Gender Equality in the Knowledge Society 2/15 13:00-14:30 @210EF(不参加)

それぞれ主催者が異なる。1)は欧州委員会が中心となって進めている Gender Summit 主

催者、2)は米国中心、3)はカナダ、ブラジル、メキシコから講演。議論の内容は異なる視点

であるが、目的は同じ。しかし、それぞれの主催者が他のセッションには参加しないとい

う状況で、それぞれが独立に議論している。

■I See, Therefore I can

Organizer:

Rene Martins, European Commission

Speaker:

A.M. Tofail Syed, University of Limerick, Ireland

Ferry Kienberger, Keysight Technologies Austria, Linz

Christoph Heinzl University of Applied Sciences Upper Austria, Wels

<概要>

AAAS2015 のテーマの一つ、”imaging”を扱ったセッション。これまでの科学の歴史を振

り返ると、より小さいものが見えるようになれば、よりイノベーションが進むということ

を繰り返してきた(更には巨額なお金を生み出すことに繋がってきた)が、昨今最新の計

測機器を使った実験や研究というものは、扱うデバイスが非常に高価になり過ぎた為に、

誰もが簡単に実験を行うことが困難になってきている。このような状況の中、より手軽に、

そして、高性能なデバイスの登場が望まれている。

冒頭、モデレータより上記のような趣旨にてセッションテーマの紹介の後、3 人の発表者

が順に持ち時間 30 分弱を使い、自らのテーマについて発表していった。最初の発表者の

Tofail 氏は理論的な話がメインであり、次の Kienberger 氏は Keysight Technology 社の計

測機器使った研究紹介であり、最後の Heinzl 氏は自らが開発に携わったデバイス

NanoXCT(ナノサイズの 3D イメージングデバイス)による研究成果であった。

<所感>

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総じて、やや製品PRにも感じられるセッションではあったが、同業の研究者からは、「~

のような条件ではどうだ?」などの熱心な質疑応答が続いていた。

余談として、PC とプロジェクターとの接続不具合によるトラブルで、スライドが映らな

いというパブニングも起きたが、モデレータによる臨機応変な対応(回復するまで質疑応

答で対応)により何事もなく円滑にセッションが進んだのはさすがだった。

図 4.31 セッション「I See, Therefore I can」の様子

■The Road to Autonomous Cars

Organizer:

Chris Gerdes, Stanford University

Speaker:

Chris Gerdes, Stanford University

Bryant Walker Smith, Stanford University

Josh Switkes, Peloton Technology Inc.

<概要>

自動走行車に関するシンポジウム。スタンフォード大学の Chris Gerdes 氏は、時速

190km にもなる自動走行レーシングカーを開発中で、レース場での競争では 0.4 秒差で自

動運転車が勝つところまでとなった。その中で人間とマシンの違いについて考察を深め、

それらがとても異なる思考性を有していることに興味があるとのことであった。具体的に

は、人間は経験を元にフレキシブルな思考を持ち、運転状況における人間のジャッジには

様々な嗜好性等もあるとのことである。そのような中で、義務論(deontology)と帰納主義、

制限とコスト問題など、これからの自動運転に関する課題を明らかにし、社会との対話の

中でルールを決めていく時期であることを強調した。

同じくスタンフォード大学の Bryant Walker Smith 氏は、法学者の立場から、同様に社

会と対話しながらルールを決めて行く必要性を強調。事故が起こった際の責任の帰属につ

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いては、現在の自動車では運転者になることが多く、製造者責任になるケースは少ないが、

自動走行になった場合には、製造責任(プログラムデザイナーを含む)の責任割合が大幅

に増える可能性があるとのことであった。運転者などが自動運転車を過信することも問題

の構成要素にあるとの考えを示した。実際は人の判断する余地が残されている。一方で、

過去の経験から、製造者責任はマネージブルであると考えられており、情報の蓄積やリス

クマネージメントにより可能との見解を示した。

Peloton Technology Inc.の Josh Switkes 氏は、運送会社に既に実装された例として、2

台のトレーラーをレーダーでつなぎ、安全性と燃費を向上させられる事例を紹介。米国で

は、運送産業 6500 億円のうち、事故コストが 480 億円、燃料コストが 1000 億円、利益は

3%(200 億円)とのことで、事故と燃費向上が利益に直結する。そこで、2 台のトレーラ

ーをレーダーでつなぎ、前の車のブレーキ動作を検知し、後ろの車に無線で伝えるなどに

より人間の知覚を越えた事故回避が可能であるばかりでなく、燃費面でも前の車が 4.5%、

後ろの車が 10%もの削減につながるという。また、このネットワークを発達することで、

交通状況や米国の州ごと違う法律に対応しての運転の支援が可能になるとのこと。

<所感>

会場は、奥まった場所にも関わらず 100 名超の幅広い聴衆が参加し、ハッキングの危険

性」など関心の高さが見えた。エンジニア、法律学者、企業の視点から自動走行車の開発

を多角的にとらえた魅力的な企画。セッションの内容は、Newsroom でのレクチャーで事

前に記者に対しても提供されており、情報発信方法もうまく設計されている。

図 4.32 Press Briefing を行う Gerdes 氏

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図 4.33 セッション「The Road to Autonomous Cars」の様子

■Ukraine’s Scientific Future, International Cooperation and Science Diplomacy

Organizer:

Michela Greco, CRDF Global

Moderator:

Cathleen Campbell, CRDF Global, Arlington

Speakers:

Serhiy Kvit, Ministry of Education and Science of Ukraine

Nataliya Shulga, Ukraine Science Club

Stas Khirman, TEC Ventures, Sunnyvale

<概要>

ウクライナの科学技術動向に関するセッション。ウクライナ教育科学省 Campbell 氏より、

ウクライナでは大学における研究開発推進のため、各大学の権限を強めていること、研究

機関との連携を促進していることが述べられた。他方、ベンチャー企業代表の Khirman 氏

は、イスラエルのテルアビブにおける民間の研究開発動向を説明し、イスラエル、アメリ

カ、ウクライナでの国際連携の必要性に言及。パネリストによる発表後は、会場との質疑

応答に移り、政府、NGO、民間がそれぞれ果たすべき役割について活発な議論が行われた。

<所感>

聴講者は 20 名程度と少なく、殆どがヨーロッパの方々だった。パネリストの構成のバラ

ンスがとれており、会場との議論が活発となる一因だったと思われる。多角的にウクライ

ナの科学技術を理解できるセッションであった。

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■Access to Scientific Expertise in Fast Growing African Countries

Moderator:

Tracy Brown, Sense About Science, London, United Kingdom

Speakers:

Nick Ishmael Perkins, SciDev.net, London, United Kingdom

Thandi Mgwebi, South African National Research Foundation

Daniel Otunge, African Agricultural Technology Foundation, Nairobi, Kenya

<概要>

アフリカにおける科学的知見の利用に関するセッション。ジャーナリストの Perkins 氏

は、アフリカでは科学情報へのアクセスが難しいことから、科学的根拠に基づく開発活動

ができていないことを、NGOや市民団体へのアンケート調査の結果を用いて説明。次に、

Funding Agency の Mgwebi 氏、Otunge 氏より、それぞれ、南アフリカにおける科学技術

関連予算の概要と、技術移転による農業分野での気候変動策について発表があった。

会場との間では、科学的知見と伝統的な慣習・知識(Indigenous Knowledge)の融合に

ついて議論が行われていた。

図 4.34 セッション「Access to Scientific Expertise in Fast Growing African Countries」

の様子

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■ Nobel Government Partnerships, Integrating Developing Countries in Global

Research

Organizer:

Katherine E. Himes, U.S. Agency for International Development

Co-Organizer:

Cameron D. Bess, U.S. Agency for International Development

Moderator:

E. William Colglazier, AAAS Center for Science Diplomacy

Speakers:

Molly Fannon, Smithsonian Institution, Washington DC

Katherine E. Himes, USAID, Washington, DC

Mark Sogge, U.S. Geological Survey, Sacramento, CA

<概要>

発展途上国と先進国の科学技術に関するパートナーシップを紹介するセッション。冒頭

AAAS の William 氏より、地球規模課題解決に向けて学際的な国際共同研究の重要性が述

べられた。その後、アメリカ国際開発庁(USAID)、アメリカ地質調査所、スミソニアン博

物館のパネリストより、それぞれの機関で実施している途上国との共同研究プロジェクト

や交流事業の紹介があった。例えば USAID は、NSF と共同でファンディングしている

PEER(Partnerships for Enhanced Engagement in Research)Science プログラムを説明。

このプログラムでは、USAID が途上国の研究者を支援し、その研究者は NSF の支援を受

ける米国の研究者と共同で研究を進める。会場からは、博士課程に所属する大学院生や研

究者から、スミソニアン博物館で研究する方法やプロジェクトへの申請方法について等、

質問者の進路や研究に関係する具体的な質問が数多くされていた。

■Solutions for Achieving Gender Equity: International Perspectives

Organizer:

Lynnette D. Madsen, National Science Foundation

Co-Organizer:

Catherine Didion, National Academy of Engineering

Discussant:

Sue V. Rosser, San Francisco State University

Speakers:

K. Surekha Rao, Indiana University

Pär Omling, European Science Foundation

Kathrin Zippel, Northeastern University

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<概要>

様々な統計を使い、経済と女性参加の関係を議論した。経済成長が著しい新興国は女性

の登用が後れ、経済が飽和している国では女性の登用が進んでいる傾向はあるが、経済成

長を細かく分析すると、成長が中程度の国が最も女性登用が進んでいないとの結果が示さ

れた。

女性の活躍と国際共同研究の間には相関があり、女性が国際共同研究を加速する要因に

なっているデータも示された。

日本に研究者として滞在した海外研究者が、日本において「外人」として特別扱いされ

た経験が示され、日本の多様性のなさが紹介された。

<所感>

日本で gaijin という特別な存在だからこそ許された、という演者の発言の裏には、「住も

う」「永住しよう」としたときの困難が想像される。ジェンダーと国籍をどう乗り越えるか

は、ダイバーシティ推進の中心課題だろう。また、本シンポジウムのタイトルは Gender

Equity(ジェンダー公正)であり、Gender Equality(ジェンダー平等)とは概念的に区別

される専門用語であることに注意が必要。

図 4.35 セッション「Solutions for Achieving Gender Equity: International

Perspectives」の様子

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■Visualization Insights from Big Data: Envisioning Science, Engineering, and

Innovation

Organizer:

Katy Borner, Indiana University, Bloomington

Co-organizer:

Joseph E. Sabol, Chemical Consultant, Racine, WI

Speakers:

Antony. J. Williams, Royal Society of Chemistry, Wake Forest, NC)

Kei Koizumi, U.S. Office of Science and Technology Policy, Washington, DC)

Lisa Krieger, San Jose Mercury News

<概要>

冒頭、オーガナイザーの Katy 氏から開始にあたり短いスピーチがあり、科学者や Policy

Maker のみならず、町中で学生や子供にも science はすばらしいと思ってもらいたい」と

いう発言があった。

一人目のスピーカーである Williams 氏はハーバードの The Clean Energy Project など

複数のプロジェクトに携わっており、安価な有機太陽電池を作るためには、例えば「メタ

ルフリー、水溶性、電池」などに合致する分子を、オープンデータを含む Billions of Billions

of Molecule の中から量子メカニズムを考慮して、まるでカードを選ぶようにスクリーニン

グできるとした。一方、10 の 60 乗もの分子から 10 の分子に絞り込むには、相対的に

Computational cost が増大するとした。

二人目のスピーカー、Kei Koizumi 氏はホワイトハウスの Assistant Director, Federal

Research and Development であり、Report to the President ”Big data and Privacy” を提

出(2014 年 5 月)。STARMETRICS®Project を推進。複雑なデータを Policy Maker が簡

単に理解できるように可視化することの重要性を説明。どの機関がどのような研究を支援

しているのか、どの研究者がどのような成果を出しているのか等を可視化している事例を

紹介。科学データをそれぞれの地域で具体的な政策に活用できるように、ユーザフレンド

リーなフォーマットで提供することが重要とした。

三人目のスピーカー、Donna Cox 氏は参加がキャンセルになり、Organizer の Katy 氏

が代わりにスピーチを行った。トルネードの可視化や non-linear Evaluation of

nanouniverse, 電子軌道モデルなどを BGM 付の美しいアニメーションで見せた。

質疑は Kei Koizumi 氏に集中し、NISTEP 研究官からも質問があった。

<所感>

政策作りに役立つ情報提供について、対話の場を持つことは有用である。セッションの

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最後にオーガナイザーの Katy 氏から、会期中のトムソン社主催ランチョンセミナーの案内

があり、データ分析に対するトムソン社の関与と積極的アプローチを感じ取れた。

■Beyond Silicon: New Materials for 21st Century Electronics

Organizer:

Glennda Chui, SLAC National Accelerator Laboratory

Discussant:

H.-S. Philip Wong, Stanford University

Speaker:

Joshua Goldberger, Ohio State University

Stuart S.P. Parkin, IBM Research

Elsa Reichmanis, Georgia Institute of Technology

<概要>

3 名の研究者によるシリコン半導体を越える物質に関するセッション。ゲルマニウム-シ

リコン系、スピントロニクス、有機材料等に関して研究成果等が発表された。ゲルマニウ

ム-シリコン系では、新たな水素化物により 1.56eV のバンドギャップを持つ物質を創生し

た話題があった。スピントロニクス関連では GMR(巨大磁気抵抗)が発生する物質により

磁気メモリ&ストレージにつながり、現在は人間の脳と PC 等のメモリは電力消費で 10 の

6 乗の開きがあるが、いずれはスピントロニクスレーストラックメモリで近づけていきたい

とのことであった。

<所感>

いずれもスライドの最初の数枚はわかり易い導入であるものの、その後急に専門に入る

ために難度があがるものが多かった。また、土曜朝一のセッションのため、比較的聴衆が

少なかった。

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図 4.36 セッション「Beyond Silicon: New Materials for 21st Century Electronics」の様

■From the Grid to the Cloud: Computing for Big (and Small) Science

Organizer:

Vincenzo Napolano, National Institute for Nuclear Physics

Co-Organizer:

Terry O'Connor, Science and Technology Facilities Council

Moderator:

Matt T. Goode, Biotechnology and Biological Sciences Research Council

Speakers:

Frank Wuerthwein, University of California, San Diego

Niklas Blomberg, ELIXIR

Davide Salomoni, National Institute for Nuclear Physics

<概要>

物理学者や生物学者による分散コンピューティングのセッション。大型加速器による物

理実験や、遺伝子シーケンサーの出現によって、得られるデータ量が大規模になっている。

以前は、自分たちだけで分析を行っていたが、それが Grid コンピューティングを利用する

ようになった。しかし、計算資源の仮想化と標準化、ハードウェアの多様化に対する利用

形態の簡素化への要望などから近年ではクラウドコンピューティングを活用するようにな

ってきた。特にヨーロッパにおけるこのような動きの紹介があった。参加者は 30 人程度。

今後は、データのアクセス性や再利用性などが重要になってくる。クラウドを通じて、

資源とソフトウェア、知識の共有が進んできている。

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<所感>

物理学者や生物学者が分散コンピューティングに関して論じている。すでに IT は、他の

領域の科学者にとっても必須の素養となっていることが痛感された。日本においても、す

べての科学者が当たり前のように最新の IT を使いこなすような環境作りが大切であると感

じられる。

■Differential Privacy: Analyzing Sensitive Data and Implications

Organizer:

Salil Vadhan, Harvard University

Co-Organizer:

Cynthia Dwork, Microsoft Research, Silicon Valley

Speakers:

Aaron Roth, University of Pennsylvania

Sofya Raskhodnikova, Pennsylvania State University

Moritz Hardt, IBM Almaden Research Center

<概要>

プライバシー保護の新たな定量化法としての差分プライバシーについてのシンポジウム。

ビッグデータの様々なデータ解析に対して差分プライバシー技術が適合することを紹介。

ビッグデータで重要となる、新規データを追加したり、他のデータセットを統合して解析

したりする場合に、実用的な計算量でプライバシーの保護を定量化できる。具体的な事例

として、ソーシャルネットワークの解析における差分プライバシーの実装、Adaptive data

analysis(元のデータセットの解析結果に基づき、追加的に必要なデータ収集を行いデータ

解析の精緻化を行うというアナリティクスの考え方。科学研究に対しても適用できる概念)

への適用について紹介があった。参加者は 15 人程度。

<所感>

ビッグデータの活用において技術的に解決すべき課題がまだ存在しているということを

印象づける内容であり、また非常に重要な取り組みであると感じた。内容的には数理科学

やアルゴリズムという基礎的なものであり聴講者は限られていたが、ビッグデータ活用と

いう側面から社会的に重要な研究開発であるというメッセージと、そのメッセージを打ち

出すための苦労が感じられた。

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■Holistic Computing Risk Assessment: Privacy, Security, and Trust

Organizer:

L. Jean Camp, Indiana University

Co-Organizer:

Diane Henshel, Indiana University

Moderator:

Diane Henshel, Indiana University

Speakers:

Bennett Bertenthal, Indiana University

Rick Wash, Michigan State University

Cleotilde Gonzalez, Carnegie Mellon University

L. Jean Camp, Indiana University

Nancy Leveson, Massachusetts Institute of Technology

Karl Levitt, University of California

<概要>

IoT などインターネットの利用が広くなり大量データが取り扱われる時代のプライバシ

ー、セキュリティ、トラストについて社会心理学、決定論、コンピュータ科学などの多様

な立場からの議論が行われた。印象に残ったのは、CMU の Cleotilde Gonzalez 教授による

サイバー空間での行動決定論である。検索キーワードの検索分野ごとにユーザのプライバ

シーへの反応を調査した結果で、医療に関する検索や資産に関する検索についてはプライ

バシーと考える度合いが高く、コンテンツまで踏み込まないとプライバシーの取扱いがで

きない。このため、動的なプライバシー規則という考えや AI によって対応規則を導出する

動きがある。

<所感>

聴衆は 10 名程度。内容面のよさに比較し、少ないと感じた。話題がかなり広い範囲にま

たがったためと思う。

■Privacy in an Era of Big Data: Directions, Advances, and Reflections

Organizer:

Ersin Uzun, Palo Alto Research Center

Speaker:

Ersin Uzun, Palo Alto Research Center

Eric Horvitz, Microsoft Research

Deirdre K. Mulligan, University of California

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<概要>

現状のセキュリティやプライバシー保護は効率と利用の簡便さに誘導されて、安全性は

低いレベルにとどまっている。技術開発を通じて、高いレベルでの実現が望まれる。プラ

イバシー保護のための技術として、セキュアデータ開示、プライバシープロテクティング

マイニング、匿名化などの技術が紹介された。今後の方向性として、自動的にポリシーと

データの整合性を取り、適切な技術を選択するためのシステムが必要であると指摘された。

また、人々が感じるプライバシーの定量化に関する議論も紹介された。統計的に処理をし

て、どこが最もクリティカルになるかということを調べるようだ。やはり、プライバシー

は利便性とのトレードオフであり、社会的な見方で変わることもある。適切な境界を設定

する必要がある。最後に、アメリカとの比較で、ヨーロッパの状況について報告があった。

参加者は 50 名程度。

<所感>

日本でのプライバシーに関する議論の多くは技術的なものであるが、ここでの議論のよ

うに、社会の受容性などの調査研究も必要であると感じた。個人情報についても、もう少

し科学的なアプローチが必要なのではないだろうか。

■Innovations in Accelerator Science

Organizer:

Maria Spiropulu, California Institute of Technology

Co-Organizer:

Saul Gonzalez Martirena, National Science Foundation

Moderator:

Barry C. Barish, California Institute of Technology

Speakers:

Lia Merminga, TRIUMF

Anna Grassellino, Fermi National Accelerator Laboratory

Norbert Holtkamp, SLAC National Accelerator Laboratory

Wim Leemans, Lawrence Berkeley National Laboratory

<概要>

各種の加速器自体の進展とその最新の成果等を紹介するセッション。会場には高校生等

も 10 名程度参加していた。

セッションは、非常に基礎的な部分から始まり、Merminga 氏より、加速器に必要な要

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素(分子の分析装置から真空、磁場、電場、それらの制御)や、加速器の 1932 年以来の歴

史等にも触れられた。そして、将来的には LHC を超える 100km 超の加速器が建設されれ

ば 100TeV レベルの粒子加速が可能になるだろうが、建設費用が飛躍的な増加についても問

題提起があった。産業との連携や医療への重粒子線治療などについても言及があった。

Grassellino 氏からは ILC に関する最新の設計状況などがビデオともに紹介された。

<所感>

セッションは基礎的な部分から始まり、非常に高度な加速器建設の模様などまで多様な

話題が発表されたが、同じ時間帯に LHC のセッションが有り、聴衆が少ないことが残念で

あった。一方でスピーカーは各機関から選ばれており、女性登壇者が多いことが印象的で

あった。

図 4.37 セッション「Innovations in Accelerator Science」における Grassellino 氏の講演

の様子

■Big Data: Challenges and Social Impacts

Organizer:

Chris Tyler, U.K. Parliamentary Office of Science and Technology

Co-Organizer:

Timothy M. Persons, U.S. Government Accountability Office

Moderator:

Lydia Harriss, U.K. Parliamentary Office of Science and Technology

Speakers:

Dave Feinleib, The Big Data Group

George Poste, Arizona State University

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Edward You, U.S. Federal Bureau of Investigation

Claire Craig, U.K. Government Office for Science

Piyushimita Thakuriah, University of Glasgow

Timothy M. Persons, U.S. Government Accountability Office

<概要>

5件の発表が行われ、英国、米国でのビッグデータの取組について報告された。The Big

Data Group の Dave Feinleib 氏から 「Big Data, Research, and Trends」と題する全般

概況報告があり、この2年間で世界のデータの 90%が生成されていて、これの利用によっ

て医療、産業、公共、交通などに大きなインパクトを与えるとしている。全般には既出の

データのまとめであった。このあと、ヘルスケアとの関連でアリゾナ大学から、交通との

関連でグラスゴー大学から制度面的な発表があった。英・米政府関連の部署からはビッグ

データのガバナンス関連の報告があった。政府の取組についての資料は席上で配布されて

いた。

<所感>

日本での産業界での取組の遅れと同様に、政府関連のビッグデータに関する活用ガイド

ラインやセキュリティの取組についてさらに強化の必要がある。

■Science During Crisis: Amidst Oil Spills, Hurricanes, and Other Disasters

Organizer:

Gary Machlis, U.S. Department of the Interior Strategic Sciences Group

Co-Organizer:

Kristin Ludwig, U.S. Geological Survey

Moderator:

Kristin Ludwig, U.S. Geological Survey

Discussant:

Andrew Zolli, Poptech

Speakers:

Gary Machlis, U.S. Department of the Interior Strategic Sciences Group

Leysia Palen, University of Colorado

Marcia McNutt, AAAS/Science

<概要>

「危機・難局に直面した際、科学は何ができるか」がテーマ。危機の例としては、マン

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ハッタン計画、ハリケーンサンディ、メキシコ湾の原油流出事故など。科学者が事実をフ

ィルターをかけずに、わかりやすく、タイムリーに政策決定者に送る役割を担うとし、時

間の制約の中で最高の仕事をしなければならないので、寝ている場合ではないといった精

神的な話も含まれた。たとえば、災害時の SNS の分析においては、どのデータをどのよう

に解析するかには判断が入り、安易なミスリードがおきやすい。また、メキシコ湾の原油

流出事故では、海底のパイプにふたをすることで他の箇所からの流出につながって被害を

拡大させてしまう懸念を抱えながら待ったなしの判断が迫られ、様々なデータからパイプ

をふさぐ判断に至った経緯などが紹介された。評価より介入・実行を旨とする研究である

べき点が強調されていた。

「直面したことの無い事故では、政府はタイムリーに情報を出すことはできない」とス

ピーカーがコメントした点は興味深い。政府側にできることは、「“何が起こっているか”

を明らかにできる人を探し出し、知識のギャップを埋めること」という。科学者は、この

探し出される側の人間として、decision maker にフィルターをかけずに情報を送る責任が

あり、一般市民とコミュニケーションする責任は decision maker 側にあって科学者の側に

は無いとした。

図 4.38 Symposia, Public Policy, Science During Crisis: Amidst Oil Spills, Hurricanes,

and Other Disasters の様子

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4.9 Exhibitor-Sponsored Workshops

1.概要

AAAS に出展している組織(Exhibitor)が企画できるワークショップ(一律一時間枠で

950 ドル追加料金がかかる)。科学者コミュニティに対して、自分の製品、サービス、プロ

グラムを宣伝することを目的に企画し、出展内容とリンクした形で出展者が集客。

Symposiaのようなピアレビューを経ずに企画可能。企画の公募締め切りが4月のところ、

このワークショップの企画は 11 月まで可能。研究のプレゼンテーションや科学政策の議論

をすることを意図するものではない。

2015 年の Exhibitor-Sponsored WS の企画は下記 4 件のみであった。

Promoting Science for Resolving Food Insecurity in Africa

Friday, 13 February 2015 10:30 AM-11:30 AM @Room 210H (Convention Center)

Coordinator: Pamela McClure, U.S. Borlaug Fellows in Global Food Security

Science and Society in Japan

Friday, 13 February 2015 2:15 PM-3:15 PM @Room 210H (Convention Center)

Coordinator: Satoru Ohtake, Japan Science and Technology Agency

Top European Grants for Brilliant Minds from Across the World

Saturday, 14 February 2015 9:15 AM-10:15 AM @Room 210H (Convention Center)

Coordinator: Béatrice Thiry, European Research Agency

From the Eyes of a Developer: Best Approaches to Teaching Programming

Saturday, 14 February 2015 1:00 PM-2:00 PM @Room 210H (Convention Center)

Coordinator: Krista Peterson, Wolfram Research

2. 参加した(自ら企画・実行)ワークショップ

Science and Society in Japan

Friday, 13 February 2015 2:15 PM-3:15 PM @Room 210H (Convention Center)

Coordinator: Satoru Ohtake, Japan Science and Technology Agency

3.ワークショップの様子

5 章(5.2)にて詳述。

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4.10 Clinics

<概要>

AAAS 年次総会の講演者に対して、プロのコミュニケーションコンサルタントが 1 名 50

分・マンツーマンでプレゼンテーションの個別指導を行う。2/12(木)~15(日)の毎日

8:30-16:30(※初日のみ 17:30 まで)開催。原則として事前登録制であるが、空きがあれば

会期中の登録も可能。登録は、参加登録時に行うが、Exhibitor 登録・一般登録者は対象外。

Exhibitor の中から開催したい組織を募って開催。公募はしない。AAAS の Science Staff

部門がコミットする場合あり。

Presentation Rx Clinic

Thursday, 12 February 2015: 8:30 AM-5:30 PM

Friday, 13 February 2015: 8:30 AM-4:30 PM

Saturday, 14 February 2015: 8:30 AM-4:30 PM

Sunday, 15 February 2015: 8:30 AM-4:30 PM

Room 211 (San Jose Convention Center)

図 4.39 Clinics 会場入り口の机に置いてあった予約受付表 (希望者は空いているスロット

に名前を記入できる。Symposia で発表する人しかサービスを受けられない)

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4.11 Career Development Workshops

1.概要:

研究者がキャリアアップしてゆくために必要なスキルを紹介する1時間の内容。コミュ

ニケーションスキル(データの可視化やプレゼン方法など)、キャリア開発の考え方、キャ

リア管理(キャリア開発の考え方、仕事の探し方、協力の仕方など)の3カテゴリでワー

クショップが企画される。ワークショップとなっているが、ほとんどは1時間のシンポジ

ウム形式。

Exhibitor の中から開催したい組織を募って実施。公募はしない。AAAS の Science Staff

部門がコミットする場合もあるという。

<Communication Skills>

・Visualization of Scientific Data

・Demanufacturing Doubt: A Strategy for Compelling Science Communication

・Working with Congress: Introduction to Science and Policy

・Seizing the Moment: Presenting Yourself and Your Work, Live

・How Do I Video? Ask YouTube Science Heavyweights

・Fight the PowerPoint! Become a Science Presentation Superstar

・Scientific Presentation: Clear Thinking Made Visible

・Discussing Science with Religious Students and Audiences

・Crafting a Compelling Visual Presentation

・Turning a Science Crisis into a Communication Opportunity

・TED-Ed: Telling and Teaching Your Story through Animation

<Career Pathways>

・What Else Can You Do with a PhD? Finding Alternative Careers in the Sciences

・Being a Science Advocate in Your Community

・Becoming a Global Scientist: Science Diplomacy Skills for Early Career Researchers

・Integrating Human Rights into Your STEM Training

・Applying Science for Society: Opportunities at the Intersection of Science and Policy

・Working with Congress: Communicating in Difficult Fiscal and Political Times

・Expanding Your Professional Marketability through Science Outreach

<Career Management, Resources, and Tools>

・Finding Your Compass with LGBT Issues in STEM

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・Proposal Budgets A to Z: How to Plan Ahead, Keep Sanity, and Save Time

・Staying Positive and Realistic in a Science Job Search

・Boost your Career through Collaborations

2.参加セッション(Career Development Workshops)

What Else Can You Do with a PhD? Finding Alternative Careers in the Sciences

Career Development Workshop: Career Pathways

Friday, 13 February 2015 10:30 AM-11:30 AM @Room 212 (Convention Center)

Working with Congress: Introduction to Science and Policy

Career Development Workshop: Communication Skills

Friday, 13 February 2015 11:45 AM-12:45 PM @Room 212 (Convention Center)

Fight the PowerPoint! Become a Science Presentation Superstar

Career Development Workshop: Communication Skills

Saturday, 14 February 2015 8:00 AM-9:00 AM @Room 212 (Convention Center)

Proposal Budgets A to Z: How to Plan Ahead, Keep Sanity, and Save Time

Career Development Workshop: Career Management, Resources, and Tools

Saturday, 14 February 2015: 9:15 AM-10:15 AM @Room 212 (Convention Center)

Becoming a Global Scientist: Science Diplomacy Skills for Early Career Researchers

Career Development Workshop: Career Pathways

Saturday, 14 February 2015 10:30 AM-11:30 AM @Room 212 (Convention Center)

Scientific Presentation: Clear Thinking Made Visible

Career Development Workshop: Communication Skills

Saturday, 14 February 2015 1:00 PM-2:00 PM @Room 212 (Convention Center)

Staying Positive and Realistic in a Science Job Search

Career Development Workshop: Career Management, Resources, and Tools

Saturday, 14 February 2015 2:15 PM-15:15 PM @Room 212 (Convention Center)

Turning a Science Crisis into a Communication Opportunity

Career Development Workshop: Communication Skills

Sunday, 15 February 2015 9:15 AM-10:15 AM @Room 212 (Convention Center)

Boost your Career through Collaborations

Career Development Workshop: Career Management, Resources, and Tools

Sunday, 15 February 2015 11:45 AM-12:45 PM @Room 212 ( Convention Center)

TED-Ed: Telling and Teaching Your Story through Animation

Career Development Workshop: Communication Skills

Sunday, 15 February 2015 2:15 PM-15:15 PM @Room 212 (Convention Center)

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3.参加ワークショップの概要:

■What Else Can You Do with a PhD? Finding Alternative Careers in the Sciences

Coordinator:

Minda Rose Berbeco, National Center for Science Education

Co-coordinator:

Pallavi Phartiyal, Union of Concerned Scientists Washington DC

Presenters:

Sharotka Simon, AAAS, Diplomacy Security and Development

Michael A. Simon, Arcadia Health Solutions

Olivia Ambrogio, American Geophysical Union

<概要>

参加者は 80-100 名。男女比 1:2 程度(女性が多い)。

登壇者が自身のキャリアを時系列で紹介し、なぜ研究現場から現職に進んだかを述べた。

<質問例>

・ 異業種への就職に向けた CV/Resumé の書き方

(研究生活全体から得たソフトスキル、例えばリーダーシップ経験、プロジェクトマネジ

メント、得た成果を記載する。研究上の専門用語の羅列は避ける。)

・ 研究以外の道に進もうとすると指導教員の理解を得にくい。

(STEM 人材の多様なキャリアパスは配分機関も重要視している、指導教員が外の世界を

知らないだけ。)

・ 大学院を経る必要があったか。

(それはわからないが、好きな研究をして給与ももらえた。AAAS Fellow の機会も Ph.D.

があるから得られた。)

・ 学生の間にビジネスや政策の世界も学んでおくべきか。

(トレーニング機会はいろいろある。地球物理学連合(AGU)などの学会でのコミュニケ

ーション職や、URA、配分機関。また NSF、NIH、米国科学アカデミー(NAS)では 大

学院生へのトレーニングを強化している:NSF IGERT、NIH BEST など。)

<所感>

体験談を非常にポジティブに語り、アカデミックポスト以外も視野に入れた迷える若人

を刺激するセッション。「Alternative careers という言い方自体がおかしい、暗に研究職が

normal になっている」という演者の発言には同意。広義のファカルティディベロップメン

トの一環で、進路指導経験の浅い、教授になりたての若手研究者には必要な視点か。

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図 4.40 What Else Can You Do with a PhD? Finding Alternative Careers in the

Sciences の様子

■Working with Congress: Introduction to Science and Policy

Coordinator:

Joanne P. Carney, AAAS Office of Government Relations

Presenter:

Aline McNaull, American Institute of Physics

Erin Heath, AAAS Office of Government Relations

Toby Smith, Association of American Universities

<概要>

参加者は 60 名程度。

Smith 氏が、連邦議員へのロビイングのしかたを指南。科学と政治の文化の違いを説明

し、研究予算の緊縮が続く背景と危機感、audience としての議員の特徴、科学的内容を理

解してもらうより、将来展望や議員個人・議員が代表する地域の関心事項をごく短時間で

伝える(navigate)ことの重要性を強調。選挙による議員の入れ替わりが激しいことや、

議員の背景知識に関する統計(科学・工学が背景の議員は上院・下院で 5%程度しかいない

こと、高卒相当が 20 人・博士学位相当が 23 人、等)も紹介。「地図よりも案内人たれ(While

maps are good, tour guides are even better)」のメッセージで結ぶ。

McNaull 氏は、政策と関わる具体的な方法の紹介。科学者と政策をつなぐ場として、学

協会、大学、国立研究機関、連邦諮問委員会、ビジネスコミュニティ、学術会議を挙げた。

<所感>

科学者にステークホルダーを示し、具体的にどんな行動をすべきかについて俯瞰的な説

明を行っていた。聴衆の 10 人以上が議員との対話経験ありと挙手していたのは、科学者が

直接語る・ロビイングする米国だからこそと感じた。日本では科学者と議員の間に官僚ら

の行政実務担当者が介在するところ、行政の側が何を望むかを主体的に明らかにし、立法・

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行政・科学者の三者間の対話機会をいっそう充実させていくべきではないか。

図 4.41 Working with Congress: Introduction to Science and Policy の様子

■Fight the PowerPoint! Become a Science Presentation Superstar

Coordinator:

Todd Reubold, University of Minnesota Institute on the Environment

Co-coordinator:

Scott St. George, University of Minnesota(都合によりキャンセル)

<概要>

参加者は 40 名程度。

環境・持続可能性分野の雑誌の創刊者兼編集者でもある Reubold 氏による、効果的な口

頭発表のコツをまとめたチュートリアル。パワーポイント資料の構成やデザイン、プレゼ

ンテーションのしかたを具体的に解説する。

すぐに使える、当たり前だが忘れがちな tips をふんだんに紹介。「大きなメッセージは何

か、ストーリーで語れるか」「理詰めだけでなく感情への訴えもあるか」「集中が続くのは

10 分(10 minute rule)、聴衆に問いかけたり、重要なメッセージではスライドをオフにし

たりメリハリをつける」「スライド 1 枚にメッセージは 1 つだけ」「不要な情報は削る」「聴

衆は聞き終わる前に読み終わる」「余白を意識」「カラーユニバーサルデザイン」「シンプル

なフォントを用いる」「発表練習し、早めに来て来場者と雑談するなどして場に慣れる」「開

始後1分が極めて大事、聴衆を引き込む」「演台にずっといない」「ポインターは使いすぎ

ない」「ライトはつけたまま」「背中を向いて資料を読まない」等。

締めのメッセージは「Simplify.(無駄をそぎ落としなさい。)」

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<質問例>

・ 単純化することと、根拠データを示すことは相反する。良い方法は。/非英語話者が

聴衆にいるときはどうすればよいか。

(いずれもハンドアウト配布が有効。)

・ オンラインプレゼンテーションでの注意事項について。

(基本的にライブと同じ。聴衆が目の前にいないのがややマイナス。)

・ 教授と学生が共にいるなど、聴衆のリテラシーが混在している場合は。

(ストーリーテリングは万能。Nancy Duarte 著『Resonate』を薦める。リテラシーレ

ベルは高めの聴衆に設定しつつ、そうでない人にも大筋はわかるように。)

・ 1 スライド 1 分のルールは厳守すべきか。

(超過してもかまわない。スライド自体を削る努力をすべき。)

・ PowerPoint 以外のフォーマットは有効か。Prezi や Ignite など。

(試すことはかまわない。癖があるので個人的には後ろ向き。)

<所感>

こうしたコミュニケーションの専門家によるチュートリアルはわかりやすく実践的であ

るため、毎回根強い人気があるのは確かである。ただし、AAAS に限らず学会や授業の一

環で頻繁に実施されるのが最も適当か。教授クラスならば個人指導が有効かもしれない。

AAAS ならではのコンテンツとしては、統計データの示し方など学協会をまたいだ論点

が絡む企画が望ましいだろうか。

図 4.42 Fight the PowerPoint! Become a Science Presentation Superstar の様子

■Proposal Budgets A to Z: How to Plan Ahead, Keep Sanity, and Save Time

Career Development Workshop: Career Management, Resources, and Tools

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Saturday, 14 February 2015: 9:15 AM-10:15 AM @Room 212 (Convention Center)

Coordinator:

Yulia A. Strekalova, University of Florida

Presenter:

Yulia A. Strekalova, University of Florida

<概要>

参加者は 20 名程度。

フロリダ大学の Grants Development を率いるシニア URA 的立場の Strekalova 氏

(MBA)が、チーム研究に不慣れな研究者に対して予算の立て方の基本を指南。

共同研究者にあらかじめ目安額を示す anchroing の考え方を説明。ケーススタディとし

て、与えられた情報でいくらの予算を組むかを聴衆に試させ、事前情報の違いがいかに計

画額に影響するかを説明。

立てられた予算それ自体がストーリーの語り手となる。人件費の内訳、誰を雇うか

(Who);共同利用機器の有無や旅費(Where);年度計画におけるインフレ率の考慮等

(When);直接・間接、合算、予算費目など支払い方法(How)。

予算を削減する必要がある場合、プロジェクトの目標を 1 つ削るのも選択肢。

<所感>

「担当 Research Administrator (RA)から、プロジェクト主宰者であるあなたに 5 つ質問

をしてもらってください。(Ask your RAs to ask you, as the PI, five questions.)」といっ

た指導あり。RA を「新任の先生方のお守り(Nanny new PIs)」と表現。RA がプロジェ

クト運営にきっちりコミットしており、PI と相互補完の関係にある環境を反映している。

こうした情報交換の場所として、全国 URA 会議(National Council of University

Research Administrators)や LinkedIn 等のオンライングループ(登録メンバー5000 人以

上)を挙げていた。所属機関の同僚 URA の経験談も有効とのこと。

「国際共同公募で困ることはあるか?」と質問したところ、「ルールさえ要項に明記され

ていれば特に問題ない。人件費の支払いルールなど違いがあるのは確かだが、対応はでき

ている。京都大の WPI にいる URA らは慣れているから、彼ら彼女らからニーズを聞き取

ってみてはどうか。」と回答をいただいた。

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■Becoming a Global Scientist: Science Diplomacy Skills for Early Career Researchers

Coordinator:

Marga Gual Soler, AAAS

Co-coordinator:

Mande Holford, The City University of New York-HUNTER College / American

Museum of Natural History

Presenters:

Frances A. Colón, Acting Adviser to the Secretary of State

Mr. Ernesto Fernandez-Polcuch, UNESCO

Marga Gual Soler, AAAS

<概要>

参加者は 30 名程度。

米国領プエルトリコの神経科学の研究者(科学技術外交の担当者)の話。合意か反対か? 科

学的な視点からの助言とはなにかについての話。どのように経験を活かすか。専門領域か

ら一歩離れた立場となることが、外交では重要となる。

以下を進めることで、結果として国の間の関係がよくなる。

Science for Diplomacy → Give advice

Diplomacy for Science → Promote cooperation

グループ討議の時間があり、キューバと米国の関係改善について、デング熱を題材にグ

ループ討議。参加者を4つのグループに分けて議論し、2 国間の改善策を検討した。例えば、

キューバと米国の大学院生のワークショップ開催やインターンシップ交流、共同研究推進

等のアイデアが出ていた。

図 4.43 Career Development WS, Becoming a Global Scientist の様子

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■Scientific Presentation: Clear Thinking Made Visible

Coordinator:

Adona L. Iosif, Carnegie Mellon University

Co-coordinator:

Ardon Z. Shorr, Carnegie Mellon University

Presenters:

Ardon Z. Shorr, Carnegie Mellon University

Adona L. Iosif, Carnegie Mellon University

Jesse Dunietz, Carnegie Mellon University

<概要>

魅力的なプレゼン資料を作成するためのワークショップ。「Sentence Title はトピックで

はなくポイントを記述すべき」「"Speakers note” スライドが effective で無い理由」「項目

は 3 つをベースに、1. Somewhat important, 2. Least important, 3. Most important の順

に記載する」といった、構成や内容に関するレクチャーや、「グラフにグリッドラインは入

れなくて良い」「特にハイライトしたいものだけ色を付ける」といった視覚的なアドバイス

まで、すぐに役立つ具体的な内容であった。

カジュアルな雰囲気で、例えば「このグラフにあなたならどんなタイトルを付けます

か?」「このタイトルに適したグラフの見せ方は?」といったスピーカーからの質問に対し、

会場から多数のコメントがあり、インタラクティブで活気があった。キャリアワークショ

ップということで若い研究者が多数かと予想していたが、年配の参加者も目立ち、プレゼ

ンスキルへの関心の高さが伺えた。聴衆は 60 名程度。

図 4.44 Scientific Presentation: Clear Thinking Made Visible の様子

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■Staying Positive and Realistic in a Science Job Search

Coordinator:

Natalie Lundsteen, University of Texas Southwestern Medical Center

Presenters:

Christine Ponder, New York University

Thomas Magaldi, Memorial Sloan Kettering Institute

<概要>

Science job search にあたってやるべきことや心構えのレクチャー。具体的には、3 名の

スピーカーのキャリアパスの変遷を紹介したり、ビジネスコースに参加したりティーチン

グボランティアを務めるといったスキルアップのための提案や、求人情報を眺めて求めら

れるスキルをチェックしておくべきなど、非常に実践的な内容であった。聴衆は 20名程度、

女性多数。

図 4.45 Staying Positive and Realistic in a Science Job Search の様子

■Turning a Science Crisis into a Communication Opportunity

Coordinator:

Katie Yurkewicz, Fermi National Accelerator Laboratory

Co-coordinator:

Stephanie Hills, European Organization for Nuclear Research

Presenters:

Saeko Okada, KEK

Eleonora Cossi, INFN

Stephanie Hills, European Organization for Nuclear Research

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<概要>

このセッションは、クライシス時における対応の際に科学コミュニケーションの機会に

した事例について 3 名の発表者より紹介された。この WorkShop の基本的な進め方として

は、発表者が事例紹介とともにこのときにどのようなことをすればよかったのかなどの疑

問を聴衆に投げかける。次に聴衆は近くの人と議論する時間を与えられ、その結果を数名

が発表する。それを踏まえ、実際に起こった事などを発表者より照会するという流れとな

っていた。

わが国からは、KEK 広報室長の岡田小枝子氏が登壇し、東日本大震災および原発事故の

発生時の J-PARCにおいては過去の事故などにより発信する内容などについて経験があり、

迅速な対応ができたことなどを照会した。その際に構築したメディアとのネットワークに

より、KEK での素粒子実験などのプレスリリースの際のコミュニケーションが円滑に進ん

だことなどを発表した。

図 4.46 Turning a Science Crisis into a Communication Opportunity の様子

■Boost your Career through Collaborations

Coordinator:

Casandra Rauser, University of California, Los Angeles

Co-coordinator:

M. S. AtKisson, Grant Writers' Seminars and Workshops

<概要>

参加者は 15 名程度。

チーム研究へのファンディングが増しているという背景のもと、どうすれば有効なチー

ム研究ができるかをテーマとした情報提供セッション。

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NIH Common Fund プログラムでは複数 PI による提案が認められている。NSF では一

部、社会科学者やデータサイエンティストの参加を必須化している。

チーム研究における共同研究者との関係には、興味関心の共通性や協力の度合いによっ

て種類がある。いろいろな関係性のもと、共通課題に向けて非線形思考をぶつけるのがチ

ーム研究のエッセンスである。チームの管理は困難ではあるが、解決への道は近い。

ステルスコラボレーションもある。面識を持たずアイデアのみ共有する。

研究課題と時間軸を共有し、チームメンバー全員に透明であることが重要。あるメンバ

ーはテニュアトラックで成果を焦っているかもしれない。成果の切り分けはできているか。

各チームメンバーのモチベーションの違いにも配慮。返事はすぐ来るか。状況は同期さ

れているか(on the same page)。コミュニケーションを省略すると、状況は悪いものにな

る。

途中でのチーム解散は離婚のようなもので、悲劇である。はじめからお互いが正直にな

ることが大事。

研究者間だけでなく、資金や人材等の人的資源について所属組織の協力が必要になるこ

ともある。

チームメンバーを意図的に多様なものとし、そこに一定の制約条件を課す(共通のゴー

ルを設定する)ことが、コラボレーションとイノベーションそしてチームビルディングに

は重要である。

<所感>

The Science of Team Science (SciTS)という分野・年会で「チーム研究を研究」している

とのことである。精査を要するが、研究・技術計画学会と部分的に重なるか。バーチャル・

ネットワーク型研究所の運営と親和性が高い可能性があり、事業改善に向けて情報収集の

場として検討できるかもしれない。JST 外関係者との交流を通じた事業そのもののオープ

ンイノベーションプロセスを想起させる。

図 4.47 Boost your Career through Collaborations の様子

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■TED-Ed: Telling and Teaching Your Story through Animation

Coordinator:

James Gillies, European Organization for Nuclear Research (CERN)

Presenters:

Stephanie Lo, Director of TED-Ed Programs

James Gillies, European Organization for Nuclear Research (CERN)

Jeremiah Dickey, TED-Ed Animation Producer

<概要>

物理の研究者が TED X チームと作成した動画を流し、作成に関わった物理学者 3 名が、

作成過程や苦労話などを語った。

動画作成は Science in general を目指し、TED X チームとの数週間のアイデア出しから

開始した。作成過程では、地元の学校や放課後の物理クラブで動画を見せてディスカッシ

ョンするなど、現場に基づいた Script の modify を大事にしていた。コーディネートをする

Educator と Editor、Animator がコアとなる基本的なアイデアを共有した上で、「How」(ど

のように見せるか)が最も重要であるとした。

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4.12 Newsroom

1.概要:

プレス・メディアに対するサービスである。これからジャーナリストを目指す学生や、

新興国のジャーナリスト、機関所属の広報担当者もサービス対象に含まれる。具体的には、

朝食の提供とともに行われるプレスブリーフィング、ウェブサービス EurekAlart!を通じた

映像や原稿による年次総会の情報提供、プレス登録者限定の朝食会やレセプションがある。

AAAS 年次総会では、プレス・メディアを通じて一般の人々とつながるというアプロー

チを重視しており、年次総会期間中のニュースリリースやセッションのレポートは 200 以

上に上る。プレス・メディアに対するサービスは、年次総会の発信とともに、研究者や広

報担当官とジャーナリストとのネットワーキング、果ては健全な科学ジャーナリズムを育

成することまでも意図したものである。

2.参加したイベントとその様子

■プレスブリーフィング

プレスブリーフィングは 26 セッション企画されていた。会場は SalonⅤ(San Jose

Mrriott)。1 セッションは 45 分程度。最初の 15 分で研究者 3~5 名程度がセッションの内

容などを話す。多くの場合、スライドはなし。AAAS スタッフが司会となり、記者との質

疑応答を行う。通常のセッションとの違いは、発表時間が短いこと。質疑に重きが置かれ

ているため、説明は簡潔。詳しくは質疑で掘り下げる。時間通りに質問時間が終了してし

まうが、必要な場合には会議室外の廊下等で質問を続けることができる。

プレスブリーフィングでは、概要書がテーブルに置かれている。EurekAlart!のホームペ

ージにも、この概要書は掲載される。半分以上のセッションには embargo がつけられてお

り、基本的にはセッションの開始時間に設定されている。Embargo がとけた後には、年次

総会のホームページにも掲載される。また、ブリーフィングの映像はホームページで公開

される。また、大学のホームページ等でも、様々なリリースやビデオなどが同時に掲載さ

れていた。

Office of Public Program の中にある News and information team が運営。前年の 10 月

頃、Scientific Program が決まったら、そのアジェンダとスピーカーのリストを入手し、ニ

ュース性のあるものを厳選し、アクティブな研究者などをリストアップ。電話で研究者が

年次総会でニュース提供が可能かどうかを確認し、1-2 ヶ月のグループ会議でトピックを

24 件程度に絞り込むという。

社会的な関心が高そうな、エボラ出血熱、自動運転車、次世代バッテリー、次世代イン

ターネット、基礎研究の大型プロジェクト(Active SETI、LHC など)などが選ばれてい

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た。そのほか、ESOF & 世界ジャーナリスト会議(韓国)の説明もあった。

【参考】プレスブリーフィング トピックスとタイムテーブル

Thursday, 12 February

9:00 a.m. – Science Advances Paper –Breaking Research News

10:00 a.m. – Science Paper –Breaking Research News

11:00 a.m. - Time to Start Calling the Cosmos?

12:00 p.m. - The Road to Autonomous Cars

1:00 p.m. - The Future of the Internet

Friday, 13 February

9:00 a.m. - Constructing a New Face: The Digital Solution

10:00 a.m. - Revolutionary Vision?

11:00 a.m. - Breaking a Sound Barrier in Deaf Children

12:00 p.m. - E-Cigarettes: Public Health Threat or Opportunity?

1:00 p.m. - Earthquakes Induced by Human Activity: Managing the Risk

2:00 p.m. - Show Me Where It Hurts: Visualizing Chronic Pain

3:00 p.m. – Updates on the World Conference of Science Jounalists 2015 and

EuroScience Open Forum(ESOF) 2016 (AAAS 主催でない)

Saturday, 14 February

9:00 a.m. - Increasing Earth's Reflectivity to Combat Climate Change

10:00 a.m. - Brain Imaging, from Womb to Tomb

11:00 a.m. - Next-Generation Batteries: A New Report

12:00 p.m. - Ebola Outbreak--Lessons and Response

1:00 p.m. - Beyond Silicon

2:00 p.m. - Cannabis: Medical Frontiers

3:00 p.m. - Large Hadron Collider Restart: An Update

Sunday, 15 February

9:00 a.m. - Earth Observation Systems and Disease Prediction

10:00 a.m. - Big Data and The Social Dynamics of Language

11:00 a.m. - Scientific Engagement: New Survey Results

12:00 p.m. - Can We Feed the World in 2050?

1:00 p.m. - History Written in Skeletons

2:00 p.m. - Building Galaxies: Some Assembly Required

Monday, 16 February

8:00 a.m. - Noise and Light: Another Global Change of Concern

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図 4.48 プレスブリーフィングの様子

■プレス限定の朝食会、レセプションなど(10企画程度)

プレス登録者向けに、様々なスポンサーによる無料朝食会、無料のレセプション等が開

かれている。

朝食会は、各開催日の早朝 7 時 45 分と最も早く開始される。参加者には無料で朝食が提

供されるため、多くのプレス登録者で賑わう。午前中からプレス登録者を参加させる効果

があるようだ。円卓で朝食をつまみながら、前のステージで主催者が紹介やプレゼンテー

ションを行う。12 日の AAAS が主催した朝食会では、AAAS の新旧 CEO が年次総会の意

義や思いなどを語り、質疑応答を行った。

12 日は AAAS、13 日は英国 Biotechnology & Biological Sciences Research Council and

the S & T Facilities Council、14 日は Helmholtz Association、15 日はドイツの機関(詳

細は不明)が朝食会の主催者となっている。2 万ドルのスポンサー料を支払うことでプレス

向けの朝食会が開催できる。

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図 4.49 プレス向け朝食会の様子

主に夕方以降開催されるレセプションもプレス向けのものがある。プレスバッジも持つ

者のみ無料で参加できる。12 日にはジョンソン&ジョンソン提供の International

Reporters Reception(フェアモントホテル)が開催された。このレセプションは EU をは

じめ海外からのジャーナリストをねぎらい、交流を図るものである。

図 4.50 International Reporters Reception

12 日には、カブリ・ジャーナリストアワードの表彰式がテックミュージアムを貸し切っ

て開催された。飲食物が提供されるほか、参加者は(飲食をしながら)ミュージアムの展

示を見ることができる特典があった。

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図 4.51 カブリ・ジャーナリストアワードのレセプションの様子

13 日もライターパーティが美術館で開催。連日様々な形でジャーナリストを奨励し、ジ

ャーナリスト同士が交流する機会が設けられている。

これらのほかに、カブリ財団が主催するジャーナリストラウンドテーブルが開催され、

ジャーナリストアワードに選ばれたジャーナリストの記事などが紹介された。

(参加したイベント)

AAAS Press Breakfast and Briefing(For registered reporters only.)

Thursday, 12 February 2015 7:45 AM - 8:30 AM @Salon 3 (San Jose Marriottr)

International Reporters Reception(Meeting press badges are required)

Thursday, 12 February 2015 8:00 PM - 10:00 PM @Club Regent(Fairmont San

Jose)

Press Breakfast: Sponsored by the Biotechnology & Biological Sciences Research

Council and the Science & Technology Facilities Council of the United Kingdom

Friday, 13 February 2015 7:45 AM - 9:00 AM @Salon 3 (San Jose Marriottr)

Helmholtz Association Press Breakfast

Saturday, 14 February 2015 7:45 AM - 9:00 AM @Salon 3 (San Jose Marriottr)

Press Breakfast(Newsroom registrants are invited)

Sunday, 15 February 2015 7:45 AM - 9:00 AM @Salon 3 (San Jose Marriott)

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3.プレス向けサービス:

■プレス登録

プレス登録は、AAAS のホームページから事前申し込みを行う。登録料は無料。

プレス登録が可能な人は下記のとおり:

1)ジャーナリスト(機関に属する人のほか、フリーランスも含む)

2)Public Information Officer (大学や研究機関の広報担当者等:PIO)

3)ジャーナリズムの学生(科学ジャーナリストの講座の教授から推薦された者)

多様性を確保。記者である必要はない。PIO や Blogger も受け入れる。ただし、PIO は

1 機関 2 名まで。

申し込み後、AAAS 広報チームより、過去に書いた記事・プレスリリース等(言語を問

わず)の送付要請があり、それを確認の上、受理される。EurekAlart!やジャーナリスト会

議のメンバーは、会員番号等で承認がなされる。

このほかに、発展途上地域から 4 人のフェローを招待。今回はインドから 2 人、中国か

ら 2 人。科学コミュニケーションが十分に成熟していない途上国でこの経験をシェアして

もらうのが目的。

プレス登録者は、無料にて(通常は 399$)全ての企画に参加することができるほか、

NewsRoom 用のサービスを利用できる(各会議室の入り口でチェックされる)。

■プレスキット

当日会場で参加受付を行うと、プログラムブック等が入った通常の参加者用キットのほ

かに、以下が含まれるプレスキットが渡される。受付では photoID(パスポートなど)の

提示が求められる。

1)プレスブリーフィングのタイムスケジュール

2)年次総会に関する Q&A 集

3)サイエンス誌など AAAS 発行誌に関する説明文

4)プレス向けサービスなどの会場図

5)AAAS 広報担当者のビジネスカード

6)各種プレス向けイベントのチラシなど(基本的には AAAS 内+ESOF)

■プレス用会場設備の提供

図 4.51 は、プレス用施設のフロアマップである。通常のセッションが行われるコンベン

ションセンターに直結するサンノゼマリオット2F(5 部屋)・3F(数部屋:インタビュ

ー用など)が、プレス用に準備されている。

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図 4.52 プレス用施設のフロアマップ

一般受付のほかに、プレス専用の受付(情報サービス)を SalonⅡに設置。掲示板および

資料置き場が設置され、ブリーフィングのタイムスケジュールが掲示されるとともに、年

次総会やサイエンス誌の概要については各国語版に翻訳されたものが資料として置かれて

いる。

SalonⅣは、プレス登録者の作業スペース。PC 等が利用できる。

Reporter’s Coffee Lounge は、プレス関係者が交流を図るための部屋である。円卓テーブ

ルが設置されるとともに無料のコーヒーが提供されていた。また、3 面に長テーブルが置か

れており、各研究機関などが各機関の資料やセッションチラシを置いていた。また、期間

中のプレスリリース等を自由に貼れる掲示板もあった。

San Jose Marriott ホテルの3階の3つの会議室は、プレス関係者がインタビューなどを

目的として無料で借りることができる。

<所感>

・ 年次総会は、科学者にとってはプレス・メディアを通じて社会に露出する場、プレス・

メディアにとっては良い記事のネタが大量に提供される場と認識されている。

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・ 科学の健全な発展と一般への波及のために、多角的な配慮あり。ジャーナリスト同士

のネットワーク構築、カブリ財団との連携による科学ジャーナリスト表彰、将来科学

ジャーナリストを志す学生の登録、新興国ジャーナリストの招待、大学や研究機関の

広報担当者の登録(科学を社会に広める重要な役割を果たす)など、プレス・メディ

アに対するサービスは丁重である。新聞社やテレビ局等の組織に所属する記者をプレ

ス・メディアと定義して対峙する慣行とは異なる。政府組織でない AAAS だからこそ

とれるスタンスかもしれない。

・ AAAS がプレス向けに提供しているサービス EurekAlert!の加入者拡大という戦略も

見られる(オンラインのプレスリリースを受け取るには EurekAlert!への登録が必要)

・ 広報担当者(PIO)にとって重要なネットワーキングの場。欧米においては、研究機関

が発信したリリースについて、個人的なジャーナリストとのつながりにより記事化さ

れることも多く、年次総会における Reception の場などを利用して、ジャーナリスト

と広報担当者がネットワークを作る場としての機能が見られる。また、同種の担当者

同士の交流の場としての機能もあるだろう。わが国においては同様の場所は非常に限

られている(※科学技術広報研究会などは、同様の趣旨に基づいて実施されているが、

規模などははるかに小さい)。

・ いくつかの企画に参加した感じでは、フリーランスのジャーナリストや、PIO、学生な

どが多数を占めているようだ。「NewYork Times」、「National Geographic」などの大

手媒体からの参加者もいた。

・ レセプションなどの多くはスポンサー付き。AAAS は登録、設備提供、科学的な話題

の提供が主な役割。豊富で充実した企画が米国内外の多数のプレス関係者やスポンサ

ーを呼び寄せている。このような場を作るのは意外に難しい。良質のコンテンツが集

まらなければ、プレス・メディアには注目されない。一方で、メディアに注目されな

ければ、良質のコンテンツは集まらない。一朝一夕にできる場ではない。

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4.13 Family Science Days

1. 概要

一般市民に向け展示場全体が無料開放される企画で、毎年多くの家族連れが訪れる。例

年、展示 2 日目・3 日目の土曜日・日曜日が、該当日に当たる。

地元の機関を中心に展示が構成されており、科学者が自ら実験の実演を行うなど、訪問

者が直に科学に触れる事ができる体験型のメニューが多く用意されているのが、大きな特

徴である。40 機関が出展しており、アトラクションも 18 コマ企画されていた。

図 4.53 Exhibit Hall のフロアプラン

(赤枠部分が、AAAS2015 における Family Science Days 用のエリア)

①出展数:40機関

②発表数:18(舞台が設置され、子供向けの講演・発表などが行われる。)

※赤枠で囲ったエリアの右上が舞台。

2.参加したイベント

Family Science Day and Meet the Scientists Series, Day One(Open to all registrants)

Saturday, 14 February 2015 11:00 AM-5:00 PM @Exhibit Hall (Convention Center)

Family Science Days and Meet the Scientists Series, Day Two(Open to all registrants)

Sunday, 15 February 2015 11:00 AM-5:00 PM @Exhibit Hall (Convention Center)

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3. 主なブースの様子

■United States Geological Survey(アメリカ地質調査所)

USGS は、主に米国の自然景観、天然資源、自然現象に関する研究を行う国の機関。

USGS のミッションのひとつである火山ハザードプログラムに関して、火山の仕組みに

関する実験を行っていた。

図 4.54 United States Geological Survey の出展の様子

■California Academy of Sciences(カリフォルニア科学アカデミー)

サンフランシスコにある、世界最大規模の自然史博物館からの出展。ブースでは簡単

なサンプルなどを持ち込み自然科学に関する説明を行っていたのに加え、バルーンプラ

ネタリウム(写真右:バルーンの内部がプラネタリウムになっている。)を設置し、来場

者の関心を集めていた。

図 4.55 California Academy of Sciences の出展の様子

■ジョンソン宇宙センター(NASA)

NASA は Exhibit エリアの出展に加え、Family Science Days にも出展していた。宇宙

飛行士のスーツ、トレーラー(内部に映像展示あり)を持ち込み、力の入った展示を用

意していた。

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図 4.56 ジョンソン宇宙センター(NASA)の出展の様子

以上のほか、地元サンノゼの科学館(The Tech Museum of Innovation/テック・イノベ

ーション博物館)やカリフォルニア州にある大学(カリフォルニア大学サンタバーバラ校、

サンフランシスコ大学、スタンフォード大学、サンタクララ大学)からの出展もあった。

いずれのブースでも、実験や実体験できる魅力的な展示を用意するなど、活気に溢れてい

た。

■アトラクション

Family Science Days の一角で行われていた発表では、1 日につき 9 プログラムが行われ

た。大学の教授や研究員などが登壇し、子供向けに分かりやすく科学の解説を行っており、

コンピューターサイエンスから宇宙科学、生物学に関することなど幅広いジャンルで発表

が展開された。

図 4.57 舞台を使ったアトラクションの様子

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<所感>

・ Family Science Days の全体面積は Exhibit エリアより小さく、大きすぎる感覚は持た

ないものの、カリフォルニア科学アカデミーのバルーンプラネタリウムや、NASA の

トレーラー展示など大型のものもあり、盛大に行われている印象があった。

・ ブースとブースの間に目立った壁は無く、非常にオープンなスペースでイベントが行

われていた。(実験で反応があったり歓声が上がったりすると、すぐに分かる。)

・ 今年度は Johnson & Johnson が Family Science Days のスポンサーについており、

Family Science Days にブースも出展していた。Johnson & Johnson ブースでは特に

目立った実験等は行われていなかったため、ファミリー層へのプロモーションの可能

性もある。(参考:AAAS2014 のスポンサーは無し、AAAS2013 のスポンサーは、Subaru

of America)

・ 研究者が来場者と一緒になって実験を行うなど、科学を楽しむ様子が随所で見られた。

会場には小学生以下の子供の姿も多く、科学に興味を持つきっかけとしては最適な取

組であると感じた。

・ 難しい事柄についても、子供に理解できるよう分かりやすく簡単に説明されており、

説明する側のスキルの高さも伺えた。

・ 科学者との直接対話だけでなく、ホワイトボードを介してのコミュニケーションの場

を作るなどの工夫が見られた。

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図 4.58 科学者との対話ホワイトボードの様子

(上段) 1 日目午前 (下段)2 日目午後

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4.14 International Lunch Roundtable

Saturday, 13 February 2015 12:00-2:00 PM @Fairmont San Jose, Club Regent

Room

AAAS Chief International Officer の Vaughan Turekian 氏が召集する円卓会議(招待者

のみ参加)。2013 年の AAAS 年次総会(ボストン)から、AAAS, SBPC, CAST, EuroScience

の4機関が科学と社会の界面に存在する地球規模の課題に関する協力を話し合う会議とし

て開催されている。

(共催機関)

・ AAAS …American Association for Advancement of Science

・ SBPC …Brazilian Association for the Advancement of Science

・ CAST …China Association for Science and Technology

・ EuroScience

今年の議論のテーマは、「エビデンスに基づく政策」。議論は、以下2つの問いでフレー

ムされていた。

1. 政府の科学顧問(政府の中で科学コミュニティの独立した声を提供し、政治的リーダー

に科学を使って奉仕する)の適切な役割は何か?

2. 科学的知識と経験はますます地球規模化している。地球規模で国際的なエビデンスの源

は、国の政策立案においてどのように組み込むことができるか?

発言者と発言の内容についてはチャタムハウスルールで口外しないことになっている。

出席者は表 4.1 のとおり。

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表 4.1 International Lunch Roundtable 出席者一覧

Tateo Arimoto

National Graduate Institute for Policy

Studies, Japan/ Japan Science and

Technology

Agency

Wolfgang Burtscher

Directorate-General Research & Innovation,

European Commission

Cathleen Campbell

CRDF Global

Jian Chen

China Association for Science and

Technology

Bill Colglazier

AAAS

Frances Colón

U.S. Department of State

Peter Heffernan

Marine Institute, Ireland

Gerald Fink

MIT/ AAAS

Peter Gluckman

Office of the Prime Minister’s Chief

Science Advisor, New Zealand

Lydia Harriss

Parliamentary Office of Science, and

Technology, UK

Rush Holt

AAAS

Seung-Hwan Kim

Korea Foundation for the Advancement of

Science and Creativity

Serhiy Kvit

Ministry of Education and Science, Ukraine

Alan Leshner

AAAS

Thomas Lovejoy

George Mason University

Román Macaya

Embassy of Costa Rica

Gary Machlis

U.S. National Park Service

Mmboneni Muofhe

Department of Science and Technology,

South Africa

Helena Nader

Brazilian Association for the Advancement

of Science (SBPC)

Federal University of São Paulo

Norman Neureiter

AAAS

Satoru Ohtake

Japan Science & Technology Agency

Pär Omling

European Science Foundation

Gilles Patry

Canada Foundation for Innovation

Geraldine Richmond

University of Oregon

AAAS

Barbara Schaal

Washington University in St. Louis

AAAS

Phillip Sharp

MIT/ AAAS

Peter Tindemans

EuroScience

Vaughan Turekian

AAAS

Tom Wang

AAAS

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4.15 President Dinner

Saturday, 14 February 2015 7:00 PM-8:30 PM @Fairmont San Jose, Regency

Ballroom

AAAS President 主催の晩餐会。Gerald Fink 氏の演説、これまで AAAS の CEO を 13

年務めてきた Alan Leshner 氏への謝辞、歴代の Presidents やの紹介、次期・次々期

President 候補者の紹介、DOE 元科学担当次官 Orbach 氏への謝辞など。最もハイレベル

のネットワーキングイベントである。

図 4.59 AAAS President’s Dinner の様子

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図 4.60 晩餐会への招待状

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5. JST 主催企画の報告

5.1 JSTブース

<概要>

①出展面積: 6ブース(6m×9m)を出展

②今回で7回目の出展(2009 大会〔シカゴ〕から)

③ブース訪問者数:544人

④ブースの位置: 407(赤枠部分)

図 5.1 JST ブースの位置(入り口近くの比較的アクセスのよい場所に確保された)

【参考】

European Commission: 507

Subaru of America: 607

NASA:311、JAEA:413

北海道大学:424

WPI:425、筑波大学:426

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図 5.2 JST ブースのレイアウト

図 5.3 JST ブースの様子

・ JST は European Commission、Subaru of America とならび大きなブースを確保して

おり、エントランス近くの配置であったこともあって、一定の存在感を発揮していた。

・ 4年連続で出展しているが、毎年ブースを訪問してくれる方もおり、継続して出展する

意義を感じた。続けることで、認知度の向上をはかれる。

・ 今年は 6 ブース(6m×9m)出展し、人の循環を心がけたレイアウトとした。スペース

を広く確保したこともあって、来場者が立ち寄りやすい展示を構成できた。ただし、来

年もブース料金の値上げが計画されており、展示場全体の規模も考えて、次回は 4 ブー

ス出展でも不足は無いかと考える。

・ 来訪者の属性は、学生、研究者などが多かった。導線が分かれていた関係上、Family

Science Days からの家族連れの流入は少なく、例年に比べ子供の数は少なかった。

・ ブース内のモニターでは、戦略事業(ERATO)のプロジェクト紹介動画を流した。動

画コンテンツはよほど惹きつけるものでなければインパクトとして弱いのが実情で、足

①戦略 ⑦ノーベル賞

②戦略 ⑧科コミ

③戦略 ⑨科コミ

④未来館 ⑩国際

⑤情報 ⑪SATREPS

⑥産連 ⑫JST 概要

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を止めてくれる来場者は少ないため、展示パネルと連動させるなど、より訴えかける工

夫が必要であるように感じた。

・ プロジェクト紹介動画は、4 本のうちどれが面白かったかシールを貼るなど投票しても

らう形にしたが、動画に足を止める来場者が少ない中でも、ある程度の票数は集まって

いた。

・ 次回以降はターゲットをより絞り、研究に直結した成果を分かりやすく伝え、海外に紹

介する点に注力すべきかと思われる。

<戦略的創造研究推進事業総括実施型研究(ERATO)の展示について>

・ 日本科学未来館との連携によって制作した動画および過去に日本科学未来館の展示と

して制作した動画の上映を行うとともに、プロジェクト紹介パネルの展示を行った。

プロジェクトは下記の通りである(カギ括弧内は映像タイトル)。

①染谷生体調和エレクトロニクスプロジェクト「フィルズハウス」

②河岡感染宿主応答ネットワークプロジェクト「インフルエンザと谷風」

③岩田ヒト膜受容体プロジェクト「鼻刑事」

④湊離散構造処理系プロジェクト

「フカシギの数え方~おねえさんといっしょ!みんなで数えてみよう!」

⑤袖岡生細胞分子化学プロジェクト(パネル展示のみ)

・ 来場者には気に入った映像にシールを貼っていただく形で投票を行った。集まったシ

ールおよびコメントは下記の通りである

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図 5.4 ERATO アニメーション映像投票シート

・ 様々なプログラムが同時進行するため、動画で足を止めてくれる方は多いとは言えな

かったが、初等教育関係者や Family Science Dayに参加していた小学生を中心とした

家族層には好評であった。

・ 子どもが友達を連れてくる、保護者が子どもを連れてくるといった様子も見られ、教

育的内容のアニメーションの訴求力はそれなりに高いと感じた。

・ JST ブース全体の対象層や目的とややそぐわない点もあったため、次回以降があれば、

ブースの対象層を考慮した上での展示選び、工夫が必要であると感じた。

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<他ブースの様子>

・ 展示場全体は昨年に続き縮小傾向だが、今年は米国内からの展示が若干復活していた。

(NASA、CASIS など)NASA の研究所が地元にあるなど、立地的な問題か。

図 5.5 NASA のブースの様子

・ Exhibit エリア全体として人が減少しているので、他ブースもまばらな印象。だが、NASA

の大型ディスプレイなどには来場者が集まっていた。

・ 他ブースの出展目的としては、機関の認知度向上を目的としてあげる機関が多かった

が、リクルーティングをあげる機関、認知度向上としながらも最終的にはリクルーテ

ィングを目指す機関があった。以下は、代表例。

●European Commission

出展目的:リクルーティング

リクルーティング効果は少ない。世界各国で行っているリクルーティング活動の一環。

図 5.6 European Commission のブースの様子

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●JAEA(原研)

出展目的:JAEA を知ってもらうこと

研究効果ではなく、機関紹介のポスターを展示。

図 5.7 JAEA のブースの様子

●ETH(チューリッヒ工科大学)

出展目的:大学の知名度向上

思っていたより人が少なく、対象者(研究者、記者など)がブースに来ないため、ブース

については検討の余地あり。

<所感>

・ 開催地により来場者の属性、人数に変動があるため一概に比較することは難しいが、

例年よりは来場者が少なかったと思われる。ただし、今回は市を挙げてイベントを支

援しており、地域に密着した様子が見られた。

・ 例年に比べ子供のブース訪問者が減ったことにより、Exhibit エリアには大人の姿が目

立っていた。そのため、展示パネル(タペストリー)に関心を示す訪問者が比較的多

いように思われた。

・ 今回は、展示初日(金)に Exhibit エリアで朝食サービスがあった。(土日はなし)新

たにスポンサーがついたためか。(スポンサー数・・・2014:7 機関、2015:12 機関)。

なお、スポンサー数は毎年変動があり、増えていくとは限らない。

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5.2 Exhibitor Sponsored Workshop “Science and Society in Japan”.

Friday, 13 February 2015 2:15 PM-3:15 PM @Room 210H (Convention Center)

Organizer&Speakers (Exhibitor):

Satoru Ohtake, Senior Executive Director, Japan Science and Technology Agency

Kazuyoshi Shimada, Deputy Manager, Center for Science Communication, Japan

Science and Technology Agency

Commetators:

Peter Tindemans, Secretary General, EuroScience

Vinny Pillay, Science and Technology Representative of South Africa in Brussels,

Department of Science and Technology, Repbulic of South Africa

<概要>

JST より、日本の科学技術と社会の関係の政策的な流れを第 1 期科学技術基本計画から

振り返り、東日本大震災で科学コミュニティに対する信頼が低下したことを紹介。これが、

単に災害や原子力発電に関する科学技術に限られない、科学コミュニティに内在する構造

的な問題であることを念頭に、JST が研究開発戦略の立案、フューチャーアース、サイエ

ンスアゴラなどを通じて社会との協働に取り組んでいることを紹介。

サイエンスアゴラ 2014 で制作したコンセプトビデオを上映。

「社会に科学を根付かせるためにどのようなことができるか?」をテーマに、下記3つ

の論点を挙げて、コメンテーターと会場から意見を募った。

1. 科学者と工学者はどのように「社会的期待」を見つけられるか?

2. 科学者、工学者、市民は将来の科学技術の企画、創造、活用においてどのように協

働できるか?

3. 科学における市民との協働のために、どのような社会インフラが必要か?

図 5.8 ワークショップの様子

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<コメンテーターのコメント>

Pillay 氏

・ 南アフリカにおける科学と人々の間の課題のひとつは、両者のより緊密な対話。

・ 危機的な状況においては、妥当な市民の声の形成が重要。科学的な視点では、「原因は

何か」「何が起こっているか」「どうやったら緩和できるか」といった対話になるが、

市民の感覚では「平易さ」「安心」などが重要。

・ 大きな災害がやってくる前にできることは、人々の生活の中に科学をしっかりと位置

づけていくこと。南アフリカの文脈でもそれは簡単にできることではない。

・ 気候変動やエネルギーに関する国民的議論においは、世界的な証拠や議論を、国民的

議論と結びつけることが重要。

・ 一人一人の認識に目を向けることが大切。特に子供たちは“科学の大使”となって科

学を社会の中に根付かせてくれる。

・ 科学者はすばらしいコミュニケーターではない。南アフリカでは、科学ジャーナリズ

ムと正式な関係性を築いている。メディアが科学の重要性を理解すれば、人々の認識

も変わる。

・ 科学への関与にはさまざまなレベルがあるが、究極的には、政府が科学に関与し、意

思決定をし、それを実施する責任を持つ。意思決定のプロセスに人々を取り込むこと

が重要。必ずしも賛同は得られないかもしれないが、世界中で議論になっている点だ。

・ 南アフリカはオーストラリアやほかのアフリカ諸国とともに Square Kilometer Array

を誘致しようとしているが、宇宙科学であっても、人々を引き込まなければならない。

それに取り組む価値や利益(雇用や職業能力の開発など)を表現すべき。

・ 科学の世界にはいつも新しくて良いニュースや、疑わしいニュースがある。政府の役

割は、市民、産業、NGO などさまざまなレベルの人たちを集めて会話を続けること。

単に科学者からのメッセージや政府のメッセージを出すことではない。

Tindemans 氏

・ どのように「社会的期待」を見つけられるか?について。これは”reflexibity(にわと

りとたまごの関係)”の問題だ。社会的課題は見けるものではない。この質問は言い直

すべきだろう。社会の課題は一般に議論を通じて浮かび上がるものだ。

・ 気候変動、健康、輸送、エネルギー、都市の安全性などの課題のように、多くの人た

ちが優先的に関心を持つものはある。しかし、これは簡単な一面だ。たとえば、医療

において科学が何を優先すべきか語っていない。科学者はこの分野に社会からの支援

があることを認識し、「この状況ではこちらの方向に行こう」と判断する議論において、

人々を引き込まなければならない。それに合わせて研究したいと言うべき。

・ 企画、創造、活用における協働について。この議論の問題点は、非常に一般的な言葉

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で議論されることだ。科学の取り組みは基礎から応用まで幅広い。科学者は常にそれ

を明らかにしておく必要がある。このシステム全体が整っているから科学は花開く。

科学活動全体がどこで支えられるかを考えるべきで、特定の分野だけを見るべきでは

ない。(米国では、基礎研究支援についての政策的議論は存在しない。連邦レベルで基

礎研究の支援がなされている。社会が基礎研究に期待していることの現れだ。)

・ 企画、創造、活用における協働について。活用における協働は簡単。問題は企画と創

造だ。科学は幅広い。数学や天文学は一般の人たちと Co-design できない。科学者が

社会の支援を受け、社会が科学を活用することができるところに絞り込んで「どうす

る?」と議論をすべし。大学や研究機関は、地域の課題に取り組むことが重要。地域

の具体的な課題に科学者が専門性をもって貢献する。解決策は技術的なものばかりで

はないので、地域の人々や政治家を引きこまなければならない。彼らは科学者ともに

意思決定ができたと納得するし、科学者は支援を受けられる。

・ 欧州連合で起こっている例を紹介したい。「責任ある研究とイノベーション(RRI)」は

欧州における科学技術政策の議論におけるバズワードだ。このタイプの議論をあまり

に一般的な方法で行わないように注意すべきだ。RRI は役立つコンセプトだが、同時

にかなり散漫なコンセプトだ。RRI はいくつかの原則に立脚しているが、Integrity や

Gender は科学の統治の話だ。「欧州委員会が支援する研究プロジェクトの評価基準は

RRI の評価基準に合致すべき」といったことを言いはじめると、科学研究の効果が失

われる。

・ 過去に欧州委員会が行ったプロジェクトの事例から、科学における「市民との協働」「倫

理的な問題についての突っ込んだ議論」「科学に女性を取り込むこと」等についての有

用なコンセプトを探し出そうとするプロジェクトがある。事例を集めて一般化して使

おうとしている。バズワードを有用なツールに変革させようとする良い取り組みだ。

図 5.9 コメンテーターによる発言の様子

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<会場からのコメントと応答>

--Arimoto 氏--

・ 福島の原発事故のとき、政府内部、外部のアドバイザーは適切なアドバイスができな

かった。この経験に基づいて、日本の科学コミュニティ(学術会議)は、行動規範を

作った。これは良いこと。問題は、それをどう実現するかだ。伝統的な学術分野とそ

のマインドセットをどのように変えられるか?

・ JST や日本政府は、研究開発投資や評価のシステムを徹底的に変える必要がある。ボ

トムアップだけでなくトップダウンで。特に日本の文化・社会システムの中では、ト

ップダウンの手段が必要。

--Journalist--

・ 科学コミュニティと人々の対話を実現するために、米国では、サイエンスフェスティ

バルを開催して若者を呼んだり、科学博物館を運営したり、科学組織がジャーナリス

トに賞を出したりする。日本では、科学フェスティバルが博物館やジャーナリスト賞

を出すといった活動より主要なのか。それともこれらすべてを試みられているのか。

(Ohtake 氏)

・ 日本政府は科学コミュニケーターの育成に取り組んできた。しかし、科学コミュニケ

ーターは科学者でない人が従事するので、コミュニケーションの中の科学的要素が薄

まってしまった。これは問題。

・ JST は、科学者に人々と向き合う機会を持ってもらうように取り組もうとしている。

フェスティバルもやる。博物館も持っている。コミュニケーションの方法論だけでな

く、科学についての真の深い思想について社会と双方向で共有する努力をしたい。

(Tindemans 氏)

・ 映像にもあったように、私は昨年サイエンスアゴラに参加した。科学コミュニケータ

ーが人々とつながろうとする非常に大きな努力と、未来館というすばらしい博物館を

見た。日本は一般市民につながることについてさまざまな面で活発であり、先進的だ。

(Pillay 氏)

・ 教育と認識が重要。大人のレベルに限らず、様々な層での重層的な取り組みが続いて

いくことが重要だと思う。

--Neureiter 氏--

・ 米国の半導体企業(TI)で働いていた経験で、日本のタクシードライバーはみんな半

導体のことを知っていたのには驚いた。アメリカではありえない。日本の技術に関す

る教育はすごかった。福島の事故で科学と社会の関係が壊れても、再建できると思う。

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・ 今、日米の半導体産業は低調で、韓国や台湾や中国に中心が移ってしまっている。こ

れは社会との関係性改善の問題ではないが、この状況も日本は少しずつ再建できる力

を持っていると思う。

・ 魔法の方法はない。科学の重要性について社会とともに話し、大学の先生が日本の様々

な町で、学校や市民集会でもっと話すべきだろう。

・ 原発の再稼動も重要な社会的課題だ。日本は意思決定しなければならない。誰も原子

力は欲しくない。福島の事故の後にみなが不要だとデモをしていたことを思い出すべ

きだ。一部の再稼動ははじまりつつあるが、それはゆっくりと着実に進むプロセス。

・ 日本の将来にとって科学技術は絶対に重要であることに反対する人はいない。そのこ

とをいろいろなところで話し続ける必要がある。学校で話し始めるのはよいことだ。

子供たちはそのことを家で話すだろう。それが何年もたって社会全体に大きなインパ

クトを与えるだろう。市民集会をしてもよい。そのプロセスは日本のコミュニティを

流動化し、対話に参加するようにしていくだろう。

--Morse 氏(ワシントン大学教授)--

・ 私たちの海洋研究所の活動について紹介したい。日本の星元紀先生らと始めた研究者

交換のプログラムがある。小さなプログラムだが、若手や年配の研究者(大学院生と

教授)を交換している。このプログラムを通じて、科学を正しく認識するように、若

い人たちの情熱を開発してきた。日本のミキモトがこの活動を非常によく支援してく

れている。

・ 人を交換することで、非常に多くのことが得られる。場所を見せ、その技術がどう使

われるかを見せ、コミュニケーションを通じて情熱を感じさせることができる。

・ もう一点、もっと女性に参画してもらいたいと思っている。簡単なことではないと思

うが、様々な関係性を活用するには有用だ。

<参考>

ミキモト・モース奨学金

http://utf.u-tokyo.ac.jp/result/project-result/47.html

(Ohtake 氏)

・ 若手の重要性はもちろん同意。

・ Neuliter 氏のコメントについて応えたい。日本で教育を受けている人の割合はほぼ

100%である。同年代の学生のうち、約 78%は高校進学する。大学進学率は 56%。短大

等も含めると、70%の若者は高等教育を受けている。これは日本の強みだ。しかし、そ

の質はどうだろうか。これは問題でもある。特に科学教育については、カリキュラムは

とてもよいがその実施段階で問題をはらんでいる。

・ 若者を科学的な活動に関わらせるとともに、教授からも若者に、夢を現実的に伝えてい

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く活動に関わって欲しいと思っている。JST には、プロの研究者の支援とともに、科学

教育支援の機能を持っている。研究、教育、社会をうまくつないでいく必要がある。

(Pillay 氏)

・ ここで議論されたことは一人の声ではない。これから一緒に活動する人を同定しなけれ

ばならないだろうが、小さな成功を積み重ねていくセンスを持つ必要がある。人々にと

って今何が課題なのかをよく考えて、一度小さな成功が得られたら、そこを起点に人々

を巻き込んでいける。

(Tindemans 氏)

・ Neureiter が言ったように、人々を技術について深く巻き込むのが日本の伝統だ。日本

は福島の危機の後もずっと科学を支援しつづけている。必ずこの危機を克服できるはず

だ。

<所感>

・ 参加者は 50名程度。途中から来た人を含めると 60名程度。非アジア人は 15名程度か。

フロアから積極的な発言は少なく、フロアとの対話が発展しにくかった。問いの設計

が抽象的すぎたか。課題を残した。

・ コメンテーターに非日本人を入れることは集客に大変効果的。

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5.3 Special Event “Forum of Global Fora"

Friday, 13 February 2015 7:00 PM-8:30 PM @Club Regent (Fairmont San Jose)

Organizers:

South African Science Forum, Department of Science and Technology, Republic of

South Africa

World Science Forum 2015 Budapest, ICSU and UNESCO

Science Agora 2015 Tokyo, Japan Science and Technology Agency

EuroScience Open Forum 2016 Manchester, EuroScience

International Network for Government Science Advice

Logistical Contact:

Aidan Gilligan, SciCom

(1) 概要

世界の科学フォーラム関係者のネットワーク作りを目的としたレセプション(招待者の

み)。JST もサイエンスアゴラの主催者として共催。世界各国から、政府機関、大学、ファ

ンディング機関、ジャーナリスト等 119 名が出席。AAAS Chief International Officer の

Vaughan Turekian 氏の司会で、EuroScience Open Forum (July 2016 @Manchester) 、

World Science Forum (November 2015 @Budapest)、サイエンスアゴラ(November 2015

@Tokyo)の紹介や、ニュージーランド政府首席科学顧問の Peter Gluckman 氏より、

「Building a Global Scientific Enterprise」と題する講演があった。

図 5.10 Forum of Global Fora の様子

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図 5.11 Forum of Global Fora の招待状

(Science Agora として共催)

(2)コメントの詳細

Luke Georghiou, Co-Champion, ESOF 2016

第7回 ESOF は 2016 年 7 月にマンチェスターで開催。第6回 ESOF には 85 カ国からお

よそ4500人が参加した。セッションのテーマは、Healthy population, Material dimensions,

Sustaining the environment, Data and the human brain, Far frontiers, Living in the

Future, Bio-revolution, Science for policy and policy for science, science in our cultures

の9つ。応募の締切が 2015 年 5 月末なので是非ご検討いただきたい。

Vinny Pillay, Science and Technology Representative of South Africa, Department

of Science and Technology, South Africa

科学技術大臣がまだ到着されていないので代わって挨拶する。南アフリカはこれまで

AAAS, ESOF, Science Agoraに積極的に参加してきた。2015年8月ケープタウンでScience

Forum を開催する(National Science Week の期間)。セッションのテーマは、Responding to

society challenges, Skills development for knowledge economy, Capacity development,

Science gender, Astronomy 等を想定。

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Satoru Ohtake, Senior Executive Director, JST

JST はファンディングだけでなく、科学コミュニティと社会の連携も推進している。そ

の1つがサイエンスアゴラ。AAAS 年次総会は 180 年以上の歴史があり親類というのはお

こがましいが、サイエンスアゴラも 2015 年で 10 周年を迎える。昨年のサイエンスアゴラ

にはアジア・オセアニア、米州、EU、アフリカ等世界各国からご参加頂いた。我々は科

学と日本の社会をつなげるだけでなく、世界とも関係を深化させたいと考えている。2015

年のサイエンスアゴラでは 10 周年記念セッションを企画している。あいにく旅費を工面す

ることはできないが、この場にいらっしゃる方々には是非ご参加頂きたい。我々の目標は

同じだと思っている。互いに協力しあおう。

Gergely Bőhm, Head of Department, Department of International Relations,

Secretariat of the Hungarian Academy of Sciences

2015 年 11 月ブダペストにて World Science Forum を開催する。Hungary Academy of

Sciences, UNESCO, AAAS 等 が 共 催 。 セ ッ シ ョ ン の テ ー マ は Sustainability,

Communication with society, Confidence in Science, International cooperation 等を想定。

Sir Peter Gluckman, Prime minister ’s chief science advisor, New Zealand

Plenary Lecture, Building a Global Scientific Enterprise

AAAS 年次総会では、将来の科学を形作るイニシアティブに接することができた。今日、

科学を取り巻く状況は急速に変化している。ICT の発達による、データ主導型の研究やオ

ープンデータの流れ、また、政府や社会による社会的課題の解決に資する研究成果の要請

等。科学は社会の一部であり、単独では存在しえない。イノベーションは社会にその真価

が共有されなければおこらない。つまり、科学者は、研究インパクトを最大化するため、

社会の多様なステークホルダーと対話を通して協働しなければならない。本フォーラムを

主催している4機関はグローバルな対話とパートナーシップの構築を促すプラットフォー

ムとなり、重要な役割を果たしている。

図 5.12 サイエンスアゴラ紹介の様子

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5.4 Symposia (Information and Data Technology) “Wise Computing: Collaboration

Between People and Machines”

Sunday, 15 February 2015 1:00 PM-2:30 PM @Room LL20C (Convention Center)

Organizer:

Kazuo Iwano, Japan Science and Technology Agency

Co-organizers:

Tateo Arimoto, National Graduate School for Policy Studies

Yosuke Takashima, Japan Science and Technology Agency

Speakers:

Miwako Doi, National Institute of Information and Communications Technology

James Wilsdon, University of Sussex

James Spohrer, IBM Global University Programs

<概要>

岩野(JST):

「知のコンピューティング」提案の背景を説明。従来のインテ

リジェンスからウィズダムへの展望を語った。さらに、今回のス

ピーカー3人の位置づけを説明。

James Spohrer, IBM,”From Cognitive Computing To Wise

Computing: A Service Science Perspective(人、社会がサービス

を通じて知識や知恵を活用する)

Miwako Doi, NICT, “Realizing Creative Collaboration Among People and Machines”

(知のコンピューティングを実現する)

James Wilsdon, University of Sussex, “Science Policy and the Governance of New

Technologies”(SSH,ELSI の観点から)

Spohrer (IBM):

これまでの Watson などはインテリジェンスを目指していた。ウ

ィズダムを追求するには、個別のツールだけではなく、総体として

のシステムへの変化を目指さないといけないと述べた。

確かにマシンは smart になってきた。道具からアシスタントにな

り、協力者になってきた。しかし、wise といえるのか?Wise の定

義は?組織や社会のことを考えた決定が求められている。

人の職業はどうなるのか?誰もが知的なアシスタントを持てる

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ようになるとよい。

今後の方向性は、Cognitive Systems から Smarter Service Systems へと、IBM、MIT、

NSF は取り組むだろう。

土井(NICT):

CREST「人間と調和した創造的協働を実現する知的情報処理シ

ステムの構築」を紹介

筑波大鈴木教授の研究は、他者との接触を視覚に訴えることで、

自閉症児のコミュニケーションをサポートしている。これは、従

来の人工知能の研究とは一線を画する「暖かな」研究だ。

課題としては、個人、集団の知的・情緒的な行動の理解、人間

社会との協調、が挙げられる。

Wilsdon(University. of Sussex):

ヨーロッパを中心とした様々な知的あるいは社会に関連した活

動の紹介。

サイエンスとパブリックの関係については、ナノテク、バイオの

分野で盛んに議論されている。イノベーションを起こすためにもデ

ィベートが必須。リスクを避けてはいけない、マネージしなければ

ならない。

ICT の課題としては、WikiLeaks や E.Snowden 問題のような、

情報セキュリティや統治の観点、機械に雇用が奪われるという観点が挙げられる。

未来に向けての洞察としては、イギリスにおける Foresight 活動、EU プロジェクトにお

ける Vilnius 宣言、科学的助言活動は重要。科学的知識が断片的であり、不確実であること

を認識する謙虚さを持たなければならない。

有本(JST):

日本のプロジェクトだけではなく、世界的な議論が必要という前

提で、以下を指摘。

対応性(Readiness):技術だけではなく、人や社会としての対応

が求められる。過去の反科学運動はコミュニケーション不足に起因

している。技術開発だけではなく、社会への影響を考えないといけ

ない。

大変革の時代:Science2.0、Reality2.0 など、いろいろなセクターが変化し始めている。

不確実性、複雑性の時代:テクノロジーのもたらす結果だけではなく、結果に至るプロ

セスにも注意を払わなければならない。

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社会・人文科学が自然科学、技術と結びつくこと:それには科学者のコミュニケーショ

ンが必要になる。

このような社会的なチャレンジは小さな成功の積み重ねで実現される(Karl Popper)。

<Q&A>

Q:wise には適切な判断と言う意味がある。これをどうとらえるか? (Andrew Briggs,

Oxford University)

A(岩野):機械学習はロジカルだが、判断には社会的な規範や文化が反映される。コミュニ

ティとしての共通の理解が必要だ。

A(Spohrer):チェスなどのゲームの世界と違って、実世界での判断はとてもチャレンジング。

Q:リスクのある中でも決定はしなければならない。そのために何が必要か?

A(岩野):採りうるオプションにはリスクも示す。その上での判断というのは、数学的な問

題だけではなく、人間やコミュニティの行動が強く影響する。従って、社会科学との連携

が不可欠である。

A(有本):状況が変化する社会においては、判断はコンテキストに依存する。

Q:人類の知の向上と言っても、さまざまな格差があり、結局は 1%に人にしか届かない。99%

の人にいかにして届けるのか?(Harry Blaney, Center for International Policy)

A(岩野、有本):科学は社会に対して責任を負う。どう実現するかが課題だ。チャレンジする。

Q: 賢いコンピュータの賢い使い方も必要。便益だけでなく、リスクもきちんと伝えること。

(Satoru Otake, JST)

A(岩野):コンピュータの研究だけではない。社会や文化的な挑戦も進めていく。

<最終コメント>

Wilsdon:国際的な協力を進める。

Spohrer:科学技術だけではなく、法制度なども重要。社会インフラへの投資も必要。

土井:トレードオフがあるが、ICT はそれらを越えるだろう。

有本:社会的な課題に対応するには、科学技術が社会との協力やコミュニケーションが必

要。社会だけでなく、サイエンスの再設計も必要になる。

<所感>

・ 社会的な側面から「知のコンピューティング」をとらえることができた。

・ 50~60 人の聴衆があった。これは他のセッションに比べて多いほう。

・ フロアからも積極的な発言があり、「知のコンピューティング」をグローバルな視点で

検討するよい機会になった。

・ 新たな潮流を創り出すためには、ESOF やアゴラの場も活用し、議論継続が必要。

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図 5.13 Wise Computing: Collaboration Between People and Machines の様子

多くの質問者が列をなし、議論は活況であった。

セッション終了後、聴衆との意見交換は続いた。

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5.5 General Poster Session “Practices to Offer Science Communication Opportunities

through Funding Program Management”

Senkei Umehara, Japan Science and Technology Agency

戦略的創造研究推進事業 CREST・さきがけでは、バーチャル・ネットワーク型研究所運

営の一環として、研究領域の研究者が科学コミュニティ内外と交流する機会を提供してい

る。

本ポスター発表ではそれらの事例を紹介し、来場者と議論・意見交換することで、今後

の事業運営の中でパイロット的に導入できそうな“科学コミュニケーションモジュール”の

アイデアを得ることを目指した。紹介した事例は以下の 5 つ。

(1) 領域会議での異分野研究者間の交流促進

(2) さきがけ研究者交流会の開催による、領域を横断する交流機会の提供

(3) Science For Society (SciFoS) プログラムを通じた、さきがけ研究者に自身のプロジ

ェクトの価値再発見を促すワークショップ・インタビュー機会の提供

(4) 未来館常設展・企画展への協力、施設入居

(5) サイエンスアゴラ出展・登壇

<所感>

来場者は 7 名、うち 4 名は同時間帯のポスター発表者であった。残念ながら内容の紹介

にとどまり、議論・意見交換は不完全燃焼であった。

現地在住の元理研 BSI 日本人研究者は、海外在住者がさきがけに応募可能であることを

ご存じでなかった。発表の本旨ではなかったが、制度紹介ができたことは有益であった。

米国・中国におけるベンチャーキャピタルの役割を比較分析する学生とは、日本では公

的機関が部分的にハイリスク研究の成果展開を支えている実態に関心を持っていた。日本

の科学技術市場に関する資料・情報が不足している印象を持たれているようであった。

図 5.14 ポスター発表会場の様子

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6. インタビュー

6.1 AAAS Office of Public Programs

日時 2015 年 2 月 15 日(日)13:00-14:00

場所 San Jose Marriott Hotel, Blossom Hill 1

参加メンバー

AAAS/ Ginger Pinholster, Director, Office of Public Programs; Brian Lin, Director,

Editorial Content Strategy EurekAlert!

(1) 会合の目的

AAAS 年次総会のプログラムの作り方について聴く。

(2) 面会の概要

●開催地を San Jose にした背景

・ Office of Public Program でリストを作り、President(Site selection committee の長)

が決定する。

・ 実行可能な都市は限られる。参加者の 50%は地元からの参加になるため、地元の科学コ

ミュニティが重要になる。米国の科学コミュニティは、ボストン周辺とスタンフォード

大学周辺が二大クラスター。どうしても東海岸と西海岸を往復することになり、中部は

少なくなる。

・ 西海岸はサンフランシスコでよく開催してきたが、“帯に短したすきに長し”だったので、

その周辺を探したら San Jose があった。

・ テーマは、開催都市が決まってから決定する。San Jose が選ばれて、そこが Innovation

の町だったので、「Innovation, Information and Imaging」になったのだろう。

※アカデミックなメンバーの集会にビジネス界のメンバーを取り組む意図でイノベーショ

ンの象徴たるシリコンバレーを選んだといった回答を期待したが、そのような認識は少な

くとも Ginger Pinholster 氏は持っていないようだった。

●プログラムの編成

Symposia とそれ以外の編成方法は異なる。Symposia 以外は、Office for Public Programs

でアレンジする。内容については Tiffany 氏がすべてレビューしている。公募はしない。

Local Committee とも協力。Local Committee Meeting は、年に 2 回ほどの非常に非公式

な会合で、地元メディア、地元のコミュニティなど、年次総会を開催するために必要なさ

まざまなアドバイスを AAAS 事務局に与える。

Symposia

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・ Symposia は、AAAS Council が公募(Call for Session Proposal)を行い、ピアレビュ

ープロセスを経て Scientific Program Committee が選定する。

・ Scientific Program Committee は、Geraldine Richmond (AAAS President-Elect, 2014)

が召集する。そのファシリテーション(内容には口を出さない)は、Tiffany Lohwater

氏(Director of Meetings and Public Engagement)がやっている。

・ 公募するだけでなく、24 ある Section が 1-2 件のセッションを提案する(承認されると

は限らない)。Scientific Program Committee もいくつか提案する。

・ Symposia のカテゴリ("Tracks”と呼ばれる)は、ピアレビューで選ばれた提案をカテ

ゴライズして決まる。あらかじめこのカテゴリを設定して公募するわけではない。地元

を意図的に優遇することもない。

※Symposia は民主的でよく構成されたプロセスで選定されるが、180 もある。Ginger さん

は、AAAS 年次総会のプログラム数は多すぎるので、少し減らさなければならないと考えて

いるようだ。参加者は多すぎるプログラムの中で行き来に苦労しており、すべてのセッシ

ョンにニュース性があるわけでもないからだ。逆にサイエンスアゴラが昨年とったフォー

カスアプローチについてどのようにしたか質問を受け、われわれはそうせざるを得なかっ

た経緯をご説明した。

Plenary Lecture

・ Board of Directors が企画。

Topical Lecture

・ Board of Directors, Sections, Office of Public Programs, AAAS 幹部, Scientific Program

Committee、Science 誌の Editor などが提案。

Seminars

・ Office of Public Programs がプログラムを編成。

Special Events(各種 Reception)

・ Tiffany のチームが担当。

・ Family Science Day には、市民参画のためには、一般市民に対するレクチャーではなく、

双方向の対話が効果的であるという Leshner 氏(CEO)の考えが反映されている。

Special Session

・ 開催都市によって大きく変わる企画で、地元のコミュニティがやりたいことをやる。

・ AAAS は場所を貸すだけ。各セッションは完全に自律的に運営されている。

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Clinics & Career Development workshops

・ Exhibitor の中から開催したい組織が行っている(?)。公募はしない。時々、Science Staff

の部門の人がコミットする場合もある。

Local Science Tours

・ 最終日に開催。参加者の興味をひきつけるもの。参加者を最終日まで引き止める方策。

・ 専門の人を特別に雇う。

Business Meetings

・ open to all registrants となっているが、実際は section や council などのメンバー(非常

にタイトなコミュニティでパワーにあふれている)だけのクローズドな雰囲気のミーテ

ィング。

Newsroom

・ Office of Public Program の中にある News and information team が主催。

・ 10 月頃、Scientific Program が決まったら、そのアジェンダとスピーカーのリストを入

手し、ニュース性のあるものを厳選し、アクティブな研究者などをリストアップし、電

話でのレビューをし、「2 月にどんな話ができそうですか?」「その頃に発表予定の論文

はありますか?」といったことをたずねる。1-2 ヶ月かけてグループ会議を繰り返し、

スタッフが一押しのテーマについてのピッチトークを行い、トピックを 24 件程度に絞

り込む。(10 月頃)

・ News and information team の長(Meagan Phelan)は、 News Day 新聞社で 30 年間

の経験を持つ人。スタッフが彼に対してピッチトークを行い、彼がニュース性を判断す

る。彼は何がニュースで何がニュースでないかという鋭い感覚を持つ。

・ EurekAlart!は、News and information team の重要な活動のひとつで、バーチャル

Newsroom である。年次総会期間中のニュースリリースは 200 以上に上る。マルチメデ

ィアで、ニュースリリースやセッションのレポートなども含まれる。

・ プレスカテゴリには、特定の基準が適用される。ジャーナリスト(フリーランスを含む)

と PIO(Public Information Officer)だ。PIO はジャーナリスト同様に重要な役割を果た

すと考えるので、プレスバッジを提供している。フリーランスのジャーナリストには過

去のニュースクリップの提供を求めている。

・ 科学ジャーナリスト志望の学生にもプレスバッジを提供し、学生は科学ジャーナリスト

の講座を運営する教授から推薦された人でなければならない。次世代のジャーナリスト

の育成に努めている。成長して年次総会に戻ってきてほしい。

・ 発展途上地域から 4 人のフェローを招待している。今回はインドから 2 人、中国から 2

人を受け入れている。彼らはプレスカンファレンスに出席し、研究者やほかの記者と出

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会う。Science reporter としての初期のキャリアを支援し、科学コミュニケーションが

十分に成熟していない発展途上国でこの経験をシェアしてもらうのが目的。

・ サイエンスコミュニケーションにはスペクトルがある。記者である必要はない。PIO や

Blogger も受け入れる。ただし、PIO は一機関 2 名まで。

●Exhibitor や参加者の集め方

・ スポンサーや出展者を集めるためのセールスマン(Chris Galiani氏)がAAASにはいる。

・ 戦略的広報キャンペーンに投資しており、ソーシャルメディアも使う。

・ Social Media Team(フォーマルな部署ではなく、兼務のメンバーが部署を横断して構

成)が SNS で発信。Tiffany, Brian, Ginger などもやっている。

●タイムライン

・ 12 月 Theme 決定

・ 2-4 月 Call for Proposal

・ 6 月 Scientific Program Committee

・ 6-8 月 Review (On-line) *Section がレビュープロセスに参加

●その他

・ President’s Address, President’s Reception が一番重要で大規模なイベント。President’s

Dinner は出席者数からみてその次かもしれない。これ以外に、Newsroom への注力もス

ポンサーがいて、スピーカーがいて、毎日開催されるので、非常に大きい。

・ International Lunch RoundtableはChief International Officerが招待するもので、Office of

Public Program は関知していない。

・ 現地のロジスティクスは、Logistic Manager(Nikky)が担当。Tiffany の部下で、マグネ

ットがついた大きなホワイトボードを作ってさまざまなロジを管理している。どのよう

なセッションが多くの参加者を集めるかを調査し、適切なサイズの会議室を割り当てる

などする。

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7. AAAS2015年次総会の運営に見られる工夫

7.1 会場およびフロアプラン等

会場は、サンノゼマッケンナリー会議センターを中心として、細かなものも含めると、9 施

設、57 会議室・ホール等に渡って開催された。

表 7.1 会場施設一覧

2/11(水)

2/12(木)

2/13(金)

2/14(土)

2/15(日)

2/16(月)

1 9 70 72 61 14 339

Room210AB・CD・EF・GH※一部でGHを分離して使用

4~5室 3 15 18 14 2 52

主にSeminor、Synposia、Topical Lectures、Exhibitor-Sponserd Workshopsなどを実施。ABなどで180名規模会場が4箇所。稼動壁にて仕切ることが可能。

Room212A・B 2 室 1 1 1 1 4Presentation Rx Clinic、発表者用のマシンルームとして使用。

Room212 1 室 7 7 7 21主にCareer Development Workshopsで使用。180名程度の会場キャパシティ

Room220A 1 室 1 1 1 1 1 5主にPresident's Address、Plenary Lecturesで使用。1200名規模会場。

Room220B・C 2 室 1 1 7 6 6 1 22主にSymposia、Special Events(CitizenScience、AAAS Awards)で使用。500名規模会

Room230A・B・C 3 室 9 8 8 25主にSeminors、Symposiaで使用。150名規模会場。工学・医学セッションなどが多い。

RoomLL20A・B・C・D 4 室 12 11 6 2 31主にSeminors、Symposiaで使用。300名規模会場。

RoomLL21A・B・C・D・E・F 6 室 2 18 19 18 5 62 主にSymposiaで使用。150名規模会場。

HALL1 - △ ● ● ● ● 61 コマExhibitionに使用。ただし、半分程度はストックスペース。約4000平米

HALL2 - △ ● ● ●48コマ

+3セッショFamily Science Day(48コマ)、ポスターセッション(3セッション)で使用。4650平米。

Hub 1 室 1 1 President Reception、FSDで使用。901平米。

その他 - 1 3 4 ツアーの集合場所など

1 3 22 20 1 0 47

Club Regent 1 室 1 1 1 3 レセプションなどに利用

その他 16 室 1 2 21 19 1 44

8セッションは学生の口頭発表会場。36セッションはAAAS事務局や各セクションのビジネスミーティング昼夜問わず使用。

San Jose Marriott 7 室 6 12 9 8 1 36Newsroomとして、プレスレクやプレス用朝食会などを実施。部屋数には受付、コーヒーラウンジなど含む。

Hilton San Jose 7 室 2 3 5 6 16 ビジネスミーティングやSpecial Eventsで使用。

Sainte Claire 2 室 2 2 ビジネスミーティングで使用。

The Tech Museumof Innovation

1 室 1 1 2 レセプションに利用

San Jose Museumof Art

1 室 1 1 レセプションに利用

San Jose StateUniversity

1 室 1 1 Special Eventsで利用

ZERO1 Garage 1 室 1 1 レセプションに利用

計 57 室 2 22 108 110 76 15 445※母数は公式プログラム(Web掲載)+Exhibition+NewsRoom

セッション数※

説明部屋数

San JoseConvention Center

Fairmont San Jose

開催セッション数施設名 フロアなど

セッション等のほとんどは会議センターにて開催。主に 18 時以降に開催されるレセプシ

ョンおよびビジネスミーティングは会議センター以外に配置されている。これは、参加者

のほとんどが、年次総会事務局が推奨するホテルに宿泊していることもあり、その利便性

を高める意味もありそうだが、会議センターの警備の都合も考えられる。会議センターに

は日中、会議室区画の入口付近に警備員が立ち、パスコントロールを実施している。会場

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を広げすぎるとコストがかかる。ESOF2014 では同様の業務をボランティアが行っていた。

テロ対策やホームレス対策などが必要な米国ならではの運営体制。

図 7.1 会場施設の位置関係

会議センターについては、例年参加している方や AAAS 事務局の方等によれば、例年よ

り広いスペースであるとのことであった。セッションスペースだけでも、最低 150 名以上

のキャパシティが確保されており、一部のセッションでは閑散としているように見られた。

セッションスペースだけでも総許容数は、24 部屋 5600 名にも上っており、東京ビッグサ

イト会議室棟の主要な会議室が 17 部屋(40 名以上)3600 名であることを考えると非常に

広大な面積を誇っている。一方で、1200 名規模収容の Room220A は夕方の Plenary のみ

に用いるなど、設備使用の方法も潤沢な使い方であった。

会議センターは、中央に展示ホールがあり、左右に会議室が配置されているため、セッ

ション間の移動は比較的大変ではあったが、ところどころに無料のミネラルウォーターな

どが設置され、またセッションもなるべく近い分野のセッションが続くように配置されて

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いるため、特定分野のみの聴講者には配慮されているようであった。

図 7.2 サンノゼマッケンナリー会議センターの会場図

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(2 フロアを利用)

その他、サンノゼマリオットの会議スペースは、プレス向け設備が集中されており、会

議センターとのアクセスもよい。フェアモントホテルではビジネスミーティングなどが開

催されており、その他レセプション等で周辺施設が用いられていた。

セッション用会議室の設備としては、基本的にはすべての部屋に以下の設備が準備され

ていた。

・ スクリーン&プロジェクター ※登壇者所有の PC を接続することも可能

・ Win-PC、USB メモリ

・ PPT スライド(ロゴマーク入り)

・ 有線マイク 2 本 ※ミキサーに接続し、PC から会場スピーカーに音声出力も可能

・ ステージ&演台

・ テーブル 2 脚・イス 4 脚程度

図 7.3 会場に常設されている PC

その他、会場により、下記設備が準備されていた。

・ 有線マイク(スタンド付き)

※質疑の際にはそこに並んで発言する。客席マイクの無い会場では、しばしば聴講者

からのリクエストにより、壇上の登壇者がマイクで質問を繰り返す。

設備担当会社のサポート 1 名程度が待機し、不具合発生時に対応。また、マイク音声は

録音され、会場内で有償販売されていた。

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図 7.4 客席に設置されているのマイクからの質問の様子

7.2 対外情報発信(広報等)

■プレス向け情報発信

詳細は、Newsroom(4 章)に記載。AAAS 期間中に多くのプレスリリースが発信された。

AAAS 年次総会のプレス用 Web ページが、EurekAlert!上に設けられ、Embargo 以後はだ

れでもアクセスできるようになっていた。

<2 月 27 日時点の実績>

・年次総会期間中のプレスリリース:57 本

・掲載された件数 :1098 箇所 (80 検索ヒット)

※”AAAS Annual meeting” で Google のニュース検索(1 ヶ月以内)

関連記事含む、EurecAlert などは除く。

・日本語で掲載された件数 :27 箇所(21 検索ヒット)

※”AAAS 年次総会” で Google のニュース検索

関連記事含む。

■一般向け情報発信

広く一般向けには、プレジデントアドレスやセミナーセッションなどの録画・録音が会

期中に公開されている。

年次総会受付では、有料で各セッションの録音を販売している。全セッションのパック

は 175 ドル(Web ダウンロード)、セッションごとでは 12 ドルであった。

その他、年次総会 Web サイト等では、SNS での発信を促しており、twitter でのハッシ

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ュタグ指定などがされていたほか、以下のようにプログラムアプリにも発信機能を有して

おり、促進を図っていた。

図 7.6 AAAS2015 アプリでの広報ブース宣伝

また、会場では看板により、参加者に対する録音・録画等の免責が求められていた。

図 7.7 会場の注意看板

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7.3 スポンサーシップ

AAAS 年次総会では、広くスポンサーシップを募るために、下記便宜提供がある。出展

者用マニュアルには“Branding opportunities”とある。JST としては、AAAS2014 の際、

トートバッグへの JST ロゴの掲載を検討したが、高額のため断念。

表 7.2 スポンサーシップのカテゴリと費用一覧

①Diversity Opportunities

International Reception $20,000

Women and Minorities in Science Networking Breakfast $15,000

②Students and Public Engagement

American Junior Academy of Sciences (AJAS) Events Contact for pricing

Student Poster Competition and Reception $15,000

12th Annual Family Science Days $25,000

③Media Opportunities

Newsroom Breakfast $20,000 each

(3 opportunities available)

Newsroom Coffee Lounge $7,500 each

(3 opportunities available)

Newsroom Technology Center $25,000

Newsroom Wine and Cheese Reception $12,500 each

(2 opportunities available)

International Reporters Reception $20,000

EurekAlert! Reception $20,000

Exhibit Hall Press Reception $10,000 (3 opportunities)

④Attendee Connections

Place Your Message on a Banner or Display Contact for locations and pricing

AAAS Tote Bag(⇒European Commission が利用) $25,000

AAAS Attendee Wi-Fi(⇒European Commission が利用) Call for pricing

Recharge Stations $3,500 each (5 opportunities)

Conduct a Sponsored Workshop(注) $950

Support the General Poster Session $5,000

Energize Meeting Attendees $3,500 each (3 opportunities)

Rent Our Attendee List Call for pricing

(注)今回開催したワークショップはこの枠。Exhibitor と Sponsor が利用可能。

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Exhibition にブースを出展するためには以下のような費用が求められる。

1ブース:3m×3m

Corner Booth:2,600 ドル

Non-Corner Booth:2,350 ドル

※いずれも1ブースの料金。例えば4ブースなら、コーナーばかりなので、

2,600 ドル×4がブース料金となる。

※AAAS に加入していれば 300 ドル割引(ブース全体の料金から)

※AAAS2014 と比較して、1ブースの料金が 100 ドル値上げされた。AAAS2016 にお

いても値上げが予定されている。

7.4 受付および参加者パスの区分について

参加者(一般、出展など)の受付は、事前に登録し、メールアドレスに送られるバーコ

ード付きのメールを印刷・持参し、現地の受付にあるバーコードリーダーに読み取らせる

ことで、券が自動発券される仕組みが構築されていた。発券が行われると、待機している

スタッフから、バッジケースと資料一式が渡されるが、忙しい時間帯にはそれらを自分で

取れるよう平積みにされている。

Family Science Day 参加者を含め当日参加の方や、登壇者、VIP などには種別ごとに受

付が設置されていた。なお、受付は、日ごとに窓口の多寡が変わり、土日には FSD 参加者

用受付がほとんどとなった。

なお、プレス向け受付はサンノゼマリオットに設置され、人によるパスポート確認など

を含めた受付となっていた。

図 7.8 総合受付デスク周辺の様子

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参加者種別によるバッジ区分は以下の通りである。会場には各所に警備員が配され、厳

格なパスコントロールを実施。ただし、Symposia の会議室にはパスなしでも入場できてし

まうところもあった。

■一般参加者(赤)

一般 435 ドル。AAAS 会員は優遇されるほか、ポスドク、K-12 教育者(学校教員)、退

職者、学生は優遇価格で参加できる。また、学校教員でも過去に学校新聞等を書いている

場合にはプレス登録が許されたケースもあるとのこと。

表 7.3 参加費用一覧

■Family Science Day 参加者

実施会場(Exhibit Hall)のみ入場可能。無料。

■講演者(赤色に金色の字)

参加費無料

■出展者(青)

出展者用に割り当てられるパスは下記3種がある。

①Full Conference(EF):無料/展示場以外も入場可能(プレスエリア除く)

⇒1ブースに1枚配布(6ブースだと6枚配布)

②Full-Paid(EP):有料/展示場以外も入場可能無料(プレスエリア除く)

⇒①では枚数が足りなかった場合に購入する。

③Booth-Only(EB):無料/展示場のみ入場可能なパス

⇒1ブースに 8 枚配布(6ブースだと 48 枚配布)

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■プレスパス(緑)

記者、Public Information Officer(1 機関 2 名まで)、ジャーナリズム学部の学生など 参

加費は無料。

■AAAS 事務局

それぞれのパスの下に赤色でスタッフと付いた特別パスを持っている

7.5 一般参加者向けのサービスなど

一般参加者向けに以下のようなサービスが提供されている。

(1)参加者用キット

参加者には、Symposia 等の要旨が掲載されたプログラムブック、セッション名等が記載

されたポケットガイド、展示の概要を示した Exhibit Hall ガイドが提供される。

プログラムブックは A4 変形サイズ(幅 21cm、縦 26.7cm)、196 ページ白黒の装丁であ

る(広告のみカラーページ)。内容は、Web サイトで公開されている情報に準拠し、各セッ

ションのタイトル、時間、登壇者氏名・所属、概要等が掲載されている。ポスターセッシ

ョンに関しては、発表者の氏名所属などが掲載されている。プレジデントの挨拶、プレナ

リーレクチャー登壇者の略歴、Exhibition 出展者一覧、参加者向け説明・免責事項、委員

会等の一覧、登壇者・項目別索引、会場地図などで構成されていた。

ポケットガイドは、A4 半折り変形(幅 10.1cm、縦 22.8cm)、52 ページ白黒の装丁であ

る。内容は、各セッションのタイトル等のタイムテーブルなどが掲載されており、1 月 5 日

時点の情報である旨が記載されていた。

Exhibit Hall ガイドは、幅 17.2cm、縦 22.8cm、3 ページカラー折込で、ポケットガイ

ドとほぼ同じ大きさの装丁である。内容は、展示会場の地図と出展者一覧(FSD 含む)と

なっていた。

(2)スマートフォン用アプリと Wifi 環境

スマートフォンアプリ(iOS、Android)が配布され、Web サイト、各冊子等で誘導がさ

れていた。主な機能は、プログラムの検索や自分が参加するプログラムリストの作成、セ

ッション会場の検索、SNS 機能の提供などである。

会場では、会議センター提供の Wifi 環境が整えられ、接続した際はスポンサーである欧

州委員会の広告が表示される仕組みとなっていた。

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図 7.9 AAAS 年次総会用のスマートフォンアプリ

(プログラムの概要、会場のほか、自分が参加するセッションを登録して管理することが

できる。また、参加者間での情報交換が可能な SNS 機能も付与されている)

(3)そのほか、アンケート、休憩設備など

・ 会場周辺は飲食できるレストラン等が少ないため、展示会場内に臨時のカフェテリアが

オープンし、サンドイッチなどを提供していた(7 ドル程度)。

・ 会場各所には、ウォーターサーバが置かれ、水分補給は可能であった。

・ 来場者へのアンケートは Web 上で開催翌日よりスタートした。全 6 問で surveygizmo

というサイトを利用したもの。ただし、ブラウザ上での動作がせず、途中までしか進ま

なかった。

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7.6 AAAS年次総会開催までの主な公式スケジュール

表 7.4 スケジュールの主要項目

1 月終わり(2014) 次年度(2015)テーマ決定

1 月末 Symposia proposal (2015) サイトオープン

2 月 AAAS 年次総会 (2014)

2 月(会期中~) 次年度ブース申込開始(〆は特に記載なし)

3 月初め Career development workshop proposal サイトオープン

4 月下旬 Symposia proposal 〆

5 月初め Career development workshop proposal 〆

6 月初め Family Science Days 申込開始

7 月初め Symposia、Career development workshop の当選発表

8 月初め Registration&ホテル予約サイトオープン

10 月初め オンラインプログラムを HP で公開

11 月上旬 Exhibitor Workshop Proposal 〆(申込開始時期は不明)

11 月上旬 Program Book の記載情報 〆

1 月終わり(2015) Registration&ホテル予約サイトクローズ

⇒Exhibitor 登録はいったん確定となるが、引き続き登録可能

1 月終わり 次年度(2016)テーマ決定

※例は今年の場合だが、概ね毎年同様 以降繰り返し

※上記表の元資料は「Meeting Timeline _ AAAS 2015 Annual Meeting.pdf」参考

表 7.5 サイエンスアゴラを 11 月に開催する場合の理想的な出展調整スケジュール(参考)

3 月(前年度) ブース数決定

4 月 ブース申込み、企画検討

6 月~7 月 フロアプラン確認次第、各部署に協力依頼。出展内容を検討

8 月 ブースレイアウト検討

9 月 レイアウト決定、ブース仕様検討

10 月 展示運営支援業者決定(入札)

11 月上旬 Program Book 〆、Exhibitor Workshop 申込〆

11 月 ・パネル作成、展示内容を詰める⇒パネルは 1 月中旬まで

・出張手配(特に宿泊は早めに確保)

1 月中旬 Exhibitor 登録を早めに行う(追加は可能)

1 月下旬 展示会場に向け荷物発送(輸送業者に依頼)

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7.7 出展関係の分担体制・TIPS

(1)体制・担当業者

●展示場等、施設関連(電源設置、備品レンタル、荷物の搬入出すべて)

Freeman (http://www.freemanco.com/) が担当

※AAAS と Freeman が契約を結ぶのが夏過ぎた頃らしく、それ以降にならないとマニ

ュアル(Show Management Information)が完成しない。ただし、Freeman のサ

イトで Freeman 部分のみは入手可能。

※荷物の搬入出には、Handling Charge(今回の荷物程度で約 450 ドル)が必要。

●音響、映像など電子機器

BAVservice (http://bavservices.com/) が担当

●インターネット

会場(AAAS2015 の場合は、San Jose McEnery Convention Center)が担当

※会場により業者が入る場合もあるので確定ではないが、概ね会場。

●ケータリング

会場が担当

※ホテルの場合はホテルが担当する場合が多い。

※AAAS2015 の場合は会場の所属する「Team San Jose」という協力体が

担当。

※業者のマニュアルをすべて含めたもの(Show Management Information)は、

ブース契約後に AAAS 事務局から送付される。

(2)展示構成の際の注意点

・会場により、展示の高さなどのレギュレーションが異なるので、確認する必要がある。

(Show Management Information に記載がある)

・ブース申込み状況によって、直前にフロアプラン変更の可能性あり。

⇒フロアプランは定期的に確認する必要がある。

・荷物運搬のレギュレーションも毎年異なるので、要確認(Show Management

Information に記載がある)

・ブース料金等の AAAS への支払いは、基本的にクレジット利用となっているが、高額

であるため請求書を発行してもらえた。(Exhibitor 登録料〔パス料金〕については、

クレジット払いを利用。立替払い)

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8. 結論

今回の調査の成果をふまえ、JST 全体としては、下記を検討したい。これは、日本の科

学技術振興という文脈にも敷衍可能な、日本の科学コミュニティに共通する課題である。

(1) AAAS 年次総会、ESOF、サイエンスアゴラの活用

AAAS 年次総会は、昼のセッションや夜の理事クラスのネットワーキングの場を意図的

に作り、常に顔の見える関係を重層的に構築。

“定期的に”会合に参加し、今後取り組む新しい課題を、各国の文脈・社会的な文脈に

視野を広げて議論。(欧州の RRI、米国の Citizen Science & Open Data、日本の Wisdom

Computing など)

JST のリソースは有限。どの会合が最適かは要検討。

(会合例)

・Science Agora 2015 年次総会(13-15 November 2015 @Tokyo)

・AAAS 2016 年次総会 (11-15 February 2016 @Washington DC)

・ESOF 2016 (22-27 July 2016 @Manchester)

(2) 若者と新興国へのアクセス強化

AAAS 年次総会では、科学技術外交としての新興国とのパイプの強化、若手や新興国の

ジャーナリストを育成しようとする配慮、若手研究者のキャリア開発の支援など、こうし

た社会的にまだ強い権力を持っていないカテゴリの人たちに格別の配慮あり。

これからの日本の社会と科学技術にとって、最重要ステークホルダーは、若者と新興国。

JST のリソースは有限。部署ごとの協力をどのように生み出せるか要検討。

(3) 科学者コミュニティに止まらず、社会全体に目を配る

AAAS 年次総会に、Google, Facebook, Apple をはじめとする米国西海岸の熱い企業マイ

ンドは感じられず、ワシントン DC の連邦政府主導の研究推進エコシステムとイノベーシ

ョンエコシステムの乖離を実感(AAAS は科学者のソサエティなので、この実態は当然で

合理的な可能性もあり)。

JST は、科学者のソサエティではない。イノベーションエコシステムの現状について、

洞察を共有する場として、サイエンスアゴラを使えないか、要件等。

(4) メディアや政策立案者との関係性構築

AAAS 年次総会におけるメディア関係者(地元のフリージャーナリストが多い)の存在

感は大きく、AAAS の対応もきわめて丁重(登録料無料・朝食付きのプレスレク等)。Science

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誌を発行する AAAS はメディアであり、オンライン、オフラインでの情報発信力は強力。

AAAS は一般市民と直接つながるのではなく、メディアや政策立案者を通じてつながる

と言っている(昨年 AAAS 担当者インタビューより)。確かに合理的。

一箇所に良質の議題が集まれば、メディアも政策立案者の関心も高まる。個別の組織や

部署(JST に止まらない)で構築されているメディアや政策立案者との関係性をサイエン

スアゴラの場に集められないか要検討。

(5) ネットワーキングの機会の充実

AAAS 年次総会に参加している人たちの目的は人に会うこと。社会を動かす切実な動機

がある人は、分野やセクターの壁を超えて、人と出会いたいと思ってやってくる。

人は人に惹かれてやってくる。社会を動かせる力をもった人(権力者とは限らない)を

集めようと思うのであれば、同じ問題意識を持った人を集めたい。

日本はアジアにある。アジアの有力者を集めることで、ひいては欧米やアフリカの有力

者とのネットワーキングも広がる。サイエンスアゴラをそのような場にしたいか、要検討。

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付録1 これまでの年次総会

Chicago, Illinois, February 2014 Boston, Massachusetts, February 2013 Vancouver, Canada, February 2012 Washington, DC, February 2011 San Diego, California, February 2010 Chicago, Illinois, February 2009 Boston, Massachusetts, February 2008 San Francisco, California, February 2007 St. Louis, Missouri, February 2006 Washington, D.C., February 2005 Seattle, Washington, February 2004 Denver, Colorado, February 2003 Boston, Massachusetts, February 2002 San Francisco, California, February 2001 Washington, D.C., February 2000 Anaheim, California, January 1999 Philadelphia, Pennsylvania, February 1998 Seattle, Washington, February 1997 Baltimore, Maryland, February 1996 Atlanta, Georgia, February 1995 San Francisco, California, February 1994 Boston, Massachusetts, February 1993 Chicago, Illinois, February 1992 Washington, D.C., February 1991 New Orleans, Louisiana, February 1990 San Francisco, California, January 1989 Boston, Massachusetts, February 1988 Chicago, Illinois, February 1987 Philadelphia, Pennsylvania, May 1986 Los Angeles, California, May 1985 New York, New York, May 1984 Detroit, Michigan, May 1983 Washington, D.C., January 1982 Toronto, Ontario, Canada, January 1981 San Francisco, California, January 1980 Houston, Texas, January 1979 Washington, D.C., February 1978 Denver, Colorado, February 1977 Boston, Massachusetts, February 1976 New York, New York, January 1975 San Francisco, California, February 1974 Mexico City, Mexico, June 1973 Washington, D.C., December 1972 Philadelphia, Pennsylvania, December 1971 Chicago, Illinois, December 1970 Boston, Massachusetts, December 1969 Dallas, Texas, December 1968 New York, New York, December 1967

Washington, D.C., December 1966 Berkeley, California, December 1965 Montreal, Quebec, Canada, December 1964 Cleveland, Ohio, December 1963 Philadelphia, Pennsylvania, December 1962 Denver, Colorado, December 1961 New York, New York, December 1960 Chicago, Illinois, December 1959 Washington, D.C., December 1958 Indianapolis, Indiana, December 1957 New York, New York, December 1956 Atlanta, Georgia, December 1955 Berkeley, California, December 1954 Boston, Massachusetts, December 1953 St. Louis, Missouri, December 1952 Philadelphia, Pennsylvania, December 1951 Cleveland, Ohio, December 1950 New York, New York, December 1949 Washington, D.C., September 1948 Chicago, Illinois, December 1947 Boston, Massachusetts, December 1946 St. Louis, Missouri, March 1946 Meeting postponed, December 1945 Cleveland, Ohio, September 1944 Dallas, Texas, December 1941 Chicago, Illinois, September 1941 Durham, North Carolina, June 1941 Philadelphia, Pennsylvania, December 1940 Seattle, Washington, June 1940 Columbus, Ohio, December 1939 Milwaukee, Wisconsin, June 1939 Richmond, Virginia, December 1938 Ottawa, Ontario, Canada, June 1938 Indianapolis, Indiana, December 1937 Denver, Colorado, June 1937 Atlantic City, New Jersey, December 1936 Ithaca, New York, June 1936 Rochester, New York, June 1936 St. Louis, Missouri, December 1935 Minneapolis, Minnesota, June 1935 Pittsburgh, Pennsylvania, December 1934 Berkeley, California, June 1934 Boston, Massachusetts, December 1933 Chicago, Illinois, June 1933 Atlantic City, New Jersey, December 1932

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Syracuse, New York, June 1932 New Orleans, Louisiana, December 1931 Pasadena, California, June 1931 Cleveland, Ohio, December 1930 Des Moines, Iowa, December 1929 New York, New York, December 1928 Nashville, Tennessee, December 1927 Philadelphia, Pennsylvania, December 1926 Kansas City, Kansas, December 1925 Portland, Oregon, June 1925 Boulder, Colorado, June 1925 Washington, D.C., December 1924 Cincinnati, Ohio, December 1923 Los Angeles, California, September 1923 Boston, Massachusetts, December 1922 Salt Lake City, Utah, June 1922 Toronto, Ontario, Canada, December 1921 Chicago, Illinois, December 1920 St. Louis, Missouri, December 1919 Baltimore, Maryland, December 1918 Pittsburgh, Pennsylvania, December 1917 New York, New York, December 1916 Columbus, Ohio, December 1915 San Francisco, California, August 1915 Philadelphia, Pennsylvania, December 1914 Atlanta, Georgia, December 1913 Cleveland, Ohio, December 1912 Washington, D.C., December 1911 Minneapolis, Minnesota, December 1910 Boston, Massachusetts, December 1909 Baltimore, Maryland, December 1908 Hanover, New Hampshire, June 1908 Chicago, Illinois, December 1907 New York, New York, December 1906 Ithaca, New York, June 1906 New Orleans, Louisiana, December 1905 St. Louis, Missouri, December 1904 Philadelphia, Pennsylvania, December 1903 Washington, D.C., December 1902 Pittsburgh, Pennsylvania, June 1902 Denver, Colorado, August 1901 New York, New York, June 1900 Columbus, Ohio, August 1899 Boston, Massachusetts, August 1898 Detroit, Michigan, August 1897 Buffalo, New York, August 1896 Springfield, Massachusetts, August 1895 Brooklyn, New York, August 1894 Madison, Wisconsin, August 1893

Rochester, New York, August 1892 Washington, D.C., August 1891 Indianapolis, Indiana, August 1890 Toronto, Ontario, Canada, August 1889 Cleveland, Ohio, August 1888 New York, New York, August 1887 Buffalo, New York, August 1886 Ann Arbor, Michigan, August 1885 Philadelphia, Pennsylvania, September 1884 Minneapolis, Minnesota, August 1883 Montreal, Quebec, Canada, August 1882 Cincinnati, Ohio, August 1881 Boston, Massachusetts, August 1880 Saratoga Springs, New York, August 1879 St. Louis, Missouri, August 1878 Nashville, Tennessee, August 1877 Buffalo, New York, August 1876 Detroit, Michigan, August 1875 Hartford, Connecticut, August 1874 Portland, Maine, August 1873 Dubuque, Iowa, August 1872 Indianapolis, Indiana, August 1871 Troy, Michigan, August 1870 Salem, Massachusetts, August 1869 Chicago, Illinois, August 1868 Burlington, Vermont, August 1867 Buffalo, New York, August 1866 Newport, Rhode Island, August 1860 Springfield, Massachusetts, August 1859 Baltimore, Maryland, April 1858 Montreal, Quebec, Canada, August 1857 Albany, New York, August 1856 Providence, Rhode Island, August 1855 Washington, D.C., April 1854 Cleveland, Ohio, July 1853 Albany, New York, August 1851 Cincinnati, Ohio, May 1851 New Haven, Connecticut, August 1850 Charleston, South Carolina, March 1850 Cambridge, Massachusetts, August 1849 Philadelphia, Pennsylvania, September 1848

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AAAS National Meetings, by Date

http://archives.aaas.org/meetings/mlist.php?view=date

付録 2 AAAS2015 Annual Meeting Overview

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付録 2 Plenary and Topical Lectures Speakers

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付録 3 日米欧プラットフォーム比較表

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海外調査報告書

AAAS 2015 Annual Meeting

平成 27 年 3 月 March, 2015

独立行政法人科学技術振興機構科学コミュニケーションセンター

Center for Science Communication, Japan Science and Technology Agency

〒102-8666 東京都千代田区四番町 5-3 サイエンスプラザ 8F

電 話 03-5214-7625

http://www.jst.go.jp/csc/

Ⓒ2014 JST/CSC

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