第 章 2 外国旅行の動向 - japan national tourism ... · 62 第 章2 外国旅行の動向...

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62 第  章 外国旅行の動向 2 JNTO 訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9 市場編) 2-1 外国旅行の現状と展望 1. 概況 米国商務省によると、米国人の外国旅行者数は 2011 年 に 2,700 万 人、2015 年 に 3,200 万 人 と な り、4 年間で約 20%増加した(空路のみ。メキシコ・カナ ダへの旅行者を除く米国人居住者が対象)。エリア 別に 2015 年の米国人の渡航先を見ると、ヨーロッパ が約 1,300 万人で最も多く、次いでカリブの約 800 万 人、アジアは第3位で約500万人となる。2011年に 対する 2015 年の増加率では中東が最も多く約 50% の 増加、アジアの増加率は約 20%となっている。 米国経済は 2008 年のリーマン・ショックによる低 迷から早期に回復し、GDP(名目ベース)は 2010 年 にリーマン・ショック以前の水準を越え、景気指標 は 2015 年まで継続して上昇してきた。こうした景気 動向が米国人の旅行者数の増加に繋がっているもの と考えられる。 アジア諸国の中で 2015 年に最も米国人観光客が多 かった国は中国で 208 万人、次いで香港の 118 万人、 日本は第3位となる103万人であった。訪日米国人 100万人突破は史上初めてである。2011年から2015 年にかけての増加率では、日本が約 80%増と最も高 く、次いで台湾の約 16%増、逆に米国人旅行者数が 最も多い中国は約2%の減少となっている。訪日米 国人の大幅な増加を支えている一つの要素として は、ここ数年で進んだ円安が考えられる。2012 年に 1ドル80円であった為替レートが、2015年には1ド ル120円と大幅に円安が進んだことと、原油価格の 下落により航空券代金が値下がりしたことで、これ まで訪日旅行は高いと考えていた層に意識の変化が もたらされたことが一因と考えられる。加えて、こ こ数年、日本および各都市が「訪問すべき国・都市」 と し て、『 コ ン デ ナ ス ト ト ラ ベ ラ ー(Condé Nast Traveler)』誌、『トラベルアンドレジャー (Travel+Leisure)』 誌、『 ロ ン リ ー プ ラ ネ ッ ト (Lonely Planet)』、『ナショナルジオグラフィックト ラベラー(National Geographic Traveler)』誌など で取り上げられ、露出が増えていること、健康志向 などから日本食ブームとなっていること、米国市場 では人気が高いクルーズ旅行で日本周遊クルーズが 増えていること、以前はゴールデンルートに広島を 加えたルートが中心であった訪日旅行商品が北陸・ 中部・四国行きの旅行商品も増え、市場に多様な商 品を提供できていることなどが挙げられる。 ■米国人の地域別海外出国者数推移 単位:千人 合計 カリブ アジア 中央 アメ リカ 中東 南ア メリ オセ アニ アフ リカ 201127,023 10,825 6,031 4,135 2,158 1,346 1,653 504 365 201228,502 11,244 6,435 4,312 2,394 1,500 1,702 547 364 201329,015 11,407 6,545 4,327 2,496 1,579 1,735 571 351 201430,780 11,892 7,171 4,508 2,697 1,779 1,771 601 357 201532,789 12,598 7,648 4,842 2,790 2,045 1,869 643 350 資料: 米国商務省国際貿易局(ITAカナダ・メキシコへの出国者を除く アジア各国における米国人観光客数の推移 単 位:千人 日本 中国 香港 タイ 韓国 台湾 2011 565 2,116 1,212 681 661 408 2012 717 2,118 1,184 768 697 406 2013 799 2,085 1,109 823 722 410 2014 891 2,093 1,130 771 770 455 2015 1,033 2,085 1,181 867 767 475 資料: 各国政府観光局発表 2016 年上期の景気動向指標を見ると、これまでの 上昇局面から停滞局面に変化する兆しがあるが、原 油価格の低下による航空券代金の低下傾向、相対的 なドル高傾向が続く限り引き続き米国人外国旅行者 数は増加していく可能性がある。 その一方で、トランプ大統領就任後の経済政策の 変化によっては、景気動向が左右される可能性もあ り、楽観はできない。大統領選挙後円・ドルレート の変動が大きくなっているが、一般的な米国人はド ル円レートを常に注視している訳ではないため、急 激な円高が生じても、米国メディアが大きく取り上 げない限りは円高による影響は限定的であると考え る。一方で航空券代金は訪日旅行を決定する上で重 要な要素となることから航空券代金の変動に留意す る必要がある。 米国におけるパスポート保有者数は 2015 年時点で 1億2590万人となっている。2015年の米国人口は約 3億2000万人であるので、約40%の米国人がパス ポートを保有している計算になる。パスポート発行 数は州によって差があり、東西海岸沿いの州や主要

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第  章 外国旅行の動向2

JNTO訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9市場編)

2-1 外国旅行の現状と展望

1. 概況米国商務省によると、米国人の外国旅行者数は

2011年に2,700万人、2015年に3,200万人となり、4年間で約20%増加した(空路のみ。メキシコ・カナダへの旅行者を除く米国人居住者が対象)。エリア別に2015年の米国人の渡航先を見ると、ヨーロッパが約1,300万人で最も多く、次いでカリブの約800万人、アジアは第3位で約500万人となる。2011年に対する2015年の増加率では中東が最も多く約50%の増加、アジアの増加率は約20%となっている。

米国経済は2008年のリーマン・ショックによる低迷から早期に回復し、GDP(名目ベース)は2010年にリーマン・ショック以前の水準を越え、景気指標は2015年まで継続して上昇してきた。こうした景気動向が米国人の旅行者数の増加に繋がっているものと考えられる。

アジア諸国の中で2015年に最も米国人観光客が多かった国は中国で208万人、次いで香港の118万人、日本は第3位となる103万人であった。訪日米国人100万人突破は史上初めてである。2011年から2015年にかけての増加率では、日本が約80%増と最も高く、次いで台湾の約16%増、逆に米国人旅行者数が最も多い中国は約2%の減少となっている。訪日米国人の大幅な増加を支えている一つの要素としては、ここ数年で進んだ円安が考えられる。2012年に1ドル80円であった為替レートが、2015年には1ドル120円と大幅に円安が進んだことと、原油価格の下落により航空券代金が値下がりしたことで、これまで訪日旅行は高いと考えていた層に意識の変化がもたらされたことが一因と考えられる。加えて、ここ数年、日本および各都市が「訪問すべき国・都市」として、『コンデナストトラベラー(Condé Nast Traveler)』 誌、『 ト ラ ベ ル ア ン ド レ ジ ャ ー

(Travel+Leisure)』 誌、『 ロ ン リ ー プ ラ ネ ッ ト(Lonely Planet)』、『ナショナルジオグラフィックトラベラー(National Geographic Traveler)』誌などで取り上げられ、露出が増えていること、健康志向などから日本食ブームとなっていること、米国市場では人気が高いクルーズ旅行で日本周遊クルーズが増えていること、以前はゴールデンルートに広島を加えたルートが中心であった訪日旅行商品が北陸・

中部・四国行きの旅行商品も増え、市場に多様な商品を提供できていることなどが挙げられる。

■米国人の地域別海外出国者数推移 単位:千人

合計ヨ ーロ ッパ

カリブ アジア中央アメリカ

中東南アメリカ

オセアニア

アフリカ

2011年 27,023 10,825 6,031 4,135 2,158 1,346 1,653 504 365

2012年 28,502 11,244 6,435 4,312 2,394 1,500 1,702 547 364

2013年 29,015 11,407 6,545 4,327 2,496 1,579 1,735 571 351

2014年 30,780 11,892 7,171 4,508 2,697 1,779 1,771 601 357

2015年 32,789 12,598 7,648 4,842 2,790 2,045 1,869 643 350

資料: 米国商務省国際貿易局(ITA)    カナダ・メキシコへの出国者を除く

■ アジア各国における米国人観光客数の推移 単位:千人

日本 中国 香港 タイ 韓国 台湾2011年 565 2,116 1,212 681 661 408

2012年 717 2,118 1,184 768 697 406

2013年 799 2,085 1,109 823 722 410

2014年 891 2,093 1,130 771 770 455

2015年 1,033 2,085 1,181 867 767 475資料: 各国政府観光局発表

2016年上期の景気動向指標を見ると、これまでの上昇局面から停滞局面に変化する兆しがあるが、原油価格の低下による航空券代金の低下傾向、相対的なドル高傾向が続く限り引き続き米国人外国旅行者数は増加していく可能性がある。

その一方で、トランプ大統領就任後の経済政策の変化によっては、景気動向が左右される可能性もあり、楽観はできない。大統領選挙後円・ドルレートの変動が大きくなっているが、一般的な米国人はドル円レートを常に注視している訳ではないため、急激な円高が生じても、米国メディアが大きく取り上げない限りは円高による影響は限定的であると考える。一方で航空券代金は訪日旅行を決定する上で重要な要素となることから航空券代金の変動に留意する必要がある。

米国におけるパスポート保有者数は2015年時点で1億2590万人となっている。2015年の米国人口は約3億2000万人であるので、約40%の米国人がパスポートを保有している計算になる。パスポート発行数は州によって差があり、東西海岸沿いの州や主要

第2章 外国旅行の動向

63JNTO訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9市場編)

豪州

カナダ

ロシア

ドイツ

フランス

イタリア

スペイン

都市を抱える州においては発行数が多い一方、中部などその他の地域においては発行数が少ない。

2. 米国人の外国旅行者と米国人の訪日旅行者の属性

①旅行目的米国人の外国旅行者の主な旅行目的としては、「レ

ジャー・休暇」の割合が最も高く、全体の50.9%を占めた。次いで「親族・友人訪問(27.0%)」、「ビジネス(10.8%)」の順となっている。

訪日旅行者に限ると「レジャー・休暇」および「親族・友人訪問」の割合が同率で最も高く、それぞれ全体の30.4%を占めている。次いで「ビジネス

(25.2%)」、「教育(6.2%)」の順となった。

外国旅行者 訪日旅行者レジャー・休暇 50.9% 30.4%親族・友人訪問 27.0% 30.4%ビジネス 10.8% 25.2%教育 4.5% 6.2%コンベンション・見本市など 3.4% 6.1%宗教・巡礼 2.0% 0.7%治療 0.4% 0.3%その他 1.1% 0.6%資料:  米国商務省国際貿易局(2014年)カナダ・メキシコ

への出国者を除く

②米国外の滞在日数(中位値)外国旅行者の滞在日数は、「レジャー・休暇、親族・

友人訪問」目的の場合10泊、「ビジネス・コンベンション」目的の場合が7泊である一方、訪日旅行者では、「レジャー・休暇、親族・友人訪問」目的の滞在が14泊、「ビジネス・コンベンション」目的の滞在が7泊であり、「レジャー・休暇、親族・友人訪問」目的の日本旅行者の滞在が長い傾向にある。

外国旅行者 訪日旅行者レジャー・休暇、親族・友人訪問 10泊 14泊

ビジネス・コンベンション 7泊 7泊資料:  米国商務省国際貿易局(2014年)カナダ・メキシコ

への出国者を除く

③性別・平均年齢外国旅行者の性別構成は、男性が49.5%、女性が

50.5%とほぼ同じであるのに対して、訪日旅行者では男性が58.1%、女性が41.9%と男性が多くなっている。年齢構成は、外国旅行者全体より訪日旅行者の平均年齢の方がやや低くなっているが、大きな差ではない。

外国旅行者 訪日旅行者男性 49.5%/ 45.4歳 58.1%/ 43.4歳女性 50.5%/ 44.0歳 41.9%/ 43.0歳資料:  米国商務省国際貿易局(2014年)カナダ・メキシコ

への出国者を除く

④年収外国旅行者の年収は平均12万3,000米ドルであっ

た。目的別では「ビジネス・コンベンション」を主たる目的とした旅行者が15万7,000米ドルであるのに対して、「レジャー、親族・友人訪問」の旅行者は11万9,000米ドルとなった。

一方、訪日旅行者の年収は平均13万3,000米ドルであった。目的別では「ビジネス・コンベンション」を主たる目的の旅行者が15万8,000米ドルであるのに対して、「レジャー」目的の旅行者は12万米ドルであった。日本を訪れる米国人旅行者は、総じて年収が高いことが分かる。

外国旅行者 訪日旅行者全目的 12万3,283米ドル 13万3,199米ドルビジネス・コンベンション 15万7,268米ドル 15万8,604米ドル

レジャー、親族・友人訪問 11万9,354米ドル -

レジャー - 12万93米ドル親族・友人訪問 - 10万5,713米ドル資料:  米国商務省国際貿易局(2014年)カナダ・メキシコ

への出国者を除く

⑤人種移民国家である米国では、「米国人」というカテ

ゴリーでひとくくりにすることは難しく、同じ米国人でも多様なバックグラウンドを持つことを認識する必要がある。人種別に外国旅行者の割合を見ると白人系が最も多く、次いでアジア系となっている。訪日旅行者に関しても順位は同様であるが、白人系とアジア系の比率がほぼ同じとなる。これは、アジア系米国人は日本に対する文化的・心理的な距離が近く訪日旅行が身近であること、母国への帰国に伴い日本に立ち寄る機会があることが考えられる。

ヒスパニック系の米国人は、外国旅行者の14.7%を占めているが、訪日旅行者では7.2%と少ない。しかし、米国におけるヒスパニック人口は増加しており、中長期的に注視していく市場である。

64 JNTO訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9市場編)

外国旅行者 訪日旅行者白人系米国人 76.4% 51.2%黒人系米国人 7.6% 2.5%アジア系米国人 16.2% 47.3%その他 2.8% 3.0%注: 複数回答があるため合計は100%にならない。

外国旅行者 訪日旅行者ヒスパニック 14.7% 7.2%非ヒスパニック 85.3% 92.8%資料:  米国商務省国際貿易局(2014年)カナダ・メキシコ

への出国者を除く

⑥旅行情報源外国旅行者と比較して訪日旅行者はオンライン旅

行会社よりも旅行会社やインハウス・エージェントから情報収集する傾向がある。これは、米国人にとって日本の情報が限られることや、ネットだけの情報収集に不安を覚えることが理由と考えられる。

外国旅行者 訪日旅行者航空会社 50.8% 50.8%オンライン旅行会社 31.3% 28.8%友人知人の薦め 19.3% 17.9%旅行会社 18.3% 19.1%インハウス 9.8% 17.0%ツアーオペレーターなど 7.5% 3.3%ツアーガイド 7.0% 6.6%政府観光局・自治体など 4.0% 2.7%その他 5.7% 5.3%注:  複数回答があるため合計は100%にならない。資料:  米国商務省国際貿易局(2014年)カナダ・メキシコ

への出国者を除く

3. 地域ごとの概況①東海岸

外国旅行者数が多い地域は、北東部では、ニューヨーク州を筆頭にニュージャージー州、ペンシルバニア州、マサチューセッツ州、ワシントンDCを包括する地域であり、南部ではフロリダ州、バージニア州である。これらの地域は米国の中でも距離的にヨーロッパに近く、アジアからは遠い。従って、太平洋方面への旅行は長距離旅行となることから、時間と財力に余裕のある富裕層以外は、近場のヨーロッパなどへ旅行する傾向が強い。

また、北東部は1年の3分の2は寒冷で気候が不順であるため、太陽の光に憧れる志向が強く、メキシコ、カリブ海諸国など南方の温暖な地域の人気が高い。

■ 全米の外国旅行者・訪日旅行者に占める地域別シェア(東海岸)エリア/州/都市圏 外国旅行者 訪日旅行者

New England 6.9% 6.7%マサチューセッツ州 3.6% 5.0%コネチカット州 2.0% 0.6%Middle Atlantic 23.5% 12.6%ニューヨーク州 14.1% 8.2%ニューヨークシティ 11.4% 7.3%ナサウ 2.0% 0.5% ニュージャージー州 5.6% 2.8% ペンシルバニア州 3.9% 1.7%フィラデルフィア 1.7% 0.6% ワシントンDC 2.9% 3.6%South Atlantic 19.9% 16.0%フロリダ州 7.4% 3.2% マイアミ 2.5% 0.0%バージニア州 3.3% 4.6% ジョージア州 2.8% 1.4%  アトランタ 2.2% 0.8% メリーランド州 2.1% 2.1% ノースカロライナ州 2.1% 2.0%注:   主要な地域のみ掲載しているため合計は100%になら

ない。資料:  米国商務省国際貿易局(2014年)カナダ・メキシコ

への出国者を除く

②中西部中西部に住む米国人は自分が住む地域に対する愛

着が強く、新しいものに対する関心はあるものの、すぐにそれに飛びつくということは少ない。米国人の外国旅行者のうち中西部の人が占める割合は全体の3割程度である。中西部の中で外国旅行者が多いのは、地理的に米国の中心に位置し世界最大級のハブ空港と言われるシカゴ・オヘア国際空港を有するイリノイ州とテキサス州である。これらの州は、自動車産業や情報・通信産業などが盛んであり、日本との関係も深く、商用客を中心に往来が活発である。また、米系航空会社のハブ空港であるテキサス州ヒューストンとダラス、フォートワースは日本への直行便数が増加したことから、今後米国人の訪日旅行者の増加が期待できる。

■ 全米の外国旅行者・訪日旅行者に占める地域別シェア(中西部)エリア/州/都市圏 外国旅行者 訪日旅行者

West South Central 10.4% 8.5% テキサス州 8.4% 7.5%  ヒューストン 2.6% 2.0%  ダラス 2.2% 1.1%

第2章 外国旅行の動向

65JNTO訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9市場編)

豪州

カナダ

ロシア

ドイツ

フランス

イタリア

スペイン

Mountain 4.9% 6.0% コロラド州 1.7% 2.2% アリゾナ州 1.2% 1.2%East North Central 10.4% 14.8% ミシガン州 3.4% 6.6% イリノイ州 3.1% 4.4%シカゴ 2.1% 3.1% オハイオ州 2.0% 1.9%West North Central 4.6% 5.3% ミネソタ州 1.7% 1.7%East South Central 2.7% 3.6%注:   主要な地域のみ掲載しているため合計は100%になら

ない。資料:  米国商務省国際貿易局(2014年)カナダ・メキシコ

への出国者を除く

③西海岸西海岸の州の中で外国旅行者数が多いのは、カリ

フォルニア州である。さらに全米の中で訪日旅行の最多送客数を誇る州でもある。この地域の人々は、他地域の人々よりも米国にはない歴史・文化を享受できる地域に対する憧れが強いことが、その理由として挙げられる。また、カリフォルニア州では、全人口に占めるアジア系米国人の割合が高く、彼らの中に定期的に母国に里帰りをする人が多いこともその理由の一つとなっている。

■ 全米の外国旅行者・訪日旅行者に占める地域別シェア(西海岸)エリア/州/都市圏 外国旅行者 訪日旅行者

Pacifi c 16.1% 25.7% カリフォルニア州 12.7% 20.0%  ロサンゼルス 5.6% 9.2%  サンフランシスコ 2.1% 5.0%  サンディエゴ 1.2% 3.2% ワシントン州 2.3% 4.4%  シアトル 1.6% 2.5%注:   主要な地域のみ掲載しているため合計は100%になら

ない。資料:  米国商務省国際貿易局(2014年)カナダ・メキシコ

への出国者を除く

2-2 外国旅行の旅行形態別特色

米国商務省国際貿易局(ITA)の2014年調査によると、観光目的の外国旅行者の85%、商用目的の外国旅行者の95%が個人旅行者(パッケージツアーを利用していないと回答)と個人旅行の割合が極めて高い。その一方で、個人カスタムツアーが発達した市場でもある。団体旅行は後述するSpecial Interest

Tour(SIT)を除きあまり見られない。

1. 個人旅行レジャーを目的とした個人旅行で最も多く見られ

るのが、航空券とホテルのみを予約する旅行形態である。この場合、オンライン旅行会社(OTA)や航空会社・ホテルへ直接予約する割合が年々増加している。こうした動きに対し、従来からの旅行会社

(エージェント)では、富裕層・個人が手配しづらい体験・特別な手配を希望する旅行者の取り込みを図っている。特に富裕層向けのエージェントのウェブサイトにはツアー行程が掲載されているが、実際に掲載している行程どおりの内容を手配することは少なく、問い合わせのあった顧客の要望を聞きながら訪問先や宿泊先を選定する手配旅行に近い形態が多くなっている。特に日本旅行に関しては、初回訪問者を中心に言語が通じないことに対する不安を感じる米国人旅行者が多いことから、エージェントを利用する場合も一定数存在する。

一般的に米国人は、自分の好みにあった旅程を好むため、パッケージツアーの場合でも終日団体行動となる場合はまれである。交通の便から団体行動を伴うことがあっても、基本的には自由行動となっている。パッケージツアーの旅程としては、東京から富士・箱根を経て京都に至るいわゆる「ゴールデンルート」を1週間程度で巡るものが主流となっている。滞在が10日以上になると、広島・宮島を加えて訪問することも多い。東京では、新宿、銀座、渋谷などの繁華街と、明治神宮、浅草(浅草寺)、皇居などの伝統的な観光地とを組み合わせた旅程が一般的である。ゴールデンルートに高山、白川郷、金沢などを組み込んだルートも定番化しつつある。

これらに加えて、リピーターの取り扱いが多い中華系旅行会社を中心に、関西、北海道などを巡るツアーも多く造成されている。中華系旅行会社のツアーの特徴的な例としては、「初めての訪日旅行者用にゴールデンルートを1週間で周遊し、宿泊施設にはホテルだけではなく旅館を含め、食事や英語を話すガイド付きでなおかつ値段も手頃」といったターゲットの価値観に訴えるものがある。

また、富裕層や知識層を中心に、これまであまり知られていないエリア(Off the Beaten Path)として、四国の直島や徳島県祖谷渓谷なども注目を集めている。

2. 業務渡航米国全体でのビジネスを目的とした外国旅行者の

66 JNTO訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9市場編)

比率は約15%で、訪日旅行者では約30%となっている。ビジネス目的の訪日比率は近年減少傾向にあるが、これはレジャー客が増加したことによるものであり、絶対数は減少しておらず、大幅な増加は期待できないものの、安定した顧客であると言える。

なお、ビジネスを目的とした訪日旅行者の約10%はレジャーも目的であると回答しており、家族を同伴して出張し、休日には余暇を楽しむというケースも見られる。特にこれは後述する国際会議への参加やインセンティブ旅行の際に顕著である。

航空券やホテルの手配は、オンラインの旅行会社(OTA)を利用したり、直接に予約したりすることもあるが、自社グループ内のインハウス・エージェント(企業や団体が自らの業務渡航などのために組織内に作った旅行会社のこと)や提携しているエージェントを使う場合が多い。

①インセンティブ企業が成績優秀な社員や代理店などを対象に実施

する報奨旅行(インセンティブ旅行)は、旅行市場の一つのカテゴリーとして確立されている。インセンティブ旅行では、訪問地のユニークベニュー(通常イベントとして利用されない城郭、博物館、美術館など、会議やレセプションを開くことで特別感や地域の特性を演出できる会場)を利用して、セレモニーやパーティーを行うことがよくある。 ・ 世界のインセンティブ産業についての調査団体

Incentive Research Foundationが2016年に発表したレポートによると、企業がインセンティブ旅行にかける金額はここ2年~ 3年増加傾向であり、2015年の1ツアーあたりの参加者数は50人~ 250人、1人あたり旅行代金は平均3,659米ドルとなっている。開催地決定までのリードタイムは1年~ 2年で、1年前に開催地をアナウンスする場合が多い。

・ 海外へのインセンティブ旅行の人気旅行地はカリブ、メキシコ、ヨーロッパ、カナダであるが、アジアの人気が高まってきている。

・ 米国人パスポート保有者数の増加により、旅行先の多様化と拡大が期待できる。

・ 旅行業関係者の間では、今後、治安に留意した開催地を選択する企業が増加すると見られている。

②ミーティングPCMA(Professional Convention Management

Association)の発行するConvene誌がミーティング

プランナーを対象として行った調査(2015年実施、有効回答数:440)によると、回答者の56%が学会・団体のプランナーであり、20%が企業のプランナーで、会議やインセンティブ旅行などを外国で開催しているとのことである。これらの学会・団体では1グループあたり平均1万4,963人のメンバーをかかえており、企業では1社あたり平均4,521人が働いている。また、プランナー 1人あたりの1年で開催するミーティングは平均12件である。 ・ コンベンション・ミーティング1件あたりの予算

は平均130万米ドルで増加傾向にある。 ・ プログラムの準備期間は学会・団体による会議・

大会は「2年」が主流なのに対し、企業による会議は「1年以下」が多数を占め、「6カ月以下」の割合も少なくない。迅速な対応が求められるため、日本の弱みとして挙げられる「長期先のイベントに対するレスポンス能力の低さ」がマイナスになる恐れがあるので注意が必要である。

 ・ 開催地の選択にあたっては、参加者のアクセスのしやすさ、会社の位置、ビジネスチャンスの可能性などを考慮して選択される。

 ・ 訪日視察旅行(ファムトリップ)を実施し、プランナーに実際に開催地を視察してもらうことも効果が高い。プランナーの多くがウェブサイトを利用して予約を入れることから、検索しやすく使い勝手の良いウェブサイトを構築することも有効である。

 ・ 外国での会議開催地としてはヨーロッパ(特に英国)、カリブ海地域、カナダ、メキシコの人気が高い。会議の性格や内容によって、開催地にはリゾート地または都市中心部のいずれかが選択されることが多い。一方、アジアはここ数年、順調に人気をのばしている。アジアの経済成長や国際団体・学会におけるアジア地区の会員増加を反映して、シンガポール、シドニーをはじめとしたアジア太平洋諸国への興味が高まっている。

 ・ 米国人パスポート保有者数の増加により、会議開催地の多様化と拡大も期待されている。

3. 団体旅行米国における団体旅行の目的は主にSpecial

Interest Tour(SIT)となる。一般的なSITの顧客は、大学の同窓会(アラムナイアソシエーション:Alumni Association)、美術館・博物館・動物園などを支援する団体の会員であり、これらの団体には通常、ツアーの内容・時期を決定する旅行企画者(ツ

第2章 外国旅行の動向

67JNTO訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9市場編)

豪州

カナダ

ロシア

ドイツ

フランス

イタリア

スペイン

アープランナー)がいる。一般的に、SIT参加者はツアーに専門的で特殊な

要素が盛り込まれることを要求する。1グループあたりの人数は多くても20人程度と小規模なため、ツアー価格は通常のパッケージツアーより割高になる。しかし、SITの参加者はツアー価格よりも内容を重視する人が多く、ツアーオペレーターとしては高い利益率を享受することができる。そのため、米国ではSITを専門に扱うツアーオペレーターが一つのカテゴリーとして存在している。

訪日テーマ旅行として、ダイビング、スキー、サイクリング、バードウォッチングなどのアウトドア系のツアーや、日本庭園、芸術、現代(モダン)建築、アニメなどのバラエティ豊かなテーマ性・趣味性の高いパッケージツアーの人気が高い。

JNTOでは、大学同窓会組織や博物館会員向け旅行などに携わる関係者の会員組織Educational Travel Consortium(ETC)が開催する年次総会に参加している。アフィニティ旅行市場(アフィニティ旅行とは、大学同窓会、美術館・博物館会員組織などの親睦団体の団体旅行のこと)は、高い経済効果があるだけでなく、ツアー参加者の口コミを通じて、訪問地域や日本のブランド力向上への寄与が期待できる魅力的な市場と言える。米国における日本の生活・文化への理解促進を図るためにも、本市場への継続的な取り組みが欠かせない。

2-3 観光関連施策

1. 外国旅行関連規制

外国旅行に対する規制はない。

2. 旅行業法

米国には連邦レベルでの旅行業法は存在せず、旅行会社は各州の一般的な商取引・職業法に基づき免許を取得して営業を行っている。ただし、消費者保護の観点から、旅行会社に対する特別法や条例を設けている州が2016年10月時点で15州ある*1。

■旅行会社に対し特別法・条例を設けている州*2

カリフォルニア、デラウェア、フロリダ、ハワイ、イリノイ、アイオワ、ルイジアナ、マサチューセッツ、ミネソタ、ネバダ、ニューヨーク、ペンシルバニア、ロードアイランド、バージニア、ワシントン

*1: 資料:各州の州法(条例)*2: 注:2016年10月時点。アルファベット順。

2-4 日本の競合旅行地

日本が競合する旅行地はアジア、特に中国、香港、タイである。2015年の米国人のアジア旅行者数は2012年に対して12%の伸びとなっており、米国人の外国旅行者数の伸率である15%を下回るものの、着実に増加している。2012年以降の動向を見ると、最も米国人旅行者数が多い中国は微減となっている。これに対して米国人旅行者数を伸ばしたのが日本とタイで、日本の2015年の米国人旅行者数は2012年に対して44%と大幅な増加となっている。これは訪日旅行商品が円安により相対的に価格が下がってきたこともあるが、この数年間に競合国では外国旅行者の増加を阻害する要素(中国の大気汚染、タイの政変、香港の反政府デモ、韓国でのMERS)があったのに対して、日本にはそのような大きな要素が無かったこともあると考えられる。

各国の米国人旅行者数を月別に見ると、東アジアに位置する日本、中国、香港と東南アジアに位置するタイではピークシーズンが異なっている。東アジア諸国が春と秋がピークであるのに対して、タイのピークシーズンは冬である。

アジア系以外の米国人にとっては、アジアへの旅行は距離的な要因から、一生に一度行くかどうかである。そのため、アジアを訪問する際には一度に複数の国を周遊しようとする希望もあり、大手ツアーオペレーターではアジア各地と日本を組み合わせた商品も販売している。

2016年に米国人が訪れたいと回答した海外旅行先において日本は9位となり、アジアでは中国に次ぐ人気となっている。今後も米国人旅行者の増加が期待できる。

米国は人口3億人を超える巨大マーケットであり、ベビーブーマーやその後に続く世代の旅行性向が高く、富裕層も多い。これらの理由から、アジア各国とも米国を重点市場と位置付け、政府観光局を中心に誘致キャンペーンを展開しており、アジア諸国との誘致競争はますます激化することが確実である。そのため、より効果的かつ継続的なプロモーションを行う必要がある。

68 JNTO訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9市場編)

■米国人が訪れたいと回答した旅行地1位 英国 9位 日本2位 フランス 10位 インド3位 イタリア 11位 インドネシア4位 ドイツ 12位 オランダ5位 バハマ 13位 香港6位 ジャマイカ 14位 韓国7位 中国 15位 スイス8位 スペイン 16位 台湾

資料:  The New York Times*3(2015年 ただしメキシコ・カナダを除く)

*3:   http://www.nytimes.com/2015/01/11/travel/where-will-americans-travel-in-2015-.html

1. 中国①日本との競合部分 ・ エキゾチックな文化、長い歴史、歴史的建造物・

庭園、独自の食文化、都市観光②主な観光魅力 ・観光地   北京(万里の長城、天安門広場、紫禁城)、上海、

西安(兵馬俑)、長江など ・観光魅力   悠久の歴史、長江クルーズおよび大自然、伝統

舞踊鑑賞、料理、ショッピングなど③観光インフラ   急速に観光インフラの整備が進み、大手旅行会

社の多くが個人旅行パッケージを取り扱うようになった。主要な観光地や高速鉄道駅では英語対応も進んでいる。そのうえ、米国発のフライトも近年大幅に増加しており、低価格の航空運賃も多く発売されている。

④マイナス要因・ 言語障壁(ただし都市部を中心に英語対応の施

設は増加している)・治安の問題・元高による旅行費用の増加・ビザの取得に要する費用や手続き・大気汚染など衛生面の問題⑤政府観光局などの誘致活動・ 中国国家旅遊局は、中国の観光資源として万里

の長城や紫禁城以外についてはほとんど知られていないことから、米国人旅行者にとっての中国をより幅広いものにすることを意図し、「China Like Never Before」と銘打った伝統的な中国と現代の中国を想起させる新キャンペーンを開始した。「Luxury, soft adventure, educational travel, senior travel」の4分野に焦点を当て、テレビ広

告やオンラインでの情報発信を展開している。・ 北京、上海、広州、成都など、72時間以内の滞

在者を査証免除で受け入れる空港を拡大しており、米国においてもその情報発信が行われている。

・ アモイ市で大型豪華客船の建造やクルーズターミナルの建設を行うなど、米国で人気の高いクルーズ旅行の誘致に力を入れている。

・ 2016年 を「US-China Tourism Year」 と し て、中国政府および米国政府関係機関が、双方への送客と消費額拡大を目的として、プロモーションを実施している。

2. 香港①日本との競合部分

エキゾチックな文化、独自の食文化、都市観光②主な観光魅力・観光地 ビクトリア・ピーク、オーシャンパークなど・観光魅力  ショッピング、グルメ、多彩な祭りとイベント、

東西文化の共存、クルーズ③観光インフラ

  英語が公用語の1つになっているため、言語障壁が少なく、個人でも安心して旅行ができる。宿泊施設や交通機関が整っている。

④マイナス要因・観光地が少ない・米国人の関心が中国本土に集中している。 政府観光局などの誘致活動・ 「Asia’s World City」をテーマに文化の融合や多

様性、ショッピング、ダイニング、アートなどの都市観光を中心にプロモーションを行っている。

・ アジア地域でのクルーズ人気の高まりや香港での大型クルーズターミナルの建設を受け、ロイヤルカリビアンインターナショナル社(Royal Caribbean International)やクリスタルクルーズ社(Crystal Cruises)など、米国クルーズ会社が香港を含むアジア周遊のクルーズツアーを増加させている。

3. タイ①日本との競合部分

エキゾチックな文化、歴史的建造物、独自の食文化、文化体験プログラム

第2章 外国旅行の動向

69JNTO訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9市場編)

豪州

カナダ

ロシア

ドイツ

フランス

イタリア

スペイン

②主な観光魅力・観光地 バンコク、アユタヤ、プーケット・観光魅力  王宮や遺跡などエキゾチックな建造物、水上

マーケット、プーケットなどのリゾート(ビーチ)や北部の自然、グルメ、ナイトライフ

③観光インフラ・ 主要観光地については英語表記、英語対応が充

実している。・ 主要観光リゾート地には国際的に認知度の高い

ホテルチェーンが多く集まる。・ アジアの競合の中では安いというイメージがあ

る。④マイナス要因・ 米国からのフライト時間の長さ(ロサンゼルス

から19時間弱)・不安定な政情⑤政府観光局などの誘致活動・ これまでの人数重視から一人あたりの消費額の

増加を目指す傾向にあり、専用サイト開設をはじめ富裕層向けの取り組みに注力する動きがみられる。

・ メディカルツーリズムに力を入れており、米国でも旅行会社や健康保険会社を対象とした招請事業を実施している。美容整形、健康診断、歯科矯正、スパ、マッサージなどの商品を紹介するウェブサイトFind your fabulousをオープンするなど健康と美をテーマにした情報発信にも力を入れている。

・ LGBT市場に積極的に取り組んでおり、LGBT関連のイベントへの出展やメディア向けの招請事業を実施している。

4. 韓国①日本との競合部分

エキゾチックな文化、歴史的建造物、独自の食文化、文化体験プログラム、都市観光②主な観光魅力・観光地  ソウルが中心であるが、より物価が安く魚介類

が豊富な釜山や、温暖地でMICE需要の多い済州島にも需要がある。

・観光魅力  ソウルでのショッピングやグルメ、茶道・禅体

験などの文化体験プログラム、カジノやバーなどのナイトライフ。

③観光インフラ・治安が良く個人でも安心して旅行ができる。・宿泊施設や交通機関など都市環境が整っている。・ 物価もそれほど高くなく、リーズナブルに旅行

ができる。④マイナス要素・著名な観光スポットがそれほど多くない。・北朝鮮の政情不安、・軍事的緊張⑤政府観光局などの誘致活動・ 米国と韓国は、信用できる旅行者に対する税関

および入国手続きの相互緩和措置に、アジアではじめて合意した。

・ 韓国の概要、韓国のテーマ別のツアーの紹介、地域の説明などを含む旅行会社向けE-ラーニングプログラムを開始した。

・ 中華系女性などをターゲットとした整形手術も含むメディカルツーリズムに最近力を入れ始めており、専用のウェブサイトを開設した。

2-5 訪日旅行の価格競争力

従来から米国人の間では、「訪日旅行は非常に高額である」という根強い意識があり、現在でも多数の米国人はこうした感覚を持っている。実際にツアーの価格を見てみてもアジアの中でも日本商品は高額な設定となっている。

一方で2013年から2014年にかけて進んだ円安ドル高や、原油価格の低下に伴う燃油サーチャージの撤廃などにより、航空券も含めた訪日旅行の費用は低下傾向にある。特に航空券は時期・出発地によるが一般的な感覚よりも安い販売価格を目にする機会が増えている。このため、2014年ごろから日本は今が行き時であるという風潮が旅行業界や日本を旅行先の候補にしている米国人の中で現れてきている。

■米国発ツアー価格比較表

  方面 日数 円換算額(円)

★ 日本(東京・箱根・京都) 7 28万0,021

★ 日本(東京・箱根・京都・大阪・広島) 10 38万0,628

中国(北京・西安・上海) 9 14万4,861

タイ(バンコク・チェンライ・バンタトン・チェンマイ) 11 21万3,531

ベトナム・カンボジア(ハノイ・ダナン・ホーチミン・シェムリアップ)

12 23万3,151

70 JNTO訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9市場編)

インド(デリー・アグラ・ジャイプール) 9 13万5,051

イギリス・フランス(ロンドン・パリ) 7 15万2,818

イタリア(ベネチア・フィレンツェ・ローマ) 10 23万5,331

南アフリカ(ケープタウン・ヨハネスブルグ) 9 25万7,131

ペルー(リマ・クスコ・マチュピチュ) 8 17万6,471

※ 2016年5月現在。★は訪日ツアー。価格は季節などにより変動するが、各方面とも最低料金を記した。1米ドル=109円で換算。

2-6 評価の高い日本の旅行地

1. 一般的な傾向米国ではゴールデンルートの人気が極めて高く、

ガイドブックもゴールデンルート上の主要観光地に多くのページ数を割いている。首都・東京は近代的な都市として、新宿、銀座、渋谷、原宿、表参道、秋葉原、六本木などショッピングやナイトライフを楽しめる場所の人気が高い。一方、古都・京都については、伝統・文化に触れられる寺社仏閣が個人旅行者向けのガイドブックで紹介されているほか、団体ツアーでの訪問地となっている。京都は、米国人が好む伝統的建造物の期間限定公開や夜間ライトアップなどを展開しており、旅行業界からの評価も高い。

ゴールデンルートに組み合わせられることが最も多い旅行地が広島である。厳島神社の鳥居は米国においても認知が高く、一度は見たいという旅行者は多い。また、金沢、高山、白川郷などを組み込んだツアーも、旅程や予算に余裕のある層にとって定番の商品となった。朝市の散策や和菓子作り体験などを楽しめることから、日本の伝統美に関心の高い熟年層の人気を集めている。日本の近代建築や日本庭園への関心も高まっており、米国でも著名な建築家、安藤忠雄などの作品が鑑賞できる香川県・直島には多数の米国人が来訪している。

上記以外に注目度が高い旅行地としては、長野(スノーモンキーや白馬でのスキーなど)、島根(足立美術館の日本庭園など)などが挙げられる。また、人気の高まっている日本周遊を含むアジアクルーズの寄港地となっている都市の周辺も、今後知名度が上昇する可能性を持っている。

2. アジア系米国人旅行者一般の白人系米国人旅行者よりも訪日旅行のリ

ピーターが多く、日本に関する認知度も高い。そのため、ゴールデンルート以外の地域への関心が高く、それらの地域を訪れるツアーが多く販売されている。中華系の旅行会社のツアーでは、関東、関西に加え、北海道へのツアーも人気が高い。また、日系人の多いハワイはリピーターが多いため、ゴールデンルートは訪問せず、北海道・東北・九州のみを訪問するツアーも多数催行されている。

3. 国際会議、企業ミーティング、インセンティブ旅行企業ミーティングやインセンティブ旅行では、一

般的な観光旅行と同様に、東京、京都の人気が高い。その理由としては、①国際都市としての米国での認知度の高さ、②国際空港(成田、関西)からのアクセスの良さ、③質、サービス、規模共に国際レベルのホテルや会議・コンベンション施設の多さ、④ビジネスやトレンドの最先端であること(東京)、⑤会議と同時に日本の伝統文化体験が可能なこと(京都)、⑥外資系ホテルがあること、などが挙げられる。

4. メディアでの主な紹介事例米国の富裕層・知識層の読者を多く持つ「National

Geographic Traveler」の2012年12月号に、10ページに渡り四国を紹介するカラー記事が掲載された。JNTOは記事掲載にあたり、四国運輸局および取材先関係者と連携し、記者の取材支援を行ったが、その結果、記事の中では徳島県・祖谷渓谷や善通寺といった四国八十八箇所霊場などが、同誌の売りである質の高い美しい写真と共に紹介された。これを受けて、2013年には記事の内容を基にした高級ツアーが造成・催行された。ゴールデンルート以外の場所でも、歴史・文化・生活などのその場所でしか体験できないものを訴求すれば、米国の有力メディアでも大きく取り上げられる可能性があることが証明された事例である。

第4章で詳細に記載しているが、2015年度は新規新幹線開業をフックとして北海道を中心にプロモーションを展開し、「Departures」や「AFAR」など各種媒体で相次いで北海道の記事が掲載された事例もあり、徐々に米国でも日本各地への関心が高まりつつあると言える。

その他、下記に紹介するように有名旅行口コミサイトや大手旅行雑誌などで日本が表彰される機会が増えており、観光地としての日本に対する関心の高まりが伺える。

第2章 外国旅行の動向

71JNTO訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9市場編)

豪州

カナダ

ロシア

ドイツ

フランス

イタリア

スペイン

・ 世界最大級の旅行口コミサイトであるトリップアドバイザー(Trip Advisor)は、ユーザーによる世界の都市調査における世界の旅行者の

「総合的な満足度」で東京が2年連続1位と発表。(2013年、2014年)

・ 米国の最大手旅行雑誌『トラベルアンドレジャー(Travel+Leisure)』誌が毎年夏に発表する 読 者 投 票 ラ ン キ ン グ「World’s Best Awards」で「京都」が2014年、2015年と2 年連続で「Top Cities」ランキング第1位に輝く。

・ 米大手旅行雑誌である『コンデナストトラベラー(Condé Nast Traveler)』誌が毎年秋に発表する読者投票ランキング「Readers’ Choice Awards」の2016年の結果では、「Best Cities in the World」のランキングで東京が世界で1位、京都が同2位にランクイン。

・ 大手外国旅行ガイドブック『ロンリープラネット』が、2016年のおすすめ外国旅行先・国ランキングに日本を2位と発表

・ 『ナショナルジオグラフィックトラベラー(National Geographic Traveler)』誌の「2016年に訪れるべき旅行先」では、20の国・都市・地域が選定される中、「北海道」が選出。

2-7 訪日旅行の有望な旅行者層

■ シニア層(ベビーブーマー世代)の高級ツアーやクルーズ旅行

属性および規模・ 米国で最大の購買力を持っているベビーブーマー層(1946年~ 1964年生まれ:7,640万人)。

旅行形態

・ 工夫を凝らした体験的、教育的、かつ社会貢献的なツアーを好む人が多い。シニア層(ベビーブーマー世代)は、団体旅行よりもむしろ個人旅行や家族旅行を好む傾向がある。また、クルーズ旅行の需要も高い。

訴求要因

・ 日本の伝統文化や歴史、日本食などに興味を持つ人が多い。“Value for Money(価格に見合った価値)”を実感・体感させ得る日本文化や自然体験など幅広いテーマの観光資源・高水準のホテル・旅館・レストラン・交通などのサービスとホスピタリティー、清潔さ、安全性を提示する。

旅行費用、日数など

・ゴールデンルート(7日間~ 12日間)・ゴールデンルート+α(10日間~12日間)・日本周遊(10日間)・ アジア周遊クルーズ(訪日寄航含む)(10日間~ 32日間)のいずれか。費用は航空運賃・燃料費を含み50万円から120万円。最も高額なツアーの価格帯は約180万円。

選定の背景

・ シニア層(ベビーブーマー世代)は規模が大きく、購買力も大きい。特に退職している人達は、時間に余裕があり、好奇心と行動力がある人が多いため、余暇活動の一環として訪日旅行を組み込んでもらえる可能性が高い。

旅行条件

・ 魅力的な体験プログラムの充実、小人数限定だからこそ可能な特別プログラムや訪問の提案を旅行目的地側から行う。その際、顧客側に専門家(学芸員など)がいる場合、一緒になって企画を構築する必要がある。その際には、日本の地方文化・芸能、陶芸、紙漉き、神楽、日本酒の試飲など地元に根付いたアピール度の高いものを吟味する。

効果的な宣伝方法

・ 大切な記念旅行や特別の休暇旅行を計画する場合、米国の一般消費者は、オンラインのみではなく、旅行会社に相談する場合が多く見られる。米国には旅行商品を消費者に販売する直接窓口となるトラベル・エージェントが集まった会員組織(コンソーシアムと呼ばれる)があり、広報宣伝活動やトラベル・エージェントの知識向上のための教育プログラム、ネットワーク構築セミナーなどを実施している。・ 高額旅行を扱う代表的なトラベル・エージェント向けコンソーシアムとしては、Virtuoso、 Signature、Ensembleなどが挙げられる。また、企業体としては American Express社やTravel Leaders Group社などがある。JNTOでは、これらのコンソーシアムの流通網を活用した共同プロモーションや、専門旅行博出展により、高額旅行者層に効果的に働きかけを実施している。・ また、有力なツアーオペレーターと判断した場合、決定権者や造成担当者を訪日視察旅行(ファムトリップ)に招き、推薦コースを時間的な余裕を持たせて実際に旅行してもらうと同時に、日本側の宿泊施設やランドオペレーターなどと直接具体的な商談を行ってもらうことが現実的な対応方法である。・ なお、消費者向けの誘致宣伝手法としては、従来の紙媒体の利用も然ることながら、オンライン媒体で展開すれば誰もが閲覧可能になる。これにより多くの米国人消費者に商品内容を広く知ってもらうことが可能になり、経費的にも節約に繋がる。

■アジア系(特に中国系)米国人の里帰り市場

属性および規模

アジア系(特に中国系)米国人は米国全体では約5%に過ぎないが、2000年以降大きく増加しており1,584万人いる。西海岸、特にカリフォルニア州では人口の約13%を占め(約514万人に相当)。都市圏別ではサンフランシスコが最も多くサンフランシスコの人口の26%を占める。

旅行形態

団体ツアーが人気。また、中国、台湾、香港などのルーツのある国に里帰りをする途中で訪日する場合が多い。訪日リピーターも多い。

72 JNTO訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9市場編)

訴求要因 ショッピングが楽しめる大都市観光のほか、温泉、食事、自然・風景。

旅行費用、日数など

関東6日間 9万円~、関西7日間 14万円~、九州8日間 18万円~。 (上記料金には航空運賃が含まれない。)

選定の背景

アジア系米国人は、定期的に中国、台湾、香港などルーツがある国に旅行するため、一般の米国人に比べ訪日の可能性が高く、リピーター需要も見込むことができる。ツアーオペレーターは、訪日リピーター向けの新規ルート開拓に熱心であり、新規ルートの開拓により、結果的にはゴールデンルート以外の地域への来訪促進にもつながる。

効果的な宣伝方法

訪日ツアーは、主に米国西海岸やニューヨークにあるアジア系のツアーオペレーターが造成・販売しているため、彼らに対してセールスを行うことが必要である。その際には、彼らが自社や日本側のアジア系ランドオペレーターを通して、もしくは直接手配によって安価なレートで仕入れを行っている点に留意する必要がある。なお、アジア系のツアーオペレーターは、それぞれのルーツのある国の言語で発行されている新聞(中国語なら世界日報など)やラジオなどに広告を掲載することが多い。

■コンベンション参加者

属性および規模

・ 北米最大の学会関係者会員組織ASAE(American Society of Association Executives、本部ワシントンDC)の会員2万1,000人。・ 北米を中心とする学術団体ミーティングプランナー(MP)、インセンティブプランナー、国際本部事務局を会員に持つPCMA(Profess iona l Convent ion Management Association、本部はシカゴ)の会員6,500人。会員の中には、政府観光局、コンベンションビューロー、ホテル、PCO(Professional Congress Organizer)などのサプライヤーも含まれる。

旅行形態 ・ 会議主催者や、主催者と契約したミーティングプランナーなどによる手配。

訴求ポイント

・ 日本が得意とする最先端技術、学術分野、会議前後の観光・産業施設など豊富な観光魅力。

旅行費用、日数など ・会議開催日を含め1週間程度。

選定の背景 ・ 国際会議は、景気に左右されることなく開催されることが多い。

効果的な宣伝方法

・コンベンション主催団体や会議運営を扱う主なPCOなどへの働きかけが必要となるが、特に大型会議は会議開催決定まで数年かかるため、国際団体連合(UIA)、国際会議協会(ICCA)などの国際団体より数年前から情報を入手すると共に、早期に開催地決定権を持つキーパーソンを特定し、コンタクトを取ることが重要となる。また、必要に応じて会議開催地決定前の視察を実施し、キーパーソンやプランナーに実際に開催地を視察してもらえれば理想的である。例え誘致に成功しなくても、いくつもの会議を受け持っているキーパーソンやプランナーであれば、近い将来開催地候補として指名してくれることも考えられる。・コンベンション参加者は家族を同伴させたり、会議によっては同伴者プログラムを設定したりすることもあるため、多岐にわたる内容を提案することが望まれる。

2-8 訪日旅行の買い物品目

美術工芸品、食器、浴衣や着物など、日本の伝統的な土産物に加え、近年ではモダンで使いやすい調理器具や、デザインの可愛い菓子なども人気である。お箸などは日用品でありながらインテリアなど観賞用として購入される場合も多い。日本のポップカルチャーの人気の影響で、若者や子ども連れにはキャラクター商品やゲーム類、最新のファッション関連商品などの人気も高まってきている。一方、電化製品などは、米国でも購入が可能なため人気はさほど高くはない。

観光庁が実施した調査「訪日外国人消費動向調査」の2015年の結果によれば、「購入した品目」は1位

「その他食料品・飲料・酒・たばこ」、2位「菓子類」、3位「和服(着物)・民芸品」、「購入した場所」は1位「コンビニエンスストア」、2位「百貨店・デパート」、3位「観光地の土産店」であった。

2-9 日本の食に対する嗜好

米国では、食や料理を旅の主目的とする「カリナリートラベル(Culinary Travel)」というジャンルが一般化している。特に高級旅行を志向する消費者の間で、「旅先で料理教室に参加したい」というリクエストは珍しくない。しかしながら、現在は食のみを主目的としたカリナリートラベルは、イタリア、フランス、スペインなどのヨーロッパ方面へのツアーが主流である。

米国で確立されたジャンルである「高級料理雑誌」には、日本料理のレストランや食材に関する記事が

第2章 外国旅行の動向

73JNTO訪日旅行誘致ハンドブック 2017(欧米豪 9市場編)

豪州

カナダ

ロシア

ドイツ

フランス

イタリア

スペイン

頻繁に掲載されており、訪日旅行需要の底上げに大きく貢献している。こうした雑誌を通じた情報はもとより、ケーブルテレビ局のあるフードチャンネルで放映されている米国版「料理の鉄人(Iron Chef)」などの番組の影響もあり、日本食は米国人にとって非常に身近なものになった。

もともと日系人が多かったことや、カリフォルニア米で作られた寿司であるカリフォルニア・ロールがあったことにより、米国西海岸を中心に日本食のブームが広がった。それに呼応するように、日本酒も当初は日系人や日本人駐在員に飲まれていたが、米国人などの間でも人気が広がり、日本食は一種のトレンディーな存在として着実に地位を高め、米国内で幅広く認知されている。

米国人の間では「日本食=健康食」のイメージがあり、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコなどの大都市居住者を中心に、寿司、天ぷら、しゃぶしゃぶ、日本酒、緑茶といった日本食に慣れ親しむ人が多い。日本食は従来、高級料理という位置付けで高所得層を中心に食される傾向が強かったが、持ち帰り専門の惣菜レストランの一角に寿司やうどんコーナーが設けられ、街中でよく見られるスターバックスのようなコーヒー店でも緑茶がメニューに入っているなど、大衆化が進んでいる。また、ロサンゼルス、ニューヨークにおいて「ラーメン」が注目を集めるなど、正統派の日本料理だけでなく、B級グルメへの関心も高まっている。「ロサンゼルスタイムズ」、「ニューヨークタイムズ」、『ボナペティ』のような高所得者向けの新聞や雑誌で、ラーメンや焼き鳥の特集が掲載される現象も起きている。その他には、米国風に「ロバタヤキ」と称した、焼き物類をメニューに掲載するレストランも増えている。さらに、昨今、都市部の高級レストランでは、和牛、黒豚、豆腐、ゆず、椎茸など日本の食材名がそのままメニューに記載されていることが多く、日本の食名・食材名が身近になってきている。

一方で、米国の内陸部では生魚を食べる習慣がないため、日本食を敬遠する人たちも多く、同じ米国と言え事情が異なる。また、米国人には菜食主義者やユダヤ教信者、イスラム教信者など宗教上の理由により特定の食材を食さない人もおり、嗜好は多種多様である。

2-10 接遇に関する注意点

1. アレルギーやベジタリアンへの対応米国ではレストランにおけるアレルギー対応が進

んでおり、特に高級レストランにおいては顧客一人ひとりの食品アレルギーの有無を聞き、アレルギーのある食材は料理から除くという対応が一般的に行われている。また、ベジタリアンのメニューも多く用意されている。日本の高級和食店においては、同レベルの対応ができる店が少なく、高級レストランなのに対応ができないということで不満を持たれることが多い。

2. タトゥー日本の温泉や公共浴場ではタトゥー(入れ墨)が

あると入浴できないという点は徐々に認識されてきているものの、タトゥーを入れている米国人は多く、タトゥーに対する米国内における感覚と日本における感覚は大きく乖離している。ネイティブアメリカンなどにおいてはカルチャーとしてタトゥーを入れる習慣もあることから、利用を断る場合にも誠意を持った対応が必要である。

3. LGBTLGBTはLesbian, Gay, Bisexual, Transgenderの頭

文字をとった単語である。米国の旅行業界では、LGBT層は富裕層の一種として捉えられており、観光プロモーションとしてLGBTの誘致を積極的に行っている国も多い。LGBTについては米国内においてもLGBTが社会において受容されている東西海岸沿いと、宗教的な観点などから受容に難色を示す中西部で意識に隔たりがあり、米国人であればLGBTに寛容であるとは言い切れない難しさがある。LGBTの顧客について特別な対応は不要であるが、旅行先において好奇の目で見られることを極端に嫌うため、LGBTの接遇を行う場合には好奇の目で見ない、余計なことは聞かない、など一般的な顧客と同様の接遇をとるよう周知する必要がある。

4. 荷物一般的に米国人旅行者の荷物は、日本人旅行者と

比べるとかなり多い。また、訪日旅行中は1カ所に留まるのではなく、複数の都市を訪問することが多いため、訪日に際して荷物のハンドリングに不安に感じることが多い。とりわけ、米国の主要市場であるクルーズ旅客は、荷物が多い傾向がある。