2018 年12 月27 日 木 jpec 世界製油所関連最新情報

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1 2018 年 12 月 27 日(木) JPEC 世界製油所関連最新情報 2018 年 12 月号 (2018 年 11 月以降の情報を集録しています) 一般財団法人 石油エネルギー技術センター調査情報部 目 次 概 況 1. 北 米 6 ページ (1) Par Pacific Holdings による US Oil & Refining の買収情報 (2) 最近の製品市況とガソリン留分削減/中間留分増産の動き (3) 2020 年 IMO 規制後のガソリン/ディーゼル需給の不均衡を懸念する情報 2. ヨーロッパ 12 ページ (1) 地中海沿岸諸国の燃料市場が変動する可能性を伝える情報 (2) イタリアの Saras がバンカリング施設を建設 (3) ポーランドの PKN Orlen と Grupa Lotos の統合に向けた動き 3. ロシア・NIS諸国 16 ページ (1) ロシアの Gazprom Neft の Omsk 製油所の水素化脱蝋装置の建設情報 (2) ロシアの石油精製事業と石油関連税制に関連する情報 4. 中 東 19 ページ (1)アブダビ ADNOC の大規模な事業投資戦略 1) 天然ガス増産に向けた取り組み 2) 石油精製・石油化学事業 (2) Saudi Aramco が 2 つの国際会議で発表した事業戦略 1) Gulf Petrochemicals and Chemicals Association(GPCA)フォーラム 2) In Kingdom Total Value Add(IKTVA)フォーラム 次ページに続く

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2018年 12月 27日(木)

JPEC 世界製油所関連最新情報

2018年 12月号

(2018年 11月以降の情報を集録しています)

一般財団法人 石油エネルギー技術センター調査情報部

目 次

概 況

1. 北 米 6ページ

(1) Par Pacific Holdingsによる US Oil & Refiningの買収情報

(2) 最近の製品市況とガソリン留分削減/中間留分増産の動き

(3) 2020年 IMO規制後のガソリン/ディーゼル需給の不均衡を懸念する情報

2. ヨーロッパ 12ページ

(1) 地中海沿岸諸国の燃料市場が変動する可能性を伝える情報

(2) イタリアの Sarasがバンカリング施設を建設

(3) ポーランドの PKN Orlenと Grupa Lotosの統合に向けた動き

3. ロシア・NIS諸国 16ページ

(1) ロシアの Gazprom Neftの Omsk製油所の水素化脱蝋装置の建設情報

(2) ロシアの石油精製事業と石油関連税制に関連する情報

4. 中 東 19ページ

(1) アブダビ ADNOCの大規模な事業投資戦略

1) 天然ガス増産に向けた取り組み

2) 石油精製・石油化学事業

(2) Saudi Aramcoが 2つの国際会議で発表した事業戦略

1) Gulf Petrochemicals and Chemicals Association(GPCA)フォーラム

2) In Kingdom Total Value Add(IKTVA)フォーラム

次ページに続く

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(3) クウェート KNPCの長期事業計画

(4) アブダビの非在来型天然ガス資源開発の動き

5. アフリカ 25ページ

(1) アフリカ諸国の原油輸出先が多様化している状況

1) ポーランド PKN ORLENがナイジェリア・アンゴラから原油を輸入

2) リビアの中国向け原油輸出が増加

6. 中 南 米 27ページ

(1) 米領ヴァージンの St. Croix製油所の再稼働に向けた動き

(2) メキシコ Pemexが、米国から Bakken原油を輸入

(3) アルゼンチンの石油・天然ガス増産計画

1) アルゼンチンの在来型・非在型原油・天然ガスの生産状況

2) アルゼンチン初の LNGプロジェクト

3) チリへの天然ガス輸出再開の動き

7. 東南アジア 33ページ

(1) インドネシア Pertaminaの精製事業の最新動向

(2) インドが戦略原油備蓄量の拡大を計画、ADNOCが原油を供給

8. 東アジア 36ページ

(1) 中国の原油・天然ガス輸入の動向

1) 2018年 10月の原油・天然ガス輸入状況

2) カザフスタンからの天然ガス輸入契約量が増加

3) 今冬の CNPCの天然ガス供給量

4) LNGの輸入拡大の動き

(2) 中国企業による INVISTAの PTAプロセス導入の動き

9. オセアニア 39ページ

(1) オーストラリアの業界による石油・天然ガス投資環境の認識

(2) オーストラリアの LNG技術を支援する施設“LNG Futures Facility”

「世界製油所関連最新情報」は、原則として 2018年 11月以降直近に至るインターネット情報をまとめたものです。JPECの ウェブサイトから改訂最新版をダウンロードできます。 http://www.pecj.or.jp/japanese/overseas/refinery/refinery_pdf.html

下記 URLから記事を検索できます。(登録者限定) http://info.pecj.or.jp/qssearch/#/

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概 況 1.北米

米国 Par Pacific Holdingsは、U.S. Oil and Refiningを 3.59億ドルで買収し、

太平洋沿岸・北西部及びロッキー山脈地域の下流事業部門を傘下に収める。

米国の精製事業は、ガソリンのマージンが高く、優先的に生産してきたが、原油

の軽質化や市場の変化で、軽油のマージンがガソリンを上回る状況に変化してき

ている。2020年の IMO船舶燃料規制の施行を控えて、低硫黄軽油留分の需要が

増えることからこの傾向が続くと予想される。

2.ヨーロッパ

地中海沿岸のトルコ・エジプト・アルジェリアでは、トルコの新設 STAR製油所の

完成などで石油精製能力が拡大し、燃料の自給力が向上していくと予想されてい

る。

地中海沿岸地域は船舶燃料の需要が高く、2020年の IMO船舶燃料規制で、中間

留分の需要が増えることが予想され、精製能力の拡大と合わせて、市場が大きく

変動する。

イタリアの精製会社 Sarasは、IMO船舶燃料規制の施行に向けて、Sardinia島の

Sarroch製油所の近隣に、船舶燃料油ターミナルの建設を計画している。

ポーランドの石油企業 PKN Orlenは、Grupa Lotosの買収計画を欧州委員会(EC)

に提出し、統合に向けて一歩前進した。ECは、市場寡占の懸念について審査す

ることになる。

3.ロシア・NIS諸国(New Independent States)

ロシア国営 Gazprom Neftは、Euro-5ディーゼル生産プロジェクトで、Omsk製油

所のディーゼル水素脱蠟装置の建設を Izhorskskiye Zavodyに発注した。

ロシア政府は、各種税制で石油企業をコントロールしているが、現在、製品の輸

出に有利な税制の下で、製油所の近代化が進められている。

政府は、国内燃料価格の抑制を目的に、輸出関税のリベート還元を検討している。

それにより、製油所の近代化投資が遅延する懸念が浮上している。

4.中東

アブダビの最高石油評議会は、天然ガスの自給体制に向けた方針を承認した。国

営 ADNOCは、15億 cf/日の天然ガス生産を目指して、Hail・Ghasha・Dalmaプロジ

ェクトに着手した。アブダビは、非在来型天然ガスの開発も計画している。

ADNOCは、天然ガス開発で外国企業と連携する方針で、イタリア Eniには Ghasha

鉱区、フランス Totalには、Ruwais Diyab非在来型埋蔵層の権益を提供する。

ADNOCは、石油・天然ガスのダウンストリーム事業に 1,650億 AEDを投資する計

画で、精製・石油化学拠点の Ruwaisには、エチレン・プロピレンプロジェクトに

続いて、誘導体産業の発展を目指している。

サウジアラビア国営 Saudi Aramcoが、湾岸石油化学・化学協会の年次総会で精製

能力を 800~1,000万 BPD(権益分)に引き上げ、石油化学に 1,000憶ドルを投資

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し、原料向けに原油を 200万 BPD振り向けるなどの方針を表明した。投資先とし

て、国内以外に、中国・インドなどを候補地に挙げている。

Saudi Aramcoは、ダウンストリーム事業の垂直・水平統合を進める方針で、石油

化学会社 SABICの株式取得を計画している。

サウジアラビアは、国内調達率の向上や、自国企業の育成を図る In Kingdom

Total Value Add(IKTVA)プログラムを展開している。11月下旬に、第 4回 IKTVA

フォーラムが開催され、多くの国々が参加し、多くの投資案件の紹介や展示・ワ

ークショップが行われた。

クウェート国営 KNPCは、2035年までに精製能力を 93.5万 BPDから 200万 BPD

に引き上げる計画を明らかにした。現在進行中の既設製油所近代化および新設

Al Zour製油所プロジェクトの完了後の精製能力は、141.5万 BPDになることか

ら KNPCは、精製能力 60万 BPD分の製油所新設を検討している。

KNPCは、天然ガス増産にも取り組む方針で、2025年までに生産量を 37億 m3/年

に引き上げることを目指している。

アブダビは、フランスの Totalと Ruwais Diyab非在来型天然ガス鉱区を開発す

る計画を発表した。2030年までに天然ガスを 10億 cf/日生産し、40年間の生産

を計画している。

5.アフリカ

米国では、軽質なシェールオイルが増産していることから、従来からの軽質原油

の主要輸入先のアフリカからの原油輸入量が減少傾向にあり、アフリカ諸国は、

米国以外への輸出量を増やしている。

ロシア原油への依存度を減らす方針のポーランドのPKN ORLENは、ナイジェリア・

アンゴラからの原油輸入を開始している。また、リビアの中国向けの原油輸出量

が増加している。

6.中南米

カリブ海の米国の保護領ヴァージン諸島では、操業を停止していた Saint Croix

製油所の再稼働に向けて、政府と ArcLight Capital Partnersが合意した。

メキシコ国営 Pemexは、新たに米国北西部のノースダコタ州などで産出する、軽

質 Bakkenシェールオイルの輸入を発表した。Pemexは、既存の精製装置で、ガ

ソリンなどを増産する目的で、軽質原油の調達を進めている。

アルゼンチンの 2018年 10月のシェールオイルなど非在来型原油の生産量は、

2017年 10月に比べて、70%増加した。シェールガスも前年同月比で 38%増産し

た。

アルゼンチンは、シェールガスなど天然ガスが増産していることから、チリへの

パイプライン輸出再開や、LNG輸出設備の導入計画が進行している。

7.東南アジア

インドネシア国営 Pertaminaは、製油所近代化・近代化プロジェクト MP3を展開

しているが、Balikpapan製油所の水素プラント建設プロジェクトでは、リフォ

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ーマーの基礎設計業務を Air Liquideに発注した。同製油所では、Euro 5規格

の燃料の生産を計画している。

原油の輸入依存度が急激に拡大しているインドでは、原油の戦略備蓄(SPR)に力

を入れ、外国の国営石油会社との共同事業を認めている。戦略備蓄機関 ISPRL

は、ケーララ州 Padurの地下岩盤貯蔵施設への PSR原油備蓄を、アブダビ国営

ADNOCと共同で検討することで合意した。インド国営石油会社は、アブダビ沖の

鉱区権益を取得するなど、アブダビとの関係を深めている。

8.東アジア

中国の 2018年 10月の原油輸入量は、前年同月比 32%増で、過去最高を記録し

た。2018年 1~10月の輸入量は前年同期比で 8.1%増加した。1~10月の天然ガ

ス輸入量は、前年同期比 33.1%増加した。

中国国有 CNPC傘下の China PetroChina Internationalは、カザフスタンの

KazTransGasと期限を迎えていた、天然ガス売買契約を新たに契約した。契約量

は、前回の契約の倍の 100億 m3/年。

中国国有 CNOOCは、フランス Totalからの LNG購入量を、100万㌧/年から、150

万㌧/年に引き上げることに合意した。

CNPCは、江蘇省如東県(Rudong)の Rudong LNG輸入ターミナルの LNG貯蔵能力拡

大プロジェクトに着手した。

中国ではプロピレンを原料とするポリプロピレンの増産、パラキシレン(PX)を原

料とするポリエチレンテレフタレート(PET)が増産している。米国の大手合成繊

維企業 INVISTAは、PXと PETの中間原料である高純度テレフタル酸(PTA)プロセ

スの中国企業へのライセンス提供を増やしている。

9.オセアニア

オーストラリアの石油生産探鉱協会は、世界の石油・天然ガス投資適性の順位で、

ビクトリア・ニューサウスウェールズ・タスマニアの 3州がワースト 10にランク

インしたことを指摘し、州政府に政策の見直しを求めている。

カタールに次ぐ、世界第 2位の LNG輸出国のオーストラリアでは、LNG事業の発

展を目指すために LNG設備の実証設備“LNG Futures Facility”の運用を計画し

ている。

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1. 北米

(1) Par Pacific Holdingsによる US Oil & Refiningの買収情報

米国ヒューストンに本社を置く Par Pacific Holdings, Inc.(旧称 Par Petroleum

Corporation)は、ワシントン州 Tacoma の石油精製会社 U.S. Oil and Refining Co.

を、3.58億ドル(+運転資本)で買収した。この取引は 2019年 1月に完了する予定で

ある。

Par Pacificは、石油下流分野に重点を置いた、戦略的成長計画を展開中であるが、

Par Pacificの William Pate CEOは、「今回の買収は、ハワイ州、太平洋北西部及び、

ロッキー山脈地域の資産をスケールアップすると共に、強力な統合型下流ネットワ

ークを構築するためのものだ。」と述べている。

Par Pacificは、ハワイ州最大のエネルギーネットワークの1つを所有し、Ewa Beach

製油所(9.4万 BPD、Kapolei製油所とも称されている)のほかに、州内に 91ヶ所の小

売販売店に燃料を卸す物流システムを所有している。

また、ハワイ州以外では、ワシントン州、ワイオミング州、アイダホ州など太平

洋沿岸の北西部およびロッキー山脈地域に 33ヶ所の小売販売店を所有し、物流シス

テムを持つ他、ワイオミング州では Newcastle製油所(1.8万 BPD)を操業している。

Par Pacific は、コロラド州西部に多くの事業と資産を保有する天然ガス会社

Laramie Energy,LLCの株式 46%も所有し、2018年 8月には、Ewa Beach製油所近く

に Island Energy Services LLCが保有していた遊休製油所を買収している。この製

油所は、かつて Chevronが所有していた Kapolei製油所(5.4万 BPD)である。

今回の U.S. Oil and Refiningの買収で、Par Pacificが取得する主な資産を以下

にまとめる。

精製能力 4.2万 BPDの Tacoma製油所

海上輸送ターミナル

ユニットトレイン用鉄道施設

貯油能力 290万バレルの貯蔵基地

ワシントン州の McChord空軍基地まで敷設された 14マイルのジェット燃料パイ

プライン

トラックラック 6系列、ローディングアーム 10基

これらの資産項目以外にも、Par Pacificが買収する U.S. Oil & Refiningの流通

関連資産には、Bakken 原油、カナダおよびアラスカ産原油などの原油調達のほか、

太平洋地域およびロッキー山脈地域での製品市場がある。

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図 1. U.S. Oil and Refining買収後の Par Pacificの下流資産

(出典:Par Pacificの HP)

Tacoma 製油所は、市況に応じて複数の種類の原油を処理できるフレキシビリティ

ーの高い製油所で、現在は米国ノースダコタ州で生産されている安価な非在来型超

軽質の Bakkenシェールオイル及び、カナダのオイルサンド由来の Cold Lake重質原

油が精製量の 95%以上を占めている。

<参考資料>

https://www.chron.com/business/energy/article/Houston-company-expands-into-Northwest-e

nergy-13425352.php

https://www.marketwatch.com/press-release/par-pacific-to-acquire-us-oil-refining-co-to

-significantly-boost-mainland-refining-and-logistics-presence-2018-11-27

https://www.naturalgasintel.com/articles/116603-par-pacific-expanding-downstream-footp

rint-in-pacific-northwest

https://www.hydrocarbonengineering.com/refining/28112018/par-pacific-to-acquire-us-oil

-refining-co/

https://b2icontent.irpass.com/2193/175703.pdf

(2) 最近の製品市況とガソリン留分削減/中間留分増産の動き

石油製品の主力であったガソリンは、主要な収益源としての地位が低下し、欧州

では、ディーゼルに対してのプレミアムが無くなってきている。以下に、1日の取引

高が世界で10億ドル以上と言われているガソリン市場の状況について報告されてい

る記事を紹介する。

Bloombergの記事によると、石油精製業にとって主要収益源であったガソリンの位

置づけが低下している第 1 の問題は、単純に、ガソリン供給量が需要を大幅に上回

っているということにある。単一市場としては世界最大の米国の 2018年のガソリン

在庫量の推移をみると、9月初めから記録的な高水準を示している。

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第 2の問題は、世界の原油の性状・種類の変化を挙げることが出来る。最も生産量

が急増している原油種は、ガソリン収率が高い米国の超軽質シェールオイルである。

対照的に、ディーゼルの収率の高いベネズエラやイラン産の原油は、経済制裁など

の様々な制約を受けていることから、供給量は減少傾向にある。

ガソリンはディーゼルより割高であったが、今年 8 月頃に両者の関係は逆転し、

回復の兆しを見せていない。主要取引市場のアジア(シンガポール)、北西ヨーロッ

パ、900万 BPD以上のガソリンを消費している米国の状況を見ても、ガソリン価格の

劣勢は変わらず、現在、これら 3 市場におけるディーゼル価格は、ガソリンよりも

平均で約 70ドル/トン高になっている。(図 2.参照)

図 2. 主要取引市場におけるガソリン-ディーゼル値差の推移

(出典:2018年 11月 15日付 下掲 Bloomberg記事)

エネルギーコンサルタント会社 Wood Mackenzie Ltd.の石油製品シニアアナリスト

の Jonathan Leitch 氏は、この状況を、在庫高と季節的要因による需要減が、ガソ

リン価格を引き締めている結果であり、ディーゼル・マージンが好調な状況を継続

する限り、製油所は高稼働率で運転され、必然的に連産品であるガソリンが増産し、

ガソリンのマージンを押し下げる結果になって現われてくることになる、と説明し

ている。

欧州におけるガソリン価格は、現在、原油価格を下回る状況には至っていないも

のの、2011 年後半に起きた、原油価格よりもガソリンが安いという奇妙な状況に近

づいている。米国やアジアでもガソリン・マージンは急速に低下傾向を示している。

このような状況を受けて、ガソリン生産量を抑制する目的で、FCCの稼働率低下が

図られている。

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ガソリン市況の悪化とは反対に、世界的に供給量が逼迫している重油の価格が上

昇してきている。発電や船舶向けに販売されている高硫黄燃料油の価格は、ガソリ

ン価格とほぼ同じ価格レベルになっている。

米国においても欧州と同様の動きが進行している状況を、Chron が紹介している。

その内容は、以下の通りである。

米国のガソリン市場の状況について、エネルギー情報局(EIA)は、「ガソリン需要

は鈍化しており、メキシコ湾岸や米国東海岸の製油所では、ガソリンマージンの低

下が進み、このまま推移するとマイナスになる可能性がある。」と指摘している。

米国においては、総体的にはガソリン価格の下落傾向に変化はないが、2018 年単

年について観察すると、ガソリン価格が一時的に高騰した時期が寄与して、平均販

売額はマイナスになっていない。

2018年 11月初めに発表された EIAの短期エネルギー見通しによると、米国の 2018

年 10月のガソリン消費量は前年同月比で 1.3%減少している。また、11月初めの 3

週間のガソリン消費量は 920万 BPDと予測され、昨年同時期に比較して 26.2万 BPD

減になる。

EIA は、「ガソリン生産量は需要を上回っており、在庫量は通常の水準を上回り、

さらに上昇している。この状況がガソリン価格を下げ、結果的にガソリンマージン

を減少させる結果になっている。」と分析し、「今年 10 月と 11 月のガソリンマージ

ンは、過去 5年間に観察された最低水準のレベルに達している。」と EIAは説明して

いる。

メキシコ湾岸の製油所のガソリンマージンは、2018 年上半期には 27 セント/ガロ

ンを示していたが、2018年 10月には 1セント/ガロンに低下した。11月には更に落

ち込んでマイナスになると予測されている。

このような石油製品市場の状況に対し、「ガソリン留分の削減と同時に中間留分の

増産を図る組合せが、全体の精製マージンの向上策として、今後、精製業者が目指

していくべき方向と思われる。」と EIAは説明している。

<参考資料>

https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-11-14/introducing-the-oil-industry-s-new-

junk-product-gasoline

https://www.chron.com/business/energy/article/Gulf-Coast-refiners-see-gasoline-margins

-fall-to-13429024.php

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(3) 2020年 IMO規制後のガソリン/ディーゼル需給の不均衡を懸念する情報

米国では長年に亘って、ガソリンは石油精製業において主要な収益源に位置付け

られ、製油所はガソリン生産量を如何に増やすことに注力していたが、今日では出

来るだけ多くのディーゼルを製造することに関心が移っており、今後数年間は、ガ

ソリンよりディーゼルの増産に注力する傾向が続くものと思われる。

このような状況には、米国のシェールオイルの生産量の急増、経済制裁に伴うベ

ネズエラやイラン重質原油の急速な輸出量の減少、米国におけるガソリン需要の成

長率の鈍化、ディーゼル需要の増加などの石油市場の変化が、複雑に重なり合って

いると捉えられている。

中でも 2020 年 1 月 1 日に施行される予定の国際海事機関(IMO)による船舶燃料の

硫黄分規制は、近年に無い大きな影響力を持つ品質規制で、影響は長く続く可能性

がある。

これまでも石油各社は、夏季はガソリンの需要増加、冬季は暖房油の需要増など、

需要パターンの変化が存在していたが、2020 年の IMO 規制は、製品市場がこれまで

経験していない需要パターンの変更が強いられ、その結果製品間の需給の不均衡が

生じ、その状態が長期化する可能性が懸念されている。

世界各地の製油所は、2020 年 IMO 規制を見据えて、脱硫装置の設置や装置構成の

見直し・改造に向けた設備投資を行ってきている。さらに、新製油所の建設も進み、

今後数年以内に新たに稼働する予定である。

これらの動きは、ディーゼル増産を念頭に置いたもので、ガソリンに関しては自

動車の燃費向上に伴い、需要は減少すると考えられている。国際エネルギー機関

(IEA)の予測をみても、2018年のガソリン需要量の増加分は 8万 BPDとしており、こ

の伸び率は 2011年以降で最も低い値になっている。

ガソリンとディーゼルの需要量の変化は、原油の需給面からも懸念が示されてい

る。

米国のベネズエラとイランへの制裁措置に伴い、重質原油の供給量が減少する一方

で、米国でのシェールオイル生産量は急増している。ガソリン収率が高くディーゼ

ル収率が低い軽質低硫黄原油の供給量の増加は、不均衡をより助長させることにな

る。現状ではディーゼルのマージンが非常に高いことから、マージンの低いガソリ

ンを補い、精製事業全体で利益を保つことが出来ている。

ガソリン・ディーゼルの需給の問題は、米国のみならず欧州でも同様な状況を呈し

ているので、これらの問題につについて、欧州の情報も併せて分析する必要がある。

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影響は重油にも及んでいる。超軽質低硫黄原油の供給力が充分であることから、

ディーゼルを増産させる目的で軽質原油と重油を混合処理するようになり、重油の

需要が増え、通常は損失含みで販売している重油の市場も様相が変化している。イ

タリアの精製業者 Saras の Dario Scaffardi CEO は、Reuters に対し、「ディーゼル

と重質燃料油の需要は非常に好調で、唯一の弱点はガソリンだ」と語っている。

これまでの状況とは異なり、現在、世界の製油所で生産されている製品構成の約

70%を占めるガソリンとディーゼルの需要に大きな不均衡が生じているが、この状

況はしばらく続く可能性が高い。世界最大の石油トレーダーで、欧州に数ヶ所の製

油所を所有する Vitolの Russell Hardy CEOは、「製油所はガソリンからディーゼル

にできるだけ生産をシフトしようとしている」と述べている。

さらに「新設の製油所の稼働により、より軽質原油が多量に供給されるにつれて、

極端にディーゼル留分に重点が置かれるようになり、ひいては製油所の全ての収益

性をディーゼル留分に依存する傾向になる。」と Hardy 氏は 10 月に開催されたロイ

ター・コモディティ・サミットで警鐘を鳴らしている。

コンサルタント会社の JBC Energyも「ガソリン需要の減少に応じて生産量を削減

しようとする動きを、米国の軽質原油の豊富な供給が妨げていると解釈することも

できる。また、ガソリンの需要量が増加に転じるとも考えられない。」と見ている。

2020 年 IMO 規制の導入に伴いディーゼル生産量が高く、重油の生産量が低い製油

所ほど利益を享受できると考えられる。一方で、製油所の装置構成が軽装備で旧式

な製油所ほどガソリンや重油の生産量が多くなるため、収益性は低くなる。

この観点で、世界の主要石油会社の製品構成を見ると、「欧州ではスペインの

Repsolやイタリアの Saras、トルコの Tuprasなどは、2020年 IMO規制に対して優位

にあると考えられ、米国最大の独立系精製会社の Valeroや世界最大規模の Jamnagar

製油所を運営するインドの Reliance Industries Ltd も優位な立場にいると考えら

れる。」と世界的な金融機関グループの Morgan Stanleyは分析している。

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図 3. 欧州の主要石油会社の製品パターン

(出典:11月 19日付 Reuters記事(原典:Goldman Sachs))

<参考資料>

https://www.reuters.com/article/us-refining-imo-analysis/refiners-get-taste-of-post-im

o-world-with-gasoline-diesel-imbalance-idUSKCN1NO1R4

https://www.reuters.com/article/us-refineries-usa-growth/u-s-refiners-boost-processing

-capacity-to-accommodate-shale-moodys-idUSKCN1N7115

2. 欧州

(1) 地中海沿岸諸国の燃料市場が変動する可能性を伝える情報

地中海に面したトルコ、エジプト、アルジェリアでは、石油精製設備の近代化・

拡張あるいは新製油所の建設が進み、石油精製能力の増加が顕在化してきている。

これまで、これらの地域では、特にディーゼルやガソリンなどの中間製品の供給量

が需要に対して不足していたため、インドや中東地域から輸入していた。

しかし、石油精製能力の増強と共に、地中海市場における需要と供給のバランス

に伴う取扱量の変化が、石油トレーダーなど輸出業者に影響を及ぼし始めている。

アゼルバイジャン国営石油会社 SOCAR が、トルコで建設・運営する Turkey Aegean

Refinery(STAR)製油所(20 万 BPD)の本格稼働が迫っていること、アルジェリアとエ

ジプトにおける製油所改修が進んでいること、更にアルジェリア国営石油会社

Sonatrachが、イタリアの Sicily島で ExxonMobilが所有する Augusta製油所(17.5

万 BPD)を買収したことなどにより、2019年以降の地中海での石油製品取引が大きく

変化する可能性がある。

コンサルタント会社KBCのチーフエコノミストであるStephen George氏によると、

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欧州のディーゼル・ジェット燃料の生産量は、需要量に対して不足しているため、

年間約 5,000万トン(約 100万 BPD)をロシア、インド、アジア太平洋および中東など

から輸入しているており、サウジアラビアからの輸入量は特に多い。トルコ、エジ

プト、アルジェリアも、年間合計約 4,800 万トンのディーゼルおよび軽油の需要が

あるが、多くを輸入に頼ってきた。

エジプトにおける新製油所プロジェクトやトルコのSTAR製油所の稼働が本格化す

ると、国内の需要を賄い始めると見られることから、輸入量は減少すると考えられ、

遠距離のインドや中東などの輸入品から、国産品に置き換えられていくと想定され

ている。

輸出量の減少は、トレーダーなど、関連する事業者のビジネスの一部をも奪うこ

とになる。

トルコの製品需要量は、2011年以降で 30万 BPD増加しているが、コンサルタント

会社の FGE Energyによると、この増加分の殆どは中間製品である。トルコ唯一の精

製会社 Tupras が運営している国内 4 ヶ所の合計精製能力は 60 万 BPD に過ぎないこ

とを考え合わせると、この 7 年間の中間製品の増加量は、Tupras のみでは対応でき

ないことが分かる。

FGEは、「STAR製油所は、トルコのディーゼル輸入量並びにナフサ輸入量の削減に

大きく寄与することになる」と見ているが、「製油所を所有する SOCARは、製品を輸

出する意向である」との見方も伝えられている。

アルジェリアとエジプトに関しては、どのように事態が推移していくかを見定め

なくてはならないが、2020年当初から始まる国際海事機関(IMO)の船舶燃料に対する

硫黄分規制は、中間製品の需要を大幅に増やすことになり、それに伴って製品取引

の機会も増加すると期待されている。この延長線上には、インドや中東諸国などと

の遠距離製品輸入取引のビジネスが減少する反面、地中海周辺のビジネスは増加と

するとの見方が浮上することになる。

世界的トレーダーの Vitol は、地中海市場に年間 300 万 BPD の需要があるとする

バンカー市場に、約 75万 BPDの中間製品が新たに供給されると想定しているが、こ

の量は世界の中間製品市場規模の 3,000万 BPDの約 2.5%に相当する。

いずれの場合でも、地中海を取り巻く国々の石油精製能力の増加と、2020 年 1 月

から施行される IMO の船舶燃料に対する硫黄分規制は、地中海の石油製品市場を大

きく変える可能性がある。

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<参考資料>

https://af.reuters.com/article/africaTech/idAFL8N1WI4P9

https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/editorcharts/OIL-PRODUCTS/0H001BBTN2SN/index.htm

l

https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/editorcharts/OIL-PRODUCTS/0H001BBTQ2SV/index.htm

l

https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/editorcharts/OIL-TURKEY-DIESEL/0H001BHNM33B/inde

x.html

(2) イタリアの Sarasがバンカリング施設を建設

イタリアの石油精製企業の Saras S.p.A.は、船舶に燃料を補給するバンカリング

事業で、船舶燃料(バンカー)をブレンドして供給しているが、2020 年 1月 1日に適

用される船舶燃料の IMO 規制対応では、船舶燃料をブレンディングのみで補給する

のは技術的に難しく、製油所で製造した規格品の燃料油を船舶に直接供給できれば、

競争上の優位性を保ち得るとの見解を示している。

Sarasは、航行船舶の多い地中海の要衝の地の Sardinia島にバンカリング施設を

設置し、Sarroch製油所(30万 BPD)で、独自に超低硫黄船舶燃料(Ultra-Low- Sulphur

marine Fuel Oil :ULSFO)を生産することができれば、収益の確保が期待できると見

ている。その目的で Sarasは、製油所近くに船舶の係留、荷役作業などを行う船渠(ド

ック)を含めたバンカーの船舶供給ターミナルを、2020年の IMO規制の施行前に建設

する計画を発表している。

Sarasは、硫黄含有量 0.50%以下の ULSFOを年間 50万〜60万トン生産する予定で

ある。「先ず、投資が少なくて済む燃料補給用インフラや“バージ船”を建造し、地

元への限定供給から始め、徐々に市場を拡大し、様々な市場のニーズに対応してい

く予定である」と Dario Scaffardi CEOは述べている。

<参考資料>

https://www.reuters.com/article/saras-imo/saras-invests-in-new-bunkering-terminal-ahea

d-of-imo-switch-idUSL8N1XH5YY

http://www.themeditelegraph.com/en/markets/2018/11/07/saras-invests-new-bunkering-term

inal-ahead-imo-switch-BL4y54Tlm6NOOJQys6Zo9O/index.html

https://safety4sea.com/overview-of-mepc-73s-discussions/

(3) ポーランドの PKN Orlenと Grupa Lotosの統合に向けた動き

ポーランド最大の石油企業 PKN Orlen と、同国の石油企業の Grupa Lotos は、以

前より合併を模索・検討し、欧州委員会の認可を得るべく、取引に関わる文書を事前

に提出していた。

PKN Orlenは、正式に Grupa Lotosの買収計画を欧州委員会に 11 月に提出した。

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両社は、ポーランドの政府系企業で、財務省が Grupa Lotosの株式の 53.19%を保有

している。PKN Orlen は財務省が 27.5%、政府系機関が約 14%の株式を保有してい

る。

本報の 2018 年 3 月号(欧州編)第 2 項「ポーランドの政府系石油会社、PKN Orlen

と Grupa Lotosの合併情報」で報告しているように、今年 2月の時点で、「両社の統

合により、厳しい状況に置かれている欧州の石油業界の中で競争力を強化し、市場

の変動に対する企業対応力の向上が期待されること。また、統合のシナジー効果に

より、エネルギー安全保障が強化できることなど、ポーランド経済全体に好影響を

もたらす。」として、合併に向けた手続きが進められ、PKN Orlen と政府財務省との

間で合併に関わる合意書が取り交わされていた。

この合意書には、買収に関わる段取りが取り決められており、PKN Orlenの Daniel

Obajtek CEO は、今年 11 月初めに、Grupa Lotos の買収は 3 段階で進めるとの合意

内容を発表している。

発表によると、PKN Orlenは第1段階で、財務省が保有するGrupa Lotos株の32.99%

を購入・取得し、第 2段階で、Grupa Lotos株式を公開買付けで株式保有率を 66%と

し、第 3段階では株式交換で株式 100%を保有する計画である。

PKN Orlenによる、Grupa Lotosの買収計画の正式通知を受けた欧州委員会は、今

後、この買収計画が適正であるか否かについて評価する公式な手続を開始すること

になるが、PKN Orlen 側は、2019 年の半ばまでに委員会の承認が得られることを期

待している。

欧州委員会の関心事は、PKN Orlenと Grupa Lotosが事業を統合した場合、ポーラ

ンド市場で寡占が進むことにあり、事実、ポーランドで販売事業を展開しているメ

ジャーの BPは、この合併に対し「ポーランドの 2大精製企業の合併により、同国の

競争が制限される可能性がある。」と合併への反対を 2018年 9月に表明している。

ポーランド石油産業・貿易協会(Polish Oil. Industry and Trade Organization:

POPiHN)の燃料市場に関する調査データによると、2018年第 3四半期末に PKN Orlen

が保有する燃料販売店舗数は 1,774 ヶ所、BP は 542 ヶ所、Grupa Lotos は 488 ヶ所

で、ポーランド石油市場の寡占が懸念される。これを受けて、PKN OrlenとGrupa Lotos

の両社が欧州委員会に提出した資料には、競争に関わる事業活動の詳細な対応策が

提案されている。

欧州では近年、PKN OrlenとGrupa Lotosのような政府系エネルギー企業の統合は、

行われていない。しかし調べてみると過去には、殆どの先進国で今回と同様な政府

系石油企業の統合が実施されていることが分かる。

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ハンガリーの石油・ガス会社 9 社を統合して設立された MOL Group はその好例で

あるが、その他にもノルウェーの Equinor(旧社名:Statoil)、スペインの Repsol、

ポルトガルの Galp Energia、イタリアの Eni、オーストリアの OMV、フランスの Total

などでも、同様の企業統合を経て、現在に至っている。

<参考資料>

https://www.orlen.pl/EN/PressOffice/Pages/PKN-ORLEN-has-started-the-most-important-sta

ge-of-Grupa-LOTOS-acquisition-.aspx

https://www.reuters.com/article/us-pkn-lotos-m-a/polands-pkn-notifies-brussels-on-plan

-to-take-over-smaller-rival-lotos-idUSKCN1NZ2OK

https://newsbeezer.com/polandeng/pkn-orlen-submitted-to-the-ec-a-working-version-of-th

e-application-in-the-context-of-acquiring-control-of-lotus/

3. ロシア・CIS編

(1) ロシアの Gazprom Neftの Omsk製油所の水素化脱蝋装置の建設情報

ロシア国営石油会社 Gazprom Neftが保有する Omsk製油所(42万 BPD)は、ディー

ゼル水素脱蠟(hydro-dewaxing)の建設に当り、Uralmash-Izhora Group(OMZ Group)

傘下の機械メーカーIzhorskskiye Zavodyとの間で、大規模機器設置に関わる契約を

締結した。

水素化脱蝋装置の建設は、2008年に開始された Omsk製油所近代化プロジェクトの

第 2 段階の一環として実施されている工事であり、既存の 2 つの装置を置き換える

形になっている。新設装置の処理能力は 250万トン/年(5万 BPD)で、Euro 5基準の

ディーゼルを製造する目的で建設される。

Izhorskiye Zavodyが納入する塔槽類の中で、ストリッピングタワーは、ディーゼ

ルの最終生産工程で使用される重要な設備で、高さ 37m、直径 3.6m、総重量 400 ト

ンの大型構造物になっている。製油所には北極海航路を経由して河川を利用して輸

送される。因みに、Izhorskskiye Zavodyは、Omsk製油所の近代化工事で 2015年に

も深度コンバージョン設備建設に当り、大型設備 6基を納入している。

ディーゼル水素化脱蝋装置で製造される留分は、現在建設中のディレードコーカ

ーの留出油と共に処理され、製油所の精製深度向上に寄与することになる。なお、

Gazprom Neftは、現在、Omsk製油所と Moscow製油所(25万 BPD)で、累計投資額 5,500

億ルーブル(約 82億ドル)を上回る本格的な近代化工事を進めている。

この近代化工事の第一段階では、主要装置の新設や更新が行なわれエネルギー効

率と環境面で大幅な改善が図られ、Euro 5 燃料の生産体制への移行が可能になって

いる。近代化工事の第 2段階は現在進行中で、予定されている 2020年の工事終了後

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は、精製深度が向上し、国際基準に適合する軽質製品の生産量が大幅に増加するこ

とが期待されている。

<参考資料>

https://www.gazprom-neft.com/press-center/news/2070965/

(2) ロシアの石油精製事業と石油関連税制に関連する情報

ロシアの石油精製能力は合計約 650 万 BPD で、世界全体の石油精製能力の約 1.2

億 BPD に対してはそれほど大きなシェアではない。しかし、ロシアが世界市場へ輸

出している石油製品量は、2016年実績で約 229万 BPDに上り、精製能力に比較して、

輸出の占める割合が約 38%と大きいことが分かる。

石油製品の輸出量が多い背景には、ロシア政府の税制によるところが大きいと認

識されている。見方を変えると、世界市場で販売されるロシアの石油製品の量と質

の今後を見極めるには、今後のロシアの石油税制が、重要な意味合いを持つことに

なる。

ロシアの石油精製企業は、基本的には民間経営の形態をとっているが、多くの企

業で政府が大株主になっている。さらにロシア政府は、国内の石油精製経済に影響

を及ぼす税金や関税に関わる複雑なシステム並びに、製油所で処理される原油量を

操作できる立場や権限を持っているため、実際には石油精製事業に大きく関わって

いることになる。

政府が石油精製事業に影響を与えている端的な例として、輸出関税を上げる権限

がある。輸出税は製品によって異なるが、通常は原油の輸出税よりも低いレベルに

設定されている。従って、原油生産事業を合わせ持つ精製企業は、原油として輸出

するよりも、製油所を高稼働率で操業し、製品として輸出する方が経済的なメリッ

トを得ることになる。

表 1. ロシアの原油・石油製品輸出関税の推移

(出典:JOGMEC資料 ロシア情勢(2018年 10月 モスクワ事務所)より)

Page 18: 2018 年12 月27 日 木 JPEC 世界製油所関連最新情報

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ロシアの製油所で生産される製品の構成は、重油を除外してみてみると、ディー

ゼルや軽油などの中間製品が国内需要量を上回って生産されるため、余剰分は輸出

されている。

ディーゼルや軽油は欧州に輸出されるケースが多く、重油の一部は、分解系装置

が充実している米国メキシコ湾岸の製油所に、ガソリンなど高付加価値製品製造用

の中間基材として輸出されている。また、海運貨物の取扱量が世界最大級のシンガ

ポールに、船舶用燃料として輸出されている。

ロシア政府は、最近 5~6年間に、石油製品の輸出税構造を段階的に変更しており、

その中で重油や中間基材は、高税率になるように設定し、高品質の輸送用燃料に対

しては低税率になるように変更している。

このような政府の税制の変更は、製油所近代化投資を促す結果になっており、投

資の相当部分が低価格の重質留分や中間基材を、ディーゼルや軽油に変換する目的

で、コーカーや水素化分解装置に投資されている。また、これ等の装置の設置に伴

い、増産したディーゼルや軽油は、従来通り欧州市場向けに輸出されている。

世界的にみると、ロシアにおける製油所近代化工事への投資の増強は、重質燃料

油の供給が減少する結果に表れており、原油に対する重油の価格差が狭まるなど、

総じて高硫黄重質燃料油の価値を向上させる一つの要因になっている(本号北米編

第 2項参照)。

ロシア政府は、自国の製油所を国際競争力のある状態に変貌させ、ガソリンの自

給自足を達成する方針であった。これまでの状況を見ると、近代化工事は順調に推

移しており、目的をほぼ達成していると見ることが出来る。

このように見ると、輸出税を含む一連の炭化水素税制は、自国の原油生産・石油精

製事業のみならず、世界の石油市場に大きな影響を及ぼしていることが理解できる。

しかし、最近では再度炭化水素税制を見直しているとの情報が伝えられている。

ロシア政府は現行の輸出を見直し、特定の数量や購入金額に応じて一定の割引分

を還元するリベート制度(rebate system)を導入する計画であると報じられている。

政府は、原油や製品の輸出時の課税に代えて、原油の処理量に応じた課税システム

に移行する意向である。これにより、精製事業者が国内の製品販売価格を引き上げ

ることなく、内需を満たすための原油処理を続けることを狙いとしている。

しかし、この税制改訂の動きには、多くの課題が残されているようにも思われる。

一つには、計画段階にあり実行に移されていない投資は保留されて、それ以上は計

画が進まない可能性がある。

Page 19: 2018 年12 月27 日 木 JPEC 世界製油所関連最新情報

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見方を変えると、税制改訂のタイミングが合わずにリベート制への移行が早まる

と、石油製品の国内販売は促進されるものの、石油製品輸出で利益を確保する利点

が失われ、ロシアにおいては、特にコーカーや水素化分解装置の設置に向けた投資

が遅延することが想定され、高硫黄燃料油および中間基材の輸出が継続的に行われ

ることになる。

このような事態になると、ディーゼル・軽油の輸出量は減少し、その減少分を欧州

の製油所が賄うことになる。その結果、ディーゼル得率の高い軽質原油と重質原油

の値差を拡げる事につながると共に、欧州の製油所には有利な状況になると見るこ

とができる。

更に、近代化が遅れているロシアの多くの小規模で軽設備の製油所が、困難に直

面することが想定される。その様な製油所は収益が上がらず、いずれ閉鎖されるこ

とになりかねない。

ロシアの課税政策は、その時々の政治情勢の影響を強く受けて変化し、不確実な

状態で推移してきている。製油所の閉鎖が進む状況が望ましくないと判断した場合

には、想定とは別の税制改革が再び行われるものと思われる。

<参考資料>

https://www.forbes.com/sites/civicnation/2018/11/07/how-to-be-the-only-leader-to-galva

nize-your-team/#55b895ae40cb

https://www.eia.gov/beta/international/analysis.php?iso=RUS

https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1004762/1007643.html

4. 中 東

(1) アブダビ ADNOCの大規模な事業投資戦略

アブダビ国営 Abu Dhabi National Oil Company(ADNOC)は、積極的な事業戦略を次々

に発表している(2018年 6月号中東編第 1項など参照)。同社は、11月中旬に開催さ

れた国際会議 Abu Dhabi International Petroleum Exhibition and Conference

(ADIPEC)の「天然ガス・精製・石油化学フォーラム(Gas, Refining and Petrochemicals

Forum)」で、今後の天然ガス・ダウンストリーム部門の事業方針を発表している。

1) 天然ガス増産に向けた取り組み

アブダビの最高石油評議会(Supreme Petroleum Council:SPC)は、原始埋蔵量 150

兆 cf分の天然ガスを、新たに発見したことを明らかにするとともに、天然ガスの自

給体制を確立することを目指す方針を承認している。

Page 20: 2018 年12 月27 日 木 JPEC 世界製油所関連最新情報

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SPCの方針に沿って ADNOCは、天然ガスを数兆 cf埋蔵している“アラブフォーメ

ーション”で、Hail・Ghasha・Dalmaプロジェクトをスタートさせる。このプロジェク

トでは、2020年代の半ばまでに、15億 cf/日の天然ガス生産を目指している。天然

ガス増産で、自給を確立すると同時に、輸出余力を保有するまでを視野に入れてい

る。

さらに ADNOCは、非在来型の天然ガス埋蔵層で、天然ガス資源の探査を進める方

針である。また、Umm Shaif gas capでは、油田に埋蔵する天然ガス(gas cap)を 2030

年までに 5億 cf/日分回収することを目指している。非在来型埋蔵層からも、2030

年までに、10億 cf/日の生産を目指している。

ADNOCは、外国企業と連携して天然ガスを開発する方針で、Ghasha 鉱区(Hail、

Ghasha、Dalma他)の権益 25%をイタリアの Eniに提供することに合意している。LNG

事業では、サウジアラビア国営 Saudi Aramcoと LNG事業のバリューチェーンへの投

資を共同で検討することに合意し、FSや技術情報の交換を予定している。

2) 石油精製・石油化学事業

ADNOCは ADIPECのフォーラムで、2018年の初めに公表した石油精製・石油化学部

門の事業戦略のその後の状況を報告している(2018年 2月号中東編第 2項参照)。

同社は、石油・天然ガスのダウンストリームに 1,650億 AED(450億ドル)を投資し、

石油化学製品の生産量を、2025年までに 3倍増の 1,440万㌧/年に引き上げるという

目標を設定している。精製事業では、Ruwaisに製油所・石油化学コンプレックスを、

世界最大規模で建設する計画も明らかにしている。

具体的な石油化学プロジェクトでは、生産能力 180万㌧/年のエチレンプラント(ガ

ス/液体フィード)、48万㌧/年のプロピレンプロジェクトを計画している。また、最

近、1基目のプロパン脱水素(PDH)やカーボンブラック・プラントを稼働している

(2118年 10月号中東編第 3項参照)。

ADNOCは、石油化学基材の生産に止まらず、Ruwaisで様々な誘導化学製品を生産

することも目指している。これらの戦略は、Saudi Aramcoの戦略と共通し、湾岸協

力会議(GCC)諸国全体の流れと見ることができる。

<参考資料>

https://www.adnoc.ae/en/news-and-media/press-releases/2018/adnoc-updates-global-energy

-leaders-on-its-new-integrated-gas-strategy

https://www.mubadala.com/en/news/adnoc-and-mubadala-jointly-explore-global-investment-

and-growth-opportunities

https://www.adnoc.ae/en/news-and-media/press-releases/2018/adnoc-to-invest-aed-5-billi

on

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21

(2) Saudi Aramcoが 2つ国際会議で発表した事業戦略

1) Gulf Petrochemicals and Chemicals Association(GPCA)フォーラム

サウジアラビア国営 Saudi Aramcoの Nasser CEOは、11月 26日~28日に UAEの

ドバイで開催された Gulf Petrochemicals and Chemicals Association(GPCA)の第

13回年次総会に出席し、ダウンストリーム事業分野の方針を説明している。

石油精製事業

Nasser CEOは、Saudi Aramcoがアップストリーム事業とダウンストリーム事業の

バランスを適正化するために、精製能力を、国内外で直営・JVを合わせて最終的に、

800万 BPD~1,000万 BPD(Saudi Aramcoの権益分)まで引き上げることを目指してい

る。

石油化学事業への投資

石油化学事業に関して、Saudi Aramcoは、化学品の市場規模が 2030年までに現在

に比べて 33%、2050年までに 50%拡大すると予測し、石油化学プラントが必要とす

る原油需要量は、2050年までに 700万 BPD増加し、2,000万 BPDに到達するとの見

通しを表明した。この予測の下で Saudi Aramcoは、石油化学の原料に、200万 BPD

の原油を振り向けることを計画している。

Saudi Aramcoは、石油化学分野に 10年間で 1,000億ドル(買収を除く)の投資を計

画していているが、事業の展開は、サウジアラビア国内に留まらず、中国・インドな

ど成長市場で事業を展開することも視野に入れている。

ダウンストリーム事業展開の方策

Saudi Aramcoは、原油の価格変動による業績への影響を緩和すると同時に、利益

率を向上することを目指している。ダウンストリーム事業の展開では、バリューチ

ェーンの中で、事業を垂直・水平統合することを重視している。Nasser CEOは、サウ

ジアラビア最大の石油化学企業 SABICの株式を取得し、世界最強のエネルギー・化学

企業に変容することを目指していることを明らかにした。Saudi Aramcoは、SABIC

を傘下に収めることで、crude oil to chemicals(COTCあるいは C2C)プラントの実

現を図ることになる。

<参考資料>

https://www.saudiaramco.com/en/news-media/news/2018/gpca-forum-2018

2) In Kingdom Total Value Add(IKTVA)フォーラム

サウジアラビアは、アップストリームのみならず、精製事業や石油化学事業でも、

既に規模や技術水準で世界トップクラスに位置付けられている。

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サウジアラビアは持続的成長に向けて、さらに下流分野へ事業の裾野を拡大する

ことを目指すと同時に、自国の企業の育成、国産化率、国内調達率の向上を目指し

ている。

同国は、In Kingdom Total Value Add(IKTVA)プログラムの下で、国産化や国内調

達を進めているが、その計画や成果を報告する第 4回 IKTVAフォーラムが東部州

Dhahranで 11月下旬に開催された。フォーラムには、40ヶ国を超える国々から 3,000

名が出席し、50件超の投資案件の紹介や、ワークショップ、講演会、内外企業の展

示会が催された。

IKTVAは、サウジアラビアの国家戦略として位置付けられる Vision 2030と

National Transformation Program 2020に沿った形で、2015年に立ち上げられたプ

ログラムで、2021年末までに国内調達率を 70%に引き上げることを目指している。

<参考資料>

https://www.spa.gov.sa/viewfullstory.php?lang=en&newsid=1845675

(3) クウェート KNPCの長期事業計画

クウェート国営 Kuwait National Petroleum Company(KNPC)が、11月下旬に 2040

年までの長期事業計画“2040 Strategy”を発表した。

国営通信の KUNAによると KNPCは、2035年までに精製能力を 200万 BPDに引き上

げることを計画している。クウェートは 93.6万 BPDの精製能力を保有していたが、

既存製油所の拡張・近代化プロジェクト“Clean Fuels Project(CFP)”と新設プロジ

ェクト“New Refinery Project(NRP)”で、精製能力の拡大(al-Shuaiba製油所は閉

鎖)とクリーン燃料の増産を目指している。CFP/NRPの完了後に精製能力は、141.5

万 BPDになる(表 2参照)。

表 2. クウェートの製油所近代化、新設プロジェクト

分類 PJ 製油所名 精製能力 (BPD)

稼働時期 2016年 拡張後

拡張・近代化 CFP

al-Ahmadi 466,000 346,000 2019/2020

Al Abdullah 270,000 454,000 2019/2020

al-Shuaiba 200,000 閉鎖、油槽所転換 2017停止

新設(着工) NRP al Zour 615,000 2019

新設(計画) 約 600,000 (2035)

ベトナム(新設) Nghi Son 200,000 2018

オマーン(新設) Duqm 230,000 2021

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図 4.クウェートの製油所配置

KNPCは、CFP/NRPプロジェクト後も精製能力の拡大に取り組む方針で、2035年ま

でに 200万 BPDに引き上げるために、製油所を新設する予定で、その候補地はクウ

ェートの南部になると報じられている。

なお、クウェートは、国外の製油所新設プロジェクトにも出資する方針で、2018

年にはベトナムで Nghi Son製油所が稼働している。さらに、オマーンの Duqm製油

所プロジェクトに、均等出資の JVで参画することが決まっている(2016年 12月号中

東編第 2項、2017年 7月号第 2項など参照)。

KNPCは、2040年計画で天然ガス処理能力の拡大に取り組むことも明らかにしてい

る。それによると、天然ガス処理ラインを 2系列増設し(第 6、第 7プラント)、親会

社の KPCの天然ガスとコンデンセートなどの増産に寄与することを計画している。

また、クウェートの天然ガス生産能力を 2025年までに 37億 m3/年まで増強する方策

を検討することも明らかにされている。

KNPCは、2040 Strategyに必要な投資額として、76億 KWD(250億ドル)を提案して

いる。

<参考資料>

https://www.knpc.com/en/media/news/2018/2040

https://ww.kuna.net.kw/ArticleDetails.aspx?id=2761173&language=en

(4) アブダビの非在来型天然ガス資源開発の動き

中東編の第 1項で、アブダビ国営 ADNOCの事業投資戦略を紹介したとこころであ

るが、非在来型天然ガス資源開発への取り組みに関わる発表があった。

Mina Abdullah

Shuaiba(閉鎖)

Al-Zour

Al Kuwait

Mina Al Ahmadi

クウェート

アハマディ県

ジャハラー県

サウジアラビア

イラク

既設製油所

新設計画製油所

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フランスの TOTALと ADNOCは、11月中旬に非在来型天然ガス鉱区の探査プロジェ

クトに向けて利権協定(concession agreement)に合意し、合意文書に調印した。

プロジェクトは、Ruwais Diyab非在来型天然ガス鉱区(Ruwais Diyab

Unconventional Gas Concession、6,000km2)を探査するもので、探査(exploration)、

評価(appraisal)フェーズに 6~7年間、開発・生産には 40年間を見込んでいる。現

時点では、2030年までに天然ガス生産量として 10億 cf/日をターゲットに据えてい

る。プロジェクトの権益配分は、ADNOCが 60%、TOTALが 40%と公表されている。

図 5. Ruwais Diyab非在来型天然ガス鉱区の概略位置

<参考資料>

https://www.adnoc.ae/en/news-and-media/press-releases/2018/adnoc-signs-agreement-grant

ing-total-a-40pc-stake

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/total-and-adnoc-join-forces-launch-

unconventional-gas-exploration-abu-dhabi

https://www.eni.com/en_IT/media/2018/11/eni-signs-ghasha-gas-concession-with-adnoc-str

engthening-its-presence-in-the-united-arab-emirates

https://www.saudiaramco.com/en/news-media/news/2018/adnoc-agreement

アブダビサウジアラビア

カタール

オマーン

ドバイ

Ruwais DiyabConcession

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5. アフリカ

(1) アフリカ諸国の原油輸出先が多様化している状況

1) ポーランド PKN ORLENがナイジェリア・アンゴラから原油を輸入

アフリカ産原油の主要輸出先の米国で、軽質低硫黄原油に分類されるタイトオイ

ル(シェールオイルを含む)が増産したことなどの影響で、米国は軽質原油を海外か

ら輸入する必要性が低下し、アフリカ産原油の輸出への依存度が低下している。ア

フリカ産原油は一般的に軽質・低硫黄で良質であることから、米国以外の販路を増や

している。

表 3、図 5に、北・西アフリカのアルジェリア・アンゴラ・リビア・ナイジェリアの原

油生産量と米国向け輸出量の推移を示すが、米国のシェールオイル増産とともに、

米国の輸入量が低下し、2016年、2017年には若干回復している様子を窺うことがで

きる。

米国では、テキサス州の Permianとともに、ノースダコタ州でシェールオイルが

急速に増産したが、パイプラインの能力が追い付かないことから輸送距離が短い東

部の製油所が割安で購入した経緯がある。東部の製油所はメキシコ湾岸の重質原油

対応型の製油所と違い軽装備で、アフリカ産の軽質原油を長年に亘って輸入してい

たが、性状が近いシェールオイルに置き換える動きが進んでいた。

表 3. アフリカ 4ヶ国の原油類生産量と米国向け輸出量の推移

千BPD

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

生産量

アルジェリア 1,540 1,540 1,532 1,462 1,420 1,429 1,348 1,306

アンゴラ 1,909 1,756 1,787 1,803 1,742 1,802 1,770 1,666

リビア 1,710 485 1,432 978 530 484 466 897

ナイジェリア 1,540 1,540 1,532 1,462 1,420 1,429 1,348 1,306

合計 6,699 5,321 6,283 5,705 5,112 5,144 4,932 5,175

対米国

輸出量

アルジェリア 328 178 120 29 6 3 51 66

アンゴラ 383 335 222 201 139 124 159 129

リビア 43 9 56 43 5 3 12 57

ナイジェリア 983 767 406 239 58 54 207 309

合計 1,737 1,289 804 512 208 184 429 561

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図 6. アフリカ 4ヶ国の原油類生産量と米国向け輸出量の推移(グラフ)

こうした状況の中で、ポーランドの石油精製・販売会社 PKN ORLENは、新たに、西

アフリカのナイジェリアから原油を輸入することを発表している。PKN ORLENは、原

油需要量の 50%をスポット市場から調達しているが、今回も、ナイジェリアの Bonny

Light原油 13万トンをスポット市場から購入した。

PKN ORLENは、ナイジェリアに続いて、西アフリカのアンゴラから原油を輸入する

計画を 12月初めに公表している。同社は、スポット市場でアンゴラの Nemba原油を

13万トン購入し、2019年 2月にグダニスク港に受け入れることを明らかにしている。

Nemba原油の性状は API38.7°、硫黄濃度 0.22%と軽質低硫黄な良質原油で、PKN

ORLENは、標準的なロシア原油 REBCO(Russia Export Blend Crude Oil)に比べて、

製品の収率パターン、品質面で有利と評価している。

PKN ORLENは 2007-2013年には、原油の 90%以上をロシアから輸入していたが、

輸入先の多様化に取り組んだ結果、輸入量の 30%をロシア以外から調達できるよう

になってきた。これまで PKN ORLENは、ロシア以外では、イラク・アゼルバイジャン・

カザフスタン・ベネズエラ・ノルウェー・米国から原油を輸入した実績があり、ポーラ

ンド・チェコ・リトアニアにある傘下の製油所で処理してきた。

ポーランド PKN ORLENには、西ヨーロッパ諸国とロシアの関係が不安定であるこ

とや、東欧諸国がソ連時代からのロシア原油への過度な依存から脱却を図る目的が

背景にある。

0

500

1000

1500

2000

2500

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

アルジェリア(生産量)

アンゴラ(生産量)

リビア(生産量)

ナイジェリア(対米輸出量)

アルジェリア(対米輸出量)

アンゴラ(対米輸出量)

リビア(対米輸出量)

ナイジェリア(対米輸出量)

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<参考資料>

https://www.orlen.pl/EN/PressOffice/Pages/New-crude-supplies-for-ORLEN.aspx

https://www.orlen.pl/EN/PressOffice/Pages/PKN-ORLEN-to-buy-oil-from-Angola.aspx

http://lavicorp.com/products/Angola/nemba.pdf

2) リビアの中国向け原油輸出が増加

2018年 11月末に、北アフリカのリビアの国営石油会社 National Oil Corporation

(NOC)は、中国の 2018年 1月からのリビア原油の輸入額が、既に 2017年通年の輸入

額 17億ドルを大幅に上回り、35億ドルに達していることを明らかにしている。

中国は、原油輸入量の大幅な増加に対応するために、輸入先を拡大する必要があ

ることに加えて、核開発問題に対する米国の制裁で、アジア向けの原油の大輸出国

であるイランからの輸入が制限されることなども影響していると見ることができる。

<参考資料>

https://noc.ly/index.php/en/new-4/4259-libyan-oil-exports-to-china-doubles-in-2018

6.中南米

(1) 米領ヴァージンの St.Croix製油所の再稼働に向けた動き

南米の原油大国ベネズエラは、カリブ海諸国への強い影響力を保持し、石油関連

では同盟組織に位置付けられる Petrocaribeを組織していた。しかしながら、近年

のベネズエラは、政策の行き詰まりや原油価格の下落の影響、さらには米国との関

係が悪化で、経済活動が低迷している。現在は、原油の生産量・輸出量が減少し、製

油所の稼働率も低下している。

ベネズエラ国内と同様に、ベネズエラ国営 PDVSAが関与しているカリブ海地域の

製油所で、経営や原油調達に支障をきたしていることが報じられてきた。

この中で、米国の保護領ヴァージン諸島の Saint Croix(セント・クロイ)島にある

世界最大級の製油所の一つとして知られていた Saint Croix製油所(Hovensa製油所)

は、2012年に操業停止に追い込まれ、売却や操業再開への取り組みが画策されてき

た。その後 2014年には、操業再開に向けた計画が報じられていた(2014年 11月号中

南米編第 1項参照)。2015年に就任した Kenneth E. Mapp知事は、製油所の閉鎖が、

ヴァージン諸島の経済に大きな打撃を与えたとの見解を示し、製油所の再開に取り

組んでいた。

その後本報では、Saint Croix製油所の動向に触れていなかったが、2018年の下

半期に、再稼働に向けた動きが発表されているので、順を追って紹介する。

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2018年 7月上旬に、Kenneth E. Mapp知事は、ヴァージン諸島政府と Saint Croix

製油所を所有していた ArcLight Capital Partners, LLCとの間で、製油所の再開に

向けて合意したことを明らかにした。閉鎖後、Saint Croix製油所は、石油ターミナ

ルの Limetree Bay Terminalsに転換され、ArcLight Capitalがターミナルを保有し

ている。

今回の合意内容は、14億ドルを投資して Saint Croix製油所の稼働を再開するも

ので、2019年末の稼働を目指している。この合意の内容は、7月に議会で審議され、

承認された。

政府との合意に基づいて、ArcLight Capital Partnersは、製油所の再稼働に向け

て、7,000万ドルを支払うことになる。内訳は、225エーカーの用地買収費用が 3,000

万ドル、税金の前払い分が 4,000万ドル。今後、ArcLightが支払う税額は 2,250万

ドルがベースで、市況に応じて 1,400万~7,000万ドル/年の範囲で調整される。コ

ンサルタントの Gaffney, Cline & Associatesによると、政府は、製油所の再稼働

で現在のターミナルからの 1,150万ドル/年に加えて、10年間で 6億ドルの収入を見

込んでいる。

Saint Croix製油所は、再稼働後は原油処理量 20万 BPDで操業することになる。

政府は、製油所の稼働で、再稼働に向けた工事などに 1,300名、稼働後は 700名の

雇用創出を期待している。

11月に入って、Saint Croix製油所の操業会社 Limetree Bay Refining, LLCは、

BP Products North Americaとの間で、Saint Croix製油所の操業に関して、委託精

製、供給・引き取り契約に合意している。さらに Limetree Bayは、再稼働に向けて

の資金として 12.5億ドルを確保したことも明らかにされている。

12.5億ドルの内訳は、優先株式額が 5.5憶ドルで、EIG Global Energy Partners を

中心に BlackRock・Barclaysなども出資する。長期融資で 7億ドルを確保するが、こ

れは、Westbourne Capitalが受け持つ。さらに、ArcLightも出資額の引き上げを計

画している。

Saint Croix製油所は、世界最大級の製油所の一つで、精製能力はピーク時に 65

万 BPDに到達していた。また、操業中のターミナル(Limetree Bay Terminals)は、

原油・石油製品を 3,200万バレル貯蔵することができる。港湾施設は、石油バース 10

ヶ所、バルク製品バース 1ヶ所、タグボート 6隻などを備えている。

ターミナルを運営する Limetree Bay Terminals, LLCは、ArcLight Energy Partners

Fund VI, L.P. と Freepoint Commoditiesの JVで、それぞれが株式 80%、20%を保

有している。

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<参考資料>

https://www.vi.gov/u-s-virgin-islands-governor-announces-1-4-billion-landmark-deal-to-

restart-refinery-in-st-croix/

https://www.vi.gov/governor-thanks-senators-for-approving-refinery-agreement-urges-act

ion-on-measures-to-direct-revenue-to-gers/

http://www.lbterminals.com/LBR_Press_Release_-_2018_November_16.pdf

http://www.lbterminals.com/Limetree_Press_Release_Nov_30_2018.pdf

(2) メキシコ Pemexが、米国から Bakken原油を輸入

メキシコが、天然ガス・石油類の輸入先として、米国への依存度を増している実態

は、本報でも紹介してきた(2018年 4月号中南米編第 1項、9月号第 1項)。原油に

関しては、米国のシェールオイルとメキシコ産原油のスワップ取引を検討したこと

も紹介していた(2015年 2月号中南米編第 1項、9月号第 1項参照)。

メキシコの天然ガス・石油類の調達先は、東隣のテキサス州などのメキシコ湾岸で

あったが、新たに米国の中西部から原油を調達する計画が公表されている。なお、

メキシコ国営Petróleos Mexicanos(Pemex)は、ガソリンやディーゼルの得率アップ

を目的に、自社の製油所群で処理する原油の品質向上を進めている。

Pemexは、プレスリリースで、軽質な Bakken原油を輸入することを明らかにして

いる。Pemexによると、子会社のPemex Transformación Industrial(PMI)が原油調

達選択基準に基づいて提案した軽質原油の調達案を検討した結果、2018年 11月中に

Bakken原油を 4船(350,000バレル/船)輸入することになった。現在、PMIが契約条

件を交渉している。

<参考資料>

http://www.pemex.com/en/press_room/press_releases/Paginas/2018-086-national.aspx

(3) アルゼンチンの石油・天然ガス増産計画

1) アルゼンチンの在来型・非在型原油・天然ガスの生産状況

アルゼンチンの原油生産量は、ブラジル・ベネズエラ・コロンビアに次いで、南米

で 4番目であるが、シェール資源を大量に埋蔵していることから、シェールオイル

の生産に注力している。アルゼンチンでは、シェールオイルの開発が先行していた

が、最近はシェールガスの生産にも力を入れている(2017年 8月号中南米編第 4項参

照)。

アルゼンチン政府が、石油・天然ガスの生産状況について発表した資料によると、

2018年 10月の原油の総生産量は 49.8万 BPDで、前年同期に比べて 2%増加した。

非在来型原油(シェールオイル他)の生産量は、6.6万 BPDで、前年同期に比べて 70%

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30

増、2018年 9月に比べて 3%増加した。

2018年 10月には、天然ガスを 2017年 10月に比べて 7%、2018年 9月に比べて

1.2%増産し、生産量は 1.32億 m3/日に達した。非在来型天然ガス(シェールガス他)

の生産量は 2,500万 m3/日で、前年同月に比べて 38%と大幅に増加した。9月に比べ

ても 11%と 2桁ポイントの増加を示した。

因みに、アルゼンチン最大の石油・天然ガス会社である国営 YPFの 2018年第 3四

半期の業績報告によると、659の掘削井が稼働し、シェールオイル・ガスの生産量は、

前年同期に比べて 58.3%、57,500BOED(原油換算)の増産を記録している。

YPFは 12月上旬に、マレーシア国営 PETRONASと共同で、Vaca Muerta層でシェー

ルオイル開発を手掛けることを公表している。

両社は、ネウケン州の La Amarga Chica鉱区に、4年間で 23億ドルを投資し、2022

年までに原油 60,000BPDを生産することを目指している。開発ピーク時には、生産

量は、75,000BPDに引き上げる予定で、生産期間の総投資額は 70億ドルを見込んで

いる。

因みに YPFは、La Amarga Chica鉱区で、パイロットプロジェクトで最初の油井を

2015年に掘削した。これまでに、3フェーズで 5.5億ドルが投資され、33井を掘削

し、生産量は 9,800BPDに到達している。

<参考資料>

https://www.argentina.gob.ar/noticias/sigue-creciendo-la-produccion-de-petroleo-y-gas

https://www.ypf.com/YPFHoy/YPFSalaPrensa/Lists/ComunicadosDePrensa/20-YPF-Resultados-t

ercer-trimestre.pdf

https://www.ypf.com/YPFHoy/YPFSalaPrensa/Paginas/Noticias/YPF-y-Petronas-inician-el-de

sarrollo-masivo-de-La-Amarga-Chica.aspx

http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=27512

http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=27492

2) アルゼンチン初の LNGプロジェクト

天然ガスの増産を受けて、アルゼンチンでは、天然ガスの輸出への取り組みが始

まっている。

YPFは、天然ガスを LNGとして輸出することを計画している。第一段階では、浮体

式天然ガス液化設備の FLNGを導入し、輸出能力として年間 50万トンを目指してい

る。同社は、2018年 11月下旬にベルギーの LNG企業 Exmarと、FLNG設備の傭船で

契約を締結した。

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Exmarは、大西洋岸のブエノスアイレス州Bahía Blanca港に、2019年第 2四半期

に Caribbean FLNGを Tango FLNGに名称を変更して設置する。Tango FLNGは、Neuquen

盆地の Vaca Muerta層で生産されるシェールガスを液化し輸出することになる。契

約期間は 10年間で、最大で年間 8船分の LNGを輸出することができる。

Tango FLNGは、バージ船タイプの LNG設備で、天然ガス液化能力は 50万㌧/年。

傭船コストは、利益に連動して算出される。

<参考資料>

http://www.exmar.be/sites/default/files/media/document_center/reports_and_downloads/pr

ess_releases/announcement_exmar_ypf.pdf

https://www.ypf.com/YPFHoy/YPFSalaPrensa/Lists/ComunicadosDePrensa/24-YPF-Anuncio-Acue

rdo-con-EXMAR-Esp.pdf

3) チリへの天然ガス輸出再開の動き

アルゼンチンの天然ガス生産量は、2006年にピークを迎えた後は減産傾向にあり、

2008年には消費量が生産量を上回っていた。2000年から 2003年には天然ガスの輸

入を止めていたが、2004年には輸入を再開していた。シェール開発が進んだ 2015年

には、再び増産に転じている(表 4、図 7参照)。

表 4. アルゼンチンの天然ガス生産・消費・輸入量

億 cf

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

生産量 13,211 13,116 12,752 14,493 15,849 16,114 16,280 15,832 15,560 14,607

消費量 11,728 11,025 10,690 12,212 13,388 14,281 14,748 15,510 15,683 15,235

輸入量 0 0 0 0 283 614 636 593 459 939

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

生産量 14,161 13,692 13,293 12,558 12,537 12,855 13,867 14,449

消費量 15,288 16,291 16,400 16,483 16,626 16,595 17,103 17,322

輸入量 1,275 2,673 3,147 3,955 4,113 3,768 3,475 3,475

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図 7. アルゼンチンの天然ガス生産・消費・輸入量(グラフ)

前項と同様に、天然ガスが増産に転じたことを背景に、チリへのアルゼンチン産

の天然ガス輸出に関する情報が報道されている。10月末にチリのSebastián Piñera

大統領は、アルゼンチンから天然ガスを輸入すると発表したが、輸入開始に向けた

具体的な動きが発表されていた。

アルゼンチンの Vaca Muerta層から、チリに天然ガスを輸送する Gasoducto del

Pacíficoパイプラインのチリ中部のビオビオ州(Biobío Region)バルブステーション

で、Susana Jiménezエネルギー相と Jorge Ulloa知事によって 11月 22日にパイプ

ラインの開栓の式典が挙行された。

少なくとも 8企業が、アルゼンチンの天然ガス生産業者あるいは、トレーダーと

天然ガス購入の交渉を開始しており、アルゼンチンの政府機関から認可が下り始め

ている。天然ガスの輸入量は最大 300万 m3/日で、工業・発電・メタノール原料向けに

供給され、夏季(南半球、10月~4月)に輸入が増えることが見込まれている。

アルゼンチンとチリの間には、GasAtacama・NorAndino(アントファガスタ州)、

GasAndes (首都州)、Del Pacífico(ビオビオ州)、Cóndor-Poseidón(マガジャネス・

イ・デ・ラ・アンタルティカ・チレーナ州)天然ガスパイプラインが敷設されている。

<参考資料>

https://www.gob.cl/noticias/ministra-de-energia-da-reinicio-importacion-de-gas-natural

-argentino-en-las-regiones-de-nuble-y-biobio/

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

生産量

消費量

輸入量

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7. 東南アジア

(1) インドネシア Pertaminaの製油所プロジェクトの最新動向

インドネシア国営 Pertaminaの Balikpapan製油所で、近代化プロジェクトの進捗

が報じられている。

Pertaminaは、Directorate of Refinery and Petrochemicals Mega Projects(MP3)

の下で、製油所関連プロジェクトを展開している。MP3は、「既設製油所の個別装置」、

「3製油所の総合近代化プロジェクト Refinery Development Master Plan(RDMP)」、

「新設製油所(Grass Root Refinery:GRR)」に取り組んでいる。2018年に公表され

た、2017年版の年次報告書に各プロジェクトの概要が示されているので、表 5にま

とめて紹介する。

表 5. Pertaminaの製油所プロジェクトの概要

製油所 目標、概要 進捗

RDMP

Cilacap

Balikpapan

Balongan

・処理原油の高硫黄化対応:硫黄濃度 0.4%→2%

・2次処理設備の拡充:Nelson指数 5.4→8.9

・処理能力 140%拡大:82万 BPD→200万 BPD

・燃料増産

・燃料品質改善 EuroⅡ→EuroIV/EuroV

・精製マージン改善:3.0ドル/バレル→

7.90ドル/バレル

・完成予定時期:Cilacap (2023年)、

Balikpapan(2021年)、Balongan(2023年)

RFCC/

Blue Sky

Project

Cilacap

・RFFCプロジェクト:

① RON88ガソリン増産(61,000BPD →91,000BPD)

② LPG増産、③ プロピレン 430㌧/日、

④ Nelson指数 5.4→6.0

・Blue Sky Project:

ナフサコンプレックスを改造、RON88→RON92

・RFFCプロジェクト:

2015年ガソリン生産

・Blue Sky Project:

詳細設計完了

建設工事中(28%)

GRR

Tuban

・建設地:ジャワ島 Tuban

・精製能力 30万 BPD

・処理原油:ESPO、Basrah等

・稼働予定時期:2024年上半期

・ロシア Rosneftとの

JVに合意(2016.10)

・BED/FEED条件(2018)

Bontang ・建設地:東カリマンタン州 Bontang

・精製能力:30万 BPD ・JVパートナー選定中

Page 34: 2018 年12 月27 日 木 JPEC 世界製油所関連最新情報

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図 8. インドネシアの製油所の配置

計画では、GRRプロジェクトの投資額には、150億ドル~160億ドルが見込まれて

いる。

Balikpapan製油所については、Air Liquideが近代化プロジェクトの重要なプラ

ントの水素プラントのリフォーマーの基礎設計業務を受注したことが、11月中旬に

発表されている。水素製造能力は、120,000Nm3/時で、RDMPの重要課題である Euro 5

規格の低硫黄燃料を製造するために水素を供給することになる。

<参考資料>

https://www.engineering-airliquide.com/air-liquide-engineering-construction-selected-t

echnology-provider-pertamina-refinery-indonesia

https://www.pertamina.com/id/news-room/news-release/produksi-tinggi-pertamina-tppi-eks

por-perdana-paraxylene-10-000-mt

(2) インドが戦略原油備蓄量の拡大を計画、ADNOCが原油を供給

インドは産油国であるが、原油の需要量が急増し、原油の輸入量は中国・米国に次

いで世界第 3位につけている。インドでは原油の輸入依存度が、既に 82%に達し、

さらに輸入依存度が上昇する見通しであることから、政府は輸入量を抑えるための

対策を講じている。一方で、エネルギー安全保障の観点から、原油の戦略備蓄量

(Strategic Petroleum Reserves:SPR)の拡大を目指しており、事業母体として Indian

Strategic Petroleum Reserves Ltd(ISPRL)を設立している(2015年 5月号東南アジ

ア編第 2項、2018年 3月号第 2項等参照)。

インド政府は、国内の要衝に原油の備蓄施設を建設しているが、備蓄原油の調達

には、外国企業を参入させる方針で、アラブ首長国連邦のアブダビ ADNOCが事業に

参入している。

Duma

i

Plaju

Cilacap

Balikpapan

Kasim

Balonga

nTuban(新設)

マレーシア

パプアニューギニア

オーストラリア

フィリピン

インドネシア

Bontang(新設)

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ADNOCと ISPRLは、2017年にカルナータカ州 Mangaloreの SPR施設に原油を供給

することに合意し、ADNOCは 2018年 5月に原油を初めて出荷した。11月 4日には、

586万バレル分(86万トン)の備蓄を完了している。

インド政府は、ケーララ州 Padurの地下岩盤貯蔵施設へ、外国の国営石油会社

(National Oil Companies(NOCs)が、原油を供給することを 2018年 11月上旬に承認

した。備蓄事業は、PPP(public–private partnership:官民パートナーシップ)方式

で進められる。

この決定を受けて ISPRLは、ADNOCと Padur SPR施設に、250万トン(1,700万バレ

ル)の原油を備蓄する検討に入ることに合意した。なお ADNOCは、インドの SPRプロ

グラムに出資する唯一の外国企業である。因みに、UAEはインドの原油需要量の 8%

を供給している。

インドの SPR施設を表 6にまとめるが、Padurの施設の貯蔵能力は 4区画(62.5万

トン/区画)で合計 250万トンを備蓄することができる。現在(Phase1)のインドの SPR

貯蔵能力は、533万トンで、2017-2018年度の原油消費量で計算すると、9.5日分の

備蓄量に相当する。SPR基地の一覧と、配置を表 3、図 8に示す。

図 9. インドの原油戦略備蓄基地の配置

Chandikhole

Visakhapatnam

Mangalore

Padur

カルナータカ州

アーンドラ・プラデーシュ州

ケーララ州

オリッサ州

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表 6. インドの SPR基地の一覧

所在地 州 貯蔵能力

Vishakhapatnam アーンドラ・プラデーシュ 133万トン

Mangalore カルナータカ 150万トン

Padur ケーララ 250万トン

Chandikhol オリッサ 650万トン

Padur ケーララ

2018 年 6 月には、SPR プロジェクトの Phase2 として、Padur とオリッサ州の

Chandikhol に、550 万トン分の SPR 貯蔵施設を建設することが、原則的に認められ

ている。Phase2 の備蓄量は 11.5 日分で、フェーズ 1 とフェーズ 2 を合わせると 21

日分になる。

インドと ADNOCの関係に戻ると、ADNOCは、サウジアラビア国営 Saudi Aramcoと

共同で、インド国営三社(IOC、BPCL、HPCL)とマハーラーシュトラ州の Ratnagiri製

油所(120万 BPD)の新設プロジェクトに加わることに合意している。

さらに ADNOCは、インドの国営 ONGC Videsh、Indian Oil Company、Bharat Petro

Resources Ltd.のコンソーシアムに対し、アブダビ沖の Lower Zakum鉱区の権益 10%

を与えるなど、2018年にインドとの関係を急速に強めている。

<参考資料>

http://www.pib.nic.in/PressReleseDetail.aspx?PRID=1552160

http://pib.nic.in/newsite/PrintRelease.aspx?relid=184695

8. 東アジア

(1) 中国の原油・天然ガス輸入の動向

1) 2018年 10月の原油・天然ガス輸入状況

中国の製油所の 2018年 9月の一日当たりの原油処理量が、171.1 万トンで過去最

高を記録したことを本報の 11月号で報告したが、海関総署によると 10月の原油輸

入量は、2017年 9月に比べて 32%増の 4,079.9万トンで、過去最高となった。1-10

月の累計輸入量は 3.7716億トンで、2017年 1-10月の 3.4883億トンに比べて、8.1%

増加した。

なお 10月の天然ガス輸入量は、729.9万トン、1-10月の累計では 7,206.4万トン

となり、2017年 1-10月の 5,413.5万トン/年に比べて 33.1%増加した。

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中国は、石炭から天然ガスへの転換に重点的に取り組んでいることから、天然ガ

スの輸入量が大幅に増加している。天然ガスの増産への取り組みの事例としては、

10月号でシェールガスの生産動向を紹介したが、本号では最近の天然ガス輸入に関

わる情報を紹介する。

2) カザフスタンからの天然ガス輸入契約量が増加

中国国有 CNPC傘下の China PetroChina International Company Limited(中国石

油国际事业有限公司)は、カザフスタンの天然ガス輸送会社 KazTransGasと、10月

14日に期限を迎えていた天然ガスの売買契約を 11月の上旬に調印した。

契約期間は 5年間で、カザフスタンから CNPCへの天然ガス輸出量は従来の契約量

から倍増して 100億 m3/年になる。天然ガスは、カザフスタン西部の天然ガス田から

天然ガスパイプラインで輸送される。

CNPCは今回の契約で、今冬の天然ガス供給能力の確保に目途がついたと、満足を

表明している。なお、両国の天然ガス取引は、カザフスタンにとっては“Bright Road”

イニシアチブ、中国にとっては、“一帯一路”イニシアチブに沿った事業の成果に位

置付けている。

<参考資料>

http://www.customs.gov.cn/customs/302249/302274/302275/2081065/index.html

3) 今冬の CNPCの天然ガス供給量

China PetroChina International Company Limitedは、2018-2019年の冬季に、

パイプライン網に中国全体の需要量の 1/4の天然ガス供給量を供給すると、11月初

めに発表している。同社によると、冬季の 151日間に Central Asian天然ガスパイ

プライン経由で、天然ガスを最大輸送能力の日量 1.6億 m3/日(242億 m3)で輸送する

ことを計画している。

<参考資料>

http://news.cnpc.com.cn/system/2018/11/06/001709630.shtml

http://news.cnpc.com.cn/system/2018/11/12/001710259.shtml

4) LNGの輸入拡大の動き

中国は、天然ガス供給量を増やすために、アジアやロシア地域からのパイプライ

ン経由の輸入を増やすともに、LNGの輸入を拡大している。本報(2018年 3月号東ア

ジア編第 2項)で紹介している様に、中国の LNG輸入量は、2017年に韓国を上回る世

界第 2位に伸長している。また、中国の天然ガス総輸入量(パイプライン経由、液化

(LNG))に占める LNGの割合は、ほぼ半分になっている。

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直近の LNG輸入量拡大の動きでは、国有 CNOOCとフランス Totalが、LNGの取引量

の拡大に合意したことを挙げることができる。2018年 10月下旬に合意した内容は、

Totalから CNOOCへの LNG販売量を、現在の 100万㌧/年から 150万㌧/年に引き上げ

る。Totalは、同社が世界に保有する LNG権益から調達する計画である。現行の SPA

契約は 2008年に締結されたもので、契約量は 100万㌧/年であった。今回の契約変

更では、取引期間も 15年間から 20年間に延長された。

LNG輸入設備関連では、東部の沿岸の江蘇省如東県(Rudong)にある国有 CNPCの

Rudong LNG輸入ターミナルの拡張プロジェクトが始まったことが発表されている。

Rudong LNGプロジェクトのフェーズ 3に当たるもので、貯蔵能力 20万 m3のタンク

を 2021年までに 2基建設する。フェーズ 3の完了で、Rudong LNGターミナルの LNG

貯蔵能力は、現在の 20万 m3タンク 1基、16万 m3タンク 3基の 68万 m3から 108万

m3に拡張される。

米国エネルギー情報局(EIA)のカントリーレポーと EIA,Country Analysis(2015年

5月公開版)によると、中国に設置された LNGターミナルは、既設・計画分を合わせて

21ヶ所で、その中で Rudong LNGは、最大級の施設に位置付けられている。

CNPCのウェブサイトによると、Rudong LNGのフェーズ 1は、2011年 11月に稼働

し、LNG荷揚げ能力は、350万㌧/年で、天然ガス液化・出荷能力は 480万㌧/年で稼

働した。2013年末には、フェーズ 2が稼働し、荷揚げ能力は 650万㌧/年に、液化・

出荷能力は 870万㌧/年に増強されていた。

Rudong LNGターミナルで再ガス化された天然ガスは、West-East 天然ガスパイプ

ライン(西気東輸)と済寧市の支線パイプラインに供給されている。また、LNGローリ

ーで出荷されている。天然ガスは、長江デルタとその周辺地域に供給されている。

CNPCによると、2018年 1月から 11月までに Rudong LNGターミナルは、LNGタン

カーを 75船受け入れ、LNGを 575万トン受け入れた。また、天然ガス出荷量は、81

億 m3(約 590万トン)で過去最高となった。LNG液化能力から単純に計算すると、稼働

は約 75%に相当する。

<参考資料>

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/total-and-cnooc-strengthen-their-lo

ng-term-cooperation-lng

http://news.cnpc.com.cn/system/2018/12/03/001712479.shtml

http://www.cnpc.com.cn/en/JiangsuLNG/common_index.shtml

(2) 中国企業による INVISTAの PTAプロセス導入の動き

世界の長期的な燃料需要の伸びは、従来の予測に比べると弱含みの見通しに変化

していることなどから、製油所で石油化学基材の増産に向けた設備改造や増設を検

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討している精製会社は多い。

シェールガスなどの非在来型天然ガスを含む天然ガスの増産で、副産物としてエ

タンが大量に供給されるようになっていることから、エタンクラッカーが注目され

ている。一方、原油・製油所系(コンデンセート、LPGを含む)の石油化学基材としては、

ポリプロピレンやスペシャリティーケミカルなど原料のプロピレン、PETの原料にな

るパラキシレン、エラストマー(合成ゴムを含む)などの原料のブテン・ブタジエンを

挙げることができる。

中国では、独立系の石油精製会社・石化会社・石炭系化学会社による石油化学系プ

ラントの建設プロジェクトが活発で、本報でも脱水素プロセスによるプロピレンや

ブテンなどのオレフィンプラント建設などに注目してきた。本号では、パラキシレ

ンから PETを合成するプロセスの中間原料になる PTA増産に関する情報を紹介する。

江蘇省 連雲港市の Jiangsu Honggang Petrochemical Co., Ltd.は、建設を計画し

ている PTAプラントに INVISTAの P8 PTAプロセスを採用することで、INVISTA

Performance Technologiesと合意している。因みに、INVISTAは、2012年以降に、

生産能力で 2,100万㌧/年分の PTAプロセスをライセンスした実績がある。プラント

の PTA生産能力は、240万㌧/年と大規模で、2020年の第 4四半期の稼働を目指して

いる。

INVISTA Performance Technologiesは、Jiangsu Honggang Petrochemical の発表

に先立つ 9月末に Hengli Petrochemical(Dalian)Co., Ltd.に、PTAプロセスを提供

することに合意している

Hengli Petrochemicalは、2012年に 1基目の PTAプラントを稼働しており、今回

は 5基目のプラントになる。INVISTAは、建設中の 4基目の PTAプラントと、5基目

のプラントに P8 PTAプロセスを提供する。PTA生産能力は 250万㌧/年で、INVISTA、

副生物として安息香酸を回収する R2Rプロセスも提供する。

表 7に INVISTAの PTAプロセスの中国関連のプレスリリースをまとめて紹介する。

表 7. 中国企業による INVISTAの PTAプロセス導入状況(2018年)

企業名 発表時期 生産能力 内容

Jiangsu Honggang Petrochemical 2018.11 240㌧/年 ライセンス

Hengli Petrochemical(Dalian) 2018.09 250㌧/年 ライセンス(5基目)

Fujian Billion Petrochemicals 2018.08 250㌧/年 ライセンス

Jiaxing Petrochemical 2018.05 150㌧/年 2基目フル稼働

Hengli Petrochemical(Dalian) 2018.05 250㌧/年 ライセンス

Jiaxing Petrochemical 2018.01 150㌧/年 2基目運転開始

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PTAプラントの新・増設は、内製・外部購入を含めた PX、さらにはアロマ留分全体

の需要の増加に直結することから、中国のアロマ製品の需給動向に注目していきた

い。

<参考資料>

https://www.invista.com/News-Articles/Jiangsu-Honggang-Petrochemical-Co-,-Ltd-to-utili

ze

https://www.invista.com/News-Articles/Fujian-Billion-Petrochemicals-Co-,-Ltd-to-utiliz

e

https://www.invista.com/News-Articles/Successful-demonstration-of-INVISTA’s-latest-P8

-PT

https://www.invista.com/News-Articles/Successful-demonstration-of-INVISTA’s-latest-P8

-PT

https://www.invista.com/News-Articles/INVISTA’s-latest-P8-technology-sees-first-succe

ssf

9. オセアニア

(1) オーストラリアの業界による石油・天然ガス投資環境の認識

オーストラリアの天然ガス事業に関しては、LNG輸出の活況が伝えられている一方

で(2018年 7月号オセアニア編第 1項参照)、東部地域では国内向けの天然ガス供給

不安が浮上している(2017年 10月号オセアニア編第 2項参照)。また、天然ガス開発

(炭層メタン(CSG)、シェールガスを含む)への環境規制(2016年 10月号オセアニア編

第 2項参照、その後 2018年に緩和)などが報じられている。

天然ガスの国内供給不安の問題を受けて、石油産業界の組織、オーストラリア石

油生産探鉱協会 Australian Petroleum Production and Exploration Association:

APPEA)は、カナダの Fraser Instituteの年次調査で、世界で最も石油・天然ガス投

資に向いていない地域に取り上げられた地域にオーストラリアの南東部の 3つの州

が含まれていることを、2018年 12月初めのプレスリリースで紹介している。

Fraser Instituteは、投資に適さない国・地域のワースト 10として順番に、ベネ

ズエラ・イエメン・ タスマニア州・ビクトリア州・リビア・イラク・エクアドル・ニュー

サウスウェールズ州・ボリビア・インドネシアを挙げている。この中には、政情不安

が伝えられているリビア・イエメン、外交問題を抱えるベネズエラ・イランなども含

まれている。

オーストラリアの 3州は、2017年にはワースト 10の圏外であったが、ニューサウ

スウェールズ州は、2017年に比べて評価点が 6ポイント低下、タスマニア州は 2015

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年に比べて23ポイント低下、ビクトリア州は2017年に対して14ポイント悪化した。

オーストラリアでは南オーストラリア州が最高位に評価されているが、2017年に

は 97地域中 10位から、2018年は 80州中 20位に低下している。なお、西オースト

ラリア州が 37位、クイーンズランド州が 50位。

APPEAの Dr.Malcolm Roberts会長は、オーストラリア南東部の 3州では、石油・

天然ガス事業の業績が芳しくなく、投資の減少が続いていると指摘している。また、

ビクトリア州・ニューサウスウェールズ州が天然ガスの供給を、他の州に依存してい

ることを問題視している。同氏は、他州から天然ガスを輸送しなければならいこと

から、3州の住民や産業界は、余分な支出を強いられていると州政府の政策を批判し

ている。

<参考資料>

https://www.appea.com.au/wp-content/uploads/2018/12/Media-release-Gas-investors-warned

-Australian-states-among-the-worlds-worst.pdf

https://www.fraserinstitute.org/sites/default/files/global-petroleum-survey-2018.pdf

(2) オーストラリアの LNG技術を支援する施設“LNG Futures Facility”

カタールと世界の LNG輸出量 1、2位の座を競っているオーストラリアで、LNG産

業の発展を目指した機関“Australian Centre for LNG Futures”が設立されている。

Australian Centre for LNG Futuresは、小規模な LNG研究施設である LNG Futures

Facilityを開発することを目的に設立されている。LNGの生産事業者・供給事業者・

消費者が、技術を迅速に開発する環境を整備することが目的で、LNGのサプライチェ

ーン全体を対象に置いている。また、LNG事業に従事する人材の教育訓練も業務範囲

に収めている。

初期段階の取り組みとして、The Oil, Gas and Energy Resources Growth Centre

が、 National Energy Resources Australia(NERA) Western Australia大学・Chevron・

Hyundai Heavy Industries・Shellと共同で、FSを手掛ける。

LNG Futuresには、試験・実証実験・技術認証(validation)を通じて、新技術の商業

化を加速させる役割が期待されている。LNGの生産効率の改善や、施設の運用効率の

向上に寄与し、オーストラリアの LNG産業に対し、年間 5億 AUDを貢献することが

見込まれている。

Australian Centre for LNG Futuresが公表した設備の予備 FEED段階の資料を見

ると、設計仕様は

研究目的、教育訓練目的に各 1トレインを建設。

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研究用の施設は、新規プロセス、新規センサー、アミンフリープロセス開発目的

の膜・モレキュラーブを実証する。

デジタルセンサー・ロボット技術を採用する Industry 4.0基準に準拠。

となっている。

現在の設備開発の状況、運用計画などの情報は得られていないが、今後、試験設

備稼働の状況や、評価結果などの発表があれば、本報でも紹介したい。

<参考資料>

https://www.industry.gov.au/sites/default/files/growth-centres-case-study-driving-larg

e-scale-innovation-in-the-lng-industry.pdf

https://lngfutures.edu.au/lng-futures-facility/

http://lngfutures.edu.au/lng-futures-facility-concept-select-and-pre-feed/

**************************************************************************

編集責任:調査情報部 ([email protected] )

本調査は経済産業省の「平成 30年度石油精製に係る諸外国における技術動向・規制

動向等の調査・分析事業」として JPECが実施しています。

<訂正>

2018年 10月号中南米編「(2) ペルーの Talara製油所プロジェクトの状況」p32

誤)近代化プロジェクトは、49.99万ドルを投資して Talara製油所の設備を一新するもので、

正)近代化プロジェクトは、49.99億ドルを投資して Talara製油所の設備を一新するもので、