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© 2017 NTT DATA Corporation Session Based Test Managementによる 探索的テストの実践 株式会社NTTデータ 技術革新統括本部 生産技術部 熊川 一平 [email protected]

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Page 1: Session Based Test Management による 探索的テ …...株式会社NTTデータ 技術革新統括本部 システム技術本部 生産技術部 プロジェクトマネジメント・ソリューションセンタ

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Session Based Test Managementによる探索的テストの実践

株式会社NTTデータ 技術革新統括本部 生産技術部熊川 一平[email protected]

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熊川 一平 (くまがわ いっぺい)

株式会社NTTデータ 技術革新統括本部 システム技術本部 生産技術部プロジェクトマネジメント・ソリューションセンタ 課長代理

テスト・品質保証に関する技術支援、研究開発テスト自動化ツールの適用検討など社内案件の支援に従事

執筆・講演歴

ITPro(日経BP社)実践!テスト自動化の勘所~実装・実行の自動化http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20121023/431821/

Micro Focus テストソリューション カンファレンステストツールを使ったプロセス改善のコツ、NTTデータが教えますhttp://special.nikkeibp.co.jp/ts/article/ac0g/147403/

Borlandソリューションカンファレンステスト自動化を成功させるには? ~NTTデータの事例~http://special.nikkeibp.co.jp/ts/article/acab/158682/

JaSST’14 Tokyo ★ベストスピーカー賞★「探索的テストを活用したシステム開発手法」http://www.jasst.jp/symposium/jasst14tokyo/pdf/C4-2.pdf

ソフトウェア品質シンポジウム2017 ★SQiP Best Report Effective Award★「Session Based Test Managementによる探索的テストの実践」http://www.nttdata.com/jp/ja/insights/trend_keyword/

弊社コラム「イマ旬」への掲載多数http://www.nttdata.com/jp/ja/insights/trend_keyword/

自己紹介

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そもそも探索的テストって?

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Exploratory testing is simultaneous learning, test design, and test execution. (James Bach)

探索的テストは、学習、テスト設計、テスト実行を並行して実施するものである

探索的テストとは?

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探索的テストとは?

単体テスト

結合テスト

システムテスト

受入テスト機能テスト

非機能テスト

性能テスト

負荷テスト

セキュリティテスト

ユーザビリティテスト

ブラックボックステスト

ホワイトボックステスト

境界値テスト

組合せテスト

モンキーテスト

ビッグバンテスト

アドホックテスト

回帰テスト

ユニットテスト

総合テスト

スモークテストベータテスト

探索的テスト

○○テストという言葉は山ほど存在する

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Ad-hoc Testing• アドホック(ad hoc)は、「特定の目的のための」「限定目的の」などと

いった意味のラテン語の語句である。(wikipediaより)• その場で思い付いた項目を実行するだけで、テスト計画なしに行われ

るソフトウェアテストのこと。• 経験あるテスト技術者によるアドホックテストは、計画的なテストが行

き詰っている場合に有益なテストとみなされることがある。これは、伝統的にはエラー推測、近年では探索的テストとも呼ばれる。(ITmediaより)

Monkey Testing• プログラムのテスト方法の一つで、猿に実機を渡して無茶苦茶にイベ

ントを発生させ、装置が問題なく動くかどうかを確認するストレステスト。アドホックテストともいう。(通信用語の基礎知識より)

Exploratory Testing• テスト対象として与えられたソフトウェアにおいて起こりそうなバグを

推測して、それを検出するテストケースを設計すること。経験ベースのテスト技法に分類される。(ITmediaより)

探索的テストと、探索的テストに似ているもの

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バグを「探索」するということ

https://sites.google.com/site/exploratorytestingjapan/探索的テストのモデル(探索的テスト研究会)

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バグを「探索」するということ

https://sites.google.com/site/exploratorytestingjapan/探索的テストのモデル(探索的テスト研究会)

猿のように何も考えず打鍵するのではない。考えて、頭の中でテストケースを設計してテストを行うのが探索的テストだ。≠モンキーテスト

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バグを「探索」するということ

https://sites.google.com/site/exploratorytestingjapan/探索的テストのモデル(探索的テスト研究会)

その場で思いついたことをやるだけではない。実行した結果を「観察」して、さらに思考を深めてテストを実行していくのが探索的テストだ。≠アドホックテスト

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例:「探索する」ということ

_□×

乗り換え案内

出発日時:

出発地↓

目的地

検索

出発日時が自由入力できる…存在しない日付を入れてみた

らどうなるだろう?

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例:「探索する」ということ

_□×

乗り換え案内

出発日時:

出発地↓

目的地

2017/13/32

検索

_□×

乗り換え案内

システムエラーが発生しました!

java.xxxx.DateFormatException・・・・・・・・・・・:line 28・・・・・・・・・・・:line 127

TOPページに戻る

やった!バグ発見!!

検索ボタンを押して数秒後・・・

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例:「探索する」ということ

_□×

乗り換え案内

出発日時:

出発地↓

目的地

2017/13/32

検索

_□×

乗り換え案内

システムエラーが発生しました!

java.xxxx.DateFormatException・・・・・・・・・・・:line 28・・・・・・・・・・・:line 127

TOPページに戻る

やった!バグ発見!!

検索ボタンを押して数秒後・・・ここで終わるのが

アドホックテストだと思う

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例:「探索する」ということ

他にシステムエラーを起こせないか?

他のFormatExceptionはないか?

例外のログからセキュリティホールをつけな

いか?

システムエラーの後TOPページに戻ると状態が

変わっていないか?

妙に処理時間が長い。無駄な処理をしている?

存在しない出発地や目的地だとどうなる?

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例:「探索する」ということ

他にシステムエラーを起こせないか?

他のFormatExceptionはないか?

例外のログからセキュリティホールをつけな

いか?

システムエラーの後TOPページに戻ると状態が

変わっていないか?

妙に処理時間が長い。無駄な処理をしている?

存在しない出発地や目的地だとどうなる?

テスト実行後のふるまいを観察して更なるテストにつなげて

バグを「探索」する

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問題定義

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ITサービス業界におけるSIerの役割

発注者

ハードベンダー各社

パッケージソフト会社 ソフトハウス各社 通信会社

完成責任要求条件

ITノウハウの支援

システム・インテグレーター(SIer)(全体のコーディネイト)

ハードウエア パッケージソフトウエア

ソフトウエア開発 ネットワーク

ITコンサル

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当社における探索的テストの利用方法

両者を組み合わせたテストプロセス

両者を上手に組み合わせることで、システムの不具合を抽出することを狙っている。

Verificationの役割を担う

Validationの役割を担う

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当社における探索的テスト適用の課題(一例)

テストケース表

テスト結果報告書

結果や状況が監査可能な状態で残らない?

報告

報告

進捗報告資料

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SIerにおけるテストプロセスの特徴

SI

自社開発

日曜プログラマ

利用者 責任 期間

他人なことが多い 大きい 長いことが多い

自分/他人 大きい 長い

自分 小さい 短い

投資者

他人なことが多い

自分

自分

SIerのテストでは、テストに可監査性・客観性が強く求められる

結果や状況が報告されないテスト≒管理されていないテストはSIerの業務では受け入れられがたい。

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探索的テストのテスト管理を改善する

テスト管理のカテゴリ(JSTQB Foundation Levelシラバスより)

探索的テスト実施時のテスト管理上の問題点

改善目標

テスト計画作業と見積もり テストの内容や作業量はテスターに依存しており、テストの総量がわからない。

事前にリソース割り当てを計画できること。 作業量の見積もりができること。 テストの開始/終了基準が明確にできること。

テスト進捗のモニタリングとコントロール

総量が不明確なため、テストの進捗状況を把握することができない。

テストの実施内容が、テスターに依存しており不透明になっている。

進捗状況をメトリクスで確認できること。 テストレポートが残されること。 テストの結果やレポートによって方向性をコントロール

できること。

テスト組織 テスター任せになっており、明確な役割(ロール)が存在しない。

テストに関わる担当者の役割(ロール)が明確にできること。

構成管理 どのバージョンのアプリケーションに対して、どの程度テストを行ったかわからない。

テスト対象アプリケーションのバージョンごとに、テストを行った総量が確認できること。

リスクとテスト テストの実施順序や優先度はテスター任せである。

テストの優先度が設定できること。 リスクの再評価が可能であること。

インシデント管理 テストに関する記録がなく、軽微なインシデントや、改善項目の報告が開発者の混乱を産んでいる。

開発担当者や関係者に必要に応じて問題の特定・抽出・解決に向けたフィードバックができること。

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ソリューション提案

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このような問題に対し、当社では「Session-based Test Management(*1)」を用いた探索的テストの管理手法を実践しています。

Session-based Test Managementでは、テストを”セッション”と呼ばれる時間枠(2時間未満ぐらい)で管理します。

こうした管理単位を持つことが管理の一助になります。例えば見積もりや進捗では、”セッション”を単位とした報告が可能となります。

(例)• セッション単位で見積もりと進捗管理を行うことができる• セッション単位でテストの指示とレポートを行うことができる

“セッション”の単位を導入してテストを管理する

(*1) Session-Based Test Management,Jonathan Bach, first published in Software Testing and Quality Engineering magazine, 11/00

記述式テスト 探索的テスト

事前に定義したテストケースを使って管理する。

セッションと呼ばれる時間の枠を使って管理する。

セッション 1セッション 2セッション 3

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セッション単位で見積もりと進捗管理を行う

テスターが1日に実施するセッション数の上限を定義することで、セッション数の見積もりや、進捗の状況を把握できるようになる。

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セッションではセッションシートと呼ばれるアイテムを利用します。テスト管理者は、セッションシートを用いてテスターへ指示を行うことができます。また、テスターはテスト結果をセッションシートに記入することができます。

セッションシートを使ってテストの指示とレポートを行う

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チャーター部の記入内容

事前にテスト内容を決めすぎると、記述式テストに近づいて行ってしまう。

厳格曖昧

完全にテスター任せにすると管理されたテストにはならない

テスト仕様の明文化度合い

探索的テスト“らしさ”を失わず、かつ管理可能なちょうどいいレベルでチャーターを書くために

ツアー(*2)の概念を導入。

何をテストするか? 購入取り消し業務どんなバグを見つけたいか? 取り消しに失敗してしまうバグそのためにどんなアイテムを使うか? ユーザーマニュアル

ツアー 利用するツアー名 ガイドブックツアー

チャーター

ミッション

(*2) James A.Whittaker,”Exploratory Software Testing”,Addison-Wesley Professional,2009

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レポート部の記入内容

レポート豊洲 太郎

バグの探索とテスト実行(分) 40バグの調査とレポーティング(分) 10テストの準備やセッションシートの執筆(分) 20

80%

テスト中の気付き

テスト中に遭遇した課題

2

バグの概要

・取り消しボタン押下後のレスポンスが遅い。・購入取り消し画面に行く方法がわかりづらい。

・商品データベースの更新に時間が掛かってしまう。・テスト環境に関する問い合わせが多く、テストが中断されがちになっている。

見つけたバグの数(個)

1.同じ商品の購入取り消しを複数回実施すると、出力される帳票の区別がつかなくなってしまい、オペレーターの業務に支障が出る可能性がある。

2.エンドユーザーが商品購入手続きを行っている最中に、オペレーターが別の商品の購入を取り消すとエラーが発生して購入取り消しができない。

テスター名

実施時間

チャーター適合率(%)

探索以外のことに時間をとられていないか確認するために時間を記入する(超概算)

チャーター部の狙いが遂行されたか確認するため適合

率を記入する(超概算)

次のテストのヒントにするために、気付いたことは何でも

書けるようにしておく

いきなりバグ票を書かない。管理者が一次受けを担当する。

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テストの結果を分析する

機能一覧

ガイドブックツアー

マネーツアー

ランドマークツアー

登録機能 9 3 1

照会機能 5 2 4

削除機能 5 4 8

0

5

10

15

20

25

30

35

登録機能 照会機能 削除機能 …

完了セッション数 バグ摘出数

探索的テストにセッションという単位を持ち込むことで、結果の集計/分析が可能になる。

テスト対象×ツアーのマトリクスを書き実施したセッション数を集計することでテストの偏りを確認することが出来る。

テスト対象ごとのバグ摘出数と、完了セッション数を対比することで、バグ発生源の偏りを確認することができる。

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テストの方向性を制御する

前述のようなテスト結果の分析や、セッションシート(レポート部)からのフィードバックを

日次で確認することによって、新たなリスクへの対応をタイムリーにとることが出来る。

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日次で分析するために、全テスター+テスト管理者で報告会を開催する。前頁のテストの方向性を見直す材料を引き出せるだけでなく、テスター間の情報共有&教育を行うことができる。

テスト管理者は、上記の5つの観点を引き出せるように報告会を運営する。また、テストの方向性を制御する以外にも、テスターがバグを探索する上での阻害要因を特定し、排除するように活動する責務を負う。

テスター間の情報共有

P(Past) セッション中に起きたこと

R(Result) セッションで達成できたこと

O(Obstacles) テストを実施する上で邪魔になっていること

O(Outlook) 次に実施すること、または継続して実施すること

F(Feeling) テスト中に感じたこと

報告会の5つの観点(PROOF)

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■ドメイン知識を育てる• 製品や機能の使い方/目的• ユーザの目線/感じ方• 製品や機能の一貫性

■バグへの嗅覚を育てる• 他のテスターがどんなことを考えてテストをしているか• どんなバグが実際に見つかっているか• どんなことから怪しさを感じているか• 他のテスターがやっていないことは何か

情報共有は「テスターを育てる」

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探索的テストにおける結果検証

_□×

乗り換え案内

出発日時:

出発地↓

目的地

2017/3/10

豊洲

飯田橋

検索

_□×

乗り換え案内

豊洲↓ 有楽町線

有楽町↓ 山手線東京↓ 中央線

飯田橋

豊洲から有楽町線で1本で行けるはず!おかしい!バグだ!

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探索的テストにおける結果検証

_□×

乗り換え案内

出発日時:

出発地↓

目的地

2017/3/10

飯田橋

検索

_□×

乗り換え案内

飯田橋↓ 徒歩

飯田橋

出発地を省略したら目的地だけで検索された。これはいいのか・・・?

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© 2017 NTT DATA Corporation 33

探索的テストにおける結果検証

_□×

乗り換え案内

出発日時:

出発地↓

目的地

2017/3/10

飯田橋

検索

_□×

乗り換え案内

飯田橋↓ 徒歩

飯田橋

出発地を省略したら目的地だけで検索された。これはいいのか・・・?

バグに気付くかどうか非常に難しい

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探索的テストでは仕様書からテスト項目を作らないので期待結果が必ず仕様書にあるとは限らない。それに、仕様書通りだからといって顧客の要求通りとは限らない。(仕様バグがすり抜けてしまう。)

探索的テストの結果検証では「メンタルモデル」との比較を行いましょう。

※メンタルモデル(Wikipediaより)

メンタルモデルは、外界の現実を仮説的に説明するべく構築された内的な記号または表現であり、認識と意思決定において重要な役割を果たす。メンタルモデルが構築されると、時間とエネルギーを節約する手段として慎重に考慮された分析を置換する。

メンタルモデルとの比較

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人が無意識にその対象に期待していること・振る舞いのモデル無意識的に期待していることを裏切られた=不具合という形で利用する。

例えば…

ライオンは怖い。 野生のライオンに遭遇したら逃げるべきだ。 「×」ボタンを押したらウィンドウは閉じるはずだ。 「申請」ボタンを連続して押しても1回しか処理されないべきだ。 注文した商品の履歴は、注文履歴ページで確認できるべきだ。 シンプルなパスワード(1111,password,aaaaa)は設定できないべきだ。 エラー画面では、どんなエラーが起きたか通知すべきだ。

メンタルモデル

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人によって持っているメンタルモデルは異なるので、当然結果は異なる。そもそも仕様書に書かれていないので、それを不具合と捉えるかどうかは慎重な判断が必要である。但し、人のメンタルモデルは成長させることができる。

メンタルモデルの学習と成長

テストを続ける中で、観察を続けテスト対象の知識や経験を蓄積できる。

⇒ペアテストは学習スピードを上げる

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人によって持っているメンタルモデルは異なるので、当然結果は異なる。そもそも仕様書に書かれていないので、それを不具合と捉えるかどうかは慎重な判断が必要である。但し、人のメンタルモデルは成長させることができる。

メンタルモデルの学習と成長

テストを続ける中で、観察を続けテスト対象の知識や経験を蓄積できる。

⇒ペアテストは学習スピードを上げる

探索的テストでバグが見つかるかどうかは、人に依存する。

が、人も成長させることはできる。情報共有は人を育てる。

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実績

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改善結果テスト管理のカテゴリ(JSTQB Foundation Levelシラバスより)

改善目標 実施結果

テスト計画作業と見積もり

事前にリソース割り当てを計画できること。

作業量の見積もりができること。 テストの開始/終了基準が明確に

できること。

セッションシートを使うことで、事前にリソースの割り当てができた。

1日あたりの目標セッション数を定義することで総セッション数(テストの終了基準)を明確にし、作業量の見積もりをすることが出来た。

テスト進捗のモニタリングとコントロール

進捗状況をメトリクスで確認できること。

テストレポートが残されること。 テストの結果やレポートによって方

向性をコントロールできること。

セッションシートの消化状況をメトリクスとして、進捗状況を把握できるようになった。

セッションシートのレポート内容に次に実施すべきテストの内容を検討し、セッションシートを追加することで、より効率的にバグを見つけられるようテストの方向性をコントロールすることができた。

テスト組織 テストに関わる担当者の役割(ロール)が明確にできること。

テスト管理者とテスターを明確に分けることができた。

構成管理 テスト対象アプリケーションのバージョンごとに、テストを行った総量が確認できること。

セッションシートのレポート部にテスト対象のバージョン番号などを記載することで、セッション実施数を把握することができた。

リスクとテスト テストの優先度が設定できること。 リスクの再評価が可能であること。

セッションシートごとに、優先度を設定できた。 リスクの再評価に応じて、優先度の見直しができ

た。インシデント管理 開発担当者や関係者に必要に

応じて問題の特定・抽出・解決に向けたフィードバックができること。

セッションシートに記録することで、問題のフィードバックが可能となった。また、テスト管理者が問題の一次受けをすることで開発者に多量のフィードバックが一度にわたらないようコントロールすることができた。

Page 40: Session Based Test Management による 探索的テ …...株式会社NTTデータ 技術革新統括本部 システム技術本部 生産技術部 プロジェクトマネジメント・ソリューションセンタ

© 2017 NTT DATA Corporation 40

テスト管理者1名・テスター5名の体制で探索的テストを実施。Session-based Test Managementを導入し、1日3セッション/人を目標値に設定した上でテスト管理を実行。

■実際の進捗報告資料(一部抜粋)若干の遅れが出ており、実施期間の見直しなどが指示された。

適用事例:某団体向け基幹システム更改プロジェクト

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適用事例:某団体向け基幹システム更改プロジェクト

■実際の結果分析資料(一部抜粋)機能Dにバグが集中していることから、機能Dに対して追加のセッションを計画。また、機能Dの記述式テストの内容について再確認が指示された。

最終的に数百件のバグを抽出。これまでの社内適用実績に比べてより効率的にバグが抽出できたことがわかった。

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テスター/管理者の声

テスト管理者Aさん

セッションという定量的な見方ができて、その日のノルマが見えるようになり、実施量をキープできた。

報告する立場としてはセッション数という区切りがあったのがよかった。上位層もセッションという内容もわかっていた。

思っていたよりもテスト管理者の負荷が高かったが、責務がハッキリしていてやりやすかった。

見つかったバグから、記述式テストのテスト設計に使う観点を追加することが出来たのは良かった。

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テスター/管理者の声

セッションシートで指示を受けることや、結果報告をするのが

やりやすかった。

テスターBさん

1日にやるのは3セッションが限界。4セッション以降は集中力が持続しない。

バグのほかに「気になったこと」を報告する欄が用意されているのがよかった。判断に悩む必要がなかったし、他のテスターの考え方を知ることができて勉強になった。

2時間やっても、まだ叩き足りない機能があった。そういう場合はセッションの追加をお願いした。

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振り返り

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• Session-based Test Managementの概念を利用したテスト管理手法を適用することで、探索的テストの利点を損なうことなく、テスト管理面の改善に寄与することがわかった。

• JSTQBのシラバスだけではなく、TPI NEXTのキーエリアとのマッピングなど、他の基準から評価していくことも検討したい。

• テストの完了条件については、現時点では実行可能セッション数を軸とした条件のみであり、テストの十分性や、リスクの低減度合いを評価できているわけではなく、課題が残っている。

まとめ

Keep

Problem

テスト管理のカテゴリ(JSTQB Foundation Levelシラバスより)

改善目標

テスト計画作業と見積もり

事前にリソース割り当てを計画できること。

作業量の見積もりができること。 テストの開始/終了基準が明確にできること。

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• 「どこまでテストをすれば十分か?」は永遠の課題それでも、探索的テストの完了条件と、その合意プロセスについて、継続してよりよい手法を検討したい。

今後に向けて

最後はみんなでモブテストをやってバグが見つからなければ終わり。とか?

クオリティゲートとして責任を持つ者が何セッションか確認をする。とか?

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