1 章幾何公差方式の基本
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1 章 幾何公差方式の基本
1.1 形 体
1.1.1 幾何形体
加工された機械部品の表面および、この表面から推定した穴や軸の軸線、溝
の中心面など、機械部品を構成する部分を総称して形体という。機械部品に幾
何公差方式を適用するときに、部品の各々の部分を特徴づけて種々の形体とい
う用語が使われる。
機械部品の内面(穴・溝の内面)を形成する形体を内側形体、外面(円筒軸
や直方体の外面)を形成する形体を外側形体という。
幾何公差を図示した対象である点、線・軸線、面・中心面などを公差付き形
体、および幾何公差を定めるための基準となる点、直線、平面をデータム形体
と呼ぶ。
機械部品の機能的な特徴を表現するとき、直線、平面、円、円筒であるよう
に指定した形体をそれぞれ、直線形体、平面形体、円形形体、円筒形体と呼ぶ
ことがある。
これらのいろいろな形体を総称して幾何形体と呼ぶこともある。
幾何公差方式を設計図面に適用するときに重要となるいくつかの幾何形体を
図 1.1に示す。それらの中の円形形体の中心、横断面と中心線、軸線と軸直線
およに中心面と中心平面について以下に解説する。
1.1.2 円形形体の中心
加工された円筒形体の任意の横断面に現れる円形形体が図 1.2に示すように
測定されたとする。この円形形体は、横断面の輪郭に沿って測定した座標値の
集合であってもよい。
図示されるように、円形形体が真円から狂って凸凹に測定されたとき、この
円形形体の中心を①最小二乗法による当てはめ近似円の中心、②最大内接円の
1.1 形 体
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中心、③最小外接円の中心、④最小領域法による内・外接円の中心(半径差を
最小にする同心の内接円・外接円の中心)、として求めることが定められている。
同様にして、直方体の長方形断面の中心も最大内接の幾何学的長方形、あるい
は最小外接の幾何学的長方形の中心として求められる。
図 1.1 機械部品の形体
軸線軸直線円筒面(円筒形体)
(直線形体)
円形形体
横断面の中心(a)円筒部品(外側形体)の場合
(平面形体)
中心平面中心面加工面
(b)溝部品(内側形体)の場合
対応する二点の中点
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1 章 幾何公差方式の基本
1.1.3 円筒形体の横断面と中心線
軸の円筒面(円筒面上の座標値の集合であってもよい)が、図 1.3に示すよ
うに曲がって測定されたとする。実測した円筒面に対して、最小二乗法による
当てはめ円筒(幾何学的円筒)を推定したとすると、その当てはめ円筒軸に直
交する断面が円筒形体の横断面である。また、円筒形体の任意の横断面に現れ
る円形形体の当てはめ円の中心を結んだ線が中心線である。また、角柱の中心
線も同様にして定められる。
図 1.2 円形形体の中心
加工された円筒面(円筒形体)
円形形体任意横断面
最小領域法の近似円(半径差を最小にする同心の内接円・外接円)
最大内接円
最小二乗法の近似円
最小外接円実測した円形形体
中心点
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1.1.4 円筒形体の軸線と軸直線
穴の円筒面(円筒面上の座標値の集合であってもよい)が、図 1.4に示すよ
うに曲がって測定されたとする。この実測した円筒面の最大内接円筒(幾何学
的円筒)を推定して、その円筒軸の任意な箇所の横断面に現れる円形形体の最
大内接円の中心を結んだ線が軸線である。また、軸の円筒面の場合には、実測
した円筒面の最小外接円筒軸の横断面に現れる円形形体の最小外接円の中心を
結ぶ線が軸線になる。直方体の内側(外側)形体の場合には、各横断面におけ
図 1.4 円筒形体の軸線・軸直線
最大内接円の中心軸直線最大内接円筒軸 実測した円筒面
軸線横断面の最大内接円最大内接円筒
図 1.3 円筒形体の横断面・中心線
横断面当てはめ円筒 当てはめ円筒軸
中心線 実測した円筒面当てはめ円の中心(横断面の中心)