arioso vol.4

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Page 1: ARIOSO vol.4

と違って。登山家とか山岳部の中塚大佑っ

て言われると、自分はなんか嫌ですね。尊

敬されるような肩書きも要らないです。僕

は好きなこと、自分がやりたいことをやっ

てて、それが偶然学長賞とかを頂けたりす

る。もらったことは素晴らしいんですけど、

やったことは大したことない。自分がやり

たいことをやっていただけですから。

ーお話を伺っていると、相当ストイックな

日々を送っているみたいですね。ちなみに

それ以外の時間は何をしているんですか?

 お酒を飲んだり、ふつーに大学生みたい

に日曜日に河原でバーベキューをしたりと

いうこともしていますよ。

 あと本を読むのも好きですね。普段体を

動かすことばっかりやってるので、オフの

時は動かしたくないんですよね。

 あとは自分の家が四ツ谷にあるんで結構

友達もきてくれて、鍋やったりとかたこ焼

きやったりとか。そういうのも自分の中で

はすごく大事で、これを失っちゃいけない

なと思いますね。やっぱり学生ですから。

人と接して人と何かを作るということを学

ぶ場だと思ってて。

 極端な人間になりたくないんですよ。中

塚ってどんな奴って聞かれて、アイツは山

だよって言われるよりも、アイツはなんで

もできるって言われる方が嬉しい。いろん

な風に自分を変化させたい。

僕の才能は崩すこと

ー自己実現というお話ですが、そういった

自分の夢を意識しだしたのはいつ頃ですか。

 実は登山が終わってからなんですね。帰っ

て来たら、山に登りたくなくなってた。あ

んなに毎日毎日山に登って山の事しか考え

てなかったのに何でだろうって思ったんで

すけど、ヒマラヤに行くことを目標と思っ

てて、あくまで山は手段だった、好きなわ

けじゃないなと自分で気付いたんですよ。

それからはそういう風に自己実現の手段と

して考えるようになりましたね。

ーそれはすごく意外ですね! そういった

理由で今はドラゴンボートなどをされてい

るんですか?

 正直ね、腰が重いんですよ。何かが出来

た人ってのは、それまでの出来たフィール

ドを崩すのを嫌がるんで。小説家もそうで、

作家さんの筋道っていうんですか、そうい

うのを崩すのを嫌がるじゃないですか。で

も僕はそれを崩そうと思っています。

 僕には、挑戦したり達成したり、新しい

ことを切り開く才能があるんじゃなくて、

自分が持ってる物を簡単に崩せる才能。こ

れがあるんじゃないかと自分では思ってま

すね。だから山というフィールドも簡単に

崩せますし、今まで築きあげてきた物も崩

せます。

ー今の夢はなんですか。

 夢っていうのは僕はもっと究極的なもの

だと思っているんですよね。もっと先に光っ

ていて、いくら頑張って近づいても、掴め

ないものだと思います。僕は夢という言葉

はね、人生の中で大事なんですよ。よく若

い人は夢というものを語るじゃないですか。

でも僕は「

その夢が叶った後はどうするの?

と思う。新たに夢が出てくるのかと。それ

だったら、それまでに達成した物は夢じゃ

ないよ、と僕は言いたいんです。夢って言

葉は僕の中ですごく重いんですよね(笑)

だからあんまり夢を語ると…

っていうか、

夢を叶えた人っていう扱いを受けたり、す

ごく夢ある人だねって言われたりするんで

すが、それはちょっとノーセンキューな感

じで(笑)

 究極的に、夢はあいまいなものだと思う

んですよ。「何々の達成!」とかでパッと終

わるものじゃなくて、終わっっても終わっ

たってわからないもの。たとえば書道家だっ

たら究極の書の完成とかね。それって終わ

りがないじゃないですか。登山家だったら

究極の美しいラインを描くとか。それは多

分自分が納得できないんじゃないかな。夢

には終わりがないと僕は思います。

飽くなき探究心で新世界を切り開く中塚大

佑さん―

人類未踏の世界へ次々に挑戦し

ていく彼の夢はいつまでも続く。