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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -1/25- AK310x アプリケーションノート June 1, 2020

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -1/25-

AK310x アプリケーションノート

June 1, 2020

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -2/25-

目次 0.1. AK310x 製品概要 ............................................................................................................... 3

1. 電流センサーの電気的特性について ............................................................................. 5 1.1. 電流感度 温度特性 .............................................................................................................. 5 1.2. 零電流電圧 温度特性 .......................................................................................................... 5 1.3. 総合精度温度特性 ................................................................................................................ 6 1.4. 電流分解能(出力ノイズ電圧) ............................................................................................. 7 1.5. 高周波電圧除去比 ................................................................................................................ 7 1.6. 一次導体抵抗温度特性 ......................................................................................................... 8 1.7. 一次導体抵抗 ばらつき .......................................................................................................... 8 1.8. 一次導体 インダクタンス .......................................................................................................... 8 1.9. 測定基板 ............................................................................................................................... 9 1.10. 応答時間 ............................................................................................................................ 9 1.11. 周波数特性 ....................................................................................................................... 10 1.12. dV/dt, dI/dt ..................................................................................................................... 11

2. 基板設計について ................................................................................................ 12 2.1. 外部回路接続例 .................................................................................................................. 12 2.2. 一次導体のレイアウト ............................................................................................................ 14 2.3 信号ラインのレイアウト ............................................................................................................. 16 2.4 基板熱設計 .......................................................................................................................... 18 2.5. 外乱磁場耐性 ..................................................................................................................... 20

3. ご使用上の注意 ................................................................................................. 22 3.1 電源電圧について .................................................................................................................. 22 3.2 初期の零電流電圧のキャリブレーション...................................................................................... 22 3.3 磁性部品の影響 .................................................................................................................... 22 3.4 発熱の影響について ............................................................................................................... 22 3.5 保管条件 .............................................................................................................................. 23 3.6 リフローによる電流感度・零電流電圧変動について .................................................................... 23 3.7 最大実効電流と出力不飽和範囲 ........................................................................................... 24 3.8 安全規格 .............................................................................................................................. 24 3.9 その他情報 ............................................................................................................................ 24

免責事項 ............................................................................................................. 25

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -3/25-

0. 概要

本資料は、旭化成エレクトロニクス株式会社製の電流センサーAK310x を適切にご使用いただくためのアプリケーションノートです。

本資料は下記の 3 章で構成されます。

1. 電流センサーの電気的特性について 2. 基板設計について 3. ご使用上の注意

図 1. 旭化成エレクトロニクス コアレス電流センサーブランド = Currentier

0.1. AK310x 製品概要 【製品名】 AK310x (x:1/2/3/H) 【概要】 超低ノイズコアレス電流センサー

【用途】 オーディオ用スピーカー、産業用モーター、 その他、微小な電流検出、絶縁設計が必要な用途に適しております。

【開発の背景】 サブウーハーなど口径の大きなスピーカーの音質改善のため、旭化成エレクトロニクスは、ボイスコイルの電流をフ

ィードバックし、ボイスコイルの動きを制御するシステム(Motion Feedback)に最適な、超低ノイズのコアレス電流センサーAK310X シリーズを開発しました。UL規格にも対応しているため、産業機器用モーターの制御にも最適です。

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -4/25-

1. 超低ノイズ 従来の電流センサーは、センサー自体のノイズが大きいのが問題でしたが、AK310X は超高感度の化合物ホール素子と LSI による信号処理でノイズを極限まで低減。コアレス電流センサーで世界 No.1 クラス*の-108dBm/√Hz の超低ノイズを実現しました。

*発売日時点の AKM 調べによります。 2. 超低インピーダンス 1.6mΩ の低インピーダンスで電流検知が可能なため、ダンピングファクターへの影響が少なく、Motional Feedback システムなどスピーカーに流れる電流検出に最適な電流センサーです。 3. 超小型、安全規格対応 超小型のコアレスパッケージを採用(D/W/H:7.6mm×7.9mm×1.15mm)。 IEC/UL60950,IEC/UL62368 および IEC/UL1577 を取得しており、AC モーター,汎用インバーターを はじめとした多くの産機用途にもご使用可能です。

表 1. AK310x シリーズ

製品名 出力不飽和 範囲(A)

電流感度 (mV/A)

出力ノイズ (dBm/√Hz)

電流感度 温度特性 (%)*1

零電流電圧 温度特性 (mV)*1

総合精度 (%F.S.)*2

応答速度 (μs)

AK3101 ±10.7 195 -102

±2.7

±1.6

1.5 (標準)

2 AK3102 ±21 100 -108 ±0.9

AK3103 ±35 60 -108 ±0.5

AK310H ±42 50 -108 ±0.4

*1 あるロットにおける実測結果(Ta=-40~90℃)の”平均値±1σ”の値で定義しています。

*2 標準値は、あるロットにおける実測結果(Ta=-40~90℃)の”平均値±1σ”の値で定義しています。

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -5/25-

1. 電流センサーの電気的特性について 1.1. 電流感度 温度特性

電流感度温度特性は環境温度(Ta)が 35°C から Ta1(−40°C ≤ Ta1 ≤ 90°C)に変化したときの電流感度(Vh [mV/A])の変化率と定義し、下式で計算されます。

あるロットにおける実測結果の”平均値”及び ”平均値±3σ”の値を示しています。

*電流感度の温度特性は、型番によらず 同じです*

図 2. 電流感度温度ドリフト 注)上記平均値(Ave)と、データシートの標準値は以下の通り定義が異なりますので、ご注意ください。 平均値=あるロットの実測結果の”平均値” 標準値=あるロットの実測結果の”平均値±1σ” 1.2. 零電流電圧 温度特性

零電流電圧温度特性は環境温度(Ta)が 35°C から Ta1(−40°C ≤ Ta1 ≤ 90°C)に変化したときの 零電流電圧(Vof [V])の変化量と定義し、下式で計算されます。

𝑉𝑉𝑜𝑜𝑜𝑜−𝑑𝑑 = 𝑉𝑉𝑜𝑜𝑜𝑜(𝑇𝑇𝑎𝑎 = 𝑇𝑇𝑎𝑎1) − 𝑉𝑉𝑜𝑜𝑜𝑜(𝑇𝑇𝑎𝑎 = 35°C) あるロットにおける実測結果の”平均値”及び”平均値±3σ”の値を示しています。

𝑉𝑉ℎ−𝑑𝑑 = 100 × �𝑉𝑉ℎ(𝑇𝑇𝑎𝑎 = 𝑇𝑇𝑎𝑎1)𝑉𝑉ℎ(𝑇𝑇𝑎𝑎 = 35℃)

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -6/25-

図 3. 零電流電圧温度特性 注)上記平均値(Ave)と、データシートの標準値は以下の通り定義が異なりますので、ご注意ください。 平均値=あるロットの実測結果の”平均値” 標準値=あるロットの実測結果の”平均値±1σ” 1.3. 総合精度温度特性

総合精度 Etotal は次式で計算されます。

𝐸𝐸𝑡𝑡𝑜𝑜𝑡𝑡𝑎𝑎𝑡𝑡 = 100 ×𝑉𝑉𝑒𝑒𝑒𝑒𝑒𝑒𝐹𝐹. 𝑆𝑆.

𝑉𝑉𝑒𝑒𝑒𝑒𝑒𝑒 = |𝑉𝑉ℎ−𝑚𝑚𝑒𝑒𝑎𝑎𝑚𝑚 − 𝑉𝑉ℎ| × |𝐼𝐼𝑁𝑁𝑁𝑁| + �𝑉𝑉𝑜𝑜𝑜𝑜−𝑑𝑑�+ |𝜌𝜌𝑚𝑚𝑒𝑒𝑎𝑎𝑚𝑚| × 𝐹𝐹. 𝑆𝑆. 𝑉𝑉ℎ−𝑚𝑚𝑒𝑒𝑎𝑎𝑚𝑚 :実測した電流感度[mV/A]

𝑉𝑉ℎ :電流感度標準値[mV/A] 𝑉𝑉𝑜𝑜𝑜𝑜−𝑑𝑑 :実測した零電流電圧温度特性[mV] 𝜌𝜌𝑚𝑚𝑒𝑒𝑎𝑎𝑚𝑚 :実測した非直線性[%F.S.]

図 4. 総合精度温度特性 あるロットにおける実測結果の”平均値”及び”平均値+3σ”の値を示しています。

注)上記平均値(Ave)と、データシートの標準値は以下の通り定義が異なりますので、ご注意ください。

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -7/25-

平均値=あるロットの実測結果の”平均値” 標準値=あるロットの実測結果の”平均値±1σ” 1.4. 電流分解能(出力ノイズ電圧)

電流分解能は出力ノイズ電圧により決まります。また、出力ノイズ電圧はフィルタにより低減することができ、 フィルタ特性により電流分解能を上げることが可能です。 表2.AK310xの電流分解能(フィルタ無 データシート標準値)

型番 感度

[mV/A] 出力不飽和 範囲 [A]

ノイズ[mVpp]

ノイズ[mVrms]

ノイズ[mArms]

ENOB [Bits]

AK3101 195 ±10.7 4.6 0.70 3.6 10.7 AK3102 100 ±21 2.3 0.35 3.5 11.8 AK3103 60 ±35 2.3 0.35 5.8 11.8 AK310H 50 ±42 2.3 0.35 7.0 11.8

図 5.外部接続回路例 (a) バイパスコンデンサ(1.0μF)をAK310x のVDD、VSS 端子のできるだけ近くに配置してください。 (b) 必要に応じて VOUT にローパスフィルタを挿入してください。R1,C1 の定数は、時定数と負荷条件を考慮して設定してください。 1.5. 高周波電圧除去比 被測定電流路に高周波のサイン波の電圧ノイズを入力し、センサー出力を測定することにより一次導体のノイ

ズ除去比が求められます。表 3 のように、AK310x シリーズは高い電圧ノイズ除去比を備えています。また、図 6に電圧ノイズ除去比の周波数特性を示しました。

表 3. 高周波のサイン波(20Vpp)入力時の電圧ノイズ除去比 Frequency (MHz) VOUT (mVpp) Noise Rejection (dB)

5 7.2 -68.7 10 8.4 -67.4 15 22.1 -59.0 20 28.1 -57.0

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -8/25-

図 6. AK310x ノイズ周波数に対する電圧ノイズ除去比 1.6. 一次導体抵抗温度特性 AK310x の一次導体抵抗は図 7 のような温度特性を持ちます。(参考値)

図 7. AK310xの一次導体抵抗の温度特性(25℃基準) 1.7. 一次導体抵抗 ばらつき AK310x の一次導体抵抗は 25℃にて、1.2~2.1mΩ(参考値)なります。

1.8. 一次導体 インダクタンス AK310x の一次導体のインダクタンスは 25℃にて、約 2.7nH(参考値)となります。

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -9/25-

1.9. 測定基板

「3.4 発熱の影響について」のディレーティングカーブ測定時に使用した測定基板を図8に示します。 また、基板条件を表 4 に示します。

表 4.測定基板条件

ボードサイズ 43.1mm×46.9mm 層数 2 層 銅箔厚 各層 70μm 基板厚 1.6mm

・表面(1 層目) ・裏面(2 層目)

図 8. AK310x 測定基板 1.10. 応答時間

応答時間は TYP 2μs です。(負荷容量 100pF の場合) 図 9 は AK310x の代表的なパルス応答波形の実力値です。 (図 9 左:立上り応答、図 9 右:立下り応答) 型番:AK3101 Vh=195mV/A 入力=10A 立上り・立下り応答時間=~2.0μs

図 9.立上り応答波形 立下り応答波形

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -10/25-

1.11. 周波数特性 AK310X の代表的な周波数特性を図 10 に示します。

(a)ゲイン特性

(b)位相特性 図 10.周波数特性 (a)ゲイン特性 (b)位相特性

-21

-18

-15

-12

-9

-6

-3

0

3

100 1K 10K 100K 1M

Gai

n [d

B]

Frequency[Hz]

-180

-150

-120

-90

-60

-30

0

30

100 1K 10K 100K 1M

Phas

e[de

g]

Frequency[Hz]

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -11/25-

1.12. dV/dt, dI/dt AK310x の一次導体に、立上り時間 1μs で 1kV を印加した際のセンサー出力電圧(VOUT)の dV/dt ノイズ

を図 11 に示します。収束時間は 3μs 程度です。取り込みタイミングを調整してノイズを避け、収束した時点の電圧値を取り込んでください。 黄 : 電圧入力波形(1000V/μs) 緑 : 出力電圧波形 (VOUT) 図 11. dV/dt ノイズ波形(左:立上り波形 右:立下り波形) AK310x の一次導体に、パルス幅 1μs で 10A を印加した際のセンサー出力電圧(VOUT)を図 12 に示します。

3μs 程度の遅延で追従します。 黄:入力電流波形 緑:AK310x 出力電圧波形

図 12. dI/dt ノイズ波形

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -12/25-

2. 基板設計について

図13. 本項におけるボードレイアウト名 2.1. 外部回路接続例 AK310xをご使用になる際の外部回路接続例として、例1~例3を紹介します。本例はあくまで例ですので、本回路例以外でもご使用いただくことは可能です。外部接続回路に関しましては、お客様基板にて十分にご検討いただきますようお願いいたします。 例1)後段に5V系のA/Dコンバーターを接続する場合 例2)後段に3.3V系のA/Dコンバーターを接続する場合 例3)後段に増幅器を置き、”VOUT”の電圧の基準値を変更、もしくは電流感度を変更する場合 例1) AK310x+ADC(5V)

図 14. 外部接続回路例 1

(a) バイパスコンデンサ 1.0μF を AK310x の VDD、VSS 端子のできるだけ近くに配置してください。

(b) 必要に応じてVOUTにローパスフィルタを挿入してください。R1、C1の定数は応答速度を考慮して設定してください。

2. 信号ライン

AK310x 1. 一次導体ライン

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -13/25-

例2) AK310x+ADC(3V)

図 15. 外部接続回路例 2

(a) バイパスコンデンサ 1.0μF を AK310x の VDD、VSS 端子のできるだけ近くに配置してください。

(b) 必要に応じてVOUTにローパスフィルタを挿入してください。R1,R2,C1,の定数は、応答速度及び負荷条件を考慮して設定してください。 例3) AK310x+増幅器

図 16. 外部接続回路例 3

(a) バイパスコンデンサ 1.0μF を AK310x の VDD、VSS 端子のできるだけ近くに配置してください。

(b) R1とR2はゲインを構成する抵抗です。R0の定数は負荷条件を考慮して設定してください。R1とR2の定数はゲインを考慮して設定してください。

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -14/25-

2.2. 一次導体のレイアウト 2.2.1. 一次導体パターンの幅と長さについて

AK310x に電流を流す一次導体のパターンは、電流印加による過熱を防ぐために、なるべくパターン幅を広く、パターン長さを短くして抵抗値を低くして下さい。 一次導体側のランドパターンは図 17 及び表 5 を参考にしてください。

図 17. AK310x推奨ランドパターン

表 5. AK310x 推奨ランドパターン寸法

Unit:mm

L 1.42

E 7.62

W1 3.60

W2 0.35

C 0.30

P 0.65

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -15/25-

2.2.2. 電流経路パターンの引き方について 一次導体のパターンは、図 18a に示すように左右に直線状に伸ばすことを推奨します。もし基板レイアウトの

制約で左右にパターンを伸ばすことができない場合は、図 18b に示すように信号ライン側とは反対側にパターンを伸ばしてください。なお、この 2 通りの一次導体のパターンでは、最大で約 1%の電流感度の差が存在します。電流感度の精度を必要とされる場合は、上記の差を考慮して電流感度の評価を行った上でご使用下さい。

なお、図 18c のように信号ライン側にパターンを伸ばした場合は、2.3.4 章に示す信号ライン側との絶縁耐圧の観点から推奨しません。さらに、2.5 章に示す外乱磁場影響により出力が変動しますので、推奨しません。電流経路を引かれる際には、十分に確認をしてください。

図 18. AK310xの一次導体パターンの引き方 2.2.3. 一次電流の方向

適切な出力を得るためには、一次導体パターンに流す電流の向きを考慮する必要があります。 通常の製品ラインナップにおいては、図 19 のような配置において電流が右から左に流れる場合にAK310x の出力は減少し、電流が左から右に流れる場合に AK310x の出力は増加します。

図 19. AK310xの一次電流方向と出力との関係

(a) 直線状(推奨) (b) 信号ラインの逆側(推奨) (c) 信号ライン側(非推奨)

(a) VOUT < 1/2 * VDD (b) VOUT > 1/2 * VDD

AK310x AK310x AK310x

AK310x AK310x

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -16/25-

2.3 信号ラインのレイアウト AK310x の信号ライン側の名称は下記の通りです。

図 20. AK310x ピン配置

表 6. ピン機能説明 Pin No.

ピン名 I/O タイプ 機能

1 VSS1 GND - センサーGND (0V) 2 VSS1 GND - センサーGND (0V) 3 N.C. - - N.C.ピン、GND 接続推奨 4 TEST1 - - テストピン、GND 接続推奨 5 VDD1 I PWR センサー電源、5.0V 印加 6 VDD2 I PWR センサー電源、5.0V 印加 7 TEST2 - - テストピン、GND 接続推奨 8 VOUT O Analog センサー出力 9 TEST3 - - テストピン、GND 接続推奨 10 N.C. - - N.C.ピン、GND 接続推奨 11 VSS2 GND - センサーGND (0V) 12 VSS2 GND - センサーGND (0V) 13 IN I - 被測定電流路端子(-) 14 IP I - 被測定電流路端子(+)

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -17/25-

2.3.1. 信号ラインの幅と長さについて 電気的な外乱ノイズの影響を防ぐため、VDD、VOUT ピンの信号ラインの幅は広く、長さを短くすることを推奨し

ます。 2.3.2. ノイズフィルタについて

電源ラインに重畳するノイズを低減するため、VDD-VSS ピン間には 1.0µF のバイパスコンデンサをできるだけVDD、VSS ピンの近くに挿入することを推奨します。また、さらに容量の大きい電解コンデンサを並行に挿入することで、瞬時の電源電圧降下への対策となります。

出力ラインに大きなノイズが重畳される場合は、VOUT ピンの信号ライン上にローパスフィルタを挿入することで改善する可能性があります。ローパスフィルタを使用される場合は、ご所望の応答速度を満たすことができるように時定数を考慮してローパスフィルタを選定下さい。 2.3.3. GND への接続について

通常のインバーター基板においては、ノイズ等による MCU の誤動作を防ぐためにパワー系と信号系の GND は電気的に分離されています。AK310x の VSS は信号系の GND に接続してください。 2.3.4. 絶縁設計について

AK310x のパッケージは、一次導体と信号ピンとの間に 5mm 以上の十分な沿面距離・空間距離を有する設計となっています。表 7 に Working Voltage を示します。

*パッケージ樹脂の比較トラッキング指数(CTI)は 600V、絶縁材料グループは”Ⅰ”です。 AK310x の絶縁耐圧特性を生かすためには、基板上の一次導体パターンと、信号ラインのパターンとの間に

も十分な距離を有するようにレイアウトしてください。設計するシステムに対して個別に規格が定められている場合は、規格の要求に従って沿面距離・空間距離を設けてください。 沿面距離が足らない場合、図 21 に示すように、基板にスロットを開けることで、沿面距離 5mm 以上に増やすことが出来ます。

表 7. Working Voltage Working Voltage

Pollution Degree 1 2 3

Basic Isolation

1450 1000 400 (Vrms)

Reinforced Isolation

825 500 200

図 21. 沿面距離を確保する基板レイアウト例

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -18/25-

2.4 基板熱設計 2.4.1. 基板熱設計

AK310x は 20Arms 連続通電可能であり、過渡的にはさらに大きな電流も通電可能です。被測定電流による発熱によって、Tc=130℃を超えないようにしてください。パッケージケース温度 Tc の測定位置は、図 22 を参考にしてください。。

図 22. パッケージケース温度測定位置 2.4.2. 基板熱設計(Tj 推定方法)

一次導体のリードフレーム温度とセンサー温度が近い値となりますので、一次導体のリードフレーム温度で Tj を推定する事が可能です。 2.4.3. 放熱性改善

放熱性に課題が残る場合、一次導体のパッド部に”パッド・オン・ビア”を設ける事で、放熱性を改善することが可能です。配線のスペースを広げることなく、被測定電流を基板の内層から外層、そして電流センサーの1次導体につなぐことが可能となり、発熱の低減が期待されます。 2.4.4. (参考)発熱測定

図 8. ディレーティングカーブ測定基板を用いて、AK310x のケース温度を測定した結果を図 23,24 に示します。本結果は、あくまで図8の基板を用いた結果であり、基板レイアウトや放熱性に大きく影響を受けるものです。ご使用となる環境でのご確認をお願いいたします。 測定条件 温度:室温(25℃付近) ケース温度測定位置:図 22 参照 最大動作温度 :Tc<130℃ 基板に接続する配線の太さは、電流量の規格に伴い、下記の太さを使用しています。 14sq ,AWG5.8 ,直径 4.2mm

パッケージケース温度

Tc測定位置

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -19/25-

図 23. 左:10~35A 右:42A印加時のAK310x ケース温度

図 24. 60A印加時の AK310x ケース温度

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -20/25-

2.5. 外乱磁場耐性 AK310x は一次導体に流れる電流によって発生する磁束密度を検出することで、電流検出を行うセンサ

ーです。そのため、外部磁界の影響を受けます。このセクションでは他の電流ラインから受ける影響について説明します。

図 25 は電流ラインの方向と距離を定義しており、距離 A は電流ラインが紙面左右方向に伸びている時の電流ラインとリードフレーム端との距離を、距離Bは電流ラインが紙面上下方向に伸びている時の電流ラインとモールド端との距離で定義します。

この時、距離 A および距離 B と出力の誤差との関係は図 26 のようになります。グラフ中の凡例は他の電流ラインに流れる電流値を示しています。

例えば、他の電流ラインに 20A の電流が流れており、それによる誤差を 400mA 以内に抑えたい場合、距離 A で 6mm 以上、距離 B で 5mm 以上の距離だけ離す必要があります。

*図 25 では、距離 B はパッケージに対して左側の電流ラインで定義していますが、パッケージに対して右側の電流ラインを引いても、外乱磁場の影響は同等に受けます。

図 25. 他の電流ラインとの距離の定義

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -21/25-

(a) 距離 A の場合

(b) 距離 B の場合 図 26. 他の電流ラインからの距離と出力誤差との関係

0

100

200

300

400

500

600

700

800

0 10 20 30 40

出力誤差

(mA)

距離A(mm)

20A

15A

10A

5A

他の電流ラインに流れる電流値

0

100

200

300

400

500

600

700

800

0 10 20 30 40

出力誤差

(mA)

距離B(mm)

20A

15A

10A

5A

他の電流ラインに流れる電流値

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AK310x アプリケーションノート (rev.1) -22/25-

3. ご使用上の注意 3.1 電源電圧について

AK310x はレシオメトリック出力を有します。レシオメトリック出力とは、センサー出力が電源電圧に比例して変動する特性の事です。AK310x の出力を A/D コンバーターを用いてデジタル変換するようなシステム構成の場合に、A/D コンバーターのリファレンス電圧の変動によって発生するリファレンス誤差を低減することが可能です。

A/D コンバーターが 5V 系の場合の推奨回路を図 14、A/D コンバーターが 3.3V 系の場合の推奨回路を図 15 に示しております。AK310x の電源電圧と、A/D コンバーターのリファレンス電圧が同じ比率で変動することで、電源電圧の変動による影響を避けることが出来、A/D 変換後の出力自体は変動しません。 レシオメトリック出力の例として、図 27 に AK3103(電流感度 Vh=60mV/A)における出力特性を示します。

図 27. AK3103(60mV/A)における出力特性 (レシオメトリック) 3.2 初期の零電流電圧のキャリブレーション

AK310x は、データシートの「14.信頼性試験項目」の合否判定基準に記載している値内で零電流電圧が変動する可能性があります。そのため、零電流電圧の測定精度向上のため、電流センサーをご使用になるシステムのパワーアップ時など、計測電流が 0A の状態で、ソフトウェアを用いた零電流電圧のキャリブレーションを実施いただく事を推奨しています。 3.3 磁性部品の影響

AK310x はメカニカルリレー、トランスなど、他の磁性部品が近くに存在する場合には影響を受ける可能性があります。レイアウトの都合上磁性部品を近くに置かざるを得ない場合は、電流感度など特性に影響をない事をご確認の上、ご使用ください。

3.4 発熱の影響について

AK310xは図 28に示すディレーティングカーブ内の条件で使用する必要があります。IPMやIGBTなど、発熱の大きい素子を AK310xの近くに置く必要がある場合は、発熱の影響によりAK310xの周囲温度がディレーティング条件を超えないように確認を行って下さい。 なお、図 28のディレーティングカーブは弊社提供の評価基板を用いて測定した結果です。基

板サイズや放熱フィンのレイアウト、冷却などによりディレーティングカーブを改善することは可能です。

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図 28. AK310xのディレーティングカーブ 3.5 保管条件 AK310x は、MSL2a(JEDEC J-STD-020)となります。下記の条件で保管してください。 保管期間 :納入後合計 1 年以内(防湿梱包開梱前+開梱後) 防湿梱包開梱前 :5~40% 90%RH 未満 防湿梱包開梱後 :5~30℃ 60%RH 以下、フロアライフ 4 週間以内 3.6 リフローによる電流感度・零電流電圧変動について

AK310x は、リフローにより電流感度および零電流電圧が変動します。仕様書の、「9.電気的特性」に記載の値は、弊社での量産検査時のばらつきを示し、実際にはリフロープロセスのみでも、「14.信頼性試験項目」の合否判定基準に記載している値内で変動する可能性があります。 零電流電圧の変動に関しては、本資料の「3.2 初期の零電流電圧のキャリブレーション」に記載の通り、キャリブレーションを実施していただく事を推奨します。 リフローを行う場合は、表 8、図 29 に示した温度プロファイル以下の条件での処理をお勧めします。リフロー回数は3回以下でお願いします。

表 8.リフロー温度条件

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図 26. ハンダリフロー条件 3.7 最大実効電流と出力不飽和範囲

最大実効電流は電流センサーに長時間通電可能な電流値を示し、一次導体の断面積に依存する値です。DC 電流、もしくは AC 電流の実効値が最大実効電流を上回る状態で電流センサーを長時間使用しますと破損します。パルス電流であれば、最大実効電流を上回る電流も通電することが可能です。

出力不飽和範囲は電流センサーの出力の直線性が保証される電流範囲になります。電流値が出力飽和範囲を超えた場合には出力は飽和しますが、電流値が出力飽和範囲内に戻ると正常な出力に戻ります。 3.8 安全規格

AK310x は国際認証機関による IEC/UL-60950 の認証を取得しています。 ・IEC/UL 60950-1 – Information Technology Equipment – Edition 2. (File No.E359197) ・CSA C22.2 NO. 60950-1-07 – Information Technology Equipment – Edition 2. (File No. E359197) ・UL1577 -Optical Isolators-Edition 5.(File No. E499004) ・IEC/UL62368-1 -Audio/video, Information and Communication Technology Equipment- 2nd Ed,(File No.E359197)

・CAN/CSA C22.2 No.62368-1-14 -Audio/video, Information and Communication Technology Equipment- 2nd Ed,(File No.E359197)

3.9 その他情報 データシート・セレクションガイドなど、最新情報は弊社 HP を参照してください。 http://www.akm.com/jp/ja

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