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1 (別紙1) 1.マイナス値の取り扱い PM2.5 自動測定機はその測定原理による誤差要因等によりマイナスの 1 時間値が出力されることが あるが、これを強制的にゼロとして処理した上で 24 時間値を算出すると 24 時間値にプラスの偏りを 持たせることになり、正確でなくなる。そのため環境大気常時監視マニュアルにおいてもマイナス値 で取り扱うことが明記されている。 多くの自治体は原則としてマイナスのまま処理しているが、複数の自治体では一定の値以下のマイ ナス値を欠測として処理しており、しかも自治体間でその値が異なったり、装置により変えたりして いる。その結果、日平均値を過大評価するほか、値を直接比較する際には不都合を生じている。 そこで、マイナス値の取り扱いを次のように定めることとする。 原則としてマイナスの測定値はこれまでどおりそのまま取り扱うこととする。 しかし、自動測定機の誤差範囲を外れて、何らかの不具合等により突発的にマイナス値が出現する ことがある。この場合は自動測定機に異常がないことを確認し、これまでの測定値の分布をみた上で 欠測とする。 PM2.5 濃度が低いために負の値が出ていると考えられる場合の欠測とする目安は 1 時間値の空試験 の標準偏差の 3 倍とする(1 時間値の空試験の標準偏差が 3 μg/m 3 場合、約-10 μg/m 3 となる)。 なお、1 時間値の空試験の標準偏差の 3 倍以下の負の測定値以下の測定値 1 日に 4 時間以上出る 測定機は正常な測定ができていないことを疑い、点検や調整をすることも必要である。 参考として自動測定機と標準測定法との並行試験時のデータを用いた検証結果を技術資料1に示す。 2.空試験の運用方法 自動測定機の性能を評価、確認するために空試験を実施することを推奨する。これまで空試験の運 用方法は大気汚染常時監視マニュアルにて「試料導入口より清浄空気を導入し、濃度測定データを 15 個以上測定する。」とされていたが、その測定値の評価は「平均値が機器付属の取扱説明書に記載され ている空試験における誤差の範囲を超えないこと」とされており、統一されていなかった。また本来、 自動測定機は日平均値が 2 μg/m 3 を測定できることが必要とされており、空試験をすることにより自 動測定機の検出限界を評価することができる。検出限界は空試験の標準偏差の 3 倍と考えることがで きるため、1 時間値の空試験に加えて、日平均値の空試験を行うことで自動測定機に求められた検出 限界を確認することが可能となる。 そこで空試験の運用方法を次のように定めることとする。 試料導入口にヘパフィルタ等を取り付け除粒子空気を導入し、空試験を行う。空試験を行う条件は 設置環境(屋外設置であれば屋外で実施する)とする。 1 時間値の空試験は 24 個の測定データを取得し、その平均値が±2 μg/m 3 、標準偏差が 3 μg/m 3 以下 であることを確認する。環境基準達成の評価に関わるモニタリングには、日平均の空試験の条件を満 たすことが望まれる。1 時間値の空試験の条件を満たさない装置については、1 時間値の誤差が大き いと考えられるため、その利用に注意が必要である。 日平均値の空試験は 1 時間値を連続 24 個取得する空試験を 57 回程度行い、各 24 時間平均値の 平均値が±2 μg/m 3 、標準偏差が 0.6 μg/m 3 以下であることを確認する。なお、同時期に日平均値の空

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1

(別紙1)

1.マイナス値の取り扱い

PM2.5 自動測定機はその測定原理による誤差要因等によりマイナスの 1 時間値が出力されることが

あるが、これを強制的にゼロとして処理した上で 24 時間値を算出すると 24 時間値にプラスの偏りを

持たせることになり、正確でなくなる。そのため環境大気常時監視マニュアルにおいてもマイナス値

で取り扱うことが明記されている。 多くの自治体は原則としてマイナスのまま処理しているが、複数の自治体では一定の値以下のマイ

ナス値を欠測として処理しており、しかも自治体間でその値が異なったり、装置により変えたりして

いる。その結果、日平均値を過大評価するほか、値を直接比較する際には不都合を生じている。 そこで、マイナス値の取り扱いを次のように定めることとする。 原則としてマイナスの測定値はこれまでどおりそのまま取り扱うこととする。 しかし、自動測定機の誤差範囲を外れて、何らかの不具合等により突発的にマイナス値が出現する

ことがある。この場合は自動測定機に異常がないことを確認し、これまでの測定値の分布をみた上で

欠測とする。 PM2.5 濃度が低いために負の値が出ていると考えられる場合の欠測とする目安は 1 時間値の空試験

の標準偏差の 3 倍とする(1 時間値の空試験の標準偏差が 3 μg/m3場合、約-10 μg/m3

となる)。 なお、1 時間値の空試験の標準偏差の 3 倍以下の負の測定値以下の測定値 が 1 日に 4 時間以上出る

測定機は正常な測定ができていないことを疑い、点検や調整をすることも必要である。 参考として自動測定機と標準測定法との並行試験時のデータを用いた検証結果を技術資料1に示す。 2.空試験の運用方法

自動測定機の性能を評価、確認するために空試験を実施することを推奨する。これまで空試験の運

用方法は大気汚染常時監視マニュアルにて「試料導入口より清浄空気を導入し、濃度測定データを 15個以上測定する。」とされていたが、その測定値の評価は「平均値が機器付属の取扱説明書に記載され

ている空試験における誤差の範囲を超えないこと」とされており、統一されていなかった。また本来、

自動測定機は日平均値が 2 μg/m3を測定できることが必要とされており、空試験をすることにより自

動測定機の検出限界を評価することができる。検出限界は空試験の標準偏差の 3 倍と考えることがで

きるため、1 時間値の空試験に加えて、日平均値の空試験を行うことで自動測定機に求められた検出

限界を確認することが可能となる。 そこで空試験の運用方法を次のように定めることとする。 試料導入口にヘパフィルタ等を取り付け除粒子空気を導入し、空試験を行う。空試験を行う条件は

設置環境(屋外設置であれば屋外で実施する)とする。 1 時間値の空試験は 24 個の測定データを取得し、その平均値が±2 μg/m3

、標準偏差が 3 μg/m3以下

であることを確認する。環境基準達成の評価に関わるモニタリングには、日平均の空試験の条件を満

たすことが望まれる。1 時間値の空試験の条件を満たさない装置については、1 時間値の誤差が大き

いと考えられるため、その利用に注意が必要である。 日平均値の空試験は 1 時間値を連続 24 個取得する空試験を 5~7 回程度行い、各 24 時間平均値の

平均値が±2 μg/m3、標準偏差が 0.6 μg/m3

以下であることを確認する。なお、同時期に日平均値の空

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2

試験を連続して行うことで欠測期間が集中することを避けるために、数か月の間隔を置いて実施して

もよい。 これを超えて変動している場合は点検、調整した後に再度、実施すること。

参考として 1 時間値と日平均値の空試験の検証結果を技術資料2に示す。ただし、この検証結果は冬

季の検証試験で得られた値であるため、今後、夏季にも試験を実施してその結果を公表する予定であ

る。

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3

(技術資料1)

マイナス値の取り扱い

標準測定法との等価性が確認された自動測定機は、マイナス値を棄却した場合に日平均値にプラス

の偏りを持たせることとなり正確でなくなる。そこで適正な処理方法を検討するため、棄却データ数

が日平均値に与える影響を検証した。 1.1. 解析対象としたデータ

解析対象は過去に都市部(川崎市川崎区)、郊外(新潟市西区)で実施した自動測定機と標準測定法

の並行試験データである。それぞれ測定期間と測定対象機種は次の通り。

表 1-1 解析対象の自動測定機の測定期間 川崎 新潟 冬季 2015/11/5 1:00 - 2016/2/8 10:00 2015/11/5 1:00 - 2016/2/4 9:00 夏季 2016/7/19 12:00 - 2016/10/14 14:00 2016/7/17 1:00 - 2016/10/13 14:00

1.2. 評価対象自動測定機

PM-712(紀本電子工業) FPM-377B(東亜ディーケーケー) FH62C14(Thermo Fischer Scientific) SHARP 5030(Thermo Fischer Scientific)

いずれも標準測定法(FRM2000 で PTFE フィルタに 12 時~翌 11 時の 23 時間捕集)による測定値があ

る。 1.3. 測定結果の概要 表 1-2 に測定結果の概要を示す。

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4

表 1-2 都市部及び郊外における並行試験の概要

冬季試験 都市部 郊外

n 最大値 (μg/m3)

最小値 (μg/m3)

平均値 (μg/m3)

標準偏差 (μg/m3)

空試験の 標準偏差 (μg/m3)

n 最大値 (μg/m3)

最小値 (μg/m3)

平均値 (μg/m3)

標準偏差 (μg/m3)

空試験の 標準偏差 (μg/m3)

PM-712 2281 76.2 -1.6 14.1 10.1 1.2 2181 38.2 -0.4 9.6 5.6 1.1 FPM-377B 2280 76.3 -4.4 11.5 9.4 2.3 2193 33.1 -4.6 7.0 5.4 2.9 FH62C14 1676 53.5 -76.0 12.0 10.3 4.6 2189 111.0 -38.5 8.1 9.1 3.4 SHARP 5030 2134 120.0 -10.3 12.1 12.7 3.3 1941 50.5 -25.1 6.8 7.7 5.1 標準測定法 33 49.1 2.7 15.8 10.2 - 16 12.0 4.7 8.4 2.6 -

夏季試験 都市部 郊外

n 最大値 (μg/m3)

最小値 (μg/m3)

平均値 (μg/m3)

標準偏差 (μg/m3)

空試験の 標準偏差 (μg/m3)

n 最大値 (μg/m3)

最小値 (μg/m3)

平均値 (μg/m3)

標準偏差 (μg/m3)

空試験の 標準偏差 (μg/m3)

PM-712 2080 37.1 -2.0 9.5 6.0 1.2 2117 37.2 -5.3 7.2 4.8 2.5 FPM-377B 2080 36.0 -6.8 9.3 5.7 2.3 2117 63.3 -5.4 7.6 5.1 2.7 FH62C14 2076 95.0 -103.5 10.3 23.2 9.0 2113 122.5 -64.5 8.2 26.3 24.4 SHARP 5030 2076 57.9 0.5 10.0 9.7 5.4 2112 66.1 0.5 9.4 10.4 0.6 標準測定法 45 21.2 2.2 8.2 3.9 - 44 15.3 1.4 6.1 3.2 -

注)標準測定法は日平均値のデータ数、最大、最小、平均及び標準偏差

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0

1.4. 評価方法 PM2.5 自動測定機は、その測定原理による誤差要因等のためマイナス値を出力することが

あるが、その処理方法の考え方としてゼロ付近の濃度を測定したときのばらつきが参考に

なる。そこで空試験の標準偏差の 1 倍(以下、1 σ)、2 倍(以下、2 σ)及び 3 倍(以下、3 σ)をマイナス値の下限としてマイナス値の棄却をした際の棄却データ数と日平均値を調べ

た。検証には機種別、季節別に実測した空試験値を用いた。なお、マイナス値の処理方法と

して自治体が採用している事例が多い-10 µg/m3以下についても同様の処理を行った。

図 1-1 マイナス値の処理方法と棄却データ数の関係

郊外

・冬

都市

部・夏

郊外

・夏

PM-712 FPM-377B FH62C14 SHARP 5030

都市

部・冬

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10棄

却デ

ータ

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数 131

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

330 179 99305

110

1001000

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

12916

386

110

1001000

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

020406080

100

1 σ 2 σ 3 σ < -10

棄却

デー

タ数

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1

図 1-2 マイナス値の処理方法と期間平均値の関係

1.5. 評価結果 棄却される数値が多いのは FH62C14 で、空試験の 1 σ では 47 データ(都市部・冬季、全

体の 3%)~330 データ(都市部・夏季、全体の 16%)が棄却された。3 σ では棄却データ数

は減少するが都市部・夏季のように 99 データ(全体の 5%)が棄却される例もみられた。

SHARP 5030 は調査時期により結果が異なるが、3 σ でも 1%程度のデータが棄却される例

(郊外・冬)もみられた。PM-712 及び FPM-377C は 3 σ で棄却されるデータはみられなか

った。 次に棄却パターンが期間平均値へ与える影響をみると、マイナス値を棄却するデータ数

が多いほど棄却前よりも平均値が上昇する。このような場合、測定期間の最小値が 3 σ より

もかなり小さいため、棄却する際には全体の分布もみて判断する必要がある。また、-10 µg/m3

以下で棄却することは、空試験の標準偏差が 3 µg/m3より大きい場合に平均値をかなり過大

に評価することになるため、適切とはいえない。

PM-712 FPM-377B

郊外

・夏

FH62C14 SHARP 5030

都市

部・冬

郊外

・冬

都市

部・夏

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )5

101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

57911131517

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

5101520

棄却

前 1 σ 2 σ 3 σ < -10

期間

平均

値(μg

/m3 )

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2

(技術資料2) 空試験結果

2.1. 空試験値の変動 1 時間値の変動幅は FH62C14 が最も大きく、±10 μg/m3

の範囲であるのに対し、SHARP 5030 は 0~1 μg/m3

であった。測定期間(5~8 日間)の日内変動をみると周期的に変化してい

る様子がうかがえる。もっとも顕著なのは FH62C14 であり、13 時にピークとなる。また

FPM-377C や PM-712 も特異的に高い濃度が出現する時刻が見られた。さらに SHARP 5030は変動幅が小さいものの、14~16 時に指示値が低下する傾向が見られた。

図 2-1 空試験値の経時変化と日内変動

フィルタチェンジは12時

-100

10

12/14

12/15

12/15

12/16

12/16

12/17

12/17

12/18

12/18

12/19

12/19

12/20

12/20

12/21Con

c. (μg/m

3 )

測定日

FPM-377C

-10

0

10

12/14

12/15

12/15

12/16

12/16

12/17

12/17

12/18

12/18

12/19

12/19

12/20

12/20

12/21Con

c. (μg/m

3 )

測定日

FH62C14

-10

0

10

12/28

12/29

12/29

12/30

12/30

12/31

12/31 1/1 1/1 1/2 1/2Con

c. (μg/m

3 )

測定日

SHARP 5030

-10

0

10

12/5

12/6

12/6

12/7

12/7

12/8

12/8

12/9

12/9

12/10

12/10

12/11

12/11

12/12

12/12

12/13Con

c. (μg/m

3 )

測定日

PM-712

-100

10

1時 4時 7 時 10時 13時 16 時 19時 22時Conc. (μ

g/m3 )

時刻

FPM-377C

-10

0

101時 4時 7 時 10時 13時 16 時 19時 22時Con

c. (μg/m

3 )

時刻

FH62C14

-10

0

10

1時 4時 7 時 10時 13時 16 時 19時 22時Conc. (μ

g/m3 )

時刻

SHARP 5030

-10

0

10

1時 4時 7 時 10時 13時 16 時 19時 22時Conc. (μ

g/m3 )

時刻

PM-712

-20-10

01020

1 時 4時 7 時 10時 13時 16 時 19 時 22時

湿度

差(%)

時刻

前の時刻との湿度差

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3

2.2. 1時間値の空試験の実際 1時間値の空試験の結果、FPM-377C がややマイナス側、FH62C14 がプラス側に偏ってい

た。そのほかの機種は平均値が± 1 μg/m3以内であった。標準偏差は最も小さい SHARP 5030

が 0.45、最も大きな FH62C14 が 6.9 であった。

表 2-1 空試験結果(1 時間値) FPM-377C FH62C14 SHARP

5030 PM-712 データ数 168 168 128 191 最大値 (μg/m3) 3.6 60.1 1.3 4.6 最小値 (μg/m3) -7.0 -11.6 -0.3 -4.2 平均値 (μg/m3) -1.82 1.06 0.63 0.36 標準偏差 (μg/m3, σ) 1.74 6.97 0.46 1.37 検出下限値 (μg/m3, 3 σ) 5.23 20.91 1.38 4.11

日平均値の空試験結果、標準偏差は最も小さい FPM-377C が 0.21、最も大きな FH62C14

が 1.6 であった。標準偏差の 3 倍から求めた日平均値の検出下限値は 0.65~4.9 μg/m3であっ

た。この結果から、自動測定機に求められる測定濃度範囲(2~200 μg/m3)を満たせていな

い機種も存在した。 表 2-2 日平均値の空試験結果

FPM-377C FH62C14 SHARP 5030 PM-712

データ数 7 7 5 8 最大値 (μg/m3) -1.6 4.5 1.0 0.9 最小値 (μg/m3) -2.2 -0.7 0.2 0.0 平均値 (μg/m3) -1.82 1.06 0.65 0.37 標準偏差(μg/m3, σ) 0.22 1.63 0.28 0.28 検出下限値(μg/m3, 3 σ) 0.66 4.88 0.83 0.84

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4

表 2-3 空試験の検証結果と評価基準との適合性 日平均値の空試験の平均値と標準偏差【評価基準:± 2 μg/m3, 0.6 μg/m3

以下】 FPM-377C FH62C14 SHARP 5030 PM-712 セット数 8 7 5 7 平均値 -1.82 1.06 0.65 0.37 標準偏差 0.22 1.63 0.28 0.28

1 時間値の空試験の平均値【評価基準:± 2 μg/m3】

Run No. FPM-377C FH62C14 SHARP 5030 PM-712 #1 -2.19 4.49 1.01 0.25 #2 -1.78 0.58 0.71 0.15 #3 -1.92 1.33 0.62 0.48 #4 -1.56 0.55 0.23 -0.03 #5 -1.96 0.76 0.67 0.52 #6 -1.71 0.43 0.40 0.21 #7 -1.61 -0.70 - 0.49 #8 - - - 0.87 最小値 -2.19 -0.70 0.23 -0.03 最大値 -1.56 4.49 1.01 0.87

1 時間値の空試験の標準偏差【評価基準:3 μg/m3以下】

Run No. FPM-377C FH62C14 SHARP 5030 PM-712 #1 2.18 13.07 0.33 1.66 #2 1.49 3.56 0.39 1.28 #3 1.92 5.80 0.39 1.33 #4 1.90 4.71 0.27 1.29 #5 1.79 6.21 0.52 0.99 #6 1.36 5.90 0.48 1.30 #7 1.56 4.84 - 1.81 #8 - - - 1.07 最小値 1.36 3.56 0.27 0.99 最大値 2.18 13.07 0.52 1.81

※評価基準を満たさなかった結果に網掛けした。

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5

(別紙2)

自動測定機の 1時間値の測定精度

1.はじめに 地方公共団体においては「大気汚染防止法第 22 条の規制に基づく大気の汚染の状況の常

時監視に関する事務処理基準について」にしたがって微小粒子状物質(以下、PM2.5 と略す。)

の環境基準の達成状況を把握するために PM2.5 の質量濃度測定を実施している。PM2.5 の常

時監視には自動測定機が用いられているが、健康影響や疫学の研究は標準測定法による測

定値に基づいており、さらに環境基準がその知見を判断して設定されているため、自動測定

機は標準測定法と等価であることが適当である。一方で、自動測定機によって得られる 1 時

間値については、現行では参考値とされているが、濃度の時間変動等を迅速に把握するため

には自動測定機の 1 時間値が有用である。さらに、PM2.5 濃度の上昇に関する注意喚起の判

断には 1 時間値が用いられるため、1 時間値の測定精度に関する重要性が高まったことか

ら、種々の解析を行った結果を本資料に示す。 なお、標準測定法では試料を連続的に 24 時間かけて捕集するため、捕集中の成分の揮発

があること、一方、自動測定機は 1 日の中では測定値が高めとなる時間、低めとなる時間の

両方が存在し、これらを平均した結果が標準測定法と等価となっていることを認識する必

要がある。 2.自動測定機の 1 時間値の測定精度 2.1.検討方法 自動測定機の 1 時間値の測定精度については次の 3 つの検討を行った。

(1)全国の大気汚染常時監視データの解析 平成 26 年(2014 年)の測定値から 1 時間値のマイナス値の出現率、日内変動の特徴を、

機種ごとに取りまとめた。データは国立環境研究所の「環境数値データベース

1」を用いた。

評価対象機種は 5 機種(紀本電子工業製;PM-712、東亜ディーケーケー製;FPM-377B、Thermo Scientific 製;FH62C14 及び SHARP5030、及び堀場製作所製;APDA3750)である。 (2)同一地点での並行試験

1 国立環境研究所, 環境数値データベース, http://www.nies.go.jp/igreen/

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都市部(川崎市)と郊外(新潟市)の 2 地点でそれぞれ自動測定機と標準測定法との並行

試験を行い、その結果から日内変動と標準測定法との比較結果をとりまとめた。並行試験実

施期間は冬季が平成 25 年 11 月から平成 26 年 2 月、夏季が平成 26 年 7 月から 10 月で評価

対象機種は 4 機種(PM-712、FPM-377B、FH62C14 及び SHARP5030)である。 (3)ドライヤ方式の自動測定機との並行試験 自動測定機の測定誤差の要因の一つである加熱方式の除湿方法ではなく、拡散ドライヤ

による除湿方法を装備した自動測定機(以下、NIES-PM25)との並行試験を行い、測定誤差

を評価した。試験期間は平成 29 年 12 月から平成 30 年 1 月で評価対象機種は 4 機種(PM-712、FPM-377C、FH62C14 及び SHARP5030)である。なお、本資料に記載する知見は冬季

の試験結果に基づくものであるが、同様の試験は温度、湿度等の気象条件や PM2.5 の成分組

成が異なる夏季にも実施すべきであることから、今後、夏季の試験結果から得た知見につい

ても公表する予定である。NIES-PM25 の詳細は別添資料を参照されたい。 2.2.検討結果 上記の検討により得られた知見を機種ごとに整理して表1及び以下に示す。自動測定機

により得られる 1 時間値は機種によっては特徴的な日内変動を示すものもあったことから、

データの評価、解釈には注意すべきである。いずれの自動測定機による日平均値も、標準測

定法により 24 時間連続して捕集した日平均値との等価性は確認されている。しかし、検証

試験の結果からは測定条件や機器の状態によっては、日平均値の誤差から推定される 1 時

間値の誤差の目安

2よりも大きい結果もみられた。今後も高濃度の出現による注意喚起の判

断に使用する測定局には測定精度が高い測定機が配備されることが望まれる。詳細は技術

資料3に示す。 (1)PM-712(紀本電子工業) 常時監視データの解析結果において 1 時間値のマイナス値の出現率は年平均で 0.4%であ

り、季節別では冬季に高く(0.6%)、夏季に低くなった(0.2%)。また、-10 μg/m3を下回る

ようなマイナス値はほとんど出現しない。1 時間値のマイナス値の出現率が低いことから、

日平均値のマイナス値の出現率も低かった。有効測定値の割合は平均的に 98%以上であり、

また、日内変動には特徴的な挙動はみられなかった。 2 日平均値を 10%の測定誤差にするには、1 時間値の測定誤差は 49%が目安と

なる。

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同一地点での並行試験における空試験の結果からばらつきも小さく、FRM との日平均値

も一致していた。 ドライヤ方式の自動測定機(NIES-PM25)との冬季の並行試験結果においては外気湿度が

高い時間帯には NIES-PM25 よりも 3~7%低めの濃度を示す傾向があり、15~35 μg/m3付近

のばらつきは 20%程度であった。 (2)FPM-377B(東亜ディーケーケー) 常時監視データの解析結果において 1 時間値のマイナス値の出現率は年平均で 1.5%であ

った。季節別では冬季に高く(2.9%)、夏季に低く(0.9%)なった。-10 μg/m3を下回るよう

なマイナス値はほとんど出現しないが、日平均値のマイナス値は 5 機種中最も出現頻度が

高かった。有効な測定値が得られた割合は 5 機種中で最も高く、ばらつきは小さい方であ

る。 同一地点での並行試験における空試験の結果は良好であったが、標準偏差はやや高かっ

た。標準測定法との相関は良好であり、その濃度は夏季にはよく一致したが、冬季は標準測

定法よりやや低くなる傾向がみられた。 ドライヤ方式の自動測定機(NIES-PM25)との冬季の並行試験結果においては外気湿度が

高い時間帯には NIES-PM25 よりも 10%程度低めの濃度を示す傾向があり、15~35 μg/m3付

近のばらつきは 20%程度であった。 (3)FH62C14(Thermo Scientific) 常時監視データの解析結果において 1 時間値のマイナス値の出現率は他の装置に比べて

高く(年平均で 5.2%)、さらに、-10 μg/m3を下回るような大きいマイナス値の出現数も他機

種に比べて多かった。季節的には夏季にマイナス値が多くなった(6.8%)。しかし、日平均

値のマイナス値は少なかった。 日内変動は日中に高く、夕方以降に低くなる特徴的な挙動を示した。この特性は夏季に大

きく、常時監視結果だけでなく同一地点での並行試験でも同様であった。標準測定法との比

較においては冬季の関係性はやや低いものの良好だが、夏季の一致性が悪かった。 ドライヤ方式の自動測定機(NIES-PM25)との冬季の並行試験結果においては外気湿度が高

い時間帯には NIES-PM25 よりも 30%程度低めの濃度を示す傾向があり、15~35 μg/m3付近

のばらつきは最大で 66%であった。 (4)SHARP 5030(Thermo Scientific) 常時監視データの解析結果において 1 時間値のマイナス値の出現率は年平均で 0.1%と最

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も低い。1 時間値のばらつきが小さく、日内変動の特性もみられなかった。しかし、同一地

点での並行試験では傾向が異なり、冬季にマイナス値が 10%程度出現し、日内変動の振幅

も比較的大きい結果となった。標準測定法との比較では夏季の郊外で高めとなるデータが

多かった。 ドライヤ方式の自動測定機(NIES-PM25)との冬季の並行試験結果においては外気湿度が

高い時間帯にはNIES-PM25よりも 30~40%程度低めの濃度を示す傾向があり、15~35 μg/m3

付近のばらつきは最大で 56%であった。 (5)APDA-3750A(堀場製作所) 常時監視データの解析結果において 1 時間値のマイナス値の出現頻度は年平均で 2.3%と

比較的高く、さらに、-10 μg/m3を下回るようなマイナス値の出現も見られた。季節的には

夏季にマイナス値の出現割合が高かった(3.8%)。日内変動は日中に濃度がやや高く夕方以

降に濃度がやや低くなる特徴的な挙動を示した。なお本機は同一地点での並行試験及びド

ライヤ方式の自動測定機との並行試験は行っていない。

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表1 自動測定機の特徴について 機種名 PM-712

(紀本電子工業) FPM-377 (東亜ディーケーケー)

FH62C14 (Thermo Scientific)

SHARP5030 (Thermo Scientific)

APDA-375A (堀場製作所)

測定原理 β 線吸収法(14C) β 線吸収法(147Pm) β 線吸収法(14C) β 線吸収法(14C)と光散

乱のハイブリッド β 線吸収法(14C)

相対湿度変化へ

の対応策 ソフトウエアによる補

正 相対湿度 35%になるよ

うに加温 45℃になるように加温 相対湿度 40%になるよ

うに加温 45℃になるように加温

フィルタ送り時

間 1 時間毎 1 時間毎 24 時間または負荷量超

過したとき 24 時間または負荷量超

過したとき 1 時間毎

フィルタ材質 PTFE PTFE ガラス繊維 ガラス繊維 PTFE +不織布 負の 1 時間値の

出現傾向 季節変化は小さい 冬季に高い 夏季に高い 冬季に高い 夏季に高い

日内変動の特徴 ない ない 日中に正の偏り、夜間に

負の偏りを示す傾向に

ある

多少の偏りを示す傾向

にある 日中に正の偏りを示す

傾向にあるが夕方以降

は小さくなる 空試験結果 標準偏差が小さく,屋内

外の結果も同様 標準偏差が小さく,屋内

外の結果も同様 屋外では標準偏差が上

昇 屋外では標準偏差が上

昇 ―

ドライヤ方式の

自動測定機に対

する偏り

外気湿度が高く、濃度が

高いほどドライヤ方式

より濃度が低くなるが

その影響は小さい

外気湿度が高く、濃度が

高いほどドライヤ方式

より濃度が低くなるが

その影響は小さい

外気湿度が高く、濃度が

高いほどドライヤ方式

より濃度が低くなる

外気湿度が高く、濃度が

高いほどドライヤ方式

より濃度が低くなる

15~35 μg/m3付

近のばらつき 最大で 23% 最大で 28% 最大で 66% 最大で 56% ―

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(別添) 非加熱の除湿方式の自動測定機について

1.非加熱の除湿方式の自動測定機の開発

PM2.5 自動測定機の測定誤差の検証は、国立環境研究所で開発している自動測定機と並行試験する

ことにより実施した。国立環境研究所では非加熱の除湿方式の自動測定機の開発を行っており、市販

の自動測定機に 3 種類の除湿方法を装着して試験、研究を行っている

3。非加熱の除湿方式とすること

により試料空気が常に 30%以下となり、ヒータによる加熱や計算による補正に比べ外気湿度の影響を

受けない。開発のベース機とする市販自動測定機の選定にあたっては、次の 3 点が考慮された。 ①測定感度に影響するβ線の強度が強いこと(10 MBq)。 ②捕集フィルタの材質は水分影響が少ない四フッ化エチレン樹脂(PTFE)であること。 ③フィルタ送りの頻度が捕集時にガス成分の吸着や揮発が少ない 1 時間に 1 回であること。

これらの条件からベース機には PM-712(紀本電子工業製)が選定された。 2.除湿方法の特徴

除湿方法は拡散ドライヤ、3 倍希釈方式、事後乾燥方式が検討され、比較試験が行われた。 拡散ドライヤ方式は大型化、高価格化の問題はあるものの、市販自動測定機と同様に 1 時間値を測

定することができ、操作性も優れている。他方、3 倍希釈方式は希釈により濃度が低下するため単位

時間当たりの感度も低下すること、事後乾燥方式では測定時間中に捕集と乾燥空気の通気を行う必要

があるため、測定時間が短くなる(たとえば 40 分採取した後に 20 分乾燥空気を通気)。したがって

1 時間値の誤差の検証には市販自動測定機と稼働条件が近い拡散ドライヤ方式(以下、NIES-PM25)との並行試験を行った。 3.拡散ドライヤ方式の予備試験

拡散ドライヤとその運用に必要な除粒子乾燥空気の仕様は次の通りである。 ・拡散ドライヤ:ナフィオンドライヤ MD-700(Perma pure 製、長さ 60cm) ・除粒子乾燥空気:オイルフリースクロールコンプレッサーSLP-75EFDM5(アネスト岩田製、最大 0.8 m3/分、8 気圧)に中空糸膜式エアドライヤーFMDR100-C12-W10-AD(ピスコ製、最大 100 L/分、露点

‐28℃以下)を接続して発生させた。 検証試験に先立って、改良自動測定機には比較対象自動測定機との機差がないこと、拡散ドライヤ

の配管内の粒子の損失がないこと、さらに特定成分の損失がないことを確認した。また試料空気流量

が小さく、パージ乾燥空気流量が大きいほど除湿性能が高くなり、拡散ドライヤを 4 本並列に使用す

れば、試料部の湿度を約 30%以下に維持できることがわかった。 4.NIES-PM25 と標準測定法との比較試験 3 伏見ら, 第 58 回大気環境学会年会講演要旨集, pp 190-191, 2017.

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これまでに NIES-PM25 の評価試験は四季にわたって実施されている。開発当初は屋内に設置して

いたが、2017 年夏季からは屋外で試験が行われた。表1にドライヤ方式の NIES-PM25 を x 軸、標準

測定法を y 軸にした散布図の原点を通る 1 次回帰式の傾きを示す。NIES-PM25 は標準測定法の測定

値に比べ概ね 1~3 割程度高かった。捕集した一部試料の組成の比較などから、両者の差には、標準

測定法における 24 時間連続捕集中の揮発が大きく影響していることが示唆された。なお、他の 2 つ

の除湿方式についても同様の結果が得られており、除湿による自動測定法の安定性と信頼性が示され

ている。

表1 NIES-PM25 と標準測定法との比較試験結果* 冬季屋内実験 春季屋内実験 夏季屋外実験 秋季屋外実験 冬季屋外実験

0.65 - 0.85 0.73 0.93 * 各季節試料数 7 5.NIES-PM25 と市販自動測定機との比較試験

表2に NIES-PM25(ドライヤ方式)を x 軸、市販自動測定機(紀本電子工業製, PM-712)を y 軸に

した散布図の原点を通る 1 次回帰式の傾きを示す。NIES-PM25 は市販の自動測定機の測定値に比べ

概ね 1~3 割程度高かった。すなわち、市販の自動測定機は標準測定法と概ね一致するが、表1に示

したように揮発の影響分も補正していることを示唆する結果であった。

表2 NIES-PM25 と市販自動測定機(PM-712)の比較試験結果* 冬季屋内実験** 春季屋内実験 夏季屋外実験 秋季屋外実験 冬季屋外実験

0.91, 0.93 0.87 0.82 0.77 0.75 * 各季節試料数 7 ** 屋内冬季試験は 1 回目(2016/12/12 20:00~2016/12/23 10:00)と 2 回目(2017/01/12 16:00~2017/01/27 9:00)の結果

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(技術資料3)

自動測定機の特性について 1.1. 機種別の特性 (1)PM-712

常時監視データの解析

結果 同一地点での並行試験による結果

1 時間値の マイナス値の 出現率(%)

年間 0.4%: 冬季に高く(0.6%) 夏季に低い(0.2%)

今回の調査では夏季の方がマイナス出現率が高か

った。夏季の PM2.5濃度が低かったことが影響して

いる可能性がある。 常時監視データも同様に PM2.5 濃度の季節差が影

響している可能性がある。 日内変動の 特徴

小さい FPM377 の濃度変動とおおよそあっており、この機

種との 1 時間値の相関もよい。 FH62C14 や SHARP5030 と比べると日内変動は小

さい 空試験 平均値はゼロ付近

標準偏差も小さい 常時監視と同様に良好で、4 機種中で最も標準偏差

が小さかった。 日平均値 - 標準測定法との相関は良好であった。 1 時間値 - FPM377 と相関がよかった。

FPM377 と比較すると、PM2.5 濃度が高くなるほど、

PM712 の方が濃度が高くなる傾向にあった。 (2)FPM-377

常時監視データの解析

結果 同一地点での並行試験による結果

1 時間値の マイナス値の 出現率(%)

年間 1.5%: 冬季に高く(2.9%) 夏季に低い(0.9%)

都市部・郊外ともに常時監視と同じく、冬季に高く

夏季に低かった。

日内変動の 特徴

小さい PM712 の濃度変動とおおよそあっており、この機

種との 1 時間値の相関もよい。 FH62C14 や SHARP5030 と比べると日内変動は小

さい 空試験 平均値 :±5 μg/m3

内 標準偏差は約 5 μg/m3以下

常時監視結果と同じであった。

日平均値 - 標準測定法との相関は良好であった。 夏季はよく一致したが、冬季は標準測定法よりや

や低い濃度なった。 1 時間値 - PM712 と相関がよかった。PM712 の 1 時間値と比

較すると、夏季に比べて冬季に低くなる傾向にあ

った。

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(3)FH62C14

常時監視データの解析

結果 同一地点での並行試験による結果

1 時間値の マイナス値の 出現率(%)

年間 5.2%: 夏季に高く(6.8%) 春季に低い(3.3%)

常時監視同様に夏季に高かったが、常時監視より

も出現率は高く、都市部で 28%、郊外で 42%であ

った。 日内変動の特徴 日中に高く、夕方以降

に低くなる傾向。 この動きは夏季に大き

い。

常時監視と同じであった。フィルタの送り時刻を

12 時とした場合も同様であった。

空試験 平均値は±5 μg/m3以

内に収まるが、他機種

に比べて標準偏差が大

きい。

温度湿度がほぼ一定に制御された室内では標準偏

差も 5 μg/m3以下であったが、屋外での試験では標

準偏差が大きく、新潟では 20 μg/m3を超えた。

日平均値 - 冬季は標準測定法と関係性は良好だが、やや低く

なった。夏季は標準測定法との一致性が悪くなっ

た。 1 時間値 - 都市部の冬季で検出器を交換した後に他機種と良

い正の相関が見られたが、それ以外は相関は弱く、

とくに、夏季はまったく相関していなかった。 (4)SHARP 5030

常時監視データの解析

結果 同一地点での並行試験による結果

1 時間値の マイナス値の 出現率(%)

年間 0.1%:冬季に高い

傾向 夏季には 1 データも無いのに対し、冬季に多かっ

た(10%程度)。常時監視(1%未満)に比べて冬季

の出現率はかなり高かった。 日内変動の特徴 小さい 常時監視と同様に多少の濃度変動があり、PM712

や FPM377 に比べると変動は大きかった。本装置

のβ線測定値の変動の影響を受けている可能性が

示唆された。 空試験 平均値はゼロ付近で標

準偏差も小さく良好な

結果であった(昨年度

報告書)

常時監視と比べると濃度変動(標準偏差)が大き

く、平均値も 5 μg/m3を超えるものが見られた。

日平均値 - 夏季に標準測定法との一致が悪く、とくに新潟で

標準測定法に比べて高くなるデータが多かった。 1 時間値 - 他機種との相関では、都市部の冬季にやや関係が

見られたが、それ以外は相関が低かった。

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(5)APDA-3750 常時監視データの解析

結果 同一地点での並行試験による補完(未実施)

1 時間値の マイナス値の 出現率(%)

年間 2.3%: 夏季に高い傾向※

日内変動の特徴 日中に高く、夕方以降

に低くなる傾向※ -

空試験 平均値はゼロ付近で標

準偏差も小さく良好な

結果であった(昨年度

報告書)

日平均値 - - 1 時間値 - -